池松壮亮「映画を修行の場にはしたくない。未来に残すべきものを」ー『宮本から君へ』【インタビュー】

世界のディズニーを翔る元映画サイト編集長

鴇田崇

池松壮亮主演、映画『宮本から君へ』が9月27日(金)に全国公開となるが、熱血営業マンの主人公・宮本浩が恋や仕事に不器用ながらも挑み、その暑苦しくも切ない生き様は、新井英樹による人気原作そのままの熱量で、スクリーン上で炸裂している。その宮本役はもちろん池松壮亮で、池松の血の通った熱演で、あの宮本が生命を宿して現実世界に現れたかのよう。クールなイメージがある池松は、情熱だけは半端ない宮本を、どのようなアプローチで己に取り込み、役柄として表現したのか。本人に聞く。

宮本から君へ

ーードラマ版に続いての映画版ということで、率直な感想はいかがですか?

池松 ドラマでどっぷりやってきて、いろいろな困難な道もあったので、感想の前に、まず完成してよかったという思いですね。ほっとしました(笑)。

宮本から君へ

ーー主人公の宮本を演じる上で、何に気をつけていましたか?

池松 このキャラクターが持っている真理のようなものや、自分自身の体が彼と融合できるかどうかなど、簡単に言うと、どれだけウソをつかないでいられるか、ですね。後は今回特に気をつけたことは“痛み”で、心の痛みを宮本は負うのですが、彼が瞬間瞬間にちゃんと傷ついていく、そこを意識しました。そういうものは必ず、映画では映っていくと信じているので。

ーーその点、非常に原作へのリスペクトも感じます。

池松 あの原作の中での宮本は、いろいろな人の痛みを背負っていったと思うんです。そういうことを僕が2時間の上映時間の中で、ちゃんと表現しなくちゃいけないと思っていました。そこは、とても気をつけたことですね。

宮本から君へ

ーー宮本の魅力とは、言葉にするといかがでしょう?

池松 いっぱいありますね。でも僕は彼のようにはなれない。僕は社会に順応して生きてきたし、いくつかのことに目をふさいで生きてきたような気がするし、自分の心をだまして歩いてきた気がします。目の前の人や現実、社会と向き合った時に、彼のように貫くってけっこう危険なことじゃないですか。集団社会では。だから順応して当然いいと思いつつも、宮本のように真っ当さだけを貫いて生きていくということは、相当なこと。それは、みんなが憧れ、またみんなが彼を嫌うところではありますよね。

宮本から君へ

ーー役柄を通した後の学びも多そうですね。

池松 学びというかイメージとしては、僕の中にあった小さなものが、彼によって増幅してしまったような感じですね。人はみな傲慢なところがあると思いますが、宮本を演じている時は、そうとう傲慢でしたからね(笑)。僕は昔から諦めが悪いタチですが、やばいと思って、いまクールダウンしている状態なんです。通常の池松モードに戻っている感じです(笑)。

宮本から君へ

ーー憧れるということは、自分と似ているところもある?

池松 正直なところ僕は表裏がある人間で、僕から社会性を抜くと、彼のようになるかもしれない。実は22歳の時に原作を手にしたきっかけは、信頼しているスタッフたちから勧められたからで、理由を聞くと「これはいつか池松君が演じたほうがいいと思った」からと。ふたりにほぼ同時に勧められたのでヘンだなと思いましたけど、その後1か月くらいして読み衝撃を受け、なんとなく言われている意味もわかった。たぶん僕のことをよく知らないと、そういう結論に行きつかないんですよね。で、たまたま当時のマネージャーが宮本さんという方だったのですが(笑)、彼に「これ知ってる?」って聞いたら、「ええ!」っと。そこで同じタイミングでオファーの話が来ていて。これは何だか(縁のようなもの)があるなあと。

宮本から君へ

ーーひとつのハマリ役と言っていいかもしれないですね。

池松 でも、一番苦労したような気がします。そういう意味では、自分の中でハマリ役だとか、すごくフィットするみたいな気分には、あまりならなかったですね。ただし、この人が言わんとすることは、みんながそうなのかもしれないけれど、全部僕たちが知っている感情で、全部自分自身でも言いたかったこと。それは、演じながらも思っていたことではありましたね。

宮本から君へ

宮本から君へ

ーーところで、池松さんのフィルモグラフィーには目を見張るものがあり、演じる役柄が良く、作品そのものも素晴らしく、そのシンクロが奏功していますよね。そこには池松さんの努力と演技に対する強い想いがあるのではないでしょうか?

池松 どうなんでしょうか。そこは、あまり自分では考えないようにしていますが、要はいい作品を残していきたいという思いだけで、本当にそれだけですね。

ーーただ、そのためには、いい芝居をしなければいけない?

池松 とはいえ、自分の範疇を超えては無理が出るので、そこは気をつけています。芝居といっても、無理していいことはないですから。自分ができること、自分が生み出せる価値などを考え、その作品に自分が関わって、ブラッシュアップできて、何かこの作品が未来のために存在し得るのか考え抜く、もうそれだけですね。

宮本から君へ

ーー捧げていく感じが、どことなく滲み出ているようにも思います。

池松 もちろん埋もれさせたくもないし、自分のキャリアのために映画を利用したくもない。修行の場にも絶対したくないんです。

ーーとはいえ、挑戦の場になることもありますよね?

