<『恋する惑星 4Kレストア版』を映画館で観るべき10の理由>ミニシアターブームを牽引した名作を徹底解説【リバイバル上映決定】

ポップカルチャー系ライター

竹島ルイ

パイナップルの缶詰を買い続ける刑事223号(金城武)。金髪のカツラを被った謎の女性(ブリジット・リン)。客室乗務員と別れたばかりの警官663号(トニー・レオン)。そんな彼に恋心を抱くフェイ(フェイ・ウォン)。

中国返還前の香港を舞台に、すれ違う二つの恋をスタイリッシュに描いた『恋する惑星』(1994年)の4Kレストア版が、9月6日(金)より1週間限定で劇場公開される。この稿では「『恋する惑星 4Kレストア版』を劇場で見るべき10の理由」と題して、その魅力を紹介していこう。

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10の理由 その1:クエンティン・タランティーノが絶賛した、ウォン・カーウァイの代表作

映像の魔術師、ウォン・カーウァイ。90年代に颯爽と現れたこの超新星は、香港のみならず世界の映画シーンに衝撃を与えた。

特に『恋する惑星』は香港ニューウェーブを代表する一本であり、ウォン・カーウァイの代表作。クエンティン・タランティーノもこの映画を観て完全ノックダウンされ、すっかり虜となった。その熱狂たるや、わざわざ配給会社ミラマックス傘下に自分のレーベルRolling Thunderを作って、北米配給を行ったほど。この映画は、それだけの革新性と強烈な個性を放っていたのだ。

10の理由 その2:リズムや定型にとらわれない、ポップな語り口

リズムや定型にとらわれない、ウォン・カーウァイのポップな語り口。夢の中に佇んでいるかのような、散文詩的な文体は今なお鮮烈だ。

本作が作られたきっかけは、制作中だった『楽園の瑕』(1994年)がおよそ2ヶ月間の中断に追い込まれ、「再び映画を撮ることに自信を持てるように」と新しいプロジェクトを構想したことに始まる。撮影期間はわずか23日。シーンごとにシナリオを書いては、すぐにフィルムを回す。ロケの許可を取る時間もないから、すべてはゲリラ撮影だ。まるで学生映画のような自由な精神によって、『恋する惑星』は産み落とされたのである。

10の理由 その3:金城武、トニー・レオンら俳優陣の魅力

『恋する惑星』を語るにあたっては、俳優の魅力に触れる必要もあるだろう。刑事223号を演じるのは、金城武。日本人の父親と台湾人の母親との間に生まれた彼は日本語も流暢で、深田恭子と共演した『神様、もう少しだけ』(1998年)、中山美穂と共演した『二千年の恋』(2000年)、山崎貴監督によるSF映画『リターナー』(2002年)など、日本のドラマ・映画にも多数出演。その不思議な佇まいは、この世界にうまく馴染めていないアンニュイな感じを醸し出している。撮影当時彼はまだ20歳だった。

警官663号を演じるのは、トニー・レオン。『HERO』(2002年)、『インファナル・アフェア』(2002年)、『ラスト、コーション』(2007年)とヒット作・話題作に立て続けに主演し、近年ではMCUシリーズの『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021年)にも出演。香港のみならず、世界的スターとしての地位を築いた。金城武とトニー・レオンは、後に『傷だらけの男たち』(2006年)、『レッドクリフ』(2008年)でも共演することになる。

10の理由 その4:ブリジット・リン、フェイ・ウォンら女優陣の魅力

金髪のカツラにサングラスという出で立ちの謎の女性を演じるのは、ブリジット・リン。ウォン・カーウァイは、『グロリア』(1980年)でジーナ・ローランズが演じたタイトル・ロールと、大女優グレタ・ガルボのイメージをもとに、このミステリアスな役を作り上げたという。確かに本作のブリジット・リンからは、80年代からトップ・スターとして活躍してきた余裕と貫禄が感じられる。

そして、警官663号に密かな恋心を抱くフェイ役のフェイ・ウォン。シンガーとしてデビューした彼女は(ゲーム『ファイナルファンタジーVIII』の主題歌「Eyes On Me」は日本でも超有名)、この映画で女優としても大きなインパクトを残した。当時、彼女に憧れてベリーショートにした女性も少なくないと聞く。それだけフェイ・ウォンという存在は、90年代を代表するポップ・アイコンだったのである。

10の理由 その5:撮影監督クリストファー・ドイルの華麗な映像美

オーストラリア生まれの撮影監督、クリストファー・ドイル。アレハンドロ・ホドロフスキー、ガス・ヴァン・サント、ジム・ジャームッシュ、M・ナイト・シャマランといった曲者監督の作品で知られる彼だが、その真骨頂はやはり盟友ウォン・カーウァイとのコラボレーションにおいてより発揮される。

縦横無尽に動き回るカメラワーク。広角レンズの多用。ハイスピードカメラによるスローモーション演出。常に画面を揺らせる手ブレ撮影。極彩色のネオンが煌めく強烈な色彩感覚。世界に衝撃を与えた撮影スタイルを、ぜひスクリーンで堪能してほしい。

