ハラハラ、ドキドキの連続!刑務所からあの手この手で逃げ出す脱獄映画10本

映画マニアと呼ばないで

夏りょうこ

本当に罪を犯した囚人であっても、冤罪に苦しむ気の毒な囚人であっても、映画に登場する囚人たちは、非人間的な劣悪環境から逃げ出し、自由を取り戻したくて脱獄を計画することが多い。

不思議なのは、彼らがたとえ有罪でも無罪でも、どうかこの脱獄が成功してほしいと応援したくなってしまうことだ。

緻密な計画を立て、時間をかけて準備をし、頭脳を使って不可能を可能にする。場合によってはチームワークの勝利。それがカタルシスなのだろう。

そこで今回は、ハラハラドキドキするだけでなく、ちょっと異色の脱獄も含めた脱獄映画10本をご紹介しよう。

ショーシャンクの空に』(1994)

だってやってないから!

ショーシャンク

妻とその愛人を殺した罪で刑務所に送られた主人公は、鉱物採集をやりたいと友人の調達係に小さなロックハンマーを注文する。

冤罪で服役することになってしまった彼が、20年もの間どのようにして刑務所暮らしを耐え抜いたのか。彼の経験と知恵と工夫が小さな革命を起こしていく様子は、実にワクワク。交渉でビールや本をゲットするわ、お金の知識があるので所長にも一目置かれるわで、希望は自分の手で作り出すものだと教えてくれる。

しかし、ある事件をきっかけに彼の精神状態は限界に。そもそも彼は無実なのだから、とうとう我慢できなくなったのである。そこである日、長い間コツコツと準備していた計画をついに実行。自由を戻すために脱獄するのである。それは、アッと驚く見事さ。これほど爽快な脱獄映画があるだろうか。老いた服役者との友情も染みる。

大脱走』(1963)

脱獄は戦争

大脱走

第二次大戦下のドイツにある捕虜収容所に、今まで何度も脱獄を繰り返してきた常習犯の捕虜たちが送られてきた。

彼らにとって脱獄は、敵軍と戦うのと同じこと。だからリーダーの下で、機械製造や仕立て屋、偽造屋、計測屋などいろいろな役割を担うプロのメンバーが組織され、3つのトンネルで250名脱獄という壮大な計画を立てる。ちなみに掘った土をカムフラージュする分散屋もいたりして、軍隊のように細かい役割が設定されていて面白い。

トンネルに「トム」「ハリー」「ディック」という名前をつけるところが、外国人らしい。彼らはひたすら脱獄計画を推し進め、見つかりそうになったり、思いがけないミスをしたり。それでも力を合わせてハプニングを乗り越えた彼らが、脱獄後にどうなったのか。その行く末についてもきちんと描かれており、みなぎる反骨精神が胸を打つ。

フィリップ、きみを愛してる!』(2009)

愛してると言いたくて

フィリップ

妻と娘と平穏な生活を送っていた主人公は、大事故に遭ったのをきっかけに自分に正直に生きることを決意し、ゲイであることをカミングアウトする。

恋人との派手な暮らしをキープするため詐欺師になり、結局逮捕されて刑務所行きとなった彼は、そこで出会った男性に一目ぼれ。自分が先に釈放されると、今度は弁護士に化けて彼に会いに行くのである。愛する人に気持ちを伝えるためだけに、詐欺と脱獄を繰り返した男。この仰天する純愛が実話だというのだから、世界は広い。

彼の運命の相手が、足をそろえてモジモジする姿が似合い過ぎるユアン・マクレガー。シャイでキュートで優しくて、ジム・キャリーの猛烈アタックに戸惑う表情がカワイイ。彼のためなら何でもやるはずなのに、なかなかカタギになれないお調子者ジム・キャリーも役にピッタリだ。異色のラブストーリー。

アルカトラズからの脱出』(1979)

こんなところにいられるか!

アルカ

脱獄不可能と言われるアルカトラズ刑務所に送られてきた男が、通気口から外へ出られるという話を聞き、脱獄する方法を思いつく。

サンフランシスコ湾に浮かぶアルカトラズ島。かつてその島にあった鉄壁の牢獄から逃げ出した男たちの実話である。彼らの脱獄計画は、独房の小さい通気口を広げ、そこから外へ出るというシンプルな手段だが、そこは島なので、最後は海を渡らなければならない。その難関を突破するための準備も、見どころの1つだ。

人権を踏みにじられることへの怒り。彼らは囚人だが、人間としての尊厳を守りたいし、理不尽な暴力で仲間を失った悲しみも原動力。何とか道具を集めて通気口を取り外すとか身代わり人形を作るとか、そんなオーソドックスな作戦に時代を感じるし、ちょっとロマンティックなラストもいい。

』(1960)

とにかく掘る

穴

パリの監獄にいる4人は、裁判に出廷する日が来ることに耐えられず脱獄の計画を立てていたが、ある日同じ部屋へ5人目の男が入ってくる。

1947年に起きた脱獄事件を基に映画化。4人の俳優の中にその時の脱獄囚がいるというのだから、驚きだ。新参者に計画を打ち明けるべきかどうか。彼は本当に信用できるのか。育ちのよさそうな彼にだけ面会が来たり、豪華な差し入れがあったり。突然割り込んできた異質な存在が緊張感を生む。

知恵を絞って身近なもので道具を作り、脱獄の達人の指示に従って少しずつ穴を掘っていく。汗と土でドロドロになりながらひたすら掘り続ける彼らの姿が、モノクロで淡々と映し出され、無駄のないチームワークが気持ちいい。アナログな目くらましも微笑ましく、一気になだれ込む衝撃のラストが忘れがたい名作。

オー・ブラザー!』(2000)