池松 それは当然あります。毎回、毎作品。ただ、俳優が作品を修行の場にしてしまうと、消費するだけのものになってしまう。消費するだけのものを人様に見せていくことに、すごく抵抗を感じてしまう。映画は消耗品ではないと思いたいですし、そういう意味でちゃんと未来に残すべきものを目指している、つもりではあります。ただし、まだまだ自分の中では納得いってない部分も、もちろんあります。

ーーその部分とは何でしょうか?

池松 自分の芝居もそうですし、どういう作品を残していくか、ということに対して、もっともっと向上したい欲はあります。この『宮本から君へ』でも、そういうことを考えて作っていたので、そういう気持ちが入っていて伝わってくれれば、とは思います。(取材・文=鴇田崇/写真=映美)

宮本から君へ

映画『宮本から君へ』は、2019年9月27日(金)より全国ロードショー。

宮本から君へ

出演:池松壮亮、蒼井優 ほか
監督:真利子哲也
脚本:真利子哲也、港岳彦
原作:新井英樹
公式サイト:https://miyamotomovie.jp/
(C)2019「宮本から君へ」製作委員会

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宮本から君へ

応募締切 2019年10月4日(金)23:59までのご応募分有効

【応募資格】
・Filmarksの会員で日本在住の方

【応募方法および当選者の発表】
・応募フォームに必要事項をご記入の上ご応募ください
・当選の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます

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  • だるま
    4.7
    宮本宮本宮本宮本宮本おおおおおおおお許さないからな憎い憎い憎い憎いの靖子の演技が忘れられない宮本の親に処理されてたまるかの演技が忘れられないこんなに情熱的で真っ直ぐな映画ってある?初めて映画見てこんな感情なりました 負けてたまるか
  • しゅん
    2.5
    半袖白シャツにネクタイという限りなくダサい組み合わせをギリギリのところでカッコよく見せる伊賀大介のスタイリングは素晴らしいし、蒼井優ごしの稲妻と大雨で聞き取りにくい声、自電車二人乗り(乗せ)での帰還、池松壮亮が乱入した際のオフィス内でのカット割りなど、効果的な撮影・演出もあった。どこまでも不合理と愚かさを通す人間の姿に感情を持ってかれなかったわけでもない。色々賞賛するべき点はありつつ、それでも全く乗れないと思ってしまうのは、完全にホモソーシャルな倫理を、権力批判の仄めかしと性愛の引力とカメラの主観性で押し切ろうとするからか。愛と憎しみの二元論とファイティングポーズとの癒着が、世界の複雑さを奪っているようにおれには思える。もちろん、助成金も奪われてはいけない。 ちなみに原作は未読でドラマも観ていません。『ワールドイズマイン』しか読んでない新井英樹をそろそろ読むか。
  • レク
    4.5
    「宮本から君へ」は新井英樹による漫画原作。 新卒営業マンの主人公が、恋や仕事に不器用ながらも成長し、自分なりの生きざまを見つけていく物語。 ドラマ版では池松壮亮演じる主人公の宮本が営業マンとして奮起する原作の前半部分、サラリーマン篇が描かれる。 劇場版は蒼井優演じる中野靖子をヒロインとした原作の後半部分、結婚篇を描かれる。 ‪超絶大傑作!‬ ‪感情表現とその吐露、そんな安っぽい言葉じゃ補い切れないほどの煮え滾る熱量。‬ ‪肉体的暴力と精神的爆発力、流血と爽快感、人間味の溢れる"生"が駆け抜けるエネルギッシュな疾走とその後に残る"愛"とエモーショナルな情熱。‬ ‪もう一度言おう。‬ ‪超絶大傑作だ!!!‬ 劇場版は人物相関図くらいは知っておいた方がいいが、ドラマ版を観ていなくても一つの作品として楽しめます。
  • ふみ
    -
    めちゃくちゃに濃い 怒涛の2時間を過ごした 衝撃 すごいものを見たなあというきもち
  • 映画野郎official
    3.6
    圧倒的な役者魂とリアリティ 間違いなく今年の最優秀主演男優・女優賞の有力候補ではないだろうか。その役を生きるという覚悟が座った演技は観るものを魅了する。 好きな…というか尊敬する若手の俳優を挙げるなら、男は池松壮亮、女は蒼井優を常々言っていた矢先のそのふたりの共演ということで激演になることは必至だった。 正直に言うと、池松壮亮主演ということでドラマ版も観ていたが、この世界観がちょっと苦手で最終回まで観続けられなかった。だから映画化もあまり興味はなかったが、じわじわと拡がる評価についに背中を押され我慢できなかった。 歯に絹着せず言わせてもらうと、ストーリーはあまり面白くない苦笑。あの熱量でこられてもいきなりなんで?と普通なら興醒めしてしまうぐらいだ。 ただ、それを補って余るほどの池松、蒼井ふたりのぶつかり合いがものすごいエネルギーに溢れた見応えのあるドラマに仕上がっている。 役者が作品にとってどれほど重要かを改めて痛感させられる映画である。 追伸:観終わった後に急所が痛くなる笑
「宮本から君へ」
のレビュー(6221件)