まさに“アイドル版フルメタルジャケット” 壮絶なオーディション合宿の7日間を映し出した映画『世界でいちばん悲しいオーディション』【インタビュー】

2019.01.10
映画

映画狂の唄を大いに謳おう

ロックス

BiSBiSHをはじめ特異な世界観を持つアイドルを輩出する音楽事務所WACKが毎年恒例で開催している合宿型合同オーディション「WACKオーディション」。全国から集まった24人の候補生たちが、自らの夢を叶えるべく、歌、ダンス、マラソン、デスソース……と過酷な試練を乗り越えながら、己と向き合い、闘い、そして覚醒し、憧れのアイドルへの階段を上っていく。しかし、毎夜行われる無情な脱落者発表。理不尽なジャッジに感情を揺さぶられながら、本性を剥き出しにしていく候補生たち。切なく過酷な一週間を追った唯一無二のドキュメンタリー映画『世界でいちばん悲しいオーディション』が、2019年1月11日(金)より公開される。

世界でいちばん悲しいオーディション

その壮絶なる内容をWACK代表・渡辺淳之介は“アイドル版フルメタルジャケット”と表現する。その言葉に一点の偽りもなし。少女たちが泣き、喚き、精神を削りながら奮闘する姿に、心揺れ動く。その試練を乗り越え、見事GANG PARADEに新加入した月ノウサギ、BiSHの現役メンバーであるモモコグミカンパニーに、WACK代表・渡辺淳之介を交え、インタビューを敢行した。

世界でいちばん悲しいオーディション

――タイトルの『世界でいちばん悲しい〜』というように非常に凄惨な内容となっています。WACK初のプロデュース作品となりますが、製作の経緯はどういったものでしょうか。

渡辺 はい、僕が今、肩書きを増やす作業をしておりまして。今は音楽プロデューサーと作詞家と名乗っていますが、この間ファッションブランドを立ち上げてファッションデザイナーという肩書があります。そして、次は映画プロデューサーかな、と思い、製作に踏み切りました。

世界でいちばん悲しいオーディション

渡辺 今回はたまたま松竹さんとご縁が出来て、話をさせてもらっている中で、やってみようかという事になったんですけど、映画製作って大変ですね。見えていない部分が色々あったので、非常に勉強させてもらいながら、ヒットさせたいなと思ってます。

――作品をご覧になった観客の皆さんが気になると思うのが、渡辺さんは一体どんな人物なのか、ではないかと思います。劇中ではヴィランというか、盛り上げ役というか、中心人物というか……。月ノウサギさん、モモコグミカンパニーさん、お二人に伺います。

渡辺 何でも言っていいよ。月ノから言っちゃえよ。

月ノウサギ え~私ですか。私はこのオーディションで入った身なので……。すごくいい意味でわからない人だなと思いました。今こう見ていてもどういう人かがわからなくて。いい意味で理解ができない人。あと、これは合宿前から思っていたのですが、嘘をついたら全部バレるなって思っていました。何だろう……私の今までの人生で出会ったことのない方でした。すごく人を見ていないようで見ている人。すごい怖いんですけど。

世界でいちばん悲しいオーディション

渡辺 モモコは怖い?

モモコグミカンパニー 私は合宿なしのオーディション、面接で受かったのですが、最初の渡辺さんの印象は、結構自由な大人だな、と思いました。オーディションでは、みんなが並んで、一人ずつ歌っていくんですよ。そういう時ってどんなに下手でも笑っちゃダメじゃないですか。なのに渡辺さん、笑ってるんですよ。

あと全然この子に興味ないんだろうなという時は、ずっと目を見ないんです。自分の気持ちに素直というか、いい意味で大人じゃない、自由な大人だなと思います。

――オーディションを合宿にした経緯は?

