門脇麦、26歳・最年長で挑んだ映画『チワワちゃん』 二宮健監督と二人三脚の日々【ロングインタビュー】

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

時代の先端を走りゆく空気感、そこに生きる人物の虚無感まで如実に捉え、1980~1990年代、ティーンエイジャーの心を鷲掴みにした漫画家・岡崎京子の短編「チワワちゃん」が映画化された。主演は26歳の門脇麦、監督は27歳の二宮健、取り巻くメインキャスト勢も20代―成田凌、寛 一 郎、玉城ティナ、村上虹郎―という布陣が、平成の終わり、邦画界に新風を巻き起こす。

チワワちゃん

クラブをたまり場に、夜な夜な仲間たちと集うミキ(門脇)。密かに想いを寄せていたヨシダ(成田)が、ある日突然「新しい彼女」を連れてくる。「チワワって呼んでね」と愛嬌たっぷりに仲間に溶け込むその女を、ミキはなぜか嫌いになれず、一緒に過ごすようになった。しかし数か月後、チワワがバラバラ死体となって発見される。衝撃を受ける彼らだったが、蓋を開けてみると誰もチワワの本名すら知らなかった。

兼ねてより原作の大ファンだったという二宮は、岡崎京子の世界観に、自身の持ち味である独特の映像美をいかんなく発揮し、混ぜ込み、味わい深く仕上げた。疾走する若い監督を支えたのが、多くの現場を踏んできた門脇で、「私にとってすごく大きな経験だった」と、二人三脚で歩んだ撮影の日々を振り返る。FILMAGAでは、初の二人でのインタビューとなった、貴重な対談をお届けしたい。

チワワちゃん

――本日のインタビューは、Filmarksがお送りするWEBマガジン「FILMAGA」にて掲載されます。

二宮監督:毎日見てます!

門脇:私も、毎日見てます!

――毎日、何をご覧になっているんですか?

門脇:Trendなど色々参考にさせていただいてます。

二宮監督:自分の観た映画は、全部Filmarksで管理して。

門脇:「観たい」(Clip!)のマークをしたり、「観た」(Mark!)をつけたりしています。

――ありがとうございます。本作『チワワちゃん』はFilmarksユーザーからも注目度の高い1本です。作品作りにおいて大事にされたことは何でしたか?

二宮監督:そもそも、岡崎さんの原作を大事にしないといけないと思っていましたし、キャストひとりひとり、皆さんがどういう風に作品の中で生きていけるかとかを考えて……監督って、大事にすることがいろいろ多いんです。うーん……先に、門脇さんのほうから聞いても良いですか?

門脇:私は今回、メインキャストの中では最年長でした。さらに、ミキの役柄が俯瞰した目線を持っている女の子だったということもあって、現場では自分のことだけでなく、いろいろな事に目を向ける、という意識を常に待つことは心がけていました。

チワワちゃん

――監督からご覧になっていて、そんな門脇さんの心構えは伝わっていましたか?

二宮監督:そうですね…クランクイン前いろいろ切羽詰まって、監督というリーダーシップを発揮しなければならない立場なのにも関わらず、門脇さんに自分の不安なことを遠慮なく話しまくって、「すいません、なので助けてください」とか言っちゃいました。いや、ほんと最低なふるまいだったな、と今でも反省していますが、結果門脇さんには、すごく助けられました。

門脇:そんな風に監督から言われたこと自体、初めてでしたし、自分に出来る事は何か、ということとひたすら向き合った現場でした。ただ、監督と具体的に何を話したかと言われたらあまり覚えていないんですけど……。

二宮監督:僕がずっと喋りたいことを喋っていただけで。門脇さんのほうが場数も多いので、ちょっと頼っちゃいました。年も近いし、経験も豊富だろうって。

門脇:そう言っていただけるのは有難くもあり同時に、やはりプレッシャーでもありました(笑)。

二宮監督:(笑)。

チワワちゃん

――キャスト同士、仲間うちという空気感を出すための難しさもありましたか?

