【町田啓太、究極の対談】『ファースト・マン』デイミアン・チャゼル――原点に帰るフェイクドキュメンタリーと新たなる挑戦

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

日本でもロングランヒットとなった『ラ・ラ・ランド』で、2016年、アカデミー賞ほか多くの映画賞を席巻したデイミアン・チャゼル監督と主演ライアン・ゴズリングの黄金コンビが、2019年、またもやタッグを組んだ! 今回の舞台は、宇宙――。世界で初めて月面を歩いた男ニール・アームストロングの挑戦と、葛藤する内面、愛する家族との絆をダイナミックでありながら繊細に描いた映画『ファースト・マン』が2月8日(金)、日本公開を迎える。

ファースト・マン

昨年末、本作のプロモーションのため、デイミアン・チャゼル監督とライアン・ゴズリングが揃って来日。
そこでFILMAGAでは、兼ねてよりチャゼル愛を熱弁していた筋金入りの映画好き・町田啓太にインタビュアーとなってもらい、対談を敢行。

俳優だからこその着眼点が光る、作品の根幹に関わるディープな質問を重ねてもらった。町田の意欲に、普段はポーカーフェイスなチャゼル監督から笑顔が漏れ、互いに身を乗り出して話をしたアツい対談内容を、ノーカットでお届けしたい。

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『ファースト・マン』ライアン・ゴズリングが語るデイミアン・チャゼルとの絆、そしてイラッとする(笑)ところ【来日インタビュー】

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デイミアン・チャゼル

(監督・脚本家)

■プロフィール

1985年、アメリカ・プロビデンス生まれ。2009年の映画『Guy and Madeline on a Park Bench(原題)』で監督・脚本家デビュー。『セッション』(14)でアカデミー賞をはじめとする賞レースで注目を浴び、2016年の『ラ・ラ・ランド』にてアカデミー賞史上最多の14ノミネートを記録、史上最年少となる監督賞を受賞したほか、5部門で賞を獲得した。

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町田啓太

(俳優)

■プロフィール

1990年生まれ、群馬県出身。劇団EXILEメンバー。
主な出演作に大河ドラマ『西郷どん』『中学聖日記』『盗まれた顔 〜ミアタリ捜査班〜』、映画『OVER DRIVE』などがある。
今後の公開作に映画『PRINCE OF LEGEND』『L♡DK ひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。』が控えている。 

ひとつの家族が哀しみとどう向き合っていくのか

町田啓太(以下、町田) もう感激です。僕、めちゃくちゃファンなんです。

デイミアン・チャゼル監督(以下、チャゼル監督) Thank you、アリガトウ。お会いできてうれしいよ。

町田 こちらこそ、ありがとうございます! 早速ですが、『ファースト・マン』を観させていただきました。僕は大ファンなので、監督の過去作品も拝見しているんですが、毎回驚かされているんです。今回は「どんな体験をさせてもらえるんだろう!?」と思っていたら、なんと宇宙に連れて行ってもらえて……! すごく興奮しました。宇宙に行ったニール・アームストロングの伝記というより、彼の家族の話に焦点を当てていたことに驚いたんですが、なぜだったんですか?

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チャゼル監督 ニールについて調べていて、僕が一番面白いなと思ったのは、彼の家族の側面だったからなんだ。ニールの宇宙での活動についてはもちろん少しは知っていたけれど、宇宙飛行士になる寸前に子供を亡くしていることも、地上でどんな葛藤があったのかも全然知らなかった。原作(「ファーストマン ニール・アームストロングの人生」)を読んで、彼のことを知っていくうちに、ひとつの家族が哀しみとどう向き合っていくのか、という物語になっていったんだ。月面に行くことより、月に向かう道のりが、むしろ哀しみと向き合うということのメタファーになっていったんだよ。だから、この物語のすべては地上の生活、日常生活、家族から始まったわけだ。

町田 ニール・アームストロングの感情表現が抑えめな分、ニールを見守るジャネット夫人の気持ちが、ひしひしと伝わりました。

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家族になるまでのフェイクドキュメンタリー

町田 ライアン・ゴズリングさんは、撮影に使った家に、クランクインの前から何週間か住んだと伺いました。そのときにずっとカメラを回していて、その映像を本編でも使っているそうですね?

チャゼル監督 そうなんだ。フェイクの撮影みたいな感じではあったんだけどね。

町田 びっくりしました! 僕は日本で俳優をやっているのですが、そういった撮影をやったことがなかったので。そんな撮影があったら恵まれた環境だなと、すごく興奮すると思うんです。なぜそうしたリハーサルの手法を使ったんですか?

