他人の不幸は蜜の味?幻想と現実の狭間で描かれる魅惑のダーク・ファンタジーの世界。

映画と音楽は人生の主成分

みやしゅん

今回ご紹介する“ダーク・ファンタジー”というジャンル、皆さんはパッと思い浮かぶものがありますか?実は、聞いたことはあるけれど、実際にはどんなものか分からないという人が多いと思います。

もうじき、ハロウィーンということもあるので、子供には味わえないダークな世界へ、皆さんをご招待します。なお、作品の中には子供からするとショッキングな映像が含まれる作品もありますので、鑑賞の際には十分にお気を付けください。

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魅惑のダーク・ファンタジーの世界

ダークファンタジー

ファンタジー映画と言えば、『ハリー・ポッター』シリーズや『ナルニア国物語』シリーズなどが代表的です。ファンタジー映画には、異世界や魔法をはじめとする欠かせない要素が多くあります。しかし、そのどれもが虚構や幻想の世界であり、現実では起こりえないことが描かれているのです。

しかし、ダーク・ファンタジーは、全てが幻想の世界という訳ではなく、あくまで主体は現実世界です。そのため、一般的なファンタジー映画に見られる予定調和とも言えるハッピーエンドを嫌い、時にはバッドエンドが用意されています。

では、ダーク・ファンタジーの魅力とは何なのでしょうか?

幻想と現実の狭間の美しい世界

ダーク・ファンタジーの魅力は何といっても、その幻想的な描写です。ほとんどの作品で、主人公たちは現実世界で何らかの苦悩を抱えています。そこへ登場する現実離れした異世界が彼らを幻想の世界へと誘います。

どこか不気味な世界なはずなのに、美しい映像が印象的な作品がほとんどで、その世界観に不思議と引き込まれてしまいます。作品の中には美しさではなく、ポップでキュートな世界が描かれたものもあり、過酷の現実との対比を一層強めます。

人間の本心を捉えた描写

ダーク・ファンタジーでは人間の根底に隠された“本心”が露わになるストーリーがほとんどです。まるで自分自身の考えていることを見透かされているのでは?という錯覚に陥ることすらあります。そうした本心は、時にグロテスクな描写や過激な性描写を伴います。

これから4作品をご紹介しますが、中には年齢制限のある作品もあるため、お子様がいる方は事前にご確認ください。

レモニー・スニケットの世にも不幸な物語 (2004)

ボードレール姉弟は、謎の火事によって家だけでなく最愛の両親を失う。孤児となった彼女たちは身元引受人であるオラフ伯爵の屋敷で暮らすこととなる。しかし、伯爵は遺産目当てに姉弟の暗殺を企てる … それ以降、姉弟に様々な不幸な出来事が降りかかるようになる。

レモニー

キュートな姉弟によって浮き彫りにされる人間の本性

発明が得意な長女バイオレット、頭脳明晰な次男クラウス、噛み付き癖のある次女サニー …3人の姉弟はとても愛らしいキャラクターです。そうした愛くるしいキャラクターとは対照的に、浮き彫りにされる遺産を狙う伯爵の“醜さ”は、まさにダーク・ファンタジーならではのものです。

人間の内面をえぐり出すという意味では、次にご紹介する作品の方がその意味合いは強いかもしれません。

Dr. パルナサスの鏡 (2009)

とある町に、旅芸人の一座が今にも壊れそうな馬車で現れる。一座の出し物は、どんな欲望をも具現化する鏡…パルサナス博士に導かれて鏡を通り抜けた観客は、自分の願望を反映した幻想世界を体験できるのだ。

しかし、博士には秘密があった…それは、不死と若さを手に入れる代わりに、生まれた娘が16 歳になった時、悪魔に差し出す契約だった。そうとは知らない娘ヴァレンティナは、ある夜、橋の欄干で首をつっている青年トニーを助ける。意識を取り戻したトニーは記憶は失っていたものの、その巧みな話術で女性客を惹きつけ、いつしかヴァレンティナも彼に魅了されていく。

ある時、博士の秘密を知ってしまったトニーは、ヴァレンティナを救うべく鏡の中へ飛び込むが…。果たしてトニーとは何者なのか?そして、博士とヴァレンティナを待ち受ける運命とは?

Dr.

それぞれの願望が交差する幻想的な鏡の世界

この映画の最大の見所は、やはり鏡の中で露わになるそれぞれの欲望です。鏡の世界に足を踏み入れた者たちの欲望は醜いものばかり…。自分自身の願望が叶う世界があったら、あなたはどうしますか?

