朝ドラ『なつぞら』の夕見子役・福地桃子に密着!「家族の形はマニュアルがないから感動する」【独占現場レポ&インタビュー】

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

記念すべき100作目のNHK連続テレビ小説『なつぞら』が好調だ。広瀬すず演じる北海道・十勝の農場で育ったヒロイン・奥原なつが、アニメーションの世界に憧れアニメーターとして成長していく瑞々しい姿を活写している。なつを取り巻くキャラクターもバラエティに富んでおり、視聴者を飽きさせない。

なかでも、両親を戦争で亡くしたなつが引き取られる柴田家は、ガンコじいさんを好演中の草刈正雄を筆頭に、松嶋菜々子、藤木直人とベテラン勢が支え、長女の夕見子役の福地桃子がフレッシュな存在感を残している。FILMAGAでは、撮影も佳境を迎えた第93回の撮影現場におじゃまし、夕見子役の福地に密着取材を敢行した。

なつぞら_福地桃子

『風林火山』や『精霊の守り人』など代表作多数、脚本家・大森寿美男によるオリジナルドラマ『なつぞら』。第93回は、なつ、夕見子、雪次郎(山田裕貴)の幼なじみ三人が、映画を観た帰り道に、かつて下宿していた川村屋に久しぶりに立ち寄ることに。川村屋ではマダム・光子(比嘉愛未)が出迎えてくれ、なつは光子に咲太郎(岡田将生)が新しい会社を始めた背景に、自分の存在があると報告する。すると突然、あることを相談したいと夕見子は光子に詰め寄る。

取材日には、川村屋に三人が立ち寄るところから撮影がスタートした。連続テレビ小説の収録は概ね、スケジュールが決まっており、月曜日は1日リハーサル、火曜日~金曜日までが撮影、土曜日・日曜日はセットを組むというルーティン。撮影は準備・撤収を含め、往々にして朝8時~遅いときは24時近くなるというから、体力勝負と言われるのもうなずける。この日も、すでに朝8時すぎには機材などの準備は整っており、スタッフのチームワークの良さがうかがえた。

なつぞら_福地桃子

昭和30年代の新宿を再現したというセットは、細部までこだわりぬかれており、クラシックな看板や、少し埃っぽさを感じる路上など、どこかタイムスリップしたような気にさえさせられる臨場感。

なつぞら_福地桃子

なつぞら_福地桃子

エキストラもスタンバイし、ほどなくして、広瀬、福地、山田のメインキャストが登場した。朝一といっても張り詰めた空気はなく、すぐにスチールカメラに気づいた福地、さらには山田も「おはようございます! よろしくお願いします」とにっこり笑みを向けてくれた。

なつぞら_福地桃子

福地演じる夕見子は、なつと共に育った十勝でも指折りの才女という役どころ。北海道大学に入学し勉学に励んでいたが、学内の男性と恋に落ち、東京に駆け落ちしてきたというバックグラウンドを持つ。天真爛漫ななつとは反対で、どこか達観したようなものの見方をする夕見子は、結婚して主婦となり家庭を守るのが女性の役目という風潮が強かった当時においても、独立心を強く持っていた。

なつぞら_福地桃子

そんな夕見子がなつ、雪次郎、さらには川村屋に勤めるウェイトレス・佐知子(水谷果穂)と共に結婚観についての意見交換が交わされるのが当回。さらには、川村屋という名店を経営するマダムに憧れを持っている夕見子が、相談ごとがあると決死の表情で懇願する場面まで、長い台詞、会話劇が繰り広げられる。熱いパッションをぶつける福地のカメラリハーサルに余念はなく、真剣な顔で方言指導の先生とも細かいやり取りを確認し、待ち時間も集中力を途切れさせなかった。

なつぞら_福地桃子

なつぞら_福地桃子

なつぞら_福地桃子

本番、メインキャスト三人には一切「NG」はないどころか、福地は夕見子の胸に抱えた思いを吐き出すような熱演を披露。一方、山田にいたってはリハーサルで“ウケた”アドリブもきちんと挟み込む手腕を発揮し、これには広瀬も福地もチェックのときに大笑いしていた。

なつぞら_福地桃子

なつぞら_福地桃子

緊張が解けると、三人はたわいもないことを話したり、微笑み合ったりしており、毎朝画面から伝わる息の合った様子は、なるほど、緩急のついた現場の空気がそのまま漏れ伝わっているかのようと納得。以下、撮影直後の福地にインタビューした。

なつぞら_福地桃子

なつぞら_福地桃子

■インタビュー:「知れば知るほど夕見子が好きになる」

なつぞら_福地桃子

――お疲れ様でした! 今日のシーンは、撮ってみていかがでしたか?

