三浦春馬、常に新しい自分に「ネクストステージにいくために、日々試行錯誤している」【ロングインタビュー】

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

三浦春馬。デビュー以来、透き通るような白い肌と端正な顔立ち、瑞々しい演技で人気を集めてきたが、ここ数年はフレッシュな色気を精悍さに変え、様々な役柄に血肉を通わせた経験が如実に伝わるような、充実のキャリアを築いている。

アイネクライネナハトムジーク

最新主演映画『アイネクライネナハトムジーク』では、『愛がなんだ』の今泉力哉監督と初タッグで、奇跡や絆を信じたくなる物語を紡いだ。幸せな友人夫婦を横目に、どこか劇的な出会いを待っていた会社員の佐藤(三浦)。ある日、街頭アンケートで本間紗季(多部未華子)に答えてもらったときに運命を感じた佐藤は、彼女と付き合うことに成功。やがて恋人として10年の月日が流れ、佐藤は紗季にプロポーズをするのだが……。

佐藤と紗季以外にも、様々な登場人物がそれぞれの居場所や幸せを求めて交錯する。試写を観終わった三浦は、「こんなにいい作品に出られていたんだ」と思わず頬をゆるめたと、嬉々としてインタビューで語った。役を演じる上での思い、そして三浦が、「ネクストステージにいくため」に、日々感じていることまで語ってもらった。

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――演じた佐藤について、人物像をどうつかんでいったんですか?

三浦 伊坂幸太郎さんの原作にも、プロットにも、「佐藤」は下の名前がないんです。観る方たちが、より普遍性を感じてもらえるようにということかなと思って……例えば、会社で周りを見渡して「ああ、こういう人いるよね」と思ってもらえるような、親しみを持てるような役なのかなと。衣装合わせの段階で、監督に「そうした雰囲気を共通認識として持ち合わせる形でいいですか?」と聞いたら、監督も強く同じことを思っていたそうで、そこから始まりました。

とはいえ、そもそも脚本がよかったので、疑問に思わず自然に言葉を発することもできました。作品のフィルターを通すと、佐藤はダメなようで、とても魅力的な人物でもあると思うんです。やっていてとても楽しかったですし、いいキャラクターに見えるんじゃないかな、と自負しています。

アイネクライネナハトムジーク

――資料によると、佐藤を示す「ごく普通の会社員」というフレーズについて、「普通の人って何でしょう。一番難しい」という三浦さんの言葉が書いてありました。「普通」、「ステレオタイプ」などの言葉は、考えるほどわからないものですね。

三浦 今の時代、どういう「普通」が「ステレオタイプ」なのか、「ステレオタイプじゃない」ことのほうが「普通」だったりもするんじゃないのかな、と思ったりもするんです。本当に「何が普通なのかな」と思いますよね。「普通」といっても、誰しもが何かしらの癖だったり、話の聞き方、仕方に特徴があると思うんです。だから佐藤を作るにおいても、「普通」を追い求めすぎないほうがいいなと思って、引き算というよりかはいつも通りに演じて、要所、要所でエッセンスを加えていった気がします。

アイネクライネナハトムジーク

――佐藤は紗季に出会うまで「待ち」の姿勢だったわけですが、そこに共感する部分はありますか?

三浦 劇的な出会いというか、妄想してしまうようなところは共感できるかもしれないです。「こういうシチュエーションがあったらいいな」とか「こうしたらうまくいくんだろうな」とかは、思ったりしますね。自分よがりなんですけど、もともと一人っ子なので、妄想して遊ぶことに長けているんだと思います(笑)。

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――最近考えたシチュエーション、何かありますか?

