モノクロとカラーの組み合わせにドキリ。不思議な気分になるパートカラー映画10本

映画マニアと呼ばないで

夏りょうこ

「3月21日」は映画界にとって大きな意味を持つ記念日でもあることをご存じだろうか。

1951年3月21日、日本初のカラー映画『カルメン故郷に帰る』が公開された。戦後の開放的で自由な雰囲気に文字通り彩られたこの作品は、人気女優だった高峰秀子がストリッパー役でセミヌードになるという衝撃作。ちなみに当時は、カラーではなく総天然色と呼ばれていた。

そして、国産カラー映画の誕生を記念して制定されたのが、3月21日の「カラー映画の日」。映画ファンならちょっと知っておきたい記念日だろう。

今では当たり前になったカラー映画だが、メッセージ性のある作品の中には、あえてモノクロ映画の一部に色をつけた「パートカラー」と呼ばれる作品も少なくない。

そこで今回は、モノクロとカラー映像の両方を楽しめるパートカラー映画10本をご紹介しよう。

天国と地獄』(1963)

目に焼きつく色

天国と地獄

ある会社の常務のところへ「息子を誘拐した」という電話が入るが、犯人は間違えて運転手の息子を誘拐していたことがわかる。

黒澤明監督が誘拐罪に対する刑罰の軽さへの憤りを盛り込み、この作品がのち刑法一部改正のきっかけになったといわれる代表作。証拠をコツコツ集め、壁にぶつかりながら粘り強く推理を重ねていく緻密な捜査に手に汗握り、身代金の受け渡しなど犯人との頭脳戦にドキドキする。

インターネットやスマホのない時代。汗をかきかき、ひたすら足で捜査をする刑事たちの姿に惚れ惚れしてしまう。ここぞという時に登場するパートカラーが効果抜群すぎて、観ている方もテンションMAXだ。名優山崎努の映画デビュー作であり、要の役として短い出演シーンながらも強烈なインパクトを残す。

ワンダーストラック』(2017)

独りぼっちじゃない

ワンダーストラック

50年もの隔たりのある2つの時代を舞台に、自分の大切なものを探している少年と少女の旅を描く。

1977年、父親を捜すためにミネソタからニューヨークへやってきた少年。1927年、憧れの女優に会うためにニュージャージーからニューヨークにやってきた少女。この家出同然で同じ街にやってきた二人の想いが時間を超えて絡み合い、巡り巡って結びついていくという何とも独創的な物語だ。

この手のストーリーは、時間が行ったり来たりするのでわかりにくくなってしまうものだが、この作品では少女の話を白黒サイレントで、少年の話を音声のあるカラーで描くことにより、二人の異なる世界を明確に区別。実は彼女は聴覚障害者なので、演出的にも静かなモノクロが似合う。本当にこんな奇跡があればと願いたくなる映画。

ベルリン・天使の詩』(1987)

これが天使?

ベルリン

人間に寄り添いながら長い歴史を見守ってきた守護天使が、永遠の命を捨てて人間になりたいと願うようになる。

ベルリンに天使の意匠が多いことに気づいた監督が、画家パウル・クレーの天使の絵のイメージと重ね合わせて作った映画。10年ぶりに故郷で撮った傑作と評され、日本でもロングランヒットを記録して社会現象になった。ハリウッド版リメイク『シティ・オブ・エンジェル』(98)と続編『時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!』(93)あり。

像の上から街を見降ろす天使の耳に、下界のざわめきが聞こえてくる印象的なオープニング。黒くて長いコートを着た天使たちが、人々の様子をじっと眺めたりのぞき込んだり。なぜその天使は人間になろうとするのか。サーカスの空中ブランコ乗りの女性に出会ったことで、彼の世界はまさに変わる。

カラー・オブ・ハート』(1998)

