『多十郎殉愛記』巨匠・中島貞夫20年ぶりの新作に挑んだ高良健吾×木村了、「運が良すぎる」夢のような時間を振り返って【インタビュー】

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

『木枯し紋次郎』、『新・極道の妻たち』など記憶に残る数々の映画を撮り上げ、昭和の映画界を代表する巨匠・中島貞夫監督が、20年ぶりに新作『多十郎殉愛記』を手掛けた。主演には、「若手」と呼ぶのをためらうほどの気品と風格を漂わせる高良健吾が務め、すさまじい殺陣に男の情念を込めた。ヒロインには多部未華子、さらに高良演じる多十郎の腹違いの弟として、木村了が参加している。

多十郎殉愛記

多十郎殉愛記』は幕末の京都を舞台に、長州を脱藩し、居酒屋「満つや」を切り盛りするおとよ(多部)の用心棒をする清川多十郎(高良)の物語。新撰組に押され気味の京都見廻組は、町方からの注進で多十郎の存在を知り、新撰組にひと泡ふかせようと多十郎を襲撃、死闘が繰り広げられる。

「殺陣の魅力を存分に知ってもらうこと」がコンセプトのちゃんばら映画ということもあり、高良と木村は1カ月半前から京都・太秦で立ち回りなどの稽古を懸命に重ねた。彼らにとって思い出の地でもある京都で昨年行われた「京都国際映画祭2018」にてインタビューを敢行、ふたりの口から幾度となくあふれ出たのは中島監督への愛と感謝、ユーモアの言葉だった。

多十郎殉愛記

――中島監督からお声がけされたときは、どのような気持ちでしたか?

高良 中島監督の現場を踏めること自体が幸せだし、もう運が良すぎるな、と。経験したくてもできるわけじゃないですし。しかも中島監督世代の人たちじゃない、僕たちと組んでくれることが、もう嬉しかったですね。

木村 僕にとっても、本当に夢のような時間でした。中島監督に演出をしていただけることも、その現場にいることも、同じ時間軸を過ごすことも、すごく濃い時間を過ごさせていただきました。毎日勉強させてもらいましたし、1日1日成長していく感じがあったというか……むしろ成長しないと追いつかないんです。作品の世界にどんどん入っていく感覚が、自分の中にはあって、それが成長と言うのかどうなのかはわからないですけど。

高良 うん、うん。

木村 その役を用意して演じるというよりは、本当にその世界に身を投じていく感じなんです。その場、その場の空気や相手の呼吸を感じたりして。

多十郎殉愛記

高良 何というか、本当に現場が育ててくれる感じだよね。教えてくれるのは大きいですね、やっぱり。時代劇をたくさんしている方たちですから、時代劇のプロだもんね。

木村 うん。

――京都の太秦で稽古や撮影できたことも、いい経験でしたか?

高良 やっぱりここで練習できたのが、大きかったかなと思うんですよね。東京ではなくて、通って稽古して、本番前にはがっつり稽古をするっていう時間はすごく大切だったし、必要だったと思います。大体1日5~6時間して、トータルで1カ月半ぐらい通ったのかな? 毎日ではないですけど。京都剣会の方たちに習うこと、東映の殺陣を覚えられることが大きかった気がします。

多十郎殉愛記

――多くの現場を踏まれているおふたりでも、特別な印象を持たれるような作品だったんですね。

高良 僕は、ひとつ、ひとつでしかないと思うんです。その中でも、中島監督の現場だっていう、……比べるわけではなく、それでもやっぱり経験したことのない感情を味わえた、すごい現場でした。

多十郎殉愛記

――いろいろエピソードもあると思うんですが……すごくニコニコされている高良さん、ぜひ教えてください。

高良 いえいえ(笑)。本当に中島監督がキュートな方で、(木村さんに向けて)名前、間違われてなかった? ちゃんと呼ばれてた? 俺、3人ぐらいいたんだけど(笑)。

木村 「ん?」っていうのは、1回あった(笑)。たぶんね、俺のこと「高良ちゃん」って呼んでたとき、あったよ。

高良 (笑)。

木村 「高良ちゃん、高良ちゃん」って言うから、(俺じゃないよな……)と思って見たら、俺に言っていたり、というのがあって(笑)。

多十郎殉愛記

――名前の呼び間違いがあったんですか、ほっこりしますね。高良さんだと思って呼ばれていた名前が3人もいたんですか?