大金を目指して

オー

大恐慌に揺れる1930年代のアメリカ南部で、主人公の詐欺師は一緒に鎖でつながれている2人の囚人と脱獄し、かつて自分が埋めたはずの120万ドルを探しにいく。

原案はギリシャの叙事詩「オデュッセイア」。3人が目指す大金の隠し場所は、今は人造湖建設の予定地になっていて、あと4日で水没するという。そんな時間制限の中、目標に向かって走る彼らは、旅の途中でいろいろな人に出会う。コーエン兄弟の作品にしては驚くほど明るく楽観的で、音楽も高く評価された作品。

ジョージ・クルーニーがこんなおバカな役をするのが当時は意外だったが、ヘアスタイルを異様に気にする変なキャラクターにノリノリである。このズッコケ3人組はピンチになると「ズブ濡れボーイズ」に変身したりして、脱獄映画に付き物のスリルやワクワク感ゼロ。鎖につながれたまま一本道をひたすら進む彼らの姿が、ちょっとシュールだ。

パピヨン』(1973)

自由をあきらめない

パピヨン

胸に蝶の刺青があることで「パピヨン」と呼ばれていた金庫破りの男が、無実の罪で終身刑を言い渡されてしまい、自由を求めて何度も脱獄を繰り返す。

脱獄映画の金字塔と呼ばれる作品で、2019年6月にはリメイク版が公開となる。冤罪で13年間も投獄され、脱出不可能と言われた孤島に送られた主人公が、何度も何度も脱走を試みる姿は壮絶で、これが実話だなんて信じられないほど。狂気スレスレの不屈の精神が、胸を打つ。

彼の親友を演じたのが、名優ダスティン・ホフマン。なで肩の彼が両手を胸に当ててちょこちょこ歩く姿が、愛らしい小動物のよう。なので、足手まといになるんじゃないかとハラハラするのだが、劣悪な監獄生活では癒し的な存在だ。彼は果たしてパピヨンと運命を共にするのだろうか。哀愁のあるメロディが、尽きぬ闘いの切なさを物語る。

ミッドナイト・エクスプレス』(1978)

もう我慢できない!

ミッドナイト

1970年代に恋人とトルコを旅行していたアメリカ人青年が、麻薬不法所持の罪で禁固4年の実刑を受け、現地の刑務所に投獄されてしまう。

タイトルは「脱獄」を意味する隠語。暴力が横行する地獄のようなトルコ刑務所で耐えていた彼は、刑期が30年伸びてしまったことを知り、ついに脱獄を決意する。当時まだ新人だったオリヴァー・ストーンが実話に基づいて脚色し、アカデミー賞も受賞しているが、所内の拷問や暴行などは事実に反しているのでご注意を。

言葉の通じない外国で逮捕され、劣悪な環境で理不尽な暴力にさらされ続ける恐怖。その出口の見えないカフカ的不条理にグルグル巻きにされ、正気を失いかけた主人公が恋人のオッパイに救われる有名なシーンは、男性が見ると泣くかも。悲惨な境遇の中に芽生える男同士の愛が、ロマンティックでこそばゆい。

板尾創路の脱獄王』(2009)

ミステリアスな脱獄

脱獄王

第二次世界大戦が迫りくる不穏な空気が流れる時代、何度刑務所に収容されても必ず脱獄してしまう「脱獄王」と呼ばれる男がいた。

お笑い芸人である板尾創路の監督デビュー作品で、『パピヨン』(73)や『大脱走』(63)の影響を強く受けているという。驚異的な身体能力と奇抜なアイディアによって簡単に脱獄してしまう彼は、理不尽な虐待を受けても常に無表情で無口。この何を考えているのかわからない不気味な男が、板尾創路のイメージにピッタリだ。

せっかく脱獄したのに、いつも発見されやすい場所にいるので捕まってしまう。彼はなぜそんなことを繰り返すのか。脱獄の目的は何なのか。それがこの映画のオチ。彼の正体を見抜こうとする看守長とのやりとりには緊張感があるものの、オール巨人や宮迫博之、千原せいじなども出演しているので、シリアスなコントのようでもあり。

スリーデイズ』(2010)

一緒に逃げる

スリーデイズ

突然殺人容疑で逮捕された妻が、裁判で無罪になるのは難しいと知った夫は、彼女を救うために脱獄させようとする。

フランス映画『すべて彼女のために/ラスト3デイズ』(08)のリメイク版。仕事も親も祖国も捨て、何が何でも妻を脱獄させようとする夫の必死さが切ないほどである。チャンスは彼女が移送される3日間。夫の助けに歓喜するかと思いきや、本人は脱獄に抵抗を示すところが面白い。家族の幸せな生活を取り戻すため、彼は暴走する。子供も巻き込んで。

警察の代わりに真犯人を見つけるよりも、力づくで奪い返した方が確実だし早い。彼は脱獄経験者から有益なアドバイスを受け、資金のためには強盗までやる覚悟。そもそも冤罪なのだから、彼にとって脱獄は正義なのだ。マッチョではないラッセル・クロウが体を張ってがんばる姿が、いかにも一般人という風情で説得力あり。

いかがでしたか?

極悪人が脱獄してもらっては困るので、観客が感情移入できるように、映画では囚人は意外と真っ当な人間だし、むしろ刑務所側が非人道的であるように描かれていて、「これでは逃げ出したくなるのも当然だ」と納得できるシチュエーションになっている。

つまり脱獄は、自分の力で人間性を取り戻す行為。逆境を乗り越えようとする勇気ある行動なのである。

なので、過去の作品には実話に基づいているものも多いが、現代を舞台に脱獄そのものを娯楽にした映画を作るのは難しいかも。

これからは、脱獄コメディのような新しいジャンルを期待してみたい。

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