モノクロv.s.カラー

パート

オタク息子と奔放な娘という対照的な2人が、不思議なリモコンによってTVの白黒ドラマに入り込んでしまう。

トビー・マグワイアとリース・ウィザースプーンが双子とは。「モノクロは単調で保守的で退屈」という価値観を前提にした物語で、モノクロ世界の住人たちが少しずつ鮮やかな色彩に染まっていく様子がみどころだ。パートカラーとモノクロの対比が面白く、人間社会には多様性が必要だというメッセージがわかりやすい。

一変通りゆえに健全で平和だった彼らの世界が、その言葉通りいろいろな価値観で塗りなおされていくのだから、ふたつの世界は対立するようになる。味気のない彼らの人生に彩りを添える神様のような役目として、夢見る瞳のトビー・マグワイアがイケイケのリース・ウィザースプーンに振り回される形で活躍。

婚約者の友人』(2016)

あなたは誰?

婚約者

第一次世界大戦後のドイツを舞台に、婚約者が戦死した女性と、彼の友人を名乗る男性との交流を描く。

婚約者の墓前で号泣していた彼。その様子にただならぬものを感じた彼女は、婚約者の両親も交えて親しくつきあうようになる。出征後の婚約者を知る者であり、愛する人を失くした悲しみを共有できる彼は、彼女にとって大切な存在。しかも魅力的なものだから、いつしか友情以上の感情が芽生えてくるのも仕方なし。

奥ゆかしい彼女は多くを語らないが、ちょっとした目の動きや結んだ唇に秘められた情熱あり。彼と婚約者の間に一体何があったのか。その秘密が明らかになった時、彼女が取った行動がなかなかのものである。彼との出会いによって、いい意味で本性が目覚めていく感じ。どうしようもできない切なさが、しみじみと心に広がる。

シンドラーのリスト』(1993)

沸き起こる怒りと良心

シンドラー

第二次世界大戦下、ユダヤ人への差別が激化するドイツ占領地ポーランドに、ナチスの党員である実業家シンドラーがやってくる。

多くのユダヤ人を救った正義の人というイメージのあるシンドラーだが、最初の頃は戦争を利用してひと儲けしようと思っていただけ。有能なユダヤ人会計士を半ば強制的に雇い、ほうろう容器工場の経営を始めて成功を収める。また、プレイボーイで女性関係にだらしないという一面もあったようで、ちょっと意外な気がする。

そんな彼がホロコーストに追いやられるユダヤ人たちを目の当たりにし、良心に目覚めていくのだが、声高に異を唱えるのではなく、権力側にうまく取り入りながら戦略的に事を進めていって大正解。映画ではモノクロとカラーのパートを分けることで、この出来事は現代につながっているのだと教えてくれる。モデルとなった実在の人物たちが登場するラストは、胸が詰まる。

ピンクとグレー』(2016)

世界は何色?

ピンク

ある有名俳優が人気絶頂期に自殺したことにより、その謎をめぐって彼の古い友人に注目が集まる。

二人は高校時代からの親友で、励ましあいながら共にスター俳優を目指す仲間でもあった。しかし、片方が先に売れるようになったことから、彼らの関係は次第に屈折していき、売れない方は焦りや嫉妬で苦しむようになる。菅田将暉と中島裕翔が葛藤に揺れ動く若者を演じ、存在感は互角。それが後半に生きてくる。

彼らが抱いていた夢と友情が甘酸っぱく、その後の光と影が残酷に描かれるだけに胸が痛んでいたところへ、足元をすくわれるように急展開するストーリーに唖然。自殺の理由に焦点が当てられていく中で、タイトルの意味がぼんやりわかってくる。三角関係になる女性も登場するものの、これは男同士の物語。

マジシャンズ』(2005)