門脇:映画の中の彼らは毎晩のように会っている仲間たちだったので、その空気感を出すためには、キャスト間である程度の共有の時間とお互いの距離感の認識がないと説得力がないだろうな、とは思っていました。
これだけ一緒にいると、「こういう場のときは誰が何かを言う」とか、「突っ込むのは誰」とか、何となく決まってくるものだと思うんです。長年いるような空気感を作るのが、まず一番に考えないといけないことだなと思っていました。

空気感って、本番が始まってから作れば良いのかもしれませんが、そうでない場所でも何となく意識していないと今回は難しいかも、と少し思って。今回、遊んでいるシーンも多かったんですが、台本上では台詞がなかったり、ト書き一行だったりしたんです。きちんと台詞があれば何とか回せるけれど、「アドリブで」となると、人数が多くても意外と、シーン……となっちゃったりすることもあって。なので、始まる前から作っておくべきだと思いました。

チワワちゃん

――自由演技みたいなところも多かったんですね。

門脇:はい。遊んでいるシーンなどモンタージュのように続くシーンは、自由演技というか、とにかくただただ一生懸命遊ぶ、という感じでした。ずっとハイテンションを保つところは大変でしたけど、みんな、監督の前作(『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリーピング ビューティ』)を観て現場に入っていたので、「きっとこういうシーンも、監督の手によって格好良く編集されるはずだ!」という共通認識はありましたし、どんなシーンになるのか楽しみでした。

二宮監督:正直、こっちが「踊ってください」と音楽をガンガンかけて、思った画が撮れるかは僕もわからないんですよ。だから、ある種の軽い博打のようなものではあるんです。だけど、「こうやって」、「ああやって」ときめ細やかに、具体的に言ったときに出る温度ではないものを撮りたいと常々思ってしまうので、そういうスタイルになっちゃうんですけど。

この手の映画って、特に日本では、うまく温度が出る作品があまりないなと思っていたから、そうはしたくなかったんです。みんな若いし、絶対ポテンシャルはあるわけなので、それらをきちんと画面に出せるようにしたかった。キャスト自身の肉体表現からスクリーンに映るまで、間に何かを挟むようなことはない状態を目指したいなと思ったんです。そのために何ができるのかな、というのはすごく考えましたね。

チワワちゃん

――具体的に、クランクイン前に皆さんで何をしていたんですか?

二宮監督:キャストのみんな、グルーヴ感を事前に作っておきたいことは理解してくれていたと思うので、何度か会って話したりしました。特にチワワは新人の子だったので、何回もリハーサルしましたね。チワワ含め、みんなを取り囲むワークショップみたいなものもやったりしましたし。

門脇:私は今までクラブとかにも行ったことがなくて。自分が踊ったりしている画も想像がつかなくて不安でした。その不安を顔合わせのときに監督に言ったら「そこは大丈夫です。任せてください。こっちが何とかしますから」と言ってくださって。きっと編集で格好良くしてくれる!なんとか頑張ろう!と腹をくくりました。事前にチワワのイメージソングリストをいただいたので、ずーっと聞いていました。ジャンルは……“EMD”でしたっけ?

二宮監督:“EDM”、electronic dance musicですね(笑)。

門脇:そうでした(笑)。そういうこととかも知らなかったので「EDMの曲を集めました」みたいなものをインターネットで調べて、ひたすら聴いたりしていました。完成した映画を観て、自分が想像以上に楽しそうに遊んでいて、「よかった、浮いていなくて」とホッとしたのを覚えています。

二宮監督:いやあ、でもそれは……門脇さんは別に自分でそう思っているだけで、結局本人のポテンシャルなんて、いくらでもあるわけじゃないですか。クラブで踊っているやつが垢ぬけているかといったら、別にそうでもないこともあるわけで、逆に垢ぬけているやつが踊ったところで、それでもダサくなっている映像もあるし。一番大事なのは、懸念みたいなものを捨てて楽しく、嘘のない形で、全力でやってもらえたら、こっちは絶対に拾えるし、とは思っていました。

チワワちゃん

――チワワのイメージソングリスト以外に、監督から発したそのほかのアイデアはありますか?