福地 1日ありがとうございました。今日は、なつから噂には聞いていた川村屋で、初めてマダムに会う日でした。東京にきた夕見子の熱量を込めて自分の思いを伝えました。「なんだ、なんだ!?」と思ってもらえるように意識してやっていました。

――夕見子の内側から沸き立つ想いがしっかりと表現されていましたね。

福地 実際、お店に行ってやらせてもらうと、余計なことを考えなくても気持ちよくできた気します。セットの力、場所の力ってあるんだな……とすごく感じました。私、これまでは北海道のシーンがほとんどで「ここが東京なんだ」って、今日、初めて感じたんです。私自身、「ああ、来たな……!」という気持ちで川村屋に入りました(笑)。東京にいる人たちは、マダムを代表して、やっぱりキラキラしているな、と思いましたし。

――北海道メンバーとは、少し違いますか?

福地 全然違います。「都会だな」という印象でした。夕見子は東京に憧れもあるから、髪型や洋服も、学生時代から比べると変化しているんです。衣装さんもすごくこだわってくださっていて、ちょっと東京っぽさを加えて、印象が変わるようにしてくれています。

――夕見子自身、北海道にいるときから内面もだいぶ変化していますよね。

福地 そうなんです。小さい頃から知っているなつと雪次郎とは一緒に成長してきたけど、夕見子は大学を休学して東京に出てきている設定だったので、その間はちょっと離れているんですよね。しばらくして会ったときに、自分が学んできたことを主張したくなる気持ちは、私もわかるなと思うんです。台詞も言っていて、すごく気持ちがいいんです(笑)。自分の意見をしっかり持っている人は、自然に立ち姿もたくましくなるのは、夕見子をやっていて感じます。

なつぞら_福地桃子

――福地さんと夕見子、共通点はあるんでしょうか?

福地 私は、夕見子と共通点は少なかったです。考え方も違うから、それで「どうしようかな」と、悩んだこともあります。今でも悩んだりはしますけど、自分がこの役をやらせてもらっている意味を考えて、吸収しながらやっていかないと、きっと強いものは出ないのかなと思っているんです。自分がこの役をやらせてもらっていることを噛みしめながら、愛されてほしいなと思いながらやっています。

――今回、近しい関係性でご一緒されている、広瀬さんとの共演はいかがですか?

福地 ヒロインをやられているとか、そういうことではなくて、人としてすごく、その場所に安心感を与える方なのかなと思います。最初、すずちゃんは「人見知り」と言っていたけれど、全然そんなふうに感じたことはないし、自然体だからこその安心感なのかなと思います。実際は私よりも年齢はひとつ下なのですが、すごく頼りにさせてもらっている存在です。

――ひとりの人間の変化を演じられるのが、連続テレビ小説の面白さかもしれませんが、今日(こんにち)まで長く夕見子をやっていて、何か感じるところはありますか?

福地 そうですね……。実際に台本をいただいて、いつも「夕見子もなつもどうなるんだろう」と思いながら読んでいるんです。ヒロインの人生を追っていくお話なので、成長していく姿を見て、「あっ、目標が見えてきた。これをやりたかったんだ!」と明白になってくると、自分の中で納得していくところも増えますし、その人をやっていることにどんどん自信がついていくというか。ひとりの人間としての成長過程と、ちょっと似ているのかなと思います。「知れば知るほどキャラクターを好きになるのは、こういう感覚なんだろうな」とも感じています。夕見子がはっきり言うことで、「そういう考え方もあるんだ」と自分でも思わせてもらっているので、これからも、もっともっと、大人になるにつれてどんどん強くなっていく夕見子でありたいなと思います。

なつぞら_福地桃子

――なつと夕見子の関係性、柴田家については、どう思いますか?

福地 なつと夕見子は血がつながっていないですけど、家族よりも、血がつながっている兄妹よりも、何でも言い合える関係になれたんですよね。私からしたら、すごく理想の、愛のある家族だなと思います。こうして、なっちゃんが朝ドラのヒロインをやることで、複雑に見られる関係かもしれないけれど、家族の形なんてマニュアルがない、決まりがないからこそ、すごく感動すると思うんです。こうした関係だからこそ、深いものが生まれるな、と台本を読みながら私はいつも感じています。

――東京編になってから、柴田家のわちゃわちゃ食卓を囲むシーンが少なくなり、少し寂しさも感じています。

福地 そうですよね(笑)。柴田家は、女の子がすごくにぎやかで、照男兄ちゃんは割と控えめで、父さんとじいちゃんはいつも意見が噛み合わなかったり。そんな家族、姉妹の中でも盛り上がると、よく、なつと明美、夕見子といった2対1みたいになっていて、夕見子が、ちょっと理論的なことを言うと、なつと明美が「また言ってるよ」みたいな空気になる。その瞬間、なつと明美が本当の姉妹のように見えときがあって。私、そういう時にすごく感動するんです。だって本当は血がつながっていないのにと考えると、本当の姉妹みたいな関係性が不思議に思えて…客観的にみている時こそ、そういう意外なところでも感動するんですよね。家族の中でも感動の瞬間があったりするので、広い視点でお話を観ていただけると、可能性を感じる作品なのかなと思います。(取材・文=赤山恭子、撮影=林孝典)

NHK連続テレビ小説『なつぞら』は、毎週月〜土曜日朝8時ほか放送中。

出演:広瀬すず、岡田将生、福地桃子、山田裕貴 ほか
脚本:大森寿美男
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/natsuzora/

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