渡辺 そうですね、僕自身がテレビ東京で放送していた「ASAYAN」で育ってきました。それを観ていて、合宿オーディションがモーニング娘。にもありまして、過程を見ていくということが、人ってすごく好きなんじゃないかなと思いました。

世界でいちばん悲しいオーディション

渡辺 それに比べて、テレビだと切り取られるシーンがいい部分というか、見せ場が多い部分ばかりなので、それより僕は裏側が観たくて、裏側というか全部観たくて。ですので、ニコニコ生放送で24時間ずっと、寝ている時まで放送している状況なのです。そういうのを観ることができたら、すごく楽しいんじゃないかな、と思いましたね。

――現役メンバーのモモコグミカンパニーさんも今回の合宿に参加されましたが、いかがでしたか?

モモコグミカンパニー そうですね、普段BiSHのメンバーとして活動をしていると、素人の子とフラットに関わることはめったにないので、このオーディションに参加して、そういうことを話せたことが自分のためになりましたね。

世界でいちばん悲しいオーディション

――参加されていて胸が痛むということはありませんでした?

モモコグミカンパニー たしかに胸は痛みましたね。あのオーディションで毎日脱落していくじゃないですか。脱落した子は船に乗って帰るのですが、船に乗る前に部屋に行ったら、もう帰る準備をしている子がいて。その子と二人っきりで話したりしていたら、胸が痛みましたね。

渡辺 胸痛いよね、一緒に練習していた女の子がさ、次に日には帰るってさ。

モモコグミカンパニー 落ちた瞬間から顔が変わっているんですよね。私に対する顔も。二人っきりになった時、握手してもらってもいいですか、とか言われたり。落ちた瞬間から、本当に普通の子に戻っていくんです。

――月ノウサギさんは、合宿を経てメンバーになられましたが、合宿を振り返るといかがでしたか?

月ノウサギ 私の人生で一番考えた一週間だったと思いました。どうやって受かるかというより、落ちないために頑張っていましたね。一緒に部屋で寝ていて、部屋で寝ているけれど明日には帰る子と、残っている子がいて。私は帰る子に絶対になりたくないな、という気持ちでずっといました。そうならないために、今何をすればいいんだろう、と常に考えて生きていた一週間でした。

渡辺 また行きたいよな。

月ノウサギ い、行けと言われたらもちろん。行かせていただきます。

全員 (笑)

――審査の基準を教えていただくことはできますか?

渡辺 フィーリングなんですよね。本当にフィーリングで。ただ、僕の中で実は、面接をした時点で決まっているんです。この子は合格させたいというところは事前に決めていたりします。ただ、合格させようと思っていた子が、ことごとく落ちていく現象もありますね。今いる月ノウサギはもともと合格させる気がなかったんです。不思議な話ですが、今いるメンバーは、ほとんど合格させる気がなかったメンバーでした。僕も24時間対峙させてもらうんで、基本的にはちゃんと見て、(最初は)見えていなかった部分も出てきたりして、変わっていくことが正直なところありますね。腐っちゃった子たちもいるのですが、腐らないでやっていたら全然可能性あるのに、ということもありました。

世界でいちばん悲しいオーディション

渡辺 一つ基準があるとすれば、諦めないこと。悲劇のヒロインになるか、ならないかというところはありますね。悲劇のヒロインになってしまった子たちは基本的には落としています。自分が可哀想になってしまうというか。もっと前を向いて、今こんな順位だから上げてやろうとか、先ほど月ノが言っていた「落ちないように」努力をしていた子たちを基本的には合格にしましたね。

――アイドルを目指している方にお三方から一言ずついただければ。

月ノウサギ 本当に後悔しない選択を常に自分に投げかけていてほしいなと思います。諦めるのも選択肢としてあるのですが、自分の未来と今を天秤に掛けてから諦めてほしいと思いますね。それをして、後悔をしないというならば諦めてもいいと思うし、少しでも後悔すると思うなら、私は目指し続けてほしいなと思います。

モモコグミカンパニー BiSHでいるより合宿の方が全然楽です。デスソースとかマラソンとか、食べている方が。やればいいだけの話で、頑張ればいいだけです。けれど、BiSHでいたら頑張ればいいだけでは済みません。歌とダンスを頑張っただけで売れるわけでもなくて、私はBiSHでいる時の方が大変だなと思っています。でもこの映画を観てやばいと思った子は、アイドルはもっと大変だよって言いたいですね。

