伝統か!自由か!女王陛下のスキャンダルを描いた英国王室映画4本

腐女子目線で映画をフィーチャーしてみる。

阿刀ゼルダ

このところ英国王室もの、それも女王を主人公にした映画の公開が続いています。

2月16日に公開されたヨルゴス・ランティモス監督の最新作『女王陛下のお気に入り』は、18世紀初頭にイギリスに君臨したアン女王とその側近たちの物語。

他にも、上映中の『ヴィクトリア女王 最期の秘密』、3月にはシアーシャ・ローナンマーゴット・ロビーが共演する『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』が公開を控えています。

女王陛下のお気に入り

「女王の時代に繁栄する」と言われるイギリス。今、EU離脱問題で先行き不透明な状況に置かれた中で、繁栄の象徴である女王の映画は、苦境に立たされたイギリスへの応援の意味もあるのかもしれません。

そして、英国王室と言えば、やはり歴代王族の華やかなスキャンダルにも興味を掻き立てられます。

そんなわけで今回は、最近のプチ英国女王ブームに便乗して、女王を扱った映画、女王を悩ませたスキャンダルを描いた映画計4本をピックアップしてみました。

幸福な結婚の象徴になった『ヴィクトリア女王 世紀の愛』(2009)

ヴィクトリア女王 至上の愛

女王と夫君アルバート公の愛と絆の物語

最初にご紹介するのは、若きヴィクトリア女王を主人公にした『ヴィクトリア女王 世紀の愛』。

1837年、18歳の若さで王位に就き、以後世を去るまでの64年近くの間大英帝国に君臨し続けたヴィクトリア女王。女王の治世は、イギリスが世界各地に植民地を拡大し、「日の沈まない国」として絶頂期を謳歌した時代でもあります。

この作品では、若き女王と夫君アルバート公との出会いから新婚時代に焦点を当て、アルバート公に支えられて国王としての試練を乗り越えていくヴィクトリアの姿を描いています。

女王役はエミリー・ブラント。相手役のルパート・フレンドの控えめな存在感は、「女王の夫」という難しい立場を見事にこなし、議会から史上初の「プリンス・コンソート(王配殿下)」の称号を贈られたアルバート公にハマリ役です。

(C)2008 GK Films, LLC All Rights Reserved

世界標準になったヴィクトリア女王の白のウエディング・ドレス

9人の子宝に恵まれた女王一家は、イギリスの中産階級の理想の家庭像に。自然、幸福な結婚に憧れる女性たちの注目を浴び、女王が流行の発信源になっていきます。

ウエディング・ドレスもそのひとつ。20歳の花嫁だった女王が選んだのは当時珍しかった白のドレスでしたが、これが流行に敏感な富裕層の子女たちの間で瞬く間に大流行。今ではすっかり婚礼衣装のスタンダードになりました。

婚礼の日、女王は、結婚式に何か青いもの(サムシング・ブルー)を身に付けると幸せになれるという言い伝えに従って、この白いドレスの胸にアルバート公から贈られたサファイアのブローチを付けたと言われています。

(C)2008 GK Films, LLC All Rights Reserved

ヴィクトリア女王の「秘密の再婚」? 隠し子存在説も

女王とアルバート公の幸せな家庭生活は、しかし、結婚から21年を経た1861年、アルバート公の突然の病死によって終止符を打たれます。

アルバート公亡き後10年もの間黒の喪服姿で過ごし、公式行事にも姿を見せなかったという女王。この一事をとっても、最愛の伴侶を失った女王の悲しみの深さが伺えます。

もっとも、1874年に首相となったディズレリーとは馬が合い、彼の帝国主義政策に共鳴して、女王は次第に活力を取り戻していきます。しばしばディズレリーに手ずから摘んだ桜草を贈ることもあったとのエピソードも伝えられ、2人は公私にわたり親密な間柄と見られていたようです。

しかし、女王を支えるもう一人の男性の存在が明らかになった時、周囲は一層驚きます。

彼の名はジョン・ブラウン。ブラウンはアルバート公が従僕として雇ったスコットランド人で、アルバート公亡き後も女王に仕えた人物です。

2人の親密さは当時から有名だったようですが、1979年になってAP通信が「ヴィクトリア女王は秘密結婚していた」と報じ、再び世界から注目を浴びます。

スコットランド美術館のマクドナルド館長の調査によれば、「朝4時にブラウンが女王の寝室から出て来るのを女官が目撃した」との記録や、女王とブラウンの結婚式に立ち会った聖職者が、死の床でそれを告白したテープも存在するとか。さらに、2人の間に生まれた男児がパリに隠れ住んでいたことの証拠まであるのだそうですが、果たして真偽のほどは?

