そろそろスプリング・クリーニングしない?メイド・ハウスキーパーが登場する映画11本

映画マニアと呼ばないで

夏りょうこ

もともとは、冬の暖房で石炭などを利用したことによって汚れてしまった家を大掃除する「スプリング・クリーニング」。つまり、春の大掃除のことである。日本では、大晦日になると一斉に大掃除を行うが、欧米では「スプリング・クリーニング」が定番。

その大掃除の担い手となるのが、いわゆる家政婦やメイド、ハウスキーパーと呼ばれる人たち。雇い主に代わって家事をこなしたり、育児を任されたりする女性家事使用人である。ちなみにハウスキーパーは、使用人の中では最高位の管理職であり、一般的なメイドとははっきりと区別されているらしい。

映画の中でも上流階級で働く家政婦やメイドが登場し、脇役として印象的な存在感を残すだけでなく、時には彼女たちの視点から物語が描かれることもある。

そこで今回は、家政婦やメイドが登場する映画11本をご紹介しよう。スプリング・クリーニングのおともにいかが?

ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜』(2011)

差別と友情

ヘルプ

1960年代アメリカのミシシッピ州を舞台に、白人の女性と黒人のメイドの友情が差別意識の根強い街を変えていく。

黒人のメイドに囲まれて育った上流階級の主人公は、彼女たちが差別的な境遇に置かれていることに疑問を抱くようになり、その実態を明らかにして真実を突き止めようとするが、その行為が白人社会の強い反発を引き起こしてしまう。

トイレや店やバスを別々にするほどの差別意識があるのに、彼女たちの作った料理を食べ、育児を任せている感覚が実に奇妙だ。たった1人だけ、話をしてくれた勇気ある黒人のメイド。その彼女との交流が巻き起こす展開に、ドキドキしてしまう。今をときめくエマ・ストーンが、意志を貫く作家志望の女性を好演。

ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜

ミセス・ダウト』(1993)

子煩悩すぎて

ミセス

離婚して子供たちと引き離されてしまった失業中の役者が、子供たちと一緒にいたいがために、メイドに女装して家に潜入する。

ロビン・ウィリアムズが60歳近くの女性に扮し、似合いすぎるその特殊メイクが話題を呼んだコメディ。大ヒットしたことから続編の製作が予定されていたが、彼の死去によって実現はしなかった。

とにかく彼は、子供が大好きなのである。そんな彼が慣れない家事に奮闘しながら変装がバレないようにアタフタする姿が、捧腹絶倒。イギリス人の家政婦という設定も効いていて、彼の主演作の中で最も人気があるのも納得だ。ホロリとなって愛しい気持ちになる作品。

桃さんのしあわせ』(2011)

愛が染み入る

桃さん

自分の家族に長い間仕えてきてくれたメイドが、脳卒中で倒れたと知り、雇い主の息子が彼女の介護をするようになる。

彼女は13歳から60年もの間、4世代の家族の世話をしてきたベテランメイド。なので、その息子にとっては、そばにいて当たり前。空気のような存在なのである。そんな彼女が老いて病に倒れたことをきっかけに、二人は強い絆で結ばれていく。

昔気質の彼女には「古きよき使用人」という雰囲気があり、どんなに距離が縮まっても上下の礼をわきまえ、主従関係を崩さない。しかし、それでもふと心の交流が見て取れるのは、彼女がかけがえのない大切な人だという扱いをされているから。しかしながら老いは寂しい。言葉少なに愛が描かれた物語。

桃さんのしあわせ

スパングリッシュ 太陽の国から来たママのこと』(2004)

ママは強し

スパングリッシュ

娘の将来のため、メキシコからアメリカにやってきたシングルマザーが、裕福な白人家庭でメイドとして働き始める。

タイトルは英語とスペイン語の混交語を指すが、この映画では異文化交流の象徴として使われている。英語が苦手なメキシコ人の彼女が、言葉や価値観の違いに戸惑いながらも、娘によい教育を受けさせるために奮闘する姿がたくましい。

人種のるつぼであるアメリカの状況や白人家族との摩擦や交流。そのような彼女を取り巻く背景をきちんと映し出しながら、家族愛の物語を温かく軽妙に描く。大人の恋をした彼女が、母と女性という立場の間で揺れ動く様子が切ない。

小さいおうち』(2013)

いけません奥様

小さいおうち

1936年にある屋敷でお手伝いさんをしていた親類が残したノートには、奥様の秘められた恋愛と意外な真実が綴られていた。

タイトルにもなっている赤い三角屋根の小さな家が舞台ということで、昭和モダン建築様式が徹底的に再現されており、その見事なセットも見ごたえあり。ちなみに監督にとって、このような恋愛ドラマは初挑戦だという。

語り手は、「お手伝いさん」という呼称がピッタリのほっぺが赤い田舎娘。奥様のイケナイ気持ちに気づいてしまい、ハラハラしながらその姿を見守る純朴な彼女が、思い余ってアッと驚く大胆な行動に出る。古き良き日本映画を彷彿とさせるノスタルジックな作品。

小さいおうち

ゴスフォード・パーク』(2001)

みんなで悲喜こもごも

ゴスフォード

1932年イギリス郊外のカントリーハウスを舞台に、貴族とその使用人たちの複雑な人間関係を描いた群集劇。

限られた空間で繰り広げられる人間模様。ホスト側と来賓側の対立を軸に、さまざまな思惑が入り乱れながら展開していく緊張感。イギリスの名優たちもゾロゾロ登場するせいかまるで舞台劇のようだ。

