大人になっても夏休みがあるかもしれないけれど、子供時代のワクワクするような夏休みや、思春期の甘酸っぱい夏休みのような時間はもう過ごせない。
記憶に刻み込まれた切ない思い出。ひと夏の冒険。出会いと別れ。
長い夏休みには、人生を変えるようなことが起きても不思議じゃない
そこで今回は、甘酸っぱい夏休みを思い出させてくれる夏休み映画を12本ご紹介しよう。
『冬冬の夏休み』(1984)
いろいろあった夏休み
小学校を卒業したばかりの少年が、入院中の母親の見舞いに行った後、妹と一緒に祖父の家で夏休みを過ごす。
監督自身の少年時代をモチーフにした作品。友だちと川で泳いでいたら、仲間外れにした妹が怒って服を捨ててしまい、裸で帰るハメになったという程度なら微笑ましいエピソードだが、強盗を目撃したり電車に轢かれそうになったり。おじいちゃんのいる田舎で過ごす夏休みにしては、少々ワイルドな日々である。
まだ幼い兄妹が、親と離れて知らない土地で暮らす不安や心細さ。そんなぼんやりした寄る辺のなさと、子供の視点から見た大人の世界が淡々と描かれる。例えば、妊娠をめぐる2つの騒動などはまさに大人の事情なので、困っちゃう。雨降って地固まるとはこのこと。古き良き日本の風景を思い出す台湾映画。
『旅するジーンズと16歳の夏』(2005)
1枚のジーンズを通して
生まれる前から母親同士が親友である幼なじみの4人は、16歳になって初めて別々に夏休みを過ごすことになる。
そんな4人が見つけたのは、体型がバラバラな彼女たち全員にピッタリ合うというジーンズ。この不思議なジーンズは、自分たちに幸運をもたらしてくれるはず。そう感じた彼女たちは、離れ離れになる夏休みにそのジーンズを順番に履いていくことにする。
キャッキャした青春メモリー映画かと思いきや、四人四様の人生がなかなかのもので、中にはハードな問題を抱えた子もいたりして、だからこそ絆が深いのだろう。旅するジーンズは、彼女たちの怒りや悲しみ、苦悩を見つめていく。みんなそれぞれいろいろある。続編『旅するジーンズと19歳の旅立ち』(08)と併せて観るべし。
『大人ドロップ』(2013)
言い出せなくて
男子高校生の主人公は、親友に頼まれて自分の好きな女の子をデートに誘うことになるが、ある出来事によって彼女と気まずくなり、そのまま夏休みを迎えてしまう。
片思いの女の子が夏休み中に高校を辞めると知ったら、そりゃもう会いに行くしかないだろう。辞める理由もわからないし、仲直りもしていないから、気持ちの整理がつかない。しかし、だからといって、彼女の居場所情報が「あそこらへんのどこか」レベルで行ってしまうところが、男子のバカでカワイイところだ。
居ても立ってもいられないまっすぐな衝動。大人になっても忘れられないあの夏休み。池松壮亮の親友である前野朋哉が、冴えないくせに自意識過剰という思春期特有の味わいで、複雑な家庭事情を抱える橋本愛の神秘的で大人びた雰囲気が、男子は憧れるだろうけど手に負えない感じでよい。