【高倉健・一周忌】ブラック企業やピンはね業者へ殴りこみ!今こそ健さん映画を見よ!

Why So Serious ?

侍功夫

2014年11月10日に亡くなった昭和を代表する名優、高倉健さんの一周忌となりました。

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出典:http://www.nippon.com/en/genre/society/l00075/

1956年の主演デビュー以降、日本を代表する俳優として邦画はもちろん、ハリウッド映画から中国映画まで、引きも切らない世界中からのオファーを受けて第一線を走り続けた健さんには、実に205本の出演作があります。

その中でも『日本侠客伝』シリーズは、健さんをスターダムに押し上げ、さらには後の「高倉健」ブランド・イメージを形成した重要なシリーズだと言えるでしょう。本項では『日本侠客伝』シリーズで健さんが演じた“侠客:ヤクザ”の中に、多くの観客たちが何を見出していたのかを詳らかにしていくことで、哀悼の意といたします。

『日本侠客伝』シリーズ

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『日本侠客伝』シリーズは全部で11作存在しています。ただ、「シリーズ」とはいえ、物語に連続性があるワケでは無く、それぞれ独立した物語です。さらに、全作ほぼ同じ物語展開をします。

労働者の手配師を営むヤクザ一家に、「健さん」が帰ってきます。親分含め、組員全員が「健さん」の帰りを大喜びで向かえます。そんな喜ばしい中、大きな事業の話が組に舞いこみます。しかし、役人と癒着したライバルヤクザ一家による仕事の横取りが画策されるのです。ライバルのヤクザ手配師はたいがい人使いが荒く、ピンはねも厳しく、労働者たちからは嫌われています。

そんな横やりを跳ね付けて仕事を受けるも、親分が高齢か刺客の手にかかるかして死んでしまい、健さんが跡を継ぎます。哀しむ間もなく新体制で大仕事にとりかかるのですが、ライバルのヤクザからの嫌がらせは日増し強くなり、組員は殺され、労働者たちもヤクザ間の抗争に巻き込まれてしまいます。

健さんはそんな状況を見るに見かね、自分たち「手配師」業務をヤクザが取り仕切っていること自体を問題視し、労働者がヤクザを通さず発注元から直接仕事を受けられる様お膳立てをした上で、ライバルヤクザ組へ殴りこみをかけるのです。

……というのが『日本侠客伝』シリーズ全作のおおまかな物語になります。シリーズ各作品で、組が手配するのが運送業か、とび職か、炭鉱夫かというバリエーションがあったり、親分の死因が違ったり、途中で死ぬ仲間が山城新伍だったり長門裕之だったり、という違いがあるくらいです。

ブロック・ブッキングとプログラム・ピクチャー

当時の日本映画興行は、各映画会社が自社で経営する映画館で、自社製作した映画を上映する「ブロック・ブッキング」システムで運営されていました。上映は3時間を1枠とし、約90分の映画を2本立てで週替わり(もしくは隔週)で上映します。この枠にそって作られた映画が「プログラム・ピクチャー」です。

このシステムが施行されていたために、各映画会社は自社のカラーを押し出す必要があり、映画の物語は「フォーマット化」され、少しづつ違うけど同じ話の映画がシリーズとして作られました。

松竹の『男はつらいよ』シリーズや、東宝の『喜劇駅前』シリーズ、日活の『渡り鳥』シリーズなどが各社代表的なプログラム・ピクチャーです。それぞれ会社を象徴するカラーがよく出ています。

ちなみに健さんの別の代表作『昭和残侠伝』シリーズも、『日本侠客伝』と同じフォーマットで作られています。違いといえば、ラストの殴りこみ時、健さんに池部良が寄り添うことと、2人が殴りこみへ向かう場面で健さんの唄う『唐獅子牡丹』がかかる、という程度の差です。

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そもそも、『日本侠客伝』はヤクザ版の忠臣蔵として企画された経緯があります。切腹させられた浅野内匠頭の無念を晴らすべく、大石内蔵助を始めとする赤穂浪士たちの吉良に対する復讐を描いた「忠臣蔵」は江戸時代から現代に至るまで、日本人に連綿と愛され続けている物語です。その骨子を継承した『日本侠客伝』は、日本人好みな鉄板の展開を持った物語だと言えるでしょう。

健さんが体現したこと

『日本侠客伝』シリーズや『昭和残侠伝』シリーズが公開されたのは1960年代半ばから1970年代初頭にかけてです。日本は高度成長期で高速道路や高層ビルの建築ラッシュに加え、東京オリンピックや大阪万博などで、多くの労働者が東京を始め各都市部に集められました。

彼ら労働者を取り仕切ったのがヤクザです。

そこには厳しいピンはねや、強制的な重労働などもあったでしょう。仕事が終わってお酒を飲むにも、性風俗やギャンブルで憂さを晴らすにも、すべてヤクザが関わっています。中にはボッタクリやイカサマで、なけなしの有り金を巻き上げられた人もいたでしょう。違法な薬物だって扱っていたハズです。

労働者の多くは地方の農家などからの出稼ぎです。引っ張り出されて死ぬほど働き、やっと貰えた日当もピンはねされて、残ったお金も巻き上げられ、からっけつで帰るに帰れず、山谷(か、西成)のドヤ街で雨をしのぎ、歩いて浅草(か、新世界)まで出て、ふと入った映画館で見た健さんの姿を想像してみてください。

義理も人情も無いヤクザの仕打ちに耐え、忍び、最後の最後に復讐する健さんの漢気に、熱狂しないハズはありません。また、当時の過ぎた資本主義社会に反抗し革命戦士として闘争をしていた学生運動家なども、同じ理由で健さんの姿に熱狂していたそうです。

健さんは自身の人気シリーズで、虐げられた人々の味方“ワーキング・クラス・ヒーロー”を体現していたワケです。

今こそ健さんを見よ!