三浦 言えませんよ……! おかしな人だと思われそうなので、やめておきます(笑)。

――(笑)。紗季を演じた多部さんとは三度目の共演になりました。

三浦 4年ごとに共演しているので、20代前半の自分も知っているし、その頃自分が現場でどういう立ち居振る舞いをしていて、どういう風に共演者と接していたかも全部見られていますし、どんな芝居をするかも当然知っている。自意識過剰かもしれないですけど、今回も自分が果たしてどう佐藤を演じるかも見られているんじゃないかな、と思うがゆえに、リラックスではなく心地よい緊張感を持って、常に多部さんとはお芝居ができました。

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――初めて組んだ今泉監督については、どのようなイメージを持たれていましたか? 過去作はご覧になっていましたか?

三浦 何作か拝見していたのと、以前、『こっぴどい猫』を観て、とても興味深いなと思っていたんです。『アイネクライネナハトムジーク』に関しては、際立って気の利いた設定ではないからこそ、監督がどう料理するかが楽しみのひとつでした。監督に関していえば、ご自身の作品に自分で出ることも多々ある方なので、ビジュアルのインパクトがすごく強くて(笑)。何となくしゃべりにくい雰囲気の方なのかな、と思っていたりしたんです。けれど、非常にやわらかくて、構えない、しゃべりやすい方だったので驚きました。初日から印象ががらりと変わりましたね。

アイネクライネナハトムジーク

――「監督がどう料理するかが楽しみ」だったという完成作に関しては、どんな風にご覧になりましたか?

三浦 本当に、期待値を優に超えた作品を作っていただけたな、と感じました。なんか……こんなにいい作品に出られていたんだ、という幸福感に包まれて席を立ったんです。ただただ本当に幸せな気持ちになったの で「監督、ありがとうございます……!」という感謝しかなかったです。演じていても幸せだったし、観ても幸せな気持ちにさせてもらえる作品で、終始、顔がほころんでいた印象があります。

近作の『愛がなんだ』と比べても、まったく違う作品になっているので、監督はこう言うと嫌がるかもしれないけど……、実はめちゃくちゃふり幅のある監督なんだなと思ったんです。『愛がなんだ』も一見ものすごくエッジが効いていそうですけど、そうじゃないというか、生ぬるいヴェールを被った突起物のような映画でもあるし。そんな映画も作れるのに、これだけ幸せな、朗らかな、ランタンのようなぬくもりのある映画を丁寧に作ることもできる。いつか、すっごくエッジが効いているものを作る日もくるんじゃないか、という期待さえしてしまう、とても才能のある監督だと思います。天才じゃないかと、今パッと思いました。

アイネクライネナハトムジーク

――映画のテーマのひとつは「出会い」だと思うんですが、三浦さんが「これは大きかった」と思うようなこれまでの「出会い」を挙げるなら?

三浦 そうですね……なかなか優劣はつけられないんですけど。近々のことでいうと、2013年に「キンキーブーツ」という舞台に出会ったときに、ニューヨーク在住のプロデュースで関わっている日本人の方に、観劇後、「どうできあがっていったのか」というプロセスをうかがったんです。そこで、「日本でやるときには、こういう風になっていればいいよね」という夢も語ってくださって。その出会いがなければ、僕は「キンキーブーツ」に出ていなかっただろうと思います。さらにいえば、ミュージカルで歌を練習していなかったら、その先の主題歌を歌うこともしていなかっただろうし。その出会いが今経験する土壌を与えてくださっているんだなと思うと、すごく感慨深いです。活躍によって、恩返ししていきたいと思います。

アイネクライネナハトムジーク

――「キンキーブーツ」は初演も再演も拝見しましたが、本当に素晴らしかったです。三浦さんが演じたローラとの出会いや、そのほか舞台での身体を用いた表現が、映像においても演技の幅を広くしたような印象は、ご自身で持っていますか?

