6月2日は裏切りの日。
この記念日のことはあまり知られていなくても、本能寺の変のことは有名だろう。
1582年(天正10年)6月2日、織田信長が家臣であった明智光秀に裏切られて攻め込まれ、宿泊先の本能寺で自害した歴史的事件。それにより、6月2日は裏切りの日とされている。
信頼していた友人や恋人の裏切り。それはある日突然やってくる。
映画にも、裏切られてボロボロになった主人公が復讐の鬼と化すストーリーが多くあるが、酷い目に遭った主人公に同情すればするほど観客は感情移入し、無事に復讐を遂げると、こちらもスッキリ。一緒になって達成感とカタルシスを味わうところが、醍醐味であろう。
復讐するは我にあり。
そこで今回は、主人公が裏切りにあって復讐する映画10本をご紹介しよう。
『キル・ビル Vol.1』(2003)
恨み節が流れる
妊娠をきっかけに殺し屋稼業から足を洗った主人公が、組織のボスと殺し屋仲間から襲撃を受け、瀕死の重傷を負わされる。
タイトル通り、元上司で元カレでもあるビルを殺しに行く物語。続編『キル・ビル Vol.2』(04)があるが、当初は1本の作品として上映する予定であった。昏睡状態から目覚め、子供を奪われた恨みで復讐に燃える彼女が4人の殺し屋に次々と戦いを挑んでいくのだが、中でも宿敵エルとの死闘は必見だ。
監督が偏愛する日本・香港・台湾映画へのオマージュが散りばめられ、マニアックなバイオレンス・シーンに血わき肉躍る一方で、疾走するバイクに刀が差してあるなどツッコミどころも満載。空気を変えてしまう千葉真一の存在感ときたら。悪趣味スレスレなのに興奮が止まらない一世一代の娯楽作品である。
『皆殺しのジャンゴ/復讐の機関砲(ガトリングガン)』(1968)
復讐は用意周到に
金貨輸送の警護をしている主人公は、仕事の最中に強盗団に襲われ、金貨を奪われたばかりか妻まで殺されてしまう。
襲撃で自身も重傷を負ったはずなのに、次のシーンで普通に妻の墓を掘っている様子を見ると、どうも彼の悲しみや無念さが伝わってこず。強盗事件の黒幕が親友だったと知り、怒りに震える彼だったが、しかしその親友が裏切った理由を考えてみると、彼の方も親友に裏切られたと思っていたのかもしれない。
絞首刑執行人となった彼が、刑に処される無実の人たちを密かに助けて仲間にしていくとは、なんてユニークなアイデア。しかも、その中から彼とは別の意見を主張し始める人物も出てきて、最後まで気が抜けない展開である。人生に裏切りはつきものなのか。
『ノクターナル・アニマルズ』(2016)
それは愛か復讐か
裕福な結婚生活を送りながらも虚しさを抱え、不眠症に悩まされている主人公のところへ、元夫が書いたという小説が届く。
送られてきた原稿は、チンピラに妻と娘をレイプされて殺された男が復讐をするという暴力的な内容。20年経った今、彼はなぜそんな小説を彼女に読んでもらおうとしたのか。現実と小説。その2つの世界が交互に映し出され、彼女の孤独な闇に少しずつ変化が起きていく。
自分が捨てた夫の書いた復讐劇を読み、彼女の死んでいた心は蘇るのだが、彼への愛を思い出した彼女を待ち受けていたものは……ラストの解釈は様々だろう。ジェイク・ギレンホールの演技が圧巻。誰かを愛しているのなら、それを簡単に手放してはいけない。
『名もなき野良犬の輪舞』(2017)
最後に笑うのは?
