故ロビン・ウィリアムズの想いを昇華させたガス・ヴァン・サント最新作『ドント・ウォーリー』【来日インタビュー】

世界のディズニーを翔る元映画サイト編集長

鴇田崇

ガス・ヴァン・サント監督の最新作は、2010年に59歳で他界した世界で一番皮肉な風刺漫画家、ジョン・キャラハンの奇跡の実話を描く『ドント・ウォーリー』。実は2014年に他界したロビン・ウィリアムズが映画化を熱望した題材で、ガス・ヴァン・サント監督はウィリアムズ没後、自伝をもとに脚本を仕上げ、ついに映画化を実現させた。ある種、運命的とも評せる映画『ドント・ウォーリー』について、来日した監督に話を聞いた。

ドント・ウォーリー

ーージョン・キャラハン氏は、アナーキーな精神の持ち主だったようですね?

そう。彼は赤い髪をしたアメリカ在住の“アイルランド人”なんだが、面白いのは、彼はアイルランドには何も関係のないところで育ったにもかかわらずトラブル・メイカーで、そのなかでもユーモアを忘れていなかった。ジョンが酒を飲むようになったのは、子どもの頃に母親を知らずに育ったことで、(世界から)追い出されたと感じていて、その理由が彼には分からなかったからだ。ジョンは、養子の兄弟4人の長男で、ほかの子どもたちとは違うと感じていたと僕は思う。彼は家族の中で居場所がないと感じ、それは大きな問題だった。子どもの頃に、家族とは血のつながりがないということを知るのは精神的なダメージが大きく、いつも本当の母親が誰で、どこにいるのか探していた。だからこそ、あえていつも茶目っ気を出していたと思う。

ドント・ウォーリー

ーー今回映画を撮ったことで、改めてジョン・キャラハン氏へのイメージが変わったり、新たな発見はありましたか?

脚本の初期の段階で、ジョン・キャラハンと一緒にいるということはなく、それこそ街で会ったり、見かけたりはしていたが、じっくり座って彼と話したことはなかった。ポートランドから2~3時間の街に彼は暮らしていて、僕自身ポートランドで育ったということもあるので、僕らは同じ年代として、社会に対しての視点は同じだったようには思う。

ーーなるほど。いくばくかの相通じる点があったわけですね。

同じ時代を過ごしていたので、同じような興味を持ち、僕もアーティストで、彼も若い頃からそうだった。僕は、事故という体験こそしていないけれども、似たような道を辿っていた。だから、ジョンは僕にとって“自分自身”を思い起こすような存在だった。でも、ジョンは僕より勉強ができる学生だったと思う。

彼にはいろいろなことを学んだ。障がいについてや、それが与える影響、とりわけ日常生活への影響は、僕にとっては新しい発見だった。

ドント・ウォーリー

ーー劇中の断酒の会のメンバーが個性的でしたが、それぞれキャストはどう集めたのですか?

まず脚本の上では、予期せぬ出会い、集まりのような感じで描いた。僕自身が知っているサポートグループをベースにして、ジョンはもちろん知っていたので、いろいろなところから集まった人たちとして描いたよ。必ずしも断酒会だけでないけれども、さまざまなタイプの人がいたからね。

キャスティングに関してだけど、キム・ゴードンは『ラストデイズ』にも出演していて、前に仕事をしていたので、今回のキャラクターは楽に演じることができるだろうという確信があった。ジョンの描いた中でもポートランドにいるお金持ちの人をイメージしていたわけなので、キムがうまいことその年代に合わせて演じてくれた。とてもエレガントで、この役を軽やかに演じられると思ったけれど、彼彼女はそれを自分なりに、しかもその場で演じた役の物語を作り上げていたよ。

ーー映画の冒頭ですよね。

ベス・ディットーについては、ジョン・キャラハンの自伝の中にも書かれていて、映画の中のいくつかのセリフは本の中で語っているものと同じなんだ。ベスが演じた人物は、カントリーガールみたいなものでね。髪型もね。彼女はその世界をよく知っていたので、それをベースにして、彼女の母親とおばさんを重ねて、考えて演じていた。また、彼女も即興で生み出していたようだ。ウド・キアは、ギリシャ人の船舶関係のお金持ちという役柄だった。僕が作り上げたキャラクターに近い。ポートランドにはギリシャ人のコミュニティがあり、それを思い浮かべながら書いていた。

ドント・ウォーリー

ーーこの作品は、自分自身を知るということもテーマになっていますよね。

確かに映画製作をする上で、“自分自身”を学ぶということはあると思う。往々にして、自分の中にある考えがスタートだったりするものだ。その結果、自分の考えが映画の中で代弁されることはある。何かが起きているということを証明することによって、何かが生まれることもあると思う。

ーー今回、新たに知った自分はありましたか?

