イマジネーションの宝庫!水中の生き物に思いを馳せる映画17本

映画マニアと呼ばないで

夏りょうこ

海の中には無数の生物がいて、人間には想像もできない広い世界がある。

そんな未知の世界への憧れや畏怖の念にかきたてられ、映画の中でも多くの物語や空想上の海洋生物たちが生み出されてきた。

そこで今回は、海や川など水中に住む生物が印象的な映画17本をご紹介しよう。

アクアマン』(2018)

どっちにつく?

アクアマン

アトランティスから逃げてきた女王と、彼女を助けた人間との間に生まれた主人公が、アトランティスが地上への侵略を始めたことを知り、どちらの味方につくか悩む。

人類よりもはるかに高度な文明を持つ海底王国アトランティス。地上人と海底人のハーフである男が人類滅亡の危機に立ち向かう一方で、二つの世界の狭間で揺れ動き、自分のアイデンティティに悩む。アクション。家族愛。復讐。謎解き。そういった娯楽のテーマがぎゅっと詰まったハリウッド大作である。

地上人が我が物顔で自然を荒らすから地底人の恨みを買うわけだが、そんな問題よりも、超スピードで海に潜り、海洋生物を自在に操るアクアマンの活躍に目が釘付け。野性味あふれるマッチョなヒーロー。しかし、原作では巨大なタツノオトシゴに乗る姿が、笑いのネタにされていたという。カッコよく生まれ変わったアクアマン見よ!

崖の上のポニョ』(2008)

好き好き大好き!

崖

クラゲたちに乗って家出してきた魚の子ポニョは、崖の上にある家で暮らす少年に助けられ、優しい彼のことを好きになってしまう。

CGなしで手描きにこだわったアニメで、波のダイナミックな動きや、リアリティのある魚の群れなどにこだわりが見える。自分を瓶の中から救い出してくれた少年の傷を舐めて治したポニョが、その血によって体が変化。結局ポニョは人間の女の子になる。

5歳児同士が一目ぼれをし、その一途さと勢いに飲みこまれて説得させられてしまう家族。変わらぬ愛を誓うには二人とも若すぎやしないかというツッコミは、野暮なのだろう。嵐が過ぎ去った後も嵐のようにストーリーが進み、ポニョの「大好き!」が全てをなぎ倒す。ポニョの個性的な両親が、微妙なアクセントになっていてよい。

フィッシュマンの涙』(2015)

傷ついた魚人間

フィッシュマン

フリーターの主人公は、莫大な謝礼が欲しくて新薬の被検に参加したところ、副作用で魚人間になってしまう。

中身は人間で、外見は魚。ギョロっとした青魚系の目がオドオドしている彼は、おそらく優しくて大人しい青年なのだろう。好きな女の子に裏切られても許し、気まぐれな世論に振り回されてもじっと耐え、理不尽な目に遭っているのに怒らない。でもなぜ、彼だけが魚類化してしまったのか。彼は人の記憶に残らないくらい平凡な人間なのに。

社会の真実を追求して正義の報道をするのが夢だという見習い記者は、彼の独占密着取材を通して、製薬会社の思惑や利己的な人間たちを見つめ、自分自身のあり方を問いただしていく。魚人間という異形があぶりだしたのは、韓国の社会問題と彼の情熱。魚としての第2の人生も、そう悪くなさそう。

オーシャンズ』(2009)

想像以上にワイルド

オーシャン

世界各地の海で生きる100種類以上もの海洋生物を撮影したネイチャー・ドキュメンタリー。

北極海。南極海。美しい海。大気圧1,100倍の深海。そこでは、イルカがイワシの大群を追いかけ、タコが天敵からアシを切って逃げ、砂浜でくつろいでいたアシカが突然シャチに襲われるなどの激しい生存競争が……シャコとカニが対決するなんて、知らなかったよ。

この映画のために開発された最新技術が映し出すのは、素晴らしい臨場感と美しい自然だけではない。フカヒレが欲しい人間が、ヒレだけを切り取ったサメを海にポイ捨てするシーンは、ショッキングだ。ずらりと並ぶ絶滅した海洋生物のはく製。そのうち人類は、水族館でしか海洋生物を見ることができなくなるかもしれない。

シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)