ちなみに『Queen Victoria 至上の恋』(1997)には、まさにこのヴィクトリア女王とジョン・ブラウンの恋が描かれていますので、こちらもぜひチェックしてみてくださいね。

ヴィクトリア女王 至上の恋

エリザベス2世を悩ませた皇太子の離婚『クイーン』(2006)

クイーン

エリザベス女王の半生

エリザベス2世は、ヴィクトリア女王の玄孫(やしゃご)、つまり孫の孫にあたります。当初女王になることなど予想されていなかった彼女の運命が急変したのは、11歳の時。

王位にあった伯父のエドワード8世が、バツ2のアメリカ人女性ウォリス・シンプソンと結婚するために王位を捨てたいわゆる「王冠を賭けた恋」騒動で、父ジョージ6世が急遽即位することに。この時から、エリザベス王女は未来の女王として注目を浴びることになります。

王冠の重圧を背負った王女が生涯の伴侶として選んだエディンバラ公フィリップは、元ギリシャの王族ながら、王政廃止によって当時は一亡命者の身。フィリップの姉がナチスの元関係者に嫁いでいることや学歴などを理由に、この結婚には反対の声も強かったようですが、21歳の王女は自分の意思を通し、少女時代からの初恋を実らせます。

そして、27歳で即位。女王の公務をこなすかたわら、チャールズ現皇太子を含め三男一女の母として、そして今では孫・ひ孫に囲まれて女性としても充実した日々を送るエリザベス女王は、長年国民の高い支持を得てきました。

女王のダイアナ妃への複雑な思いを描く

伝統を重んじ、古風な女性でもある女王自身は、スキャンダルなどとは無縁。しかし、奔放な王族たちの巻き起こす騒動はつとに世間を騒がせ、女王を悩ませてきたようです。

中でも、タブロイド紙を賑わせたチャールズ皇太子と故ダイアナ妃の離婚とその後の皇太子の再婚騒動はその最たるものだったのではないでしょうか。映画『クイーン』はまさにその問題に踏み込んだ作品です。

1997年、チャールズ皇太子と離婚したダイアナ元妃が、当時「恋人」と噂されていたドディ・アルファイド氏とパリで交通事故に遭い、2人は直後に死亡します。

チャールズ皇太子の浮気が原因とは言え、王室と泥沼の暴露合戦を繰り広げたダイアナ元妃の死に対する王室の対応は冷ややかで、女王は当初、「皇太子と離婚したダイアナはすでに私人、国葬は行わないし、王室からの声明も出さない」という立場を取ります。その一方、ブレア首相(当時)は国葬を主張して国民の支持を取り付け、逆に女王には強い非難の眼が注がれます。

そんな中、ヘレン・ミレン演じる女王は、わだかまりを捨て、民意に寄り添うべく方針を転換。本作では、女王の頑固な一面も見せつつ、一方で政治感覚の鋭さやチャーミングで憎めない人柄も覗かせています。

女王が、少女時代から長年飼い続けていたことで知られるコーギー犬たちと過ごす、癒される一コマも。

ダイアナ元妃の最後の恋『ダイアナ』(2013) 

ダイアナ

1人の女性としてのダイアナ元妃を描く

映画『ダイアナ』は、チャールズ皇太子との離婚前後から亡くなる直前までのダイアナ元妃を、ダイアナの視点から描いた作品。ダイアナ役をナオミ・ワッツが演じています。

本作ではダイアナを、プリンセスというよりも、不幸な結婚に傷つき、真実の愛を探し求める1人の女性として捉え、パキスタン人医師ハスナット・カーンとの愛と破局までの顛末を中心に描いています。エジプトの億万長者の子息であるドディ・アルファイドとの熱いキス写真がスクープされた件に関する裏話も。

ダイアナ

王室の女性たちとサファイア

その後の悲劇を知ると複雑な気分ですが、かつてチャールズ皇太子とダイアナの結婚は「世紀の結婚」と騒がれ、世界中の注目を浴びました。

当時チャールズ皇太子がダイアナに贈った婚約指輪は、王室御用達の宝石商・ガラードのもの。皇太子はとりどりに並べられた品の中から、ダイアナに好みの指輪を選ばせたと言います。

ダイアナが選んだのは、12カラットの大きなサファイアの周りを14個のダイヤが囲んだデザインのリング。このデザインは、ヴィクトリア女王がウエディング・ドレスに付けたブローチをイメージしたものだそうです。その後ダイアナの形見となったこの指輪は、ウィリアム王子からキャサリン妃に婚約指輪として贈られ、話題になりました。

ちなみにヴィクトリア女王のサファイアのブローチは、エリザベス女王が受け継ぎ、最近も使用されているとか。英国王室の女性にとって、サファイアは特別なジュエリーなんですね。

ダイアナ

女王の妹・マーガレット王女のスキャンダル『バンク・ジョブ』(2008) 

バンク・ジョブ

「ウォーキートーキー強盗」の真相を暴く?