二宮監督:CD以外だと、プロデューサーに頼んで事前に共有できるオンラインストレージみたいなものを全員分作ってもらって、「普段みんなが見ている光景や写真をいっぱい撮って、どんどん入れてくれ」とお願いしました。みんなが見ている風景みたいなものからもインスパイアされたいなと思ってやったんです。……まあ、門脇さんは1回も入れてくれなかったですけど(笑)。

門脇:(笑)。

――門脇さん、やらない意図があったんでしょうか(笑)?

門脇:まず、普段、本っっっ当に写真を撮らないんですよ。食べ物の写真も撮らないですし、「今日空がキレイ」と思って風景写真を撮ったりもしないので、オンラインストレージに入れられる価値のある大層な写真がなかったんです。

二宮監督:価値は関係ないんですよ!

門脇:私の写真フォルダは、移動の電車の時間のスクリーンショットとかだから……。

二宮監督:そんなん入れてくれたら、めっちゃ面白いのに。 「今の子たちはこれをスクショしてるんだ!」とか、それを見たかったな(笑)。

門脇:あとは、明日観に行く映画の時間のスクリーンショットとかしかなくて(笑)。

チワワちゃん

――門脇さんは廣木隆一監督、岸善幸監督、白石和彌監督などベテラン勢と組むイメージも強かったんですが、今回こうした勢いのある若い二宮監督とご一緒されて、初めての経験などはありましたか? 率直にどうだったか、という感想を伺いたいです。

門脇:デビュー当時から「監督=先生」みたいな気持ちがあって、監督に対して常に受け身の姿勢で今までやってきました。撮影前に話し合ったり意見を述べたり、という事もあまりした事がなくて。お互い白黒はっきりしすぎると、なくなってしまうニュアンスもあると思うので、あえて話さないようにしてきた、という部分もあります。だけど、今回は、事前に監督が「力を貸してください」と言ってくださって、新しい現場の取組み方が出来るかもしれないと思いました。それは、すごく楽しかったです。

監督達は何年も前からその作品の準備をしていらして、でも私は「こういう作品を次やります」と台本をいただいて、現場に行く。仕事柄仕方がないのですが、どうしてもその船に最後に乗った人、という気持ちがあって。その作品にすごく責任を持ちたくても、なんだか自分がそう思うのはおこがましいな、と思ってしまったり、もっと深く入りたくても、私が出過ぎるのはどうなんだろう、と思ってしまったり。

責任を持ちたいのに持ちきれない、という意識がどうしても抜けなくて、作品をやっていて、いつも歯がゆかったんです。『チワワちゃん』ももちろん監督が何年も前から企画をし、そこに私は最後の最後に参加させていただけることになった、という意味では変わらないのですが、初めて「一緒に作品を今作っている!」という感覚になりました。私にとってすごく大きな経験でした。

二宮監督:……なんか……うれしいっす。うれしい。聞いて満足しちゃった(笑)。

チワワちゃん

――最後に、監督だけが知る門脇さんの魅力はどういうところにありますか?

二宮監督:お話してくれたように、今回、門脇さんとはすごく話したんですね。話す=相手の情報を知るわけじゃないですか。それって、テンションが上がることもあれば、下がることもあるというか。……例えば、気になった芸能人のインスタを見てみたら、文章がしょうもなくて冷める、とか。

門脇:(笑)。

二宮監督:そういうことって、あるじゃないですか。そういう意味では、情報を知ることが必ずしもいい方向に転ぶとは限らないと思うんですけど、門脇さんは知れてよかったというか。門脇さんといろいろ話していると、言葉の1個1個が面白いし、興味深いし、強度があったりして。この僕のまま「お願いします」といけたのも、門脇さんという人の人間力みたいなもの、おおらかさみたいなものに包まれたからでしょうね。僕も、そういう経験は初めてでした。(インタビュー・文=赤山恭子、撮影=岩間辰徳/衣装(門脇麦):ドレス 69,000円、ワンピース 38,000円=ともにタロウホリウチ、スタイリスト=イトウノブコ)

映画『チワワちゃん』は、2019年1月18日(金)より新宿バルト9ほか全国公開

チワワちゃん

配給:KADOKAWA (C)2019「チワワちゃん」製作委員会
公式HP:https://chiwawa-movie.jp/

門脇麦さん直筆サイン入りチェキを1名さまにプレゼント!

