芸術の秋、読書の秋、食欲の秋、そしてスポーツの秋!とはいえ、社会人になると余程前向きにスポーツをしよう!っと立ち向かわない限り、なかなか重くなった腰は上がりません。
そもそも、学生時代から前向きにスポーツに取り組んでいなかった人だって多いだろうし、部活動でスポーツに向き合っていても「屈辱的な思い出」にしかなっておらず、だからこそスポーツと向き合う気になれない人も少なからずいると思います。
そんな人にこそオススメするのが「負け犬スポーツ映画」です。
今回はそんな負け犬スポーツ映画を、"負け犬ポイント"を踏まえて紹介してきましょう。
『ロッキー3』
超有名シリーズ3作目は、負け犬スポーツ映画の教科書の様な作りになっています。
ついにチャンピオンになったロッキー。次々と対戦相手を倒して有頂天ですが、トレーナーのミッキーに「勝てる相手」を選んで試合を組んでいたことが明かされます。そんな中、「勝ち目が無い」と避けていたランキング1位の強敵クラバー・ラングと対戦し、アッという間にリングに沈められてしまいます。
ハングリー精神を失ったことをラングに指摘されたロッキーは、再戦に向けてトレーニングを始めるのです。
●負け犬ポイント:傲慢からどん底、そして再起
チャンピオンである驕りと怠惰、そこからの敗北と失墜、再起をかけての臥薪嘗胆の屈辱的な特訓の後、最後の対戦へ挑みます。そんな鉄板の展開は、観賞者の血液を沸騰させる効果があるのです。エイドリアァァン!!!
『アタック・ナンバー・ハーフ』
練習試合では百戦錬磨で向かうところ敵無しなジュンとモンだが、オカマというだけで公式試合には出してもらえず仕舞い。しかし、新しく着任した女性監督はオナベ!見た目に拘らず実力で判断してくれる監督ですが、多くの選手たちは他のチームへ流れてしまいます。
そこで、残されたメンバーたちは仲間のオカマを集めた前代未聞のチーム“サトリーレック(鋼鉄の淑女)”を結成するのです。
●負け犬ポイント:差別との戦い
謂れの無い差別で協会や街の人々にまで疎まれる彼/彼女らが、試合を勝ち進むことで尊厳を取り戻し、人々の支持を得ていきます。しかも、実話ベースで作られており、エンドクレジットでは実際のメンバーたちが登場します。差別に耐えてよくがんばった! 感動した! どんだけー!
『リプレイスメント』
高額な契約金の、さらに上限を無くせという高慢な要求のため、リーグ優勝も見えてきたチーム選手がストライキに突入します。オーナーは往年の名監督に代理選手を集めさせ、即席チームで優勝を目指すのです。
●負け犬ポイント:異能の技
足だけは早い男、キックの上手いサッカー選手、果ては相撲取りと、そもそもアメフト選手では無い連中までかき集められたバラバラなチームが結束し、それぞれ異能の技を発揮して試合を勝ち進んでいく様子に、心が轟々と燃えます!
『ロンゲスト・ヤード』
八百長疑惑でNFLを追放されたポールが飲酒運転とパトカー破壊で懲役3年の実刑を受け刑務所に収監されます。
その刑務所の看守たちはアメフトリームを結成しており、ポールは所長から看守チームの練習相手になる「かませ犬」囚人チーム結成を命令されるのです。
●負け犬ポイント:裏切りの代償
八百長をしたと思われているポールは、条件次第で裏切るのもやぶさかでないと、敵からも味方からも思われています。口でいくら言い訳しても、実力で負けたとしても、八百長野郎のそしりは免れません。いかに相手が強くても、不利な条件が揃っていても、打ち負かすことでしか証明できない、四面楚歌なピンチに自然と拳に力が入ります!
『俺たちダンクシューター』
バスケットボールリーグNBAに対抗して作られた組織ABAに所属するチーム「フリント・トロピックス」は、監督兼選手兼オーナーが試合前に歌謡ショーやりたいがために作られた、万年最下位チームです。しかし、ABAの経営難からNBAへの吸収合併が決まり、その際に下位チームは強制的に解散させられることが決定します。
●負け犬ポイント:仲間との友情
動機が不純で試合へのやる気はそれほど無いけど居心地の良い場所を失いたくないという想いには切実さがあります。また、常識はずれな連中だけに生み出してしまうスーパープレイが胸熱です!
負け犬スポーツ映画最新作にして大爆笑の集大成!『全力スマッシュ』
昨日(2015年10月10日)より傑作負け犬スポーツ映画『全力スマッシュ』(公式サイトはコチラ)が公開されます。
かつて、試合中に暴力事件を起こし永久追放された元女子バドミントン選手サウは、兄の食堂を手伝いながら食べては寝てを繰り返しの自堕落な生活を送っています。そんな日々に絶望し、自殺まで考えた出前の帰り、バドミントンのシャトルの形をした隕石を目撃します。
そんな折、バドミントン選手を目指す刑期を終えたばかりの元強盗団に出会います。片腕が義手のラム、弱視のマー、補聴器無しでは何も聞こえないリーダー格のラウ、獄中で彼らにバドミントンを指南した師匠で酔っぱらいのクンクワン。
障碍がある上にバドミントンの基礎もなっていない3人と、酔いから覚める気配も無い師匠を見るに見かねて、サウは彼らをコーチをすると同時に、自身も選手としてのカムバックを目指すのです。
負け犬映画の集大成!
本作には上記した5本の「負け犬スポーツ映画」の特性を全て備えていることが解ります。
『ロッキー3』と同様に、主人公サウは頂点からどん底へ突き落とされています。
3人の元強盗団は『アタック・ナンバー・ハーフ』の面々のように、刑期を終えていても差別を受け、『リプレイスメント』のメンバーたちのように、一長一短ではありますが、異能の技を持っています。
しかし、強盗団だった頃の悪い仲間と完全に手を切れていないメンバーは『ロンゲスト・ヤード』ポールのように、疑惑をかけられてしまいます。
そんな彼らですが、『俺たちダンクシューター』のように熱く固い友情で、困難を突破しようと奮闘するのです。
そんな激烈に熱い情景が、なぜか大爆笑を誘う描写で描かれます。
熱く、熱く、大爆笑!
『全力スマッシュ』は負け犬スポーツ映画の熱いツボを網羅して押さえておきながら、ベッタベタなコメディ演出がされています。唐突に登場する狂人や、素人のおばちゃんを引っ張り出したスカしギャグ、長過ぎる義手に瓶底のようなメガネの小道具ギャグなどなど、常に観客をくすぐり続けます。
そんな中でも、常に酩酊状態のクンクワン師匠はフレームの内側にいる間、延々とオモシロい状態をキープするという離れ業を見せます。特に終盤、試合中に時間稼ぎをしなければならない場面で、師匠は延々とムダで突拍子も無いことダケを矢継ぎ早にやり倒し、観賞者を爆笑の呼吸困難に陥らせるような活躍を見せるのです。
『全力スマッシュ』は負け犬スポーツ映画の熱さと、爆笑コメディの楽しさを兼ね備えた「スーパー・負け犬スポーツ・コメディ映画」と言うベキ必見の傑作になっているのです。