幻想的な夜

マジシャンズ

大みそかの夜、森の奥にある小屋風カフェ「マジシャンズ」で2人の男が酒を酌み交わしていた。

95分ワンカットで撮影した臨場感あふれる作品。彼らは以前、バンド「マジシャンズ」を結成していたが、メンバーの女性が自殺し解散。実はその日は、彼女の命日だった。謎めいた背景とサーカス小屋にいるかのような浮遊感。

モノクロだったりカラーだったり。そのぼんやりとした幻想的な色彩が現実と過去の境界線をあいまいにし、限られた空間で展開していく舞台劇のような緊張感。二人が待っている人物は、本当にやって来るのか。それぞれの視点で過去に向き合いながら、彼らは酔っぱらう。サーカスにいるような不思議な気分になる作品。

シン・シティ』(2005)

これぞ実写化

シン・シティ

シン・シティに住む主人公が美女と一夜を共にして目覚めてみると、彼女は死んでいた。

絶大な人気を誇るアメコミを原作とした超刺激的なエンターテインメント。モノクロ映像を基調にしつつ、たまに血や口紅や瞳などのパーツのみがカラーで映し出される斬新さときたら。コミックの構図を忠実に再現した映像にも度肝を抜かれ、その見事なマニアックぶりにワクワクしてしまう。

かつては色男俳優として一世を風靡したが、その後すっかり落ちぶれてしまったミッキー・ロークを戦車みたいなキャラクターで復活させ、ベニチオ・デル・トロの悪徳ぶりが過激すぎて漫画チック。純愛と凶暴が入り乱れるこの仁義なき世界に、どこまで身を任せられるかが勝負だ。

鬼が来た!』(2000)

誰が鬼なのか

鬼

1945年、中国の貧しい村に住む主人公の家に謎の男が現れ、2つの麻袋を無理やり置いていく。

その袋の中には日本兵と通訳の中国人が入っていたものだから、さあ大変。もし日本軍に見つかれば、村人たちは皆殺しである。そこで彼は仕方なく、二人を約束の日まで匿うことにする。いろいろな思惑が渦巻く中で、葛藤に悩みながらも人道的に世話をする彼。そんな彼と日本兵の間に、奇妙な心の交流が生まれる。

日本人でいることが嫌になってしまいそうな話だが、中国人の視点に立って感じるところが大きい衝撃作。限られた空間で極限状態が続くが、状況が悪化しないように通訳がわざと違う内容を伝えるシーンが可笑しく、緊張感とユーモアのバランスがうまい。トラウマになりそうなラストに頭をガツン。

男と女』(1966)

愛は波のように

男と女

夫を事故で亡くした女性と妻を自殺で失くした男性が出会い、惹かれ合いながらも迷い、新しい恋愛に踏み出せない男と女を描く。

主題曲があまりにも有名な恋愛映画の傑作。会った瞬間に激しい恋に落ち、すぐにイチャイチャ状態になるのがフランス人だと思っているそこのあなた。こんな風に奥深しく回り道をする男と女もいるのである。死んだ夫への想いと、新しい恋人への愛。美しき未亡人の心がしっとり揺れる。

駆け引きを楽しんでいるわけでもなく、軽い気持ちで一緒にいるわけでもない。それは、本当の意味で大人の恋愛だ。お互いに子供がいるというのも、ね。しかし、いつの世も女がよろめき、男が追いかける。それが男と女の本来の姿なのだと改めて感じ入る作品。

いかがでしたか?

最初の頃は「こんなことができるのか!」と、その技術力に感動したパートカラー。ストーリーのどの部分にどんな色をつけるのか。その色付けにはどんな意味があるのか。監督のこだわりとメッセージを読み解くカギになるのが、パートカラーの魅力であろう。

しかしパートカラーといっても、物語の構成ではっきりと区別されているものから、ごく部分的に色彩が施されているものまであり、実際に鑑賞して初めてそれを知る驚きと喜びがあるのが楽しい。

モノクロとカラーの組み合わせにドキリとするパートカラー映画。今後の公開作品も要チェックだ。

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