高良 たぶん……(笑)。その方たちは、中島監督とご一緒されていた本当に大先輩で、その方の名前に間違われるなんて、逆にありがとうございます、という思いだったんですが。

木村 すごいね!

高良 でも、それは……僕が当時の話を「この人どうだったんですか?」とか、たくさん聞いていたからだとも思うんです。間違えてくれたからこそ、僕もまたもう1回、その方について調べてみようと思って、調べたり、もう1回学び直しをさせてもらえました。

多十郎殉愛記

――演出のお話などもたくさんあったと思うんですが、そのあたりは?

高良 僕が走って逃げるシーン、あるじゃないですか。そこでは、中島監督に「高良ちゃん、ここで“あっかんべー”して、1回止まって」と言われたんですね。台本には書いていなかったんですよ。あれは、しびれましたね。「していいんだ……!」と思いましたし。しかも僕、あっかんべー、ってしたことない気がするんですよね。

木村 そうだね。ないね!

――かなりインパクトがあるシーンでした。

高良 インパクト、ありますよね。だから、あのシーンであっかんべーを作る監督、「すごい」と思ったんです。「この時代に、あっかんべーなのか」という頭がどうしてもあるから、自分からは絶対出ないんです。

木村 すごいなあ……。そういうト書き通りじゃないところ、いっぱいあったよね。

高良 うん、変わっていくしね。

多十郎殉愛記

木村 僕が衝撃だったのが、「その心情、撮れているから、ここもういらない」と言われた時かな。やっぱり、すごく見てくださっているからこそ、「このト書きは説明になっちゃう。いらない、こんなの」と、現場で本当に変わっていったんです。……あと、これは関係ないかもしれないんですけど、僕が多部さんとふたりで山道を逃げるシーンが結構けもの道だったんですね。かなり足元が悪くて、僕らでも歩くのに苦労する中、スタッフさんたちのほうを見たら監督がいないんですよ。「あれっ?」と思ったら、誰よりも早く登っていっていて(笑)。実際の年齢(※84歳)とは……。

高良 違う!

木村 サバ読んでるんじゃないかな、っていうぐらい(笑)。本当に、杖もいらないんじゃないかと思うぐらい、ササササっと登っていかれた姿は鮮明に覚えています。

多十郎殉愛記

――ちなみに、おふたりは完成作をご覧になりましたか?

木村 僕は、これからなんです。話をしていてもすごい楽しみで。高良くん、観たんでしょう? どうだった?

高良 観ました。シンプルさとクラシックさをすごく感じて……中島監督は元々、たくさん人を斬るとか、スピードをはなからこの映画に「いらない」としていて。そうじゃなくて、なぜ刀を抜くかとか、なぜここで斬るかとか、なぜここで闘うのか、ひとつひとつに監督は意図を持って、そこに精神をちゃんと持ってほしいとやっていたから、それがこの映画の良さというか、面白さなのかなと思いました。

「刀一振り一振り、本当は刀もすごく重いんだ。だから、あんなに振り回して人を斬れるわけがない。この一太刀一太刀に思いを込めたい」とおっしゃっていたんですよね。だから、殺陣とかアクションのもっと奥にある精神性。武士として、侍として、というのが、浪人だけど、すごく描かれている映画だなと思いました。だから、安心して観られた映画でしたね。

――本作で初共演となりました。お互い、共演前後のイメージなども教えてもらえますか?

木村 僕は高良くんって、天才肌というか……何て言ったらいいんだろう。芥川さんみたいな印象で……。

高良 陰と陽で言えば、陰っていうことだよね(笑)?