渡辺 単純にアイドルなんか目指すのはバカ!って思いますね。まあ生半可な気持ちで受けに来るなとも思います。基本的にアイドルになりたい奴は、生半可な気持ちでしか来ないわけです。楽曲も衣装も用意してもらって、舞台も用意してもらって、CD出してもらって、という。バンドだと、自分たちでやらなきゃいけないじゃないですか。そういったことの全てを放棄して、全部やってもらおう、という人たちなので、基本的に舐めたやつが多いと思います。

でも、それだからこそ、すごく大変というか、自分たちをどうやって魅せたらいいのか、というところが一番に委ねられてしまうので、ずっと埋もれてしまう状況もあるし、本当に自分が何をやりたいのか、そういう意味で言うと、このオーディションでアイドルになるということは、一つの過程でしかなくて、どちらかというと、アイドルからなにかのグループになった時に、踏み台にしてやるんだという気持ちで受けに来てほしいなと思っています。

世界でいちばん悲しいオーディション

――ありがとうございます。作品を観る方に渡辺さんから一言お願いします。

渡辺 はい。この映画はどちらかというと、オーディションの映画というよりは失敗者たちの物語かなと考えています。ですので、多分映画を観ている方達は「うわーこんなこと言わなきゃいいのに」、「ここでこうやったらいいのに」など思ったり呟いたりする人たちがたくさんいらっしゃるのではないかなと思います。でも「それ、お前のことだよ」と自分で考えながら逆説的に観てもらえると、非常にバイブル的な映画になってくるのではないかと思います。ぜひそんなことを頭の片隅に思いながら観てもらえたらなと思います。(取材・文・写真=ロックス)

映画『世界でいちばん悲しいオーディション』は、2019年1月11日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次公開

世界でいちばん悲しいオーディション

監督・撮影・編集:岩淵弘樹
プロデューサー:渡辺淳之介
撮影:バクシーシ山下 西光祐輔 白鳥勇輝 エリザベス宮地
出演:オーディション候補生、モモコグミカンパニー(BiSH)、パン・ルナリーフィ(BiS)、ペリ・ウブ(BiS)、キャン・GP・マイカ(GANG PARADE)、BiSH、BiS、GANG PARADE、EMPiRE
配給:松竹メディア事業部 (C)WACK INC.
公式HP:http://sekakana-movie.jp