自分自身について学ぶというよりも、何かの兆候のサインとして求めること――自分の先入観、コアはどうあるべきかという考え方に対して気づくことはあったと思う。それはたとえば、映画のシーンにある意図を持たせるため、意思を持って演出するとする。キャラクターがそれを演じることによって、意味を帯びる。それが自然に感じられるように、もともとの考えを伝えるようにすること。釣りのような忍耐強さが必要だ。その機会を逸しないように、自分が思っている以上にコアが良くなる可能性を殺さないようにすることはあると思う。

ーージョン・キャラハンはいつもイラストを描いていたそうですが、監督は、手元にカメラがあるとしたら写真を撮らずにはいられないですか?

いや、一緒ではないよ。カメラはほとんど使ったことがなくて、いつも持ち歩いているだけだ。時々写真を撮るからカメラを購入した。写真を撮ろうと思って数枚撮影したけれど、いつも持っているというわけではない。(撮影するときは)いつもは、僕と一緒にいる人を撮っているよ。(取材・文・写真=鴇田崇)

映画『ドント・ウォーリー』は、2019年5月3日(金)より公開中。

ドント・ウォーリー

出演:ホアキン・フェニックス、ジョナ・ヒル、ルーニー・マーラ、ジャック・ブラック ほか
監督:ガス・ヴァン・サント
公式サイト:
http://www.dontworry-movie.com/
(C)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC

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  • NOTYETI
    3.0
    2019年6月18日(火) 佐久アムシネマ 字幕版 2019年劇場鑑賞45作目
  • ミーー
    4.0
    半身不随の障壁を乗り越えていく話だと鑑賞前には思っていたが、さらにアルコール依存の苦難が重く扱われ、ガスヴァンサント監督らしい、人間の本質を見つめ直すようなドラマにしあがっていた。回想と現在を自由にゆきかう構成も効いている。 どん底の絶望からじわじわと復活していく主人公の姿がたくましい。一方、彼の弱さや情けなさも、克明かつ容赦なく描かれている。決してとびぬけた人格者でも英雄でもない主人公がもがきながらも再生していく姿と、ユーモアをまじえた演出のおかげで、不幸を言い訳にして現状に甘んじるべきではないという(ともすれば立派すぎるのではないかと思われてしまいそうな)正論も、自然に腑に落ちた。
  • いつも眠たいなあ
    -
    ルーニーマーラーのシーンの気合 見所はそこだ。
  • ピッツア橋本
    5.0
    “Don't worry. One day,we will find out the meaning of forgiveness.” 実在した車椅子の風刺漫画家ジョンキャラハンの自伝的ドラマ映画。 泥酔状態による自動車事故により、下半身付随、重度の障害者となった彼の魂の再生の物語が回顧録形式で紡がれていく。 酒やドラッグに溺れた人々がセラピーやセミナーに通って更生していくドラマはそこまで珍しくはないのだけれど、 本作はこのジョンキャラハンの生き様の濃さ、さらにはまるでロビンウィリアムズが乗り移ったかのようなホアキンフェニックスの演技が素晴らしい。 本作がガスヴァンサント監督と故人ロビンウィリアムズがずっと温めてきた企画というのが宣伝句になっているが、本当にそのエッセンスの色濃さを感じる。 ジョンキャラバンの瞳にホアキンフェニックスの力強さとロビンウィリアムズの優しさが同居していた。 ルーニーマーラも程よく女神してくれてた笑 forgiveはforとgiveの結合形。許すことは即ち他人に何かを与えることでもある。 そんな構図を体現したようなクライマックスに涙が止まらなかった。 昨日今日が冴えなくても、明日も新しく生きていこうと思えるステキな映画でした。
  • もざん
    3.5
    "弱い人間ほど強い人間になれるんだ" 凄く自分の中に刺さるものがあった。 自分の弱さを認めて初めて、他人に優しく出来るんじゃないかなって! 父の日だったので、父を誘って2人でキネカ大森に行き 帰り道に片桐はいりさんに出会い「桐谷さんですよね!桐谷さんずっと好きで映画のカードも買いましたっ!」 自信満々で他人の名前を連呼してましたが、優しく写真まで一緒に撮ってくださいました。
「ドント・ウォーリー」
のレビュー(1494件)