チャゼル監督 まず、役者たちをリアルな家族にするところから始めたいと思ったからだよ。歴史ものや時代ものの映画を観ていると、その時代に存在した人物を演じるということに、役者たちが縛られてしまっているように感じるときがあって、そうなるとリアルに生きている感じがしなくなってしまう気がして。『ファースト・マン』は時代ものだし、衣装も家も昔のものだけれど、脚本作りの前にリアルライフから始めたいと思ったんだ。

町田 そういう意図があったんですね。

チャゼル監督 それに、アドリブ的な方法はライアンが好むやり方でもあるんだよ。今まで全部そういうアプローチをライアンも取ってきているしね。あとは、今回のアームストロング家の子役たちは、ほとんど演技をしたことがなかったから、カメラに慣れてもらうため、という意図もあった。2週間の共同生活の中で、遊びながらカメラに慣れてもらって、即興してもらう。その時間は、カメラマンと僕自身がどういう作品のスタイルにするかを見極める時間でもあったから、実験できる2週間という感じだったかな。完パケに使う素材を撮れるかどうかはわからなかったけれど、もし使えれば使おう、という感じでカメラを回していたんだ。楽しかったよ。

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『ファースト・マン』は原点回帰

町田 例えば、家の中でジャネットが子供に「そっちを向いていなさい」と言って後ろを向かせるシーンがありますよね。あれはリハーサル映像ですか?

チャゼル監督 そうだよ! わかったかい?

町田 はい、めちゃくちゃ好きなシーンです!

チャゼル監督 わかるんだねぇ……! リハーサルでは、時々僕が思いつかないようなことが起きたりするんだ。家族という要素も重要だったけど、観客には、宇宙飛行士のホームムービーを観ているような、本当に息をしているリアルな家族がここにいると感じてもらわなければいけなかった。だからリハーサルはもちろん、撮影が始まってからも、大人と子供の間でアドリブ的なことをたくさんしたし、子供たちが普通に遊んでいるのを、ただカメラで追いかけたりもしたよ。僕自身も、本当にドキュメンタリーを撮っているかのような気持ちになることが多かったね。

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町田 ずっと手持ちカメラで、家族のことを追っていたりしていましたよね。それがすごく生々しくて、すごくドキュメント感を覚えました。最初からドキュメンタリー風に撮ろうと思っていたんですか? 次第にそうなっていったんですか?

チャゼル監督 視覚的なスタイルとして、ドキュメンタリー的なものにしようとは最初から決めていたんだけれど、映画作りとしてどこまでドキュメンタリー的方法を取るのかは、やりながら「これくらい取り入れよう」と考えていったよ。元々、僕はドキュメンタリーからスタートしているんだ。だから、学生時代に立ち戻るかのような感覚だったね。

町田 今回の映画は、原点に戻ったような感じもあるんですね?

チャゼル監督 まさにその通り!

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チャゼルが盛り込んだ「新しい挑戦」

町田 毎回、監督の作品には「挑戦」が盛り込まれているように思います。『ファースト・マン』での新しい挑戦は何でしたか?

チャゼル監督 技術的な部分かな。スタジオ内にコックピットのレプリカを作ったんだ。最初の数カ月はドキュメンタリー風に自由にどんどん撮っていったんだけど、スタジオ内での撮影が始まると、技術的に全部タイミングを合わせないといけなくて。例えば、LEDで外の風景をコックピットの窓から映したりするのは、ドキュメンタリー的な側面を持ち合わせながらも、スタジオの技術的な効果もすべて捉えないといけないのが、一番の挑戦だったよ。家の中を駆け回っているのだけを撮るほうが、よっぽど楽だった(苦笑)。

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町田 映画を観ていると、「本当に当時使っていたのかな」と思うくらいすごくリアリティがありました。コックピットの中もそうですし、生々しさがすごく伝わりました。

チャゼル監督 それはうれしいな。本当に運がよくて、今回素晴らしい美術さんにデザインしていただくことができたんだ。実はね、あのコックピットはすべて木で作られているんだよ。

町田 木! ええ……!?

チャゼル監督 もちろんペイントで木に見えないようにはしてあるわけだけれど。

町田 木にはまったく見えなかったです!

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チャゼル監督 最初、彼が型を作ってきたときに(しかめっ面で)「え!? 木なの? これ大丈夫!?」って思わず聞いちゃって。

町田 (笑)。

チャゼル監督 でも彼は「大丈夫です、監督」と言ってくれて。実際、本当に腕の立つ方で。監督ひとりで映画は作れないからね。コラボレーターたちのレベルが高くなければ、良いものは作れないよ。

二人の意外な共通点

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町田 チャゼル監督のパーソナルなところも少しお伺いしたいんですが、実は、僕の母親は教員なんです。監督のご両親も教員なんですよね?

チャゼル監督 おお、そうなんだね! 一緒だね!