10の理由 その6:猥雑なエネルギーに満ち溢れた舞台・九龍

本作の舞台は、香港の北部に位置する九龍。その中でも尖沙咀(チムサーチョイ)と呼ばれるエリアで物語が展開していく。所狭しと小さな店が軒を連ね、多くの人々が行き交う商業エリア。ここには、ダイナミックでカオスなアジアン・パワーがみなぎっている。実はこの作品で描かれる場所は非常に狭い。『恋する惑星』はある意味で“都市の映画”でもあるのだ。

ちなみに警官663号が住んでいるアパートは、撮影監督クリストファー・ドイルが当時実際に住んでいた場所なんだとか。

10の理由 その7:映画をスタイリッシュに彩るアイテムたち

この映画には、作品をスタイリッシュに彩る様々なアイテムが登場する。例えば、パイナップルの缶詰。飛行機の模型。これらは単なる小道具だけではなく、ある種のメタファー(暗喩)としても機能している。

例えばパイン缶が暗示しているのは、1997年7月1日に迫った香港返還だ。当時まだイギリス領だった香港は、その日をもって主権がイギリスから中国へと移ることになっていた。刑事223号が5月1日で期限が切れるパイン缶を買い集めるのは、イギリス時代の香港の終わりと新たな始まりを表したものなのだろう。

飛行機の模型は、警官663号の恋人が客室乗務員であることの直接的な言及だが、フェイもハンバーガーショップを辞めて客室乗務員になるという、「九龍を飛び出して外へと旅立っていく」暗示になっている。小道具ひとつにもヒネリが効いているのだ。

10の理由 その8:汗ばむような官能性、熱気

『恋する惑星』には、高温多湿な香港の熱気がスクリーンに焼きついているが、特にラブシーンになると、汗ばむような官能性が画面から伝わってくる。特に、警官663号が客室乗務員の恋人と愛を交わす場面。部屋の外から漏れる光が照らすなか、二人はビールをかけたり、追いかけっこをしたりしてじゃれあう。やがて情熱的な口付けをして、ベッドに倒れ込む。観客席にまで、汗、熱気、匂いが立ち昇ってくるような感覚。ウォン・カーウァイは、ラブシーンにおいてもその魔術ぶりを遺憾なく発揮する。

10の理由 その9:「夢のカリフォルニア」、「夢中人」…魅力的な挿入曲

ママス&パパスの「夢のカリフォルニア(California Dreamin’)」。ダイナ・ワシントンの「縁は異なもの(What A Diff Rence A Day Makes)」。そしてフェイ・ウォンの「夢中人」。この映画には、魅力的な挿入曲がインサートされている。特にエンドロールで流れる「夢中人」は、クランベリーズの「Dreams」をカバーしたドリーム・ポップで、『恋する惑星』のスタイリッシュなトーンに完全マッチ。舞台は香港だが、その音楽は西洋のポップスに彩られているのである。

10の理由 その10:印象的なセリフの数々

「その時2人の距離は0.1ミリ。6時間後、彼女は別の男に恋をした」

「パインは別れた恋人の大好物で、5月1日は俺の誕生日だ。もし、それまでに彼女が帰って来なかったら、恋も期限切れだ」

「部屋が感情を出し始めた、どうやらかなりの泣き虫のようだ」

「雑踏ですれ違う見知らぬ人々の中に、将来の恋人がいるかもしれない」

実生活で使うと大火傷しそうな、印象的なセリフの数々。ポエティックかつナルシスティック。『恋する惑星』には、隅々にまでウォン・カーウァイ節が炸裂している。あなたにとって特別なセリフが見つかるかもしれない。

【『恋する惑星 4Kレストア版』』公開情報】

『恋する惑星 4K』
公開日:2024年9月6日(金)より1週間限定上映
公開劇場:全国74館

提供:アスミック・エース、TCエンタテインメント、アンプラグド
配給:Filmarks

恋する惑星 4Kレストア版』公開劇場】

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※チケット販売は、各劇場にて行います
※1600円均一(各種サービスデーや他の割引サービスはご利用いただけません)
※プレミアムシート等により料金が異なる場合がございます

【『恋する惑星 4Kレストア版』作品情報】


(C) 1994 JET TONE PRODUCTIONS LTD. (C) 2019 JET TONE CONTENTS INC. ALL RIGHTS RESERVED

1994年/香港/102分
https://filmarks.com/movies/102448
監督:ウォン・カーウァイ
脚本:ウォン・カーウァイ
出演者:トニー・レオン、フェイ・ウォン、ブリジット・リン、金城武、ヴァレリー・チョウ

<あらすじ>
5年間付き合った彼女にふられた警官223番は、彼女のことが忘れられない。寂しさを紛らわせようと、金髪の女性に恋をしてみるが、麻薬の運び屋として取引に失敗した彼女もまた疲れ果て、素っ気ない。そんなどん底にいる2人は、行きずりの一夜を過ごし……。

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