感性が刺激される秋に観たい「美しい紅葉」が印象的な映画10本

映画マニアと呼ばないで

夏りょうこ

秋が深まるにつれて目を楽しませてくれるのが、山や街路樹に見える色とりどりの紅葉。

映画の中に登場する紅葉シーンは、大きなスクリーンならではの美しさにハッとさせられ、秋という季節もあいまって、物悲しくロマンティックな気持ちになることが多い。

そこで今回は、紅葉シーンが印象的な映画10本をご紹介しよう。

エデンより彼方に』(2002)

どうしようもない

エデン

1957年アメリカで暮らす主人公は、ブルジョワ家庭の理想的な主婦として周囲から羨望を集めていたが、ある時夫の重大な秘密を知ってしまう。

ダグラス・サーク監督の映画 『天はすべて許し給う/天が許し給うすべて』(55)へオマージュを捧げたメロドラマ。一流企業に勤める夫。かわいい子供たち。自分は料理が上手で美しい主婦。そんな完璧な家庭を築いた彼女は、成功した人生を歩んでいるかのように見えたが、思わぬところで足元をすくわれてしまう。

そんな彼女は、庭師の黒人と親しくなって安らぎを得るのだが、それがいわゆる不倫ではないところがこの物語のキモ。しかし当時はタブーとされた二人の関係は、差別的な視線にさらされる。そのどうしようもなさ。彼女の行き場のない苦しみと哀しみが、目の醒めるようなあでやかな紅葉風景とあいまって、じわじわと胸に迫る。

初恋のきた道』(1999)

一途な恋の道

初恋

父親の突然の訃報を聞いた息子が、都会から小さな村へ帰郷し、40年以上前に母親が父親と出会った頃の出来事を追想する。

母親の若かりし頃を演じたチャン・ツィイーは、中国を代表する名優コン・リーに代わる女優として監督に見出され、この作品で衝撃的なデビューを飾った。町で急死した夫の遺体を昔ながらの葬列で連れて帰りたい。それにこだわる母親の想いが、回想シーンを通じて明らかになる。

水餃子の入ったどんぶり茶碗を両手に抱え、三つ編みを揺らしながら全力疾走するチャン・ツィイーのいじらしさ。キノコを採りに行った森は色とりどりの紅葉で輝き、黄金のススキ野原が風に揺れる。農村の美しい四季と素朴で初々しい恋。誰かを一生懸命好きになるとはこういうことだった。そんなことを思い出す。

Dolls ドールズ』(2002)

ただ当てもなく

ドールズ

出世のために恋人を裏切った主人公は、そのせいで彼女が精神を病んでしまったことを知り、彼女を連れて旅に出る。

子供のようにウロウロしてしまう彼女の体と自分の体に赤い縄を結び付け、どこに向かうわけでもなくただひたすら歩く二人。桜が満開の川辺。鮮やかな落ち葉が舞い散る公園。真っ白な雪が積もる山。浄瑠璃人形になぞらえた恋人たちが、冥土への旅をしているかのようだ。

事故で顔に傷を負ったアイドルと彼女の熱狂的なファン。恋人を待ち続ける女性と、ヤクザの世界から引退することを決めた親分。彼らもまた、並んで歩き続ける。純な男は、黙って愛する人のそばにいる。セリフが極端に少ない分、想像力をかきたてられる異色の北野武監督作品。

恋人たちの予感』(1989)

恋人になるまでの

恋人たち

大学を卒業したばかりの主人公は、経費節約のため、恋人の親友と一緒に車でニューヨークに出ることにするが、事あるごとに彼女とケンカになってしまう。

最悪の初対面を果たした後、数年ごとに偶然再会しては、互いの恋愛事情を打ち明けて慰めあったり、またケンカしたり。そうこうしているうちに、二人は友だち以上恋人未満状態へ。こんな風にして自然に愛が芽生えたのなら、それは本物かもね。当時ロマンティック・コメディの女王と呼ばれたメグ・ライアンのキュートな魅力が光る。

年月の移り変わり。それは四季の移り変わりでもあり、人の心の移り変わりでもある。愛おしさは時間をかけて生まれてくるものなのだ。流れでベッドを共にしてしまった二人の表情の違いが、男女の差を表していて面白い。散歩デートをするなら、落ち葉が舞い散る秋の公園で。

ハリーの災難』(1955)

殺したのは私?

ハリー

紅葉の季節を迎えたアメリカのバーモント州で、森の中に横たわる男の死体が見つかり、その犯人をめぐって村人たちが右往左往する。

サスペンスではないヒッチコック作品。それぞれの理由から「自分が殺してしまったのでは?」と思い込む村人が次々に登場し、彼らが死体を埋めたり掘り起こしたりしているうちに事態は思わぬ方向へ。「殺人は喜劇だ」という監督の言葉通り、死体のハリーが本当に災難な目に遭う。

美しい紅葉風景とスーツ姿の死体。平和な田舎で突然降ってわいた謎の事件なのに、スリル感ゼロなところがまた可笑しい。ハリーを取り巻く人間関係が見えてきても何だかのんびりしているのは、シャーリー・マクレーンのとぼけた毒のせいだろうか。笑いとひねりとロマンスありのよく出来たコメディ。

