AKB48の島崎遥香が主演を務める『劇場霊』が、11月21日より全国で劇場公開されます。『リング』、『クロユリ団地』などを手がけてきた中田秀夫監督が、閉ざされた劇場を舞台に描く本格ホラー。Jホラーなら必見の一作です!
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今やジャンル映画として世界的に認知されているJホラー。今回は「3分で分かるJホラー講座」と題し、その歴史、演出的特徴とその代表作を分かりやすくご紹介します!
すべては『リング』から始まった!
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一般的に“Jホラー”の火付け役は、鈴木光司原作の『リング』(1998年)だと言われています。もちろん、それ以前にも日本独自の恐怖映画は存在しました。
四代目・鶴屋南北の原作を“怪談映画の巨匠”中川信夫が映像化した『東海道四谷怪談』(1959)、奇才・石井輝男がエログロを存分に発揮したカルト作品『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』(1969)など、その枚挙に暇はありません。
しかし『リング』は、2002年にリメイクされたアメリカ映画『ザ・リング』が大ヒットしたことも手伝って、Jホラー・ブームを呼び起こす嚆矢となりました。『リング』を監督した中田秀夫は一躍Jホラーの第一人者として認知され、ハリウッド版の続編『ザ・リング2』に招聘されています。
その世界的ムーブメントに乗っ掛かるようにして、日本国内でも大量のJホラーが製作されるようになったのです。
大ヒットを記録し、その後シリーズ化された清水崇監督の『呪怨』(2000年)は、完全に『リング』の影響下にある作品といえるでしょう。全身白塗り、ブリーフ一枚という強烈ビジュアルの佐伯俊雄くんは、今や『リング』の山村貞子と並ぶ二大スターの一人です。
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Jホラーは、なぜここまで世界的な潮流となったのでしょうか?
その理由のひとつに、いわゆるハリウッド的なホラー作品と一線を画する独特な演出方法が挙げられます。同じ“ホラー”というジャンルにカテゴライズすることが躊躇われるほど、Jホラーは新鮮な発見と驚きをもって世界の人々に迎えられたのでした。
Jホラーの演出的特徴とは?
「ホッケーマスクをした殺人鬼にチェーンソーで追いかけ回される」とか、「夢の中に登場する怪物に鉄の鉤爪で引き裂かれる」とか、ハリウッド産のホラー作品が“直線的な恐怖”とするなら、Jホラーの演出法は“婉曲的な恐怖”といえるでしょう。
そこに殺人鬼がいる恐怖ではなく、そこに何者かがいるかもしれない恐怖。つまり観客に常に何かを予感させることで、より皮膚感覚に訴える恐怖表現が生成されるのです。
扉がギーと閉まる音、ピチャピチャという水滴に代表される「効果音演出」、あえて決定的な惨殺シーンを描かない「省略演出」、何気ない日常描写を丁寧に描くことで、この恐怖が身近にあることを想起させる「日常演出」。どれもハリウッド産ホラーとは異質の演出テクニックです。
『リング』の井戸や、『仄暗い水の底から』の給水タンクなど、“水”をモチーフにした作品が多い事も特筆に値するでしょう。
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さらにJホラーの特徴として、救いようのないバッド・エンドが多い事が挙げられます。
ハリウッドの場合、イチャつきはじめたカップルを皮切りにして登場人物が次々と殺されていき、主人公が傷つきながらもモンスターを倒して終幕、というパターンが常套ですが、Jホラーの場合は主人公も殺されてしまい、何とも言えないやるせなさが余韻として残る構造になっています。勧善懲悪で物語が解決するのではなく、怨念が全てに打ち勝って物語が収束するのです…。
続いて、Jホラーのブームを牽引した名作をご紹介しましょう。
最恐映画其の壱『女優霊』(1996年)
撮影所を舞台に繰り広げられる、『リング』の中田秀夫監督のデビュー作。その静謐で抑制の利いた語り口は当時のコアな映画ファンを唸らせ、現在ではJホラーの原点と称されています。
ちなみに主演の白島靖代さんは、元ヤクルトスワローズの土橋勝征の奥さんであらせられます。
最恐映画其の弐『CURE』(1997年)
最新作の『岸辺の旅』が第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門監督賞するなど、現在では世界的に高い評価を得ている黒沢清監督が、一躍注目を浴びるきっかけとなった作品。マインドコントロールによる連続猟奇殺人事件を扱ったサイコ・スリラーです。
衝撃のラストは、デヴィッド・フィンチャーの『セブン』にも匹敵します。
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】最恐映画其の参『オーディション』(2000年)
米エンターテインメント・サイトwhatculture.comが選んだ「死ぬまでに見るべき歴代ホラー映画20本」に、ヒッチコックの『サイコ』といった名作と並んで、日本から唯一選出された作品。
美しいラブストーリーから一転、後半から急激にホラータッチに変貌するプロットの妙にド肝を抜かれます。原作は村上龍の同名小説です。
最恐映画其の四『ノロイ』(2005年)
『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999年)でも採用された疑似ドキュメンタリー手法、いわゆるモキュメンタリー映画としてつくられた作品。小林雅文なるホラー作家が突如として失踪した事件の謎を、観客と共に解き明かす構成になっています。
本作の演出を務めた白石晃士監督は、オリジナルDVD「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」シリーズを手がけていることでも有名。
Jホラーは今なお進化し続けている
その後Jホラーは、よりアトラクション的要素を加えた作品がつくられるようになります。ウォン・カーウァイ監督作品で知られる名カメラマン、クリストファー・ドイルを撮影監督に迎えた『ラビット・ホラー3D』(2011)は、パナソニックが開発した世界初の3Dカメラを縦横無尽に活用し、新たな映像体験を生み出しました。
翌2012年には、「リング」シリーズ初の立体映画として『貞子3D』が公開されます。Jホラーならではの静謐なタッチと、最新のテクノロジーが組み合わされることで、新しい“恐怖体験”が産み落とされたのです。
進化を続けるJホラーの世界。人生最恐の日を、ぜひ映画館で体感してみてください!
※2020年11月27日時点のVOD配信情報です。