「お兄ちゃんなんだから、しっかりして…」困った兄、イケナイ兄、色んな兄が登場する兄映画10本

映画マニアと呼ばないで

夏りょうこ

6月6日は兄の日。

姉妹型や兄弟型の研究をしている漫画家の畑田国男が、1992年に制定した「兄の日」は、この日が双子座のほぼ中間に当たり、6と6はそれぞれ兄と弟を意味しているという。

ちなみに3月6日は「弟の日」、9月6日は「妹の日」、12月6日は「姉の日」、11月23日は「いい兄さんの日」とのこと。

映画に登場する兄は、いいお兄さんというよりも、どこか問題を抱えているケースが多い。それは自分のことだったり、家族のことだったり。

そこで今回は、いろいろな兄たちが登場する兄映画10本をご紹介しよう。

BROTHER』(2000)

暴力的な兄

ブラザー

弟を頼って日本からアメリカに逃亡してきたヤクザが、現地のマフィアたちと抗争を繰り広げ、次第に戦争状態に突入していく。

タイトルは、血縁関係を超えた擬似的兄弟の意味。ロサンゼルスを舞台にしているが北野テイストはそのままなので、違和感なし。真木蔵人が可愛げのあるやんちゃな弟を好演し、彼の仲間であるメキシコ人の視点から、兄の破滅的なカリスマ性と暴力性が語られる。

狂犬のような兄がやって来たせいか、暴力の連鎖が止まらなくなり、滑稽なほど簡単に人が死んでいく。腹の中を見てみないと信用できないと言われたら腹を裂くし、親分愛のために平気で自分の頭を撃つ。それが彼らの生き方なのだ。久石譲のセンチメンタルでエモーショナルな音楽に救われる。

キセキ あの日のソビト』(2017)

弟に夢を託す兄

キセキ

医師の父に厳しく育てられてきた兄は、家を飛び出してバンドにのめり込んでいたが、医大を目指している弟に音楽の才能があることに気づく。

メンバー全員が歯科医師であるGReeeeNの名曲「キセキ」の誕生秘話。GReeeeNのプロデュースを手掛けた兄と、のちにリーダーとなる弟のエピソードを基に家族や仲間たちとの葛藤を描いた青春ドラマだ。なぜみんな歯科医師なのか。メンバーが顔出しNGになった理由も、これを観ればわかる。

父の反対を押し切って音楽の道に進んだ兄ではなく、父親の言いつけ通りに大人しく受験勉強をしていた弟の方に音楽の女神が微笑むとは、何とも皮肉なことである。音楽業界で自分の限界を感じていた兄が、弟のサポート役に回るのは勇気が必要だっただろう。兄が切り拓いた道を弟が歩き、二人三脚で叶える夢もある。

キセキ あの日のソビト

はじまりへの旅』(2016)

大人の入り口に立つ兄

はじまり

森の奥深くで社会と交わらずにサバイバル生活を送っていた家族が、死んだ母親の葬儀に出席するための旅に出る。

6人の子供たちは学校に通っていないが、父親による独自の教育カリキュラムによって、体力はアスリート並み。思想的には反資本主義であるものの、読書から得た知識は豊富である。ある面では社会に毒されていないユートピアのような世界だが、その隔離された小宇宙から飛び出す日がやって来る。

6人兄弟姉妹の長男は、学校教育を受けていないのに名門大学にことごとく合格。広い世界を見たいと思っているが、父親に打ち明けられずモンモンとしている。一番年上なので、家族が置かれている状況や両親のこともわかるしね。父親と強い絆で結ばれているからこそ、板挟みになって悩んでしまう兄。彼のきょとんとした瞳が印象的だ。

はじまりへの旅

岬の兄妹』(2018)

妹を働かせる兄

岬

仕事がなくて生活が困窮してきた主人公は、自閉症の妹が男と寝て金銭を受け取っていることを知り、売春の斡旋を始める。

こんな映画が日本でも作れるのかという衝撃と感動。生きるために、障害のある妹の体を使ってお金を稼ぐ兄。もちろん罪悪感はあるのだが、二人が生き延びるためには他に方法がない。それは理屈ではないし、キレイ事を言っているヒマなどないのだ。崖っぷちで生きているとは、まさにこのことである。

妹と一緒に仕事を始めた兄が、自閉症だから何考えているのかわからんと切り捨てていた妹の感情を理解するようになる。二人が助け合いながら生きる姿は、家族の本質ではないだろうか。こんな形の兄妹愛もある。強い嫌悪感や反発を引き起こすどころか、大きな反響と絶賛を浴びた文学的問題作。

岬の兄妹

レインマン』(1988)

特殊能力のある兄

レインマン

絶縁状態であった父の訃報を聞いた主人公が、遺産目当てに帰郷したところ、生き別れた兄が全財産を相続することを知らされる。

どうしてもお金が欲しい彼は相続人の兄を誘拐するのだが、サヴァン症候群の兄に特異な才能があるとわかり、これまた金儲けのために兄を利用しようとする。なぜ彼は、弟と引き離されてしまったのか。タイトルの「レインマン」とは? 二人は一緒に旅をしながら、過去を少しずつ解きほどいていく。

最初は厄介な存在でしかなかった兄と次第に心を通わせるようになり、弟はいつしか兄を心の底から大切に思うようになる。その驚くほどの変わりようときたら。現実は容赦ないが、それでも彼には兄ができた。この難役をこなしたダスティン・ホフマンが称賛されたが、キラキラしたトム・クルーズのオーラも捨てがたい。