健さんの人気シリーズが終わって約40年が経過した今、世の中は大きく替わりましたが、労働者自身の環境は当時とさほど変わっていません。

悪徳ヤクザ手配師は派遣会社とブラック企業にとって替わり、消費税増税の形で政府による弱者からのピンはねが堂々と行われ、富める者はより豊かになり、貧する者はより貧しくなるシステムが作り上げられています。

理不尽な仕事をさせられ、暴力的な圧政にさらされ、どうにもならない無力感に苛まれた時に、とりあえず健さんがヤクザを叩き斬る場面を見て、溜飲を下げ、明日への活力を得て下さい。

そして、強い立場にいる人は、自分が健さんに叩き斬られるようなことをしていないか、自問してみてください。

健さん出演作の多くは、健さんやスタッフたちが、その目的のために残した作品なのです。

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    3
    かつて石炭積出港として栄え、映画ロケで数々の実績がある北九州市若松で開講された、ロケ地観光を考える市民講座に参加したことがある。新旧の作品を観てロケ地マップを作る、なかなか楽しい経験だった。 若松出身の作家火野葦平の「花と龍」は彼の代表作。これは葦平の父玉井金五郎と母マンの半生、石炭荷役ごんぞうのエネルギッシュな生き様を描いた義理と人情にあふれた人間ドラマ。これまで何度も映画やドラマ化されてきた。しかし、いわゆる任侠映画のひとつとして世間ではイメージされており、原作のよさが誤解されている状況がある。 事実、玉井金五郎は男気のある人物で多くの人々に慕われた。その孫が、アフガニスタンで非政府組織で活動中凶弾に倒れた中村哲氏。弱き者のために力を尽くすそのスピリットは、祖父から受け継がれたものなのだ。「もう一度「花と龍」が若松ロケで撮られたなら、やくざものとして知られている誤解を解きたい」という地元の声もある。 小倉昭和館でタイムリーに高倉健特集があり、「花と龍」が上映されると聞いて行ってきた。この「日本侠客伝」はシリーズとして製作された、日本各地を舞台にした任侠もの。本作が第8作、続く9作目の「日本侠客伝 昇り龍」が火野葦平原作となっている。石原裕次郎主演の「花と竜」を劇場で観る機会に恵まれたが、その時に感じたのは、任侠映画のかっこよさというよりも筋を通す男の生き様のかっこよさ。決してバイオレンスを楽しむ映画ではないことに驚いた。 裕次郎版と比べると、高倉健版はやはり荒っぽい。そこはやっぱり「日本侠客伝」と銘打っているだけに、任侠映画のかっこよさをクールに追求した出来映えとなっている、と感じた。高倉健の金五郎は最初はやや頼りないし、どちらかと言うと不器用ながらも人に懸命に立ち向かっていく真摯さが魅力だ。地味だけど懸命に頑張る姿を周りが評価して慕われる男。それを助ける女性たち。裕次郎の金五郎のグイグイ引っ張っていくような男気とは違って、寡黙に自分を貫く男。それは健さんのキャラ故の役作りだろう。しかし最初にも述べたように、世間での誤解につながるようなバイオレンス色を印象づけたのは間違いないだろう。 「若大将」シリーズのヒロイン星由里子が気っぷのいい石炭荷役を演ずるのに最初は「え?」と思ったが、だんだんと自然に見えてくる。女彫り物師を演ずる藤純子がやはり美しい。クライマックス、黒田節を歌いながら銃を構えて主人公を救う場面は健さんがかすむ。
  • ちょみ
    3.8
    中村哲医師の祖父母にあたる人が描かれた映画。 本でも読んだけど、中村哲さんの強き者に屈しない精神は脈々と家系に流れるものなんだなと感じた。
  • yusukepacino
    3.4
    シリーズ9作目。ネタ切れなのか何度か映像化されている火野葦平の小説『花と竜』を原作に添える。そして90分前後だったシリーズにしては珍しく120分近くの長尺となっており前作でしくじったからか藤純子や天津敏を戻してこれまた珍しく他社から星由里子や二谷英明を拝借して起用している。ストーリーや展開は舞台を変えただけで今までとほぼ同じでラストの殴り込みシーン以外はあまり見せ場はないように思う。ただ、殴り込みシーンが非常にかっこよくこれを観るだけでも価値のある作品となっている。この気合いの入れようは尋常でない熱さを感じる。そして藤純子は『緋牡丹博徒』シリーズで当たり役となった緋牡丹のお竜を数作演じてからの本作出演となり、7作目以前の本シリーズ出演作よりもスケールアップして随分と凄みが増しており、高倉健と並んでも遜色ないような出来となっている。あと、どの映画でも大体すぐ殺される小松方正が最後まで粘ってて何か意外性があった。
  • やすを
    3
    星由里子が素敵!
  • おたからこ
    3.8
    男も惚れる男、玉井金五郎。男は正しいと思うことに体を張らなくてはいけない。
日本侠客伝 花と龍
のレビュー(107件)