二人は幸せに暮らしましたとさ

シェイプ

1962年、米ソ冷戦下のアメリカで、極秘研究所の清掃員として働く主人公は、仲のよい同僚と一緒に秘密の実験を目撃してしまう。

アマゾンで神として崇められていたという不思議な生物。その魚人のような姿に惹かれた彼女は、仕事の合間にこっそり部屋に忍び入っては、ゆで卵をあげたり音楽を聴かせたり。口がきけない彼女と人間の言葉を発しない彼は、孤独な魂を持つ似た者同士。だから二人の間に言葉はいらない。

半魚人のような特異な容姿なのに、立ち姿の美しさときたら。畏怖の念を起こさせる気品ある異形。そんな彼の扱いをめぐってソ連のスパイや軍人や博士らの思惑が入り乱れ、彼女は彼女で救出作戦を計画する。サスペンスフルな展開に心臓がバクバクしつつ、全てを捧げて相手を想う愛の形に涙。

海獣の子供』(2018)

宇宙とシンクロ

海

自分の気持ちを言葉で表すのが苦手な女子中学生が、同級生とトラブルを起こしてしまい、水族館でぼんやり過ごしていたところ、魚と一緒に泳いでいる兄弟と出会う。

ジュゴンに育てられたという兄弟は、陰と陽のように性格が正反対。そんな二人と一緒に過ごすようになった彼女は、今まで自分のいた世界とは全く違う場所へ導かれていく。そして、次々と起こる超自然現象。海のすべての生き物が日本に集まってくるだなんて、祭りどころの状態ではないだろうに。

巨大なザトウクジラがゆっくりと波間を通り抜け、流星が海に落ちてくる。原作に特徴的な無数の線がうまく再現され、ウミガメやクジラ、ジュゴン、イルカ、サメなどものすごい数の海洋生物が登場。超音波で情報を送り合う“ソング”が、映像に変換されてスクリーンいっぱいに広がる。人間にもそれができればいいのにね。

ゆれる人魚』(2015)

たとえ失っても

ゆれる

海から上がってきた人魚の姉妹は、ナイトクラブで一躍スターになるが、姉がギタリストに恋をしたことにより、二人を取り巻く状況に変化が起こる。

かの有名なアンデルセンの「人魚姫」をホラー仕立てにアレンジし、しかもミュージカルなのだが、設定を大胆に変えてはいても、物語のエッセンスはそのまま。人間に恋をしてしまった純粋な姉と、本能を捨てられない奔放な妹が、こっそり意志を伝えあうシーンが魚っぽくて面白い。

みんな彼女たちの正体を知っている。なので、彼も彼女が人魚だとわかっていてつきあうのだ。しかし姉妹は基本的にモンスター。恋が彼女を狂わせ、彼女を人間の女にする。共産主義時代のポーランドにあったというダンシング・レストランで流れる音楽が、キッチュでしびれるサウンド。いろいろガツンとくる異色の話題作である。

河童のクゥと夏休み』(2007)

同居人は河童

河童

学校からの帰り道に大きな石を見つけた小学生の男の子が、その石から出てきた河童の子と一緒に暮らしはじめる。

最初は珍しいペットがやって来たような感覚だったが、いにしえから生息している伝説の生物なだけに、深い考えを持っているクゥの言動に影響を受けていく少年。それはまるで古老に知恵を教わるような。そして、ここはクゥのいるべき場所ではないと悟った少年は、クゥにとって最良の選択をするのである。

クゥと出会ったことで、ちょっとだけ大人の階段を上った少年。ひと夏の経験を通して成長できるのは、若者の特権かな。別れ際になって初めてつらい気持ちが湧いてくるなんて、人生そんなもんだね。子供時代の夏休みを思い出すアニメ。

アリゾナ・ドリーム』(1992)

夢の墓場

アリゾナ

ニューヨークで魚を数える仕事をしている主人公は、騙されるようにして故郷アリゾナへ連れ戻されてしまい、そこで美しい未亡人に出会う。

アラスカで巨大なカレイであるオヒョウを釣る。それが彼の夢である。そして、彼が一目ぼれした未亡人の夢は空を飛ぶことだし、彼女の義娘の夢はカメになること。『レイジング・ブル』のセリフを暗記し、『北北西に進路を取れ』のシーンをそっくりマネする友人は、映画俳優に憧れている。