エリザベス女王を悩ませたのはチャールズ皇太子の離婚問題ばかりではありません。

バンク・ジョブ』の元になった実際の事件・通称「ウォーキートーキー強盗」も、本作で描かれていることが仮に真実だとしたら、女王を大いに悩ませたはずです。

「ウォーキートーキー強盗」事件とは、1971年、ロンドンのロイズ銀行に、隣接する建物から地下金庫に至るトンネルを掘るという大胆な手口で強盗が押し入り、貸金庫にあった金品が強奪された事件。

本作では「犯人から直接得た証言」をもとに、この事件の真の目的は、或る犯罪者が脅迫目的で貸金庫に保管していた王族の性的な写真の奪還にあり、犯行グループの背後でイギリスの情報機関であるMI5が糸を引いていたという驚くべき「真相」を暴いています。

問題の写真に写っていた王族とは、ほかならぬエリザベス女王の妹のマーガレット王女。

本作によれば、この件が世間に知られなかったのは、政府が歴史上数回しか発したことのない「D通告・国防機密報道禁止令」(D-Notice)を発令し、事件に関する報道を封じたためだとか。

正式な報道もない以上真偽は藪の中ですが、作中ではっきりとマーガレット王女の名前を出しているほどですから、全く根拠のない話とも思えません。

バンク・ジョブ

犯行グループ役にジェイソン・ステイサムサフロン・バロウズなど。

美貌の王女の傷心と放蕩生活

マーガレット王女は、『ローマの休日』でオードリー・ヘップバーンが演じたアン王女のモデルと言われる美貌の王女。若い頃から富豪や名門出身の華やかな男性に囲まれてきましたが、彼女が結婚相手に選んだのは16歳年上で侍従武官のタウンゼント大佐でした。

しかしこの結婚は、大佐に離婚歴があったために猛反対にあい、破談になってしまいます。

その後、写真家の男性と結婚したものの、夫は浮気の常習犯。浮気に浮気で応酬するうちに夫婦生活は破綻し、丁度ウォーキートーキー強盗事件をはさむ60年代後半から70年代前半にかけては、上流階級や大富豪などとのパーティー三昧の生活を送り、ゴシップ紙の常連に。

離婚後は、数々の著名人とも浮名を流し、『バンク・ジョブ』にカメオ出演しているミック・ジャガーもお相手の1人に数えられています。つまり、ミックの出演には、実にスパイシーな意味が秘められているというわけです。

伝統の重みと奔放さ・柔軟さを兼ね備えた英国王室の魅力

ヴィクトリア女王 世紀の愛

英国女王をめぐる4本の映画+王族トリビア、いかがでしたか?

在位中の女王やその家族が映画に取り上げられるのも、英国王室ならでは。これも、世界からの注目度の高さの証明と言えそうです。

最近はチャールズ皇太子がバツイチのカミラ妃と再婚したのを皮切りに、ハリー王子も、離婚歴がありかつ(実質)初の黒人プリンセスとなるメーガン・マークルとゴールイン。さらに、マウントバッテン卿の王族初の同性婚も……伝統に縛られない結婚でも、英国王室は世界の注目を集めています。

また、2013年の王位継承法改正では、王のカトリック教徒との結婚を認めないとの条項をついに廃止。こうした変化は、時代の流れへの順応というだけでなく、伝統や慣習へのこだわりがマーガレット王女の悲恋やダイアナの悲劇を生んだ、という反省が込められているのかもしれません。

輝かしい伝統と、奔放さ・柔軟性とを兼ね備えた英国王室。明も暗も華やかなドラマになる王族たちの物語を、この機会にたっぷりと味わってみてください。

参考文献:「女王とプリンセスの英国王室史」(林信吾/ベスト新書)・「英国王室愛欲史話」(森下賢一/徳間書店)・「英国王と愛人たち-英国王室史夜話」(森護/河出書房新社)・「イギリス王室 愛と裏切りの真実」(渡辺みどり/主婦と生活社)

(C)2008 GK Films, LLC All Rights Reserved、(C)2013 Caught in Flight Films Limited. All RIghts Reserved/(C)Laurie Sparham

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