木村 陰(笑)。だけど、芥川さんみたいな天才肌っぽい人っていうか。さらに、読書家という情報を聞いていたので、それも相まって芥川さんっぽいイメージがありました。

多十郎殉愛記

木村 あとは僕、高良くんの舞台を1回観に行ったことがあるんです。そのときに、「ちゃんとそこにいることができる人」だと思いました。生でのお芝居は、当たり前ですけど、みんな演じようとするんだけど、高良くんに関しては、立っているだけでその役になっているんですよね。ストンと落ちるなと思ったので、そのイメージでした。

多十郎殉愛記

高良 僕は、木村くんのことを、おそらく10代のときから観ていました。最初の印象は、「この子、やんちゃだな」って。

木村 (笑)。

高良 でも実際、今回やってみて思ったのは、すごく心が広くて優しい人だと思いました。そこを僕、すごく尊敬しているんです。……ここで言うべきかはわからないですけど、やっぱり木村くんに守るものがあることが、絶対的にその人柄になっていて、画面にも映っていると思ったんです。守るものがある人の、画面に出たときの強さというか、大きさはあるんだな、と。それは、僕にはないから。守るものができた人たちの強さを知っているのは、やっぱりすごいなと思いました。

――高良さんの言葉を借りれば、木村さんはかつて「やんちゃ」だったそうですが、それについて最後に一言。

木村 やんちゃ……というか、バカだったのかな(笑)。

高良 (笑)。元気、とか。

木村 元気な子ではありましたよね。

高良 いいじゃないですか。元気な人が少なくなっていって、叩かれている時代になっているから。元気で許されていた時代に生きていてよかったね!

木村 よかった、本当に(笑)。(取材・文=赤山恭子、撮影=岩間辰徳)

映画『多十郎殉愛記』は、全国公開中。

多十郎殉愛記

監督:中島貞夫
配給:東映、よしもとクリエイティブ・エージェンシー
公式サイト:http://tajurou.official-movie.com/
(C)「多十郎殉愛記」製作委員会

