何気ない日常から、日本の素晴らしさを改めて知ることができる名作『海街diary』

2015.12.16
邦画

映画と音楽は人生の主成分

みやしゅん

ついに本日12 月16 日、今年の夏に話題を呼んだ映画『海街diary 』のレンタルが開始されました!

吉田秋生の原作コミック「海街diary」は、第 11 回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞および2013 年漫画大賞を受賞した名作です。また、実写化に際しては『誰も知らない』『そして父になる』などの名作を生み出し、カンヌ国際映画祭での受賞歴をもつ実力派・是枝裕和監督がメガホンをとり、2015年話題の邦画作品としてヒットを記録しました。

今回はレンタル開始を記念して、実は知られていない裏話を含め、本作を鑑賞した方もこれから鑑賞される方も、本作をもっともっと楽しめるように『海街diary』の魅力をお伝えしたいと思います!

夏の表紙~物語のはじまり~

父は優しくてダメな人だった―。

ある日、鎌倉に暮らす三姉妹のもとに、15年前に女をつくって出て行った父の訃報が届く。山形で旅館を営んでいたという父の葬儀のため、彼女たちは山形へ訪れることに…そこで、腹違いの妹・すずに出会う。

長女・幸は、周りの大人に子供時代を奪われたすずにどこか自分自身を重ね、いてもたってもいられず帰り際に「鎌倉に来ない?一緒に暮らさない?四人で」とすずに声をかける。すずは少し悩み、鎌倉に行くことを決意…こうして、四姉妹の生活がはじまった。

これは四姉妹が“本当の”家族になるまでを描いた一年間の奇跡。

紅葉ヶ谷~日本の四季を美しく映し出す名作の誕生~

海街diary

(c)2015吉田秋生・小学館/「海街diary」製作委員会

 

本作は四姉妹が一つの家族になるまでの一年を描いた作品であり、ゆっくりと時間が流れる作品です。しかし、そうしたことを一切感じさせず、はじめから終わりまで観客をスクリーンに惹きつけることが出来たのは、四姉妹の成長が丁寧に描かれていたことに加え、日本の四季を美しく映し出しているからでしょう。

『海街diary』は、きれいなものを「きれい」と思える幸せを、私たちに改めて感じさせてくれる作品なのです。

表情豊かな日本の四季~日常に溢れる日本の美しさ~

この映画の舞台は神奈川県の鎌倉です。古い家屋が建ち並ぶ鎌倉には、紫陽花や紅葉など四季折々で表情を変えていく観光名所が数多くあり、その移り変わりと共に四姉妹の暮らしも変化していきます。冬が近づけばこたつで暖をとり、夏になれば庭で花火を楽しむ…さらには、梅酒やしらすなど“食”からも季節を感じることができます。

本作は、まさに何気ない日常から、日本の素晴らしさを改めて知ることができる作品と言うことが出来るでしょう。そんな“海街diary”の世界を堪能できるロケ地をご紹介致します。

四季を感じる名所たち~海街diaryの聖地~

四姉妹が暮らすのは“江ノ電”の愛称で親しまれている江ノ島電鉄の極楽寺駅です。この極楽寺駅は物語のいくつもの分岐点として登場していました。また、関東の駅百選で「緑と静寂のなか古風な雰囲気で風情とやすらぎを感じさせる駅」として選ばれた名所でもあります。

さらに、極楽寺は桜や紫陽花などの名所です。少し足をのばせば、幸が買い物帰りに通った極楽寺と長谷を結ぶ“極楽寺坂切通”の近くにある紫陽花の名所・成就院もあります。ちなみに駅の近くにはフットサル帰りにすずが雨宿りをしていた導地蔵堂もあります。

江ノ島

写真:江ノ島付近の海岸風景(著者撮影)

しかし、この映画で欠かせないのは、度々登場する海岸沿いの風景でしょう。

特に稲村ヶ崎から江ノ島方面へと続く“七里ヶ浜”は、四姉妹が歩く印象的なラストシーンでも登場しました。この海沿いにある国道にはお洒落なカフェやレストランが並び、江ノ島はもちろん伊豆大島・三浦半島・富士山を一望しながら食事ができる場所となっています!