イギー・ポップの歌声に乗ってゆらゆら空を泳いでいくオヒョウは、一体どこに行くのだろう。アメリカには、もう夢は残ってはいないのか。若かりし頃のジョニー・デップが、個性的な二人の女性に手を焼きながら、必死に夢をつなぎとめようとする青年を好演。乾いた赤い大地を舞台に、不思議な浮遊感が漂う作品だ。

オルカ』(1977)

復讐へまっしぐら

オルカ

水族館へ売るためにオスのオルカ(シャチ)を生け捕りにしようとした漁師が、誤ってメスを撃ってしまい、そのメスは胎児を産み落して死んでしまう。

目の前で身重の妻を殺されたオスは人間どもをにらみつけ、「今に見ていろ」と復讐の炎をメラメラさせながら去っていく。『ジョーズ』(75)の大ヒットを受けて製作された多くの動物パニックとこの映画が決定的に違うのは、オルカが家族を愛し、怒りと悲しみで復讐するだけの高い知能を持っているというこの設定だ。

ホワイト・シャークを食いちぎるオルカ、強すぎ。停泊していた漁船を全滅させ、港のパイプラインを切り、標的を北氷洋へと誘いこむオルカ、賢すぎ。でも人間にだって、オルカのつらい気持ちはわかるのだよ。去っていくオルカの寂しい背中ときたら、まるで西部劇のよう。

グラン・ブルー』(1988)

海が呼んでいる

グランブルー

道具をつけずに海に潜るフリーダイビングに命を賭けた2人の男の友情と、海の男を愛してしまった女性の葛藤を描く。

ダイビングの経験がある監督が、実在するフリーダイビング選手ジャック・マイヨールをモデルに描いた作品。『グレート・ブルー』(88)のフランスオリジナル・バージョンで、他にも様々なバーションあり。海と離れられない主人公が貫き通す男のロマン。恋人からすればひどい話だが、彼には他の生き方ができないのだ。

キラキラ光る大海原と潜水シーンが美しく、驚異的な身体能力を持つ彼はイルカのように海とたわむれる。深い海には音もなく光もなく、彼が落ち着くのは愛する女性のそばよりも誰もいない海の底なのだろう。有名なラストシーンは、天女が彼を迎えに来たかのよう。

グエムル -漢江の怪物-』(2006)

環境汚染によって

グエムル

在韓米軍基地が大量に投機した化学物質が流れ出した漢江で、ある日突然巨大な怪物(グエムル)が現れ、河川敷にいた行楽客たちを次々と襲いはじめる。

ちょうどそこで売店を営んでいた主人公は、娘がグエムルの餌食にされてしまったのを目撃するが、娘はまだ生きているという確信から、家族が団結して独自の捜索を始める。金髪のソン・ガンホが娘のために奮闘する姿が感動を呼び、事態の収拾に乗り出した米軍との攻防が手に汗握る。

グエムルは泳ぐ。跳ねる。走る。しかもかなり素早く、水陸OKなので無敵。しかし、生け捕りにした人間を下水溝に貯蔵している様子が、ほのかな知能を感じさせてゾッとする。ゴジラのように大きくないサイズ感が、「もとはオタマジャクシみたいだったのかも」と思えてよけいに恐ろしい。

ラブ・セレナーデ』(1996)

魚なの?

ラブ

オーストリアの田舎町で暮らす姉妹の隣に、公営ラジオで働くことになった元人気DJが引っ越してくる。

いきなり食事を持っていったりして、彼に猛烈アタックをする姉と、何をするわけでもなく彼を見守っている妹。実は二人とも彼が好きなのだが、思い込みの激しい姉に比べ、いつも曖昧な笑顔を浮かべているオドオドした妹の方が、どことなくしたたかそう。砂ぼこりの舞う小さな町で起きた恋のバトルが、オフビートでシュールに描かれる。

彼の首の横からブクブクと出てくる泡。彼の息遣いに合わせて動くカジキマグロの剥製。そんな不思議な現象を見てしまった妹が、彼が魚ではないかと疑いを抱く。そして三人の関係は……あらら。そんなことになっちゃうの。予想をはるかに超えた展開にドッキリ。

ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』(2014)