三浦 観てくださって、ありがとうございます。自分の中では、身体表現はまだまだ大きく学ばないといけないと思っているんです。「キンキーブーツ」の前に「地獄のオルフェウス」という舞台で、プロデューサーに「興味があれば読んでみて」とメソッド演技という本を渡されたんです。そこで読んだものが『アイネクライネナハトムジーク』の佐藤を作る上でもすごくヒントになったので、舞台からの学びは生きているように思います。

あと、舞台の上での効果的な動き方を本当に噛み砕いて教えてくださったのは、先輩の勝村政信さんなんです。ちょうど今年の1月くらいのことだったので、また違った芝居の形を今後試していけたらいいなと思っています。

アイネクライネナハトムジーク

――メソッドの上に成り立つお芝居や演技など、非常に勤勉に取り組んでいる印象です。今、やりたいことができているような喜びを感じていますか?

三浦 そうですね、満足はしています。ネクストステージにいくために、日々試行錯誤していますし、地味な練習だったりを繰り返していかないとダメだろうな、とは思っているんです。「勤勉」とおっしゃっていただきましたけど、ほかの俳優さんも言うのが照れ臭いだけで、いろいろ自分の中で試したりしていると思うんです。僕は……最近では、ですけど、自分のやっている(学んでいる)ことを隠さないでいいかな、と思ってきました。

日本における芝居の技術の広まり方は、スクールに通っている人たちが大半ではなく、例えば劇団でのたたき上げだったり、現場で経験したことを反芻して自分の形にしていく人が大半だと思うんです。でも、海外に目を向けると、演劇学校に通っているのは当たり前なんですよね。これも勝村さんがおっしゃっていたことなんですけど、「僕たちは無免許運転に近い状態なんだ、自分自身の興味のあることをしっかり突き詰めるべきだ」と。確かにそうだな、と思うんです。だから、いろいろなことをまずはやってみよう、学んでみよう、という気持ちでいます。せっかく現場の機会をいただいているんだから、何か新しい取り組みをやってみるとか、新しい作品に入ることによって「何かできないかな」とは、常に思っています。(取材・文=赤山恭子、撮影=齊藤幸子)

アイネクライネナハトムジーク

映画『アイネクライネナハトムジーク』は、2019年9月20日(金)より全国ロードショー。 ※9月13日(金)宮城県先行ロードショー

アイネクライネナハトムジーク

出演:三浦春馬多部未華子 ほか
監督:今泉力哉
原作:伊坂幸太郎
公式サイト:https://gaga.ne.jp/EinekleineNachtmusik/
(C)2019 映画「アイネクライネナハトムジーク」製作委員会

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応募締切 2019年9月27日(金)23:59までのご応募分有効

【応募資格】
・Filmarksの会員で日本在住の方

【応募方法および当選者の発表】
・応募フォームに必要事項をご記入の上ご応募ください
・当選の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます

 

※2021年6月14日時点のVOD配信情報です。

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  • 大潤
    3.4
    交差する人間関係は観てて楽しめる。 人と出会うことって改めてすごい確率。 出演者の演技と斉藤和義の楽曲が良かった!
  • sgr
    3.6
    人との出会いなどを考える。 三浦春馬っていい俳優だ。
  • さいきママ
    3
    今泉監督の作品だから チラリと期待しちゃった 由美の夫役の設定が気になったし 演技もオーバーで気になった 陰では由美を支えている感じが見たかった ボクシングやら、電話だけでの恋愛やら 10年の長き春やら ゴチャゴチャ入り いずれも中途半端なストーリーで それぞれの役に深みが感じられなかった
  • さいきパパ
    3
    伊坂幸太郎×今泉力哉って間違いないやんと思い鑑賞したが、イマイチだったな… 今泉力哉監督の「愛がなんだ」と「街の上で」の間の作品なのになぜこうも作風が違うのだろう? 原作ものは原作に忠実に映画を作ろうとするからかな? それとも登場人物が多い群像劇を得意としないのか?
  • くまやぼのみまふさ
    2.8
    傑作「愛がなんだ」と「街の上で」のあいだの作品なんだが今泉節はどこに?「ちひろさん」もそうだったが、今泉は原作ものはウェルメイドな作りを旨としているようで、今泉にそれを求めていない自分は次回からは気をつけようと。
アイネクライネナハトムジーク
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