チワワちゃん

応募締切 2019年1月22日(火)23:59までのご応募分有効

【応募資格】
・Filmarksの会員で日本在住の方

【応募方法および当選者の発表】
・応募フォームに必要事項をご記入の上ご応募ください
・当選の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます

【あわせて読みたい】
映画『チワワちゃん』あらすじ・キャスト・原作情報【岡崎京子の傑作青春マンガが門脇麦主演で映画化】
繊細な演技から大胆シーンまで!若手実力派女優・門脇麦出演のおすすめ映画15本〈シーン画像有り〉
高杉真宙×加藤諒×渡辺大知 再会を心から喜ぶ“兄弟”たちが明かす『ギャングース』撮影の日々【インタビュー】

記事をシェア

公式アカウントをフォロー

  • RSS
  • みとょぱ
    4.0
    監督のキラキラした若者を描く描写が素晴らしい。視覚芸術とはまさにこのこと。チワワちゃん役の子がハマりすぎてて、、成田凌はクズ男が本当に似合います。玉城ティナちゃんひたすらに可愛い。
  • たえこ
    4.0
    チワワちゃん頭悪そうだけどカリスマ性があって魅力的。 いつもいつも愛を求めてる。 麦ちゃんが吉田くんにセックスされるんだけど、中折れして必死になってるシーンが生々しくて印象的
  • MK
    1.1
    漫画がオリジナルなんだ…未読。それも1996年か…ギャルとかがアイコンとして成立してた時期の作品とは。 私たちの青春は同時多発テロでした…原作どおりなら予言?笑 なんとも自分にはハマらなかった。原作はモロ世代なんだけど…オシャレ感はなかったけど、sunnyの方が当時の感性に忠実だった気がする。 …20年で何が変わったのかと言えば圧倒的な情報量。当時は金持ちのチャラけた大人がいたことも知らなかったし、自分たちに大してお金がないことや大した出自じゃないことを比べる相手なんてたかがしれてた。…フォロワーなんて使い捨てカメラで撮り切った写真に収まるくらいの人数で十分だったはずだし。 でも情報が不足していたからなのか、情報を貪って偏ったカルチャーというのか、ある塊に収まろうと必死だった気もする。 それが大人やメディアに煽られて化け物じみたものが、小ギャルなんてカルチャーで、ニュースでまで取り上げられるような刹那なブームになったのかもななんて。 その辺のズレのすり合わせが不十分?なせいか、自分にはなんとなく夏のルミネバーゲンのCMか春先のファッション専門学校のCMぐらいにしか見えなくて、セックスや酒はあっても、歴代の意味なしオシャレ映画にはあった、ドラッグやバイオレンス、ファッション、音楽、グループ内でのアイコンなんかは感じ取れなかった…歳のせい?時計仕掛けのオレンジとかさらば青春の光とかは当時カッコいいなって思ったし、今観てもカッコいいなと思うけど…小ギャル文化は当時も今もどうでもいいか。 そもそもそんなアイコンが存在するほど、今の情報社会は単純ではないんだろうな… そういうものが存在しないことを描いてたようにも思えたけど、それ自体にスポットを当てて、不在から何かが浮き出てくるならそれはそれで興味深いかもしれない。 地方から脈絡なく集まった若者が、作中全く披露されない映画撮影を通じてツルんで、酒飲んでセックスして、人が一人死んで振り返ったら薄口の人情話と貸した金の話ぐらいしか出てこないけど、酒飲んで夜を明かすくらいの感傷には浸れるっていう、人殺さなくても、街中でいかにもなファッションしてる若い子のグループに聞けば同じ話が聞けるんだろうなって、そこが興味深かったと言えばそうかもしれなかった。 あとは何事もなかったように時を経てリクルートスーツに身を包んだ元アイコン風就活男子の強姦中折れのくだり…あれは興味深かった。 渇き。の印象が強かったからかなぁ。あっちの方が色んな意味でスタイリッシュで面白かった…ヒロインの強烈さも含めて。
  • マンデリン
    4.3
    映像バチクソかっこいい上に人物描写が生々しくて最高
「チワワちゃん」
のレビュー(3978件)