アメリカン・ヒストリーX』(1998)

心を入れ替える兄

アメリカンヒストリー

白人至上主義に傾倒し、黒人を殺した罪で服役していた兄が家に戻ってみると、自分を崇拝する弟が極右組織のメンバーになっていることを知る。

3年間の刑務所暮らしで、兄は生まれ変わったのである。なので、再会を楽しみにしていた弟からすれば、別人のように穏やかで公平な人間になっている兄を見て、裏切られたような気持ちになってしまう。映画では兄のネオナチ時代をモノクロで、更生後の姿をカラーで描き、アメリカが抱える人種問題を浮き彫りにする。

まるで狂人だった兄を変貌させたのは、一体何だったのだろう。問題は、兄の影響を強く受け、その兄以上にネオナチに入れ込むようになった弟。自分が改心しただけでは、もはや収まらないところまで来ているとわかり、兄は苦悩する。キレイごとでは終わらない衝撃的な展開がよい。

ディストラクション・ベイビーズ』(2016)

暴力に憑りつかれた兄

ディストラクション

両親を亡くして弟と暮らしていた兄は、ある日突然姿を消し、遠く離れた繁華街に現れて、道行く人々に次々と喧嘩をしかけていた。

無差別に殴りかかる狂犬のような兄。理由なんかない。たとえ相手がヤクザであっても、素手での殴り合いを挑み続けるのである。その様子を見て興奮した男子高校生が、彼と一緒になって暴力沙汰を繰り返し、それにキャバクラ嬢が巻き込まれて物語は悲劇へとなだれ込んでいく。小松奈々の体当たり演技に圧倒される。

強大な台風の目が、みるみるうちに周りを巻き込んで日本列島を横断するような勢い。尽きぬ暴力に突き動かされている兄をじっと見つめる弟は、静かで大人しい雰囲気だが、暴力性というものは誰にでもあるもの。それまで少し低迷していた柳楽優弥を実力俳優として見事に復活させた衝撃作。

ディストラクション・ベイビーズ

スウィート17モンスター』(2017)

実は苦労している兄

スウィート

自己嫌悪と妄想が止まらない女子高校生は、大好きだった父の死から立ち直れず、母親から気に入られている優等生の兄のことも疎ましく思っていた。

彼女からいきなり自殺計画をぶちまけられた教師の余裕ときたら。それをきっかけに二人は信頼関係を築いていくのだが、生意気な女子生徒に何を言われようとも受け止めたりかわしたり。その絶妙なサジ加減が大人である。彼女の痛々しいこじらせぶりや、一生懸命であるがゆえに迷走している姿が微笑ましい。

兄はイケメンでいい奴なのに、自分と違って勝ち組だから面白くない。しかも兄は、あろうことか彼女にとって最も許せない領域に踏み込んでしまうのだから、さあ大変。しかし、その想定外の出来事によって兄の存在がクローズアップされ、別の視点から物語が展開していくのが面白い。兄にもいろいろあるんだよ。

スウィート17モンスター

ギルバート・グレイプ』(1993)

いい人になりたい兄

ギルバート

アメリカの田舎町で暮らす青年は、家族の世話をしながら退屈な日々を送っていたが、ある日彼の前にトレーラー・ハウスに乗った少女が現れる。

知的障害のある弟。250kgの体重がある母親。やんちゃで無謀な行動を起こす弟からは目が離せず、過食症でクジラのように太ってしまった母親は、ベッドから動けない。そんな家族の面倒を見なければならない彼は、町から一歩も出ることができず、自分の人生を生きることさえできない。

自分の身の上を諦めているようでも、実はやり場のない苛立ちや疲労をため込んでいる兄は、風のようにやって来た1人の女性と出会い、やっと深呼吸ができるようになる。何とかして心のバランスを保とうとする兄をジョニー・デップが演じ、繊細な演技が光る。天才子役と騒がれた頃のレオナルド・ディカプリオも必見だ。

ハード・コア』(2018)

世間になじめない兄

ハードコア

山田孝之の弟が佐藤健という意表を突いたキャスティング。またこの弟が現実主義のエリートで、純粋すぎてまともな社会生活が送れない兄とは好対照なのである(名前も「右近」「左近」)。しかし、実は弟の方が抱えている闇がややこしという面白さ。佐藤健が物事を見透かしたような目をした弟を演じ、なかなかの新境地を見せてくれる。

不器用な兄と野心家の弟、そして兄の仕事仲間。この3人が、偶然見つけた超高性能なロボットと不思議な絆を築いていくようになり、事態は思わぬ方向へ。なんやかんやで結局弟はイライラしながらもダメな兄を支え、兄は自己嫌悪に陥りながらも絶滅危惧種のような生き方しかできない。荒川良々が嫌になるほどの適役。

ハード・コア

いかがでしたか?

兄が登場する映画は、「兄弟」という括りが多いような気もするが、そうなると男同士の話になって男性が共感しやすく、「妹」がいると、これまた男性目線で語られたり。

主人公にどんな兄弟姉妹がいるのかは、重要な設定だったりもするので、一見脇役のように見えても実は見逃せないのが「兄」の存在なのかもしれない。

(C)2017「キセキ あの日のソビト」製作委員会、(C)2016 CAPTAIN FANTASTIC PRODUCTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED.、(C)SHINZO KATAYAMA、(C)2016「ディストラクション・ベイビーズ」製作委員会、(C)MMXVI STX Productions, LLC. All Rights Reserved.(C)2018「ハード・コア」製作委員会

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