アザラシ母さん

ソング

灯台の家で暮らしている少年は、母親からプレゼントされた貝の笛を抱きしめて眠りについたが、翌朝起きてみると、赤ん坊の妹を残したまま母親はいなくなっていた。

アイルランド神話をベースにした兄妹の冒険物語。海ではアザラシ、陸では人間の姿になる妖精だった母親。それを知った少年は、妹が生まれてきたせいで母親がいなくなったのだと思い込み、何も知らない幼い妹を邪険に扱う姿がつらい。しかし、その妹が魔女に連れ去られてしまい、兄は妹を助けるために魔界へ向かう。

妻を失った悲しみから娘を溺愛する父親と、母親を失った悲しみから妹を憎む兄。そんな二人にはさまれた妹は、言葉ではなく歌を口ずさむ。透明感のある優しいテーマ曲が効果的に流れ、ブルーの神秘的なグラデーションが美しい絵本のよう。子供たちが人生を生き抜くためのメッセージが込められた秀作アニメ。

クロコダイル・ダンディー』(1986)

ワニは友だち

クロコダイル

ニューヨークの新聞記者として活躍する女性が、オーストラリアの奥地にいる“クロコダイル・ダンディー”と呼ばれる男を取材しようと現地に飛ぶ。

ワニ革のチョッキにカウボーイハット。ワニの剥製を持って登場するワイルドさ。何十匹ものワニと格闘して無事帰還したという彼は、水牛に術をかけて大人しくさせたりもできる頼もしい男だ。そんな彼が大都会ニューヨークへ行くことになったから、さあ大変。

飛行機とエレベータに驚き、標識によじ登って街を見渡し、ひったくりがいたら送球してやっつけたりして、コンクリートジャングルでも大活躍の彼。地下鉄での告白シーンは、笑いと感動を呼ぶ名シーンかも。続編『クロコダイル・ダンディー2』(88)『クロコダイル・ダンディー in L.A.』(01)あり。

ファインディング・ニモ』(2003)

どこまでも探す

ニモ

400個もの卵の中からたった1匹だけ生き残った魚のニモは、初めて学校に行った日にダイバーにさらわれてしまう。

あんなに大切に用心深く育ててきた子供を、目の前で連れていかれてしまった父親。超過保護な父親への反発心から無謀な行動に出て、あっさり捕まってしまったニモ。手がかりを求めて一緒に旅をする相棒が、大切なことをすぐに忘れてしまうのでハラハラし通しだ。

ニモの行き先は歯科診療所の水槽。そこに登場する歯の矯正具をはめた女の子が、いつも魚を乱暴に扱って死なせてしまうというキャラで、そのインパクトがトラウマになりそう。

海の生き物たちの知られざるドラマと、彼らの視点から描かれる世界が新鮮な親子アニメ。続編『ファインディング・ドリー』(16)あり。

ビッグ・フィッシュ』(2003)

人生にはおとぎ話が必要

ビッグ・フィッシュ

ホラ話が好きな父と折り合いが悪かった息子は、父の危篤を知らされて久しぶりに帰郷するが、病床で相変わらず作り話をする父となかなか理解しあえずにいた。

自分の人生を多少「盛って」話してしまうことはあるだろうが、この父親の話はかなりのおとぎ話仕立て。未来を予見する魔女。巨人。人を襲う森。そして巨大な魚。それはもう荒唐無稽で愉快なホラ話だ。しかし息子は、いつまで経っても本当のことを話さない父親に反発し、夢のような思い出を話続ける様子に苛立つ。

たとえそれがあり得ない話だとしても、彼にとってそれが真実。現実に起きた事実を豊かなイマジネーションで膨らませ、ファンタジーにまで昇華してしまう。だから愛する妻との出会いだって、この上なくロマンティック。彼の物語は息子によって引き継がれ、創作されて幕を閉じる。本当におとぎ話のような幸せな人生でした。

いかがでしたか?

かわいそうな半魚人。復讐に燃えるシャチ。イメージを覆す人魚。人間をキープする怪物。

子供向けのアニメにも大人向けのホラーにも登場する海洋生物たちは、様々なキャラクターとして登場し、人間も魚に憧れたり、また魚になったりもして、実に不思議な存在として描かれる。

こんな映画を観たら、水族館で空想をかき立てられるかも?

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