使用人たちは晩餐の準備で忙しく働いている一方で、ご主人様たちのゴシップで盛り上がる。上階と階下の世界が交差し、隠された欲望が明るみになるにつれて、とうとう殺人事件が起きてしまうあたりはアガサ風。貴族社会の衰退と大英帝国の凋落が重ね合わされており、そこはかとない哀しみも感じさせる。

ハウスメイド』(2010)

素直さが仇に

ハウスメイド

上流階級の邸宅で働くことになったメイドが、妻子のいる主人から目をかけられ、密かに関係を持ってしまう。

芸術品に埋め尽くされたゴージャスな邸宅に住む主人は、ストイックに鍛え抜かれた肉体を持つナルシストなタイプ。そんな彼は、従順で控え目な若いメイドが気に入ってしまい、夜な夜な彼女の部屋に忍び込むようになる。

メイドあるあるで官能的なラブシーンに注目が集まった作品だが、前半と後半がまるで別の話のような展開に……こんな結末を誰が予測できようか。喜怒哀楽がはっきりしている韓国映画の中でも、ここまでの情念と狂気は異色かも。

ハウスメイド

しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』(2016)

はみ出し者同士の夫婦

しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス

カナダの片田舎で叔母と暮らしていた主人公は、家政婦募集の広告を貼りだした男に興味を持ち、住み込み家政婦として働くことになる。

カナダ人の画家モード・ルイスと夫の生活を描いた実話。重度のリウマチのせいで手足が不自由な彼女は、それでも自立しようと、彼の小屋に押しかけて強引に家政婦の仕事を始める。ためらう彼をグイグイと説得し、やがて二人は夫婦に。その後は彼の暴君ぶりにじっと耐え続ける姿があっぱれだ。

夫は無知で粗暴なタイプであるが、次第に互いを認めるようになった二人が、さりげなく支えあいながら暮らす様子が微笑ましい。絵を描かずにはいられない衝動とは、こういうものなのか。夫がどんどん商売上手になっていくのも面白い。

しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス

真珠の耳飾りの少女』(2003)

からみあうまなざし

真珠の

1665年のオランダを舞台に、画家フェルメールが名画「真珠の耳飾りの少女」を生み出した背景を描く。

失明した父に代わって家計を支えるため、画家フェルメールの家で使用人として働くことになった17歳の少女が、非凡な美的センスを認められ、彼の絵を描く手伝いをするようになる。

フィクションなのにこの説得力。彼の芸術的インスピレーションがどこから来たのか、その鍵となる少女を演じたスカーレット・ヨハンソンのぷっくりとした唇。あどけないまなざし。二人のプラトニックな信頼関係が、柔らかい光と影の中で密やかに官能的に描かれる。

屋根裏部屋のマリアたち』(2010)

人生を充実させるには

屋根裏

1962年軍事政権下のスペインからパリに逃れてきた主人公は、メイドの仕事を見つけ、ほかのメイドたちと一緒にアパートの屋根裏部屋で暮らし始める。

それまでスペイン人のことなど気にも留めていなかったフランス人の雇い主が、スペイン語を覚え、歴史を知り、貧しくても陽気でたくましいメイドたちと交流し、ついにメイドに恋をしてしまう。お金はあるが、なんて味気ない我が人生。それに気づいてしまったからには、もう後には戻れない。

人生を輝かせるには、やはり愛がなくちゃね。そこらへんがフランス映画らしい。勝手に好きになって勝手に嫉妬する中年男性は、まるで中学生みたいだ。狭くて単調な世界しか知らなかった彼が、大らかで開放的なメイドたちと出会い、化学反応を起こしていく様子が瑞々しい。

屋根裏部屋のマリアたち

ROMA/ローマ』(2018)

船を漕ぎ出そう

ローマ

1970年代のメキシコを舞台に、中産階級の家庭で働く住み込みの家政婦の視点を通して、愛と喪失と再生を描く。

監督自身が育った家族をモチーフとして、幼少期の体験をノスタルジックに、そして奥深く優しく綴ったモノクローム作品。自分はまだ子供で何もわからなかったけれど、あの頃にそんなことがあったのか。そんな私的な思い出と激動の社会情勢がからみあう。

子どもたちの世話や家事に追われる家政婦が、恋人との関係に悩みながらも淡々と仕事をこなす姿から目が離せない。子供たちは彼女のことが大好き。彼らを照らす神々しい光。空を横切る飛行機の音。彼女は1人で階段をどこまでも上っていく。

ROMA/ローマ

いかがでしたか?

雇い主の家庭に深く入り込み、裏の事情を目の当たりにすることの多いメイド。そんな彼女たちにスポットを当てた映画は、コメディあり恋愛ドラマありで実にバラエティに富んでいる。

女性にしかできない職業だからこそ、それらは女性特有の視点から物語が紡ぎ出されるのが特徴的。日本でも「家政婦は見た」「家政婦のミタ」などのテレビドラマがヒットしたところを見ると、彼女たちの「家族のことをよく知っているのに、決して家族の一員ではない」という存在がミステリアスなのかもしれない。

彼女たちは何を考えながら働き、一体どこまで秘密を知っているのだろう。そんな妄想をかき立てられる限り、これからもメイド映画は尽きることはない。

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