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  • TELnumaRiku
    4.0
    WACKのオーディション合宿の密着ドキュメンタリー。 想像以上にアイドルは大変。もちろん大変そうなのは知っていたつもりだけど、その想像以上に。 デスソースなど、色々と試練を与えるのは、多面的に人の評価をするためですね。 ただ、トラウマがあるので、デスソースを見てたらお腹が痛くなった。
  • アキラxoxo
    3.2
    2019-13 「泣いてる女の子を観て笑う大人ばっかり」 「何も挑戦してない人に言われたくない」 BiS解散のからずっと劇場で観てるけど、SiS消滅が1番好きかな。 どんどん人数も増えて、wackが大きくなると共に普通の女の子ばかりになってきてキャラが薄まってるし掘り下げられてない。 ニコ生で映ってない部分が観られたので満足はしたけれど、単にダイジェスト映像だったようにも思う。でも、毎度wackの映画に背筋を正してもらってる。 ももこと渡辺さんのもめたシーンはないんかい! 作文…あの子たちも悪いけど、バクシーシさんだっけ?毎度あの人に相手させると全員べらべら喋っちゃうんだよ!セミヌードとか撮られちゃうんだよ!しゃーない。 やっぱあれだけ濃密な合宿を1時間半にまとめるのは無理があるよな、と思った。ニコ生観てた人じゃないとついていけないと思う。例えばデスソ事件のシーン。リソリソは年齢的に20時以降出演できなかったのでガミヤと違って悩まず布団に入ってるんだけど、その説明が無かった。ガミヤとの対比で怠けた子に見える。 あ、ガミヤはその後ミスiDで賞を取り佑生という名で活動されてます。 ヨコヤマヒナ(ツキノ)はミスiD賞取得済で受けてたけどな。 過去にはテラヤマユフ(あおの)もいたな。 オーディションは気持ちだけでとりあえず半分までは残れるんだな、と思った。そこからは合う合わないとか、そういう話。 みみらんどは今もTwitterやってるけど、なんかズレた人なんだよな。今年の合宿受ける人から質問受付とかやってるし。 ひらのさんは頭良い故の頭でっかちな感じだな。努力したけど報われなかった人代表。でも優しい人に見えた。 ナガヤマ、パンルナと同オーデ出身じゃなかったっけ?随分差がついたな。 リンリン一瞬しか映らなかったのに好感度上がった。気配り。 個人的にはニコ生ではフォーサマ推しだったけど、これ観たら落ちて然るべきだったな。 タイトル、サッディストとサディストをかけてるのか? 舞台挨拶、ミニライブつき(BiSH) リンリンちゃんとても可愛かった。 アイナちゃんのダンスというか腰つき、度エロかった。やっぱり歌もとても良かった。 BiSHの喋りは暗すぎてびっくりした。ハシヤスメさんはいつ見ても音外してるので、あまり好きじゃなかったんだけど、トークで明るい雰囲気になるのはこの人が話してるときだけだった。 wackは曲やミュージックビデオが好きなんだけど、客が乱暴で嫌なのと、歌下手メンも多いので普段ライブに行かない。 今回は着席なので、やっぱりコールはうるさかったけど、音楽を楽しめて良かった。 そして、うるさい客ほど舞台挨拶が終わり次第帰って行った…。 映画自体は既に観たけど、ミニライブが観たい人たちなんだろうな。 彼らが帰った後の客席(1階最前などはほぼ全て)ガラガラで、儲かるから別に良いんだろうけど、なんだか虚しいなと思いました。
  • なかよし
    3.4
    焦点が合いづらい作品なのはテーマ上仕方ないが、どうにかならなかったものか。 オーディションに参加すれば「自分を変えてくれる」という時点で受け身であることを気付けていない人間は無様に散っていく。編集されてしまった映像を通してみる無様さは呆れてモノも言えなくなるほど。(もちろん、人による。) どうすれば良かったか?ではなくどうしたいのか。変えてくれる、ではなく変えたい。であるべきだ。 キャン・GP・マイカ最高!好きになった 1/20@丸の内ピカデリー BiSH舞台挨拶&ミニライブ付き上映
  • lp
    4.0
    『BiSキャノンボール』から始まって、昨年の『アイドルキャノンボール』まで続いた、WACK×HMJMのドキュメンタリーシリーズ。その流れを汲む(と言って問題ないはず)映画とあって早速鑑賞。 2018年3月に行われたWACKオーディションにカメラが密着し、応募者達の様子を映し出す。 明らかに意欲の低い応募者達が、厳しい現実を前に滅多打ちにされる中盤までは、映画として面白く感じた。1つ誤解の無いように書くと、この「面白さ」は何も応募者の女の子達が苦しむ様子をサディスティックに楽しむ・・・という単純な面白さだけではない。「芸能界」に限らず、「受身の姿勢でいては、何も成し遂げることが出来ない」という刃となって、観客に厳しい現実を訴求する面白さも、今作は兼ね備えている。 ただ、残念ながら後半に進むに連れて、今作の「面白さ」は失速する。 オーディションが進むに連れて、応募者達の中でも「悟り」のようなものが生じてしまい、「脱落者が出る」といった事件になりそうな事象も粛々と処理されてしまう。少し映画にブレーキが掛かってしまった印象だ。 オーディションの落選者に焦点を当てた映画としては、オーディション後に驚愕の事件が起こり、最後には応募者達の成長物語へと繋がる傑作『WHO KiLLED IDOL? SiS消滅の詩』には及ばないけれど、今作もまた見応えのある映画でした。
  • せれん
    -
    やばい、すごくサディスティク
「世界でいちばん悲しいオーディション」
のレビュー(52件)