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    3.7
    2019-087-066-021 2019.5.1 チネチッタ Scr.7 ・どうしたいのかな? ・多部ちゃん、高良健吾 ・純愛記 高良健吾だし多部ちゃんだし、 なんか普通に観よっかな♪ なんてゆる~く観るつもりだった本作。 やっと観られてよかった~♪┐(´∀`)┌ って理由は涙を飲んで「追記。」で(^_^)(笑) さて本作。 う~ん・・・ なんか作品としてはどっちつかず感を感じてしまいました。 必殺シリーズ寄りのリアル系の雰囲気かな?って思ってたら、黒沢明監督エンタメ時代劇的な音楽が流れたり。 ドラマがいい感じだなって思ってたら、 あ、そうなるんだ? みたいな・・・ どうしたいのかな?って感じちゃいました。 多分。 ステレオタイプに チャンバラ~ヾ(≧∀≦*)ノ〃 フワッホー♪(* ̄∇ ̄)ノ♪ って楽しむ作品なのかな?(^_^) ただもっと面白いチャンバラは観たことあるきがする。 まぁ、言うほどチャンバラ分かってないんですがf(^_^; 面白かったんですけどね? だからこそ余計に気になっちゃいました。 多部ちゃん。 こういう役をやるお年頃になったんだぁ としみじみ(^_^) 好演でした。 高良健吾。 良かったけど、彼に対する期待水準はもっと高いです(^_^) やっぱあれかな。 こうして書きながら思うに 俺は「純愛記」の部分が不充分に感じてるのではないかなぁ。 総体的に楽しめましたが、 もう少し面白くできたんじないかなって想いも少し残りました。 追記。 ・山本千尋さん出てたんだ? あのお寺の女の子か?(゚д゚) ・長崎で、4月13日に猫とじいちゃんを観たとき、 本作プラス天国でまた会おう にするか 猫とじいちゃん にするか迷って、猫とじいちゃん1本にしたんです。 2本にすると、友達に大分待って貰わないといけなかったから。 それ以来なんか心に引っ掛かって、必ず観ようと思ってた作品なんです。 ただそういうのに限って時間が合わなくて・・・f(^_^;(あるある?笑) 劇場で観られて良かったです(^_^)
  • あしからず
    2.0
    知り合いにおススメされたし著名な監督だから観たが、次会って感想を言うのが気まずい。なんたって話が浅くて純粋に面白くない。でもそれはまあいい。1番驚きポイントが殉愛記と名乗るわりに愛が後付け。 監督はもう少し少女漫画や恋愛小説でも読んで勉強した方がいいのでは、なんて大監督に失礼かしら…。 多部未華子からの一方的な愛は感じたが高良健吾演じる多十郎からはなんの好意もフラグも感じず終盤になって後付けのように多部ちゃんとの回想シーン。やっと愛に気付く、みたいな設定だけど過程が紙のように薄すぎてこちらは無表情になってしまった。愛を名乗るからにはそこが1番重要じゃないのか。 あと殺陣シーンだが迫力はあったかもしれんけど、1対2人の時は後ろからトドメ刺してたくせに多十郎対20人の大人数の時は1人ずつ順番待ちで正面からしか斬り合わずいや後ろから刺せよと敵にツッコミを入れたくなる。まあ主人公補正のお約束といえばそうだけど。 と、ここまで文句を沢山言っちゃったけど良いところを述べるとすれば、高良健吾がエロい。着物がエロい。ハダけた着物からチラ見えする太ももや足首や胸元。色っぽい。高良健吾ファンにはたまらない仕様となっております。あと多部ちゃんがかわいい。特に最初の髪下ろした姿が色っぽい。現場からは以上です。
  • to
    3.2
    散り椿の殺陣には遠く及ばないし キルビルみたけれどキルビルの方がいいな
  • 亜紗季
    3.5
    高良健吾ってどんな役でも当てはまるんだね、あとね多部未華子の色気最強。 中孝介の歌う主題歌と作品の雰囲気がバッチリ合ってた。作品はかなりあっさりしてて上演時間ももう少し長くて良いんじゃないかなって思ったけどこれはこれで収まってるんだなって。
  • おっさん
    3.3
    東映の大御所監督が20年ぶりに時代劇を撮るという事で見に行きました。 非常に分かりやすく誰にでも観れる様な大衆娯楽映画であったとおもいます。 撮影も、シナリオも、美術も、役者の演技も全てオーソドックス且つ、「そうそうこれで良いんだよ」感で溢れていました。 リアリティより分かりやすさ。尖った芸術性よりも親しみやすさ。そう言った物を深く感じました。 チャンバラは良かったです。乱闘騒ぎが楽しく見れました。 物語は長州藩を脱藩し、京都でブラブラしている多十郎。好きな女にチョッカイを出されて守ってあげると、そこから脱藩浪人という事がバレて見廻組に追われると言うお話。 何かこう、ストーリーが横に広がって行くのですが回収されない伏線の様な、「フリに対するオチ」がない事が多々あります。 なので、劇場でエンドロールが掛かった時に結構ビックリします。続編を作れる余地がアリアリ。見ている側としては、折角の気合いの入った殺陣でスカッとしてるのに消化不良感。(そこも込みで、シリーズ時代劇のお約束なのかもしれませんが) この現代に昔ながらの方法で、定番のお約束通り、型にハマった時代劇を撮るという事はとても意味のある事だと思います。 本当の西部劇を日本人が撮れない様に、本当の時代劇、チャンバラは日本人にしか撮れないのです。 それをもう一度現代でやる《確認作業》の様な本作は西部劇「3時10分、決断のとき」と同じく様式美と言う物について考えさせられます。 時代が進んでも大衆は受け入れてくれるのか、それとも少しずつ前に進んで変化して行くべきなのか。あまり上映館数が多くありませんが、昔ながらの大衆娯楽映画を観たいのであれば是非。
「多十郎殉愛記」
のレビュー(359件)