過激で痛々しい描写に目を覆う人続出!ホラー界のニューウェーブ“フレンチ・ホラー”6選

「映画」を主軸に活動中のフリーライター

春錵かつら

「フランス映画」と聞けば小粋でオシャレなラブストーリーを思い浮かべる人も多いはず。でも2000年初頭を皮切りに、異彩を放つ“フレンチ・ホラー”というニューウェーブが巻き起こった。

既存のホラー映画とは一風変わった演出や、これまでのフランス映画とは結びつかない過激な描写など、ホラーファンにとっては期待を良い意味で裏切る作品が数々登場し、独特の存在感を見せつけた。

今回は、そんなフレンチ・ホラーを代表する作品を取り上げ、ひと味違うみどころを紹介しようと思う。

『ハイテンション』(2003)

まず紹介するのは、その残酷さから日本での公開が数年間見送られていた本作。監督を務めたアレクサンドル・アジャは本作でハリウッドデビューが決定した。

親友アレックスの実家で週末を過ごすことになった女子大生マリー。ところがその夜、突然訪ねてきた見知らぬ男がアレックスの両親と弟を惨殺、マリーは連れ去られそうなアレックスを救おうとする。

血しぶき浴びるし身体もモゲる、見知らぬ男の容赦ない襲撃は、一切の躊躇なく遂行される。過激でおどろおどろしい惨劇が繰り広げられる骨太のスプラッターホラーは、「フランス発のホラー? どれどれ」と気軽に手に取った人にトラウマ級の衝撃を与えた。

『屋敷女』(2007)

あるクリスマスイブ。不幸なアクシデントを経て出産を間近に控えた妊婦サラの家に、見知らぬ女が電話を貸してほしいと訪れる。サラは不審に思い断るのだが、女が思いもよらぬ行動に出たことで、妊婦と女との死闘が始まる。

2016年には『インサイド』というタイトルでリメイクもされた本作。狂気の訪問者を演じたのは『ベティ・ブルー 愛と激情の日々』で一躍スターダムに昇りつめたベアトリス・ダル。黒い衣装に身を包んだ彼女の凶器は、ハサミひとつとその執着。シンプル・イズ・ベストとはよく言ったもので、これが最高に恐ろしい。

冒頭から始まる不穏なムードは、開始30分で早くも最高潮に。ここから激しくも生々しい応酬が繰り広げられ、フルスロットルのまま映画は続く。観客に息をつく間も与えない。妊婦の状況に呼応した胎児の様子を同時中継するという演出はフレンチ・ホラーならではの異色さだ。

『フロンティア』(2007)

大統領選挙の決選投票に揺れるフランス。各地で暴動が勃発する中、移民家庭に育った5人の若者が銀行を襲撃するが計画は失敗。国外逃亡を図り国境付近の宿屋に立ち寄るが、その宿は異常な一家の住処だった。

監督を務めたのは『ヒットマン』のザヴィエ・ジャン。カニバリズム、近親相姦、奇形……タブーのオンパレードを盛り込んで殺人鬼一家と移民の若者との血なまぐさい攻防を描く中で、移民問題やかつての奴隷制度に踏み込んだのも目新しい。ホラーファンといえども「うわあ……」と目を覆いたくなるようなバイオレンス描写に、襲われるのが犯罪者といえども同情の念を抱かずにはいられない。

『マーターズ』(2007)

1970年代のフランス。何者かに拉致監禁され、長期間虐待を受け続けた少女リュシーは、自力で脱出し養護施設に保護された。それから15年、リュシーは自分を監禁した相手を発見し、復讐を果たそうとする。

ホラーファンにとっては「胸糞ホラー」として人気の本作。ホラー映画において「胸糞」は、むしろ褒め言葉だ。監督を務めたのは新作『ゴーストランドの惨劇』が公開されたばかりのパスカル・ロジェ。陰惨な拷問・虐待のシーンが続いてもなお何度も観賞したくなる綿密な構造は、この当初から健在だ。「観客に疑問を投げかけたい」という根底から紡ぎだされるホラーは、グロさや恐怖を超えた情緒を湛えている。

『RAW〜少女のめざめ〜』(2016)

厳格なベジタリアンの獣医一家に育った16歳のジュスティーヌは、姉も通う獣医学校に進学する。そこで新入生の通過儀礼として生肉を食べることを強要された彼女は、人生で初めて肉を口にし本性が目ざめ、次第に変貌を遂げていく。

フランス人女性監督ジュリア・デュクルノーの長編デビュー作品となる本作は、アブノーマルな欲望に支配されてゆく少女の成長を描いた異色の思春期ホラー。覚醒した少女は生身の獣のようで艶めかしい。カニバリズムと肉への渇望はセンセーショナルながら、まるで詩のように観る者の感性を刺激する。

『REVENGE リベンジ』(2017)

甘い時間を共に過ごすために若きセレブ、リチャードの別荘を訪ねたジェニファーは、彼の狩猟仲間たちに襲われ、崖から突き落とされてしまう。かろうじて命を取り留めた彼女は、自分を辱しめた男たちに復讐を開始する。

使い倒されたストーリーにも関わらず、血みどろの復讐劇をスタイリッシュに描いたのは、本作が長編映画デビュー作となるフランス人女性監督コレリー・ファルジャ。お腹に穴が開いたまま復讐を遂行するヒロインを筆頭に、タフな登場人物たちへのツッコミも楽しめるリベンジスリラーとなった。その事件に至る背景などを明確にすることで、凌辱されるヒロインを同情的に描かないのは女性監督ならでは。

血の海へと変貌を遂げてゆく復讐現場を、「痛い痛い痛い」と言いながら観賞したいところだ。

いかがでしたか?

まだフレンチ・ホラーに触れてないホラーファンはこれを機に、独自の進化を遂げたフレンチ・ホラーに足を踏み入れてみてはいかがだろうか。

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