しかし、この物語で最も醜いものはトニーの真の姿よりも、博士のエゴかもしれません。自身の不死を手に入れるために、娘を売る…全ての元凶は博士にあるのです。彼らを待ち受ける結末は、まさに圧巻です。

ナイト・オブ・ファンタジー~次元を超えた冒険~(2012)

作曲家トムは昏睡状態に陥り、空想の世界へと迷いこむ。空想の世界で、トムは10歳の頃の姿に…そして、目の前に現れた不気味な雪だるまと記憶を辿る冒険に出ることになる。

一方で、トムの娘ジェムはトムを憎んでいた。しかし、あることをきっかけにトムの過去を知ることに…彼女が辿り着いた先にあるものとは一体?これは、空想世界と現実世界を巻き込んで繰り広げられる冒険を描いたダーク・ファンタジー。

ナイト

ポップな色彩感が煽る残酷さ

本作は映画『300』の視覚効果チームが手がけており、トムの空想の世界が超ハイクオリティなVFXによって、実に美しい映像で表現されています。さらに、フィンランドの国民的バンドで“北欧メタルのカリスマ”と呼ばれるNightwishの音楽が不気味な世界に、ポップな色彩感を与えるものになっています。

こうした映像と音楽は、記憶がなくなっていくという残酷さを煽るものになっており、胸が苦しくなる瞬間があります。しかし、最後のシーンでは作曲家だったトムならではの結末が待っており、思わず鳥肌が立ってしまいます。

残酷さは時に美しさへと変わる…そんなことを感じさせる作品です。次の作品では、それをより強く感じさせます。

パンズ・ラビリンス (2006)

スペイン内戦で父を亡くしたオフェリアは、妊娠中の母と2人で、再婚相手のヴィダルに引き取られることになる。独裁政権軍の大尉である冷酷なヴィダルはオフェリアに冷たくあたる。そして、彼女は次第に孤独を感じていく…。

そんなある日の夜、オフェリアの前に不思議な昆虫が現れ、地下の迷宮へと導かれ、迷宮の番人であるパンに出会う。パンは「あなたこそは地底の王国の姫君だ」と告げるものの、その真意を確かめるべく、オフェリアに3つの試練を課す。その試練とは少女には過酷すぎるものだった…。

これは現実なのか?それとも、オフェリアが現実の辛さから生み出した"おとぎ話"なのか…?

パン

現実と幻想の狭間で〜最も美しく残酷な物語〜

この作品の舞台は1944年の内戦後のスペイン。ファンタジー映画でも『ナルニア国物語』では第二次世界大戦を背景に、主人公たちが異空間へと足を踏み入れます。しかし、現実世界の描写はそれほど直接的なものではなく、あくまで物語の主軸はナルニアでの出来事にあります。

しかし、本作ではスペイン内戦を主軸に、現実世界で起こっている残酷な出来事を鮮明に描いています。そうした過酷な現実世界から、不思議な迷宮へ足を踏み入れたオフェリア…そこで待ち受ける試練も実に残酷なものばかりです。この報われない苦しみから救い出したい、と誰もが思うことでしょう。

皆さんご存知かもしれませんが、グリム童話は本来とても残酷な物語です。だからこそ、人間としての在り方を深く考えさせられる教訓的な要素を持っているのです。現実の残酷さが浮き彫りになっているがゆえに、この不思議な世界を美しく感じるのかもしれません。

最後にたどり着くのは希望?それとも絶望?

ダーク・ファンタジーの最大の魅力は、観る人によって、観る度にその結末の解釈が変化していくことです。予定調和なハッピーエンドは決してありません。しかし、物語の結末はどれもハッピーエンドにもバッドエンドにも捉えられるのです。

他人の不幸は蜜の味?

残念ながら人間は自分に不幸が降り注ぐことがなければ、それでいいと思ってしまう生き物です。しかし、しっかとりと覚えていてほしいこと…それは決して誰かの不幸を喜ばないで欲しいということです。人にしたことは自分にも返ってきます。

もしかすると、ダーク・ファンタジーの作品たちは、私たちに誰かの幸せを願える意志の強さを、教えてくれているのかもしれません。

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  • LiaoHe
    3.4
    デルトロによるダークファンタジー。前評判よりグロめ、幻想感少なめ、キャラの癖強め。 25/June 250/2019
  • 3.0
    ダークファンタジー。思ったよりグロくて驚き。現実でも向こうでも重く暗く湿っぽい。 死がキーポイントなのかな?
  • 極楽亭Fuckindope
    3.5
    記録。
  • たつや
    4.3
    ギレルモ・デルトロ監督らしいダーク・ファンタジー映画です。😃 この世界観好きです❗ 監督のファンなら必見‼️
「パンズ・ラビリンス」
のレビュー(31104件)