滝を見にいく』(2014)

だから歩くしかない

滝を見にいく

幻の滝を見に行くツアーに参加した7人のおばちゃんたちは、紅葉を楽しみながら山道を進んでいたが、先の様子を見に行ったガイドが戻らず、迷子になってしまう。

演技経験のない一般人を含むおばちゃんたちが、個性的なキャラクターを見事に演じているのが見どころ。携帯の電波も届かない山に突然取り残された彼女たちが、言い争いをしたり仲良くなったりしながら、持てる力を出し合ってゆる~くサバイバル。食料調達と調理の知恵は、非常事態の参考になるかも。

「こんな人いるいる」と「こんなことあるある」が絶妙にブレンドされ、平凡なりにいろいろある女の人生がさりげなく描かれていて上手い。遭難してもそこまで深刻なパニックにならないのは、やはり女性ならでは。焚火を囲んで盛り上がる女子トークがたまらん。結局生活力のある人が一番強いということで。

オータム・イン・ニューヨーク』(2000)

短い時間だからこそ

オータム・イン・ニューヨーク

軽い恋愛をモットーとする裕福な主人公が、自由奔放な若い女性と出会ってつきあうようになるが、彼女にはある秘密があった。

親子ほど年の差のある女性とも平気でつきあう中年プレイボーイ。そんな彼は「永遠は約束しない」というのが信条だったが、どのみち彼女の方にも永遠を約束できない理由があった。そしてその悲しい現実が、チャラかった彼の人生を変えてしまうのである。

彼の度を超えた女たらしぶりにつらい思いをしつつ、泣いても腹を立てても結局許してしまうのは、美しい季節が短いことを彼女は知っているから。目が醒めるような紅葉のセントラルパークやブロンクス公園の植物園、ロックフェラーセンターのスケートリンクなどニューヨークの観光地もたっぷり満喫できるラブ・ストーリー。

HERO』(2002)

大きな使命を背負って

HERO

戦国時代の中国で、刺客に狙われている秦王の宮殿にやって来た1人の男が、ここに来るまでに3人の刺客を倒したと語り始める。

秦王(のちの始皇帝)の前に現れた彼が携えていたのは、1本の槍と2本の剣。そこには、中国最強と言われる3人の刺客の名前が記されていた。そこで秦王は、その褒美として彼に自分の側まで来ることを許すのだが、その瞬間ついに彼の本当の目的が明らかになる。

監督の鮮やかな色彩センスには目を奪われるものの、めくるめくワイヤーアクションにお腹がいっぱい。紅の衣装に身を包んだマギー・チャンとチャン・ツィイーが、びっしりと敷き詰められた落ち葉の上でクルクルしながら戦うシーンは、嫉妬の見苦しさをダイナミックに描いていてさすがである。

黄昏』(1981)

わかり合える時はくる

黄昏

湖畔の別荘で過ごしている老夫婦のところへ、疎遠だった娘が婚約者とその連れ子を連れて訪ねてくるが、気難しい父親は彼らに冷淡な態度をとってしまう。

原作はアーネスト・トンプソンの有名な戯曲。物語の中で描かれる父親と娘の確執と和解が、彼らを演じているヘンリー・フォンダとジェーン・フォンダの親子関係を思い起こさせるだろう。別荘に預けられた子供が、老夫婦の静かな生活に少しずつ馴染むようになり、次第に心を通わせるようになるにつれて、その娘にも変化が訪れる。

美しい自然も平穏な日々も、子供にとっては退屈なだけ。そんな男子の心をつかむには、やはり釣りが一番だ。命が危険にさらされるようなトラブルも、男同士なら冒険である。

キャサリン・ヘプバーンが演じる祖母がいかにも賢そうで、紅葉に囲まれて満足したように寄り添う夫婦の姿は、人生の秋は実りの季節なのだと教えてくれる。

半落ち』(2003)

どう裁けばよいのか

半落ち

アルツハイマー病を患った妻に懇願され、首を絞めて殺した元警部の夫が自首してくるが、それは殺害から2日後のことだった。

彼はなぜ2日後に自首したのか。その2日間は何をしていたのか。犯行や動機についてはスラスラと自供するのに、そのことだけは決して口にしようとしない彼は、一体何を隠しているのだろうか。その謎が明らかになればなるほど、罪を裁く側の人たちにいろいろな思惑が生まれ、やるせない気持ちが芽生えていく。

簡単に割り切れないからこそ、答えは見つからないのだ。判決後、車に乗せられた主人公が、外を眺めながら家族で紅葉狩りに行ったときのことを思い出すシーンは、失われた幸せを象徴していて切ない。娘夫婦の気持ちがわかっている母親を樹木希林が演じ、言葉少なく表現は深く、この難役にさらりと存在感を与えていて見応えあり。

いかがでしたか?

美しい紅葉といえば、四季のある日本。そう思いがちだが、邦画よりもアメリカや中国を舞台にした映画の方が、紅葉シーンが印象的なのが意外である。

特に大都会ニューヨークの秋は、オシャレでロマンティックなロケーションとして最高なのかもしれない。

まるでその場にいるような気分にさせてくれる。それが映画。

この秋は映画を観て、もっと秋の気分を味わいませんか?

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