TCP2018準グランプリ受賞作品『先生、私の隣に座って頂けませんか?(仮)』堀江貴大【インタビュー】

オリジナル映画企画とクリエイターの発掘を目的に、「本当に観たい映像作品企画」を募集し、受賞作を映画化するTSUTAYAとカルチュア・エンタテインメントが主催する「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM」(TCP)。

本プログラムで過去に受賞した『嘘を愛する女』と『ルームロンダリング』が2018年に劇場公開され、ますます注目度が高まっているプロジェクトです。

そんなTCP2018で準グランプリ・TSUTAYAプレミアム賞を受賞したのが堀江貴大さん。

長編映画『いたくても いたくても』や『ANIMAを撃て!』など、すでに映画監督として活躍している堀江さんから、受賞作品『先生、私の隣に座って頂けませんか?(仮)』の企画ができあがるまでの経緯や作品に込めた思いなどを伺いました。

堀江貴大

受賞作品『先生、私の隣に座って頂けませんか?(仮)』あらすじ

tcp2018

人気漫画家の早川佐和子は、自身の夫が不倫をしている事実に気づき、ある新作漫画を描き始める。それは夫の不倫と自らの新たな恋愛を赤裸々に描いた不倫漫画だった。それを読んだ夫は不安と疑念に駆られていく。「佐和ちゃん、君も不倫してるの……?」不倫への報復活動を喜劇的に描く、“不倫エンターテインメント映画”。

作品のビジュアルはあくまで現段階でのイメージです。

不倫をテーマにしたきっかけはコンビニで読んだ雑誌

――受賞おめでとうございます! 今回の受賞企画は「不倫」をテーマとした作品ですが、この企画になったきっかけを教えてください。

堀江 雑誌である記事を読んだのがきっかけです。このTCPの企画を考えるのに締切直前までホント行き詰まっていて……。応募締め切りの1週間前くらいでしたかね。気分転換に家の近くのコンビニへ行ったときに「週刊プレイボーイ」が目に入って、そのときの特集がたまたま「不倫マンガ」だったんですよね。

それで、不倫ものって面白いなと。フィクションではあるけれど、現実には起こり得ないとは言えないので。そういうスリルがあるというところで、まず不倫ものに興味を持ったんです。

それからマンガ家を主人公にした森本レオさん主演版の『黄色い涙』ってNHKのドラマがすごく好きで。マンガ家の話を作りたかったと思い出したんです。

それに今回応募するためにもともと考えていた「主婦と教習所の先生が教習車で駆け落ちする」という話をミックスしてみたら、今回の不倫+マンガの企画ができあがって、締め切りまでに一気に書き上げました。

堀江貴大

――ちなみに不倫漫画で印象に残った作品はありますか?

堀江 「うきわ」っていう不倫マンガが好きで。セリフというより、絵とコマ割りで語る叙情的な不倫マンガなんです。不倫を描いていても、ふとした瞬間に美しさがある。

そういうドロドロだけではない不倫漫画が面白いなと。

――最終審査のプレゼンテーションで披露していた作品のイメージ映像では、夫の不倫、そして佐和子自身も不倫しているのかも、と思わせるスリリングな展開がありました。その一方で、夫が読むこともわかっているのに、わざと夫の不倫に気づいているという実体験をマンガにしてしまうコミカルな部分もあるし、映像を観ただけでワクワクしました。

堀江 ありがとうございます。不倫映画とはいえ、ドロドロだったりシリアスだったりだけではなくて、笑えるようなものとしても描きたいんです。

「これどっちなんだろう? 笑っていいのか、笑っちゃいけないんだろうか?」っていうような瞬間が現実にも映画にもあると思うのですが、そういう瞬間を映画で撮りたいです。

――それに妻の視点、夫の視点も出てくるので、観ている側はどっちにも感情移入できそうですね。

堀江 そうですね。観ている人が夫に対して「お前が不倫したからダメなんだろ!」っていう感情のみで終わらないようにしたいなと思っていて。自分が不倫しておいて、奥さんも不倫しているってわかった途端、焦っちゃうところがなんかリアルだと思うし、そういう夫の情けなさが笑いにつながると思うんですよね。

ドロドロした感情を持つ女性を飄々と、ダメな男性だけど憎めないと感じられるように演じてもらいたい

堀江貴大

――ちなみに、キャスティングのイメージはありますか?

堀江 佐和子は夫の不倫に気づいていることや自分自身の不倫についてをマンガには描くけど、面と向かって言わない。しかも夫にそれを読まれるのをわかっていて、机に原稿を置いておくとかまわりくどいですよね。

そんな風に陰湿に復讐していくので、そういったドロドロした感情を飄々と演じることができる女優さんに演じてもらいたいです。夫役には、ダメだけどなんか憎めない、愛すべきキャラクターを演じてくれる俳優さんがいいですね。見た目もちょっとカッコ良くて。この夫を嫌いになれない、「しょうがない人だなあ…」と見ている人に感じてもらえるキャラクターにしたいです。

――ほかのキャラクターのキャストも考えていますか?

堀江 教習所の先生役は、女性に人気のある方にお願いしたいですね。なので、よく妻に聞いています(笑)。夫の不倫相手役はわかりやすい小悪魔な人がいいなと思っていて。泥沼というか、ここにハマったら離してもらえないような感じの人が良いですね。

バカバカしいことを真面目にやってる人たちがすごく好き

――影響を受けた監督などはいらっしゃいますか?

堀江 M・ナイト・シャマラン監督と森崎東監督がすごく好きです。バカバカしいことを真面目にやっている人たちが好きで。森崎東監督の喜劇は、登場人物たちが真剣になればなるほど笑えるものになる。それは悲哀を感じる笑いでもあるんですが。シャマラン監督はサスペンスとして撮るけど、一周まわってえる時がある。

空振りになろうがホームランになろうが、監督本人がいつもマジなところが好きです。「この人はどこまで真剣に行くんだろう」って思うくらい。「バッターボックスに立ったらビビるなよ、バントするなよ」っていう心意気をいつももらってますね。

――最後に映画化に向けて意気込みを教えてください!

堀江 フルスイングしてちゃんとヒットにする! いや、ヒットできるかわからないですけど。ビビらずにフルで自分のできることをやりたいですね。

<堀江貴大さんプロフィール>

映画監督・脚本家。長編映画『いたくても いたくても』で「第16回TAMA NEW WAVE コンペティション」グランプリ受賞。『ANIMAを撃て!』で商業長編デビューを果たした。

【取材・文:戸川光里/撮影:FILMAGA編集部】

TCP2018 受賞者インタビュー

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