刑務所で知り合った二人は、ある出来事をきっかけに信頼関係で結ばれ、出所後はチームを組んで犯罪組織を乗っ取ろうとする。
固い絆で結ばれていればいるほど、それが裏切られたときの憎しみは激しく、どんなことをしても気持ちが晴れることはない。警察とマフィアの腹の探り合いに個人的感情が複雑にからむので、先が読めず。観ごたえのある男臭い作品である。
野心の塊である冷酷非情な男をソル・ギョングが達者に演じ、本心の見えない笑顔がコワイの何の。ユーモアを演出していると思われるシーンにも、ソワソワしてしまう。涙と怒りがストレートに伝わってくる韓国映画ならではの壮絶な物語。
『ラスト・クライム 華麗なる復讐』(2017)
父ちゃんに頼まれて
15億円のバイオリンを盗み出した主人公は、相棒に裏切られてバイオリンを奪われ、命まで狙われるようになる。
名器ストラディバリウスを相棒から取り返すため、彼は一度も会ったことのない二人の娘を呼び出す。実は彼女たちは腹違いの姉妹で、性格も正反対。当然父親のことをよく思ってはいない。そんな娘たちに復讐計画をもちかけるという虫のいい父親を、ジャン・レノがお茶目に演じている。
最初はお金目当てで協力したものの、次第に肉親の情にほだされていく二人。素人なりに色仕掛けで獲物を落とそうしたりして、慣れない仕事をがんばる姿にハラハラする。裏切りと復讐を軽いタッチで描いたドタバタ・コメディ。
『トゥルー・グリット』(2011)
やるときゃやる
雇い人に父親を殺された14歳の少女が、敵を討つため大飲みの連邦保安官を雇い、犯人捜しの旅に出る。
『勇気ある追跡』(69)のリメイク版。彼女が強い信念の持ち主だとわかるのは、まっすぐな目をしているから。しかも、大人顔負けの交渉上手。彼女の底知れぬ熱意と高額な報酬に負けて立ち上がったのは、酔っ払いの保安官だったが、だらしなさそうに見えて実はすごい奴だと思わせるジェフ・ブリッジスがうまい。
途中からテキサス・レンジャーの若者が加わり、いよいよ捜査は危険な領域へ。そうしてあれやこれやとぶつかり合いながらの珍道中が続き、ついに「真の勇気」が試される時がやってくる。大人の役割って何だろう。きっちりと落とし前をつけるラストがよい。
『完全なる報復』(2009)
法に裏切られたから
強盗に妻子を惨殺された主人公が、司法取引によって犯人が極刑を免れたことに強い不満を抱き、司法そのものに復讐を仕掛けていく。
並大抵の不満ではない。それはもう関係者皆殺しも辞さないほどの怒りなのである。犯人に対してだけでなく、裁判を担当した弁護士や判事も彼にとっては憎い敵。「何もそこまで」と思うほど、正義という名の復讐には容赦がない。
そんな復讐者にどこまで感情移入できるのか。それがこの映画のポイントだ。刑務所にいるのに次々と暗殺を遂行していく彼だが、そのナゾ解きよりも、この悲劇的展開の落としどころが気になる。元凶である検事との葛藤は、二人に何をもたらすのだろうか。
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復讐がもたらすもの
狩猟の最中に瀕死の重傷を負ってしまった主人公は、仲間に裏切られ、置き去りにされたうえ息子を殺されてしまう。
1823年アメリカの西部開拓時代を生きた猟師の体験を描いた実話。熊の襲撃シーンや過酷なサバイバルがとにかくリアルで、主演のレオナルド・ディカプリオが壮絶なシーンを見事に演じ切ったことでも注目された。極寒地帯の美しい風景が、この宿命的物語を神話のように映し出す。
息子の敵を討つ。ただそれだけのために生き延びようとする凄まじい執念。重症の身でサバイバルしながら相手を追い、憎悪と怒りを燃やし尽くしたその果てに彼が見たものは? たとえ虚しさだけが残ったとしても、やらずにはいられない。それが復讐。それにしても馬の体内は暖かそうだ。
『ペイバック』(1999)
俺の金返せ
プロの泥棒である主人公は、妻と相棒と一緒にマフィアから14万ドルを奪うが、突然二人に裏切られ、分け前を奪われて瀕死の重傷を負わされる。
妻に背後から撃たれるという精神的ショックもあったであろうに、彼は淡々と妻と再会。彼女も被害者だとわかって許してあげるあたりは、あっぱれな愛妻家だ。
彼は敵の動きの先を読んでは、次々とワナを仕掛けていく。そして復讐のターゲットは、個人から組織へ。そもそも主人公も泥棒だし悪徳刑事も登場するしで、結局のところワル同士の戦い。なので、見ている方も気が楽である。自分の取り分を取り戻したいだけというシンプルな目的がよい。
ビデオマーケットで観る【初月無料】『バットマン リターンズ』(1992)
哀しき女の復讐
ゴッサム・シティに現れたサーカス団長のペンギン男は、野心あふれる実業家と手を組み、町を裏から支配しようと画策していた。
バットマン・シリーズの第2弾。ティム・バートン監督の世界観が前作よりもヴァージョン・アップし、悪役キャラクターが強烈すぎてバットマンの影が薄いのが特徴。特にキャットウーマンのチャーミングさときたら。ピチピチの黒いスーツに身を包んだミシェル・ファイファーが、これ以上もないほどの当たり役だ。
上司である実業家に窓から突き落された彼女は、猫の魔力でキャットウーマンになり、内気な女性から大胆な悪女へと変身。自分を殺そうとした男に復讐を誓う。踏みにじられた女心が痛々しく、目に涙を浮かべながらムチを振るう姿が泣けてくる。キャットウーマンよ、永遠に。
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いかがでしたか?
「優雅な生活が最高の復讐」という言葉があるが、そうではない「目には目を」的な復讐劇は、裏切られ方も復讐方法も手が込んでいて凄まじい。
そんなストーリーを娯楽として楽しめるのは、映画だから。それが非現実的であればあるほど面白くなるのが、映画というものである。
復讐のバリエーションがいろいろあるのも、楽しみの1つだろう。後味の悪くない復讐映画があれば、もっと見たいものだ。
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