町田 そうなんです! 僕は俳優をやると言ったときに、両親にすごく心配されました。監督は、映画の世界に飛び込むとき、両親と話し合いをされたり、何か言われたりしましたか?

チャゼル監督 僕は小さなときから、もう……ほかにやりたいことがなかったんだよ。両親もずっと心配はしていたと思うけど、時間が経つごとに慣れたんだろうね。でも「ロサンゼルスに引っ越す」と言ったときには、本当に心配していたよ(笑)。もちろん応援はしてくれたけどね。

町田 僕も同じです。今も心配しているかもしれないけれど、応援してくれています。

チャゼル監督 親って、必ず子供のことを心配するものだからね。

町田 だからか、僕は家族の物語を観るのがすごく好きなんです。『ファースト・マン』はまさに家族の絆を描いている作品でもあるので、本当に好きな映画です。

チャゼル監督 そういう風に感じていただくのが、この映画を作った理由のひとつでもあるから、受け止めてもらえてうれしいよ。ところで、ケイタは、グリーンバックの撮影経験はあるの?

町田 僕、1回もやったことがないんです。でもSFが大好きなので、「やりたい」といろいろなところに言ってはいます。僕も、監督の後を追いかけて頑張ります。今日は本当にありがとうございました!

チャゼル監督 お話できて光栄でした。こちらこそ、ありがとう!

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映画『ファースト・マン』は2月8日(金)より全国ロードショー。

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監督:デイミアン・チャゼル
配給:東宝東和
公式サイト:https://firstman.jp/
(C)Universal Pictures

【対談こぼれ話】

インタビューが決定してから、町田は自身の撮影で多忙を極めていたにも関わらず、本作を熱心に鑑賞し、資料も読みあげ、大量の質問案を用意するという、事前準備を怠らなかった。「俺がインタビュアーだと不安ですか?」と冗談半分、本気半分で尋ねていた彼だったが、主演ライアン・ゴズリングのインタビューにも同行し、ほかの記者に混じって「一緒に話を聞く」という姿勢は、本対談の士気を上げることにほかならなかった。

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いざ対談の段になると、言いよどむことも、緊張することも、オーバーリアクションになることもなく、実に的確に、たぎる熱意を持って、瞳を輝かせながらチャゼル監督の一言、一言を聞き逃すまいと励んでいた。終了後は、さすがにアドレナリンを出し切った様子で、恍惚のため息をひとつ、大きく漏らした。自らの口でチャゼル監督本人に意見交換できた喜びを噛みしめる。インタビュアーとしての才を発揮したとも取れたが、感想を聞けば、口をついて出た言葉は「もっと、もっと聞きたいことがあった……!」という相当に貪欲な姿勢。この経験を生かし、さて、次は誰に突撃するのか…第2弾も乞うご期待!(インタビュー=町田啓太、文=赤山恭子、撮影=林孝典)

デイアミアン・チャゼル監督×町田啓太さん直筆サイン入りチェキを1名さまにプレゼント!

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応募締切 2019年2月17日(日)23:59までのご応募分有効

【応募資格】
・Filmarksの会員で日本在住の方

【応募方法および当選者の発表】
・応募フォームに必要事項をご記入の上ご応募ください
・当選の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます

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  • 新田畳
    3.0
    この監督の映画にはどれも狭小な箱に閉じ込められてるような息苦しさがある。 ある種のフェチズムなのだろうか。 映画館で見なくてよかったな、と思った。 リアルさへの飽くなき追求ってよりも 「不快なものこそがリアルだ」という思想が監督の根底にあるのかもしれない。
  • nobuki2298
    2.7
    残念ながら、葛藤とか苦しさとか困難さとか伝わってこなかった。 もっと描いて欲しい部分はたくさんあったな。 ただ、宇宙飛行士やアームストロング船長は超人でも何でもなく人間だし、娘が大好き過ぎるのは痛いほど伝わってきた!
  • キャットトレイ二ング
    3.5
    ライアン・ゴズリングの虚無感、演技の深みが凄まじい…。様々な悲しみの中で果敢に宇宙に挑んだニール・アームストロングの感情が事細かに伝わる。轟音と静寂、粗々しい映像がリアル。デミアン・チャゼル監督は苦手だけどこれはよかった。原作と脚本が違う人だからかな。
  • Xiongmao
    3.0
    退屈な映画だった エンタメというよりドキュメント セッションもある意味淡々としてたけど狂気の有無が評価を分けた
  • za__wa
    3.7
    デイミアンチャゼルは音楽映画以外も撮れるとわかった。 教科書に載る偉人の偉業は、達成された内容しか知ることはないけど、見えない部分にどんな苦悩や苦労があるか知ることは重要。 19.08.18
「ファースト・マン」
のレビュー(16959件)