あの名シーンはどこで撮影された?~桜トンネルを求めて~

映画『海街diary』では、満開の桜並木の下をすずと風太が自転車で下っていく“桜トンネル”の名場面があります。その美しさから、本作において最も印象的な場面と言っても過言ではありません。しかし、このロケ地…実は鎌倉ではないんです!

この桜トンネルの場面として使用されたのは、静岡県沼津市の愛鷹広域公園です。舞台が鎌倉とは言え、鎌倉だけでなく日本各地の知られざる名所を教えてくれる作品でもあるのです。

つぼみ~四姉妹と、それを彩るキャラクターたち~

映画だけでなく漫画や小説といった作品たちは、やはり主人公たちでは成り立ちません。周辺の登場人物たちがいなければ、主人公たち、本作の場合では四姉妹の魅力を引き出すことはできません

四姉妹を彩る様々な登場人物たち

四姉妹のキャラクターを彩る登場人物たちは、実に豪華です。三姉妹の母親は大竹しのぶが、そして幸の不倫相手として堤真一、佳乃の上司には加瀬亮、さらにはすずに好意を抱く風太はまえだまえだの弟・前田旺志郎が演じています。

他にも樹木希林、リリー・フランキー、風吹ジュン、鈴木亮平、坂口健太郎など、数々の名優たちが物語に奥行きを創り出しています

何気ない場面や会話が心に残る、もしかしたらあまり出逢わないタイプの映画かもしれません。

家族を守る責任を一人が背負いこみ押し潰されそうな幸、成功していたはずの仕事で思わぬ壁に直面する佳乃…悩みがないように見える千佳も父のことを覚えていないことを実は気にしており、すずは自分のせいで三姉妹をはじめ周囲の人々が苦しんでいると悩み、自分の居場所を探し続けています。

その姿は、まさにつぼみが寒さに耐えながらまだ見ぬ春を待つ花のよう…彼女たちも様々な試練を乗り越え、美しく咲き誇っていくのです。

桜トンネル~魅力を引き出す是枝マジック~

本作では、是枝監督のアイディアがきらりと光るシーンがいくつもあります。その中から今回は2つのアイディアをご紹介したいと思います。

海街diaryの「映画×食」のマジック

本作では四季とともに“食”の場面が数多く描かれており、食という日常風景から四季を感じられる工夫がされています。

映画を観ていて思わずよだれが垂れそうになるシーンはいくつもあります。特に食べるシーンが多かった三女・千佳を演じた夏帆は「撮影で顔がまん丸になった」とコメントしたほどです。

四姉妹が食べる生しらす丼や千佳特製のちくわカレー、四姉妹が通う海猫食堂のメニュー…そして、リリー・フランキー演じる福田がつとめる山猫亭での“しらすトースト”。このすずと父の思い出の味である“しらすトースト”は、鎌倉キネマ堂のメニューです。気になる方は調べてみてください!

是枝裕和が用意した演出マジック~自然体で等身大~

本作を観ていて感じることは四姉妹を演じている女優陣が、とても自然体で等身大の演技をしているということです。

妹たちを育ててきた長女・幸を演じる綾瀬はるか、自由奔放な次女・佳乃を演じる長澤まさみ、ちょっと変わり者の三女・千佳を演じる夏帆、そして腹違いの四女・すずを演じる広瀬すず…今の日本を代表する女優陣の魅力が存分に発揮されており、彼女たちの魅力を改めて知ることが出来ます。

この「自然体で等身大」という点で言えば、とある朝、寝坊した佳乃と幸が言い合いをするシーンでは、本当の姉妹かのような掛け合いをみせ、観ている側もそのリアルな“あるある”に思わず笑ってしまいます。

それもそのはず、是枝監督は実際に姉妹を取材し、それを基に作品に取り入れていたのです。その工夫があったからこそ喧嘩などの日常シーンからも姉妹の絆を感じることができ、心温まる作品となっているのです。

さらに、撮影の際「その場で自然と生まれるものが欲しい」と思った是枝監督は、四女のすずを演じる広瀬すずには脚本を渡さなかったそうです。広瀬すずは監督からの口立てで台詞が伝えられ、実に自然な演技を生み出しています。

また、撮影までに四姉妹の絆を強めるため、ロケ地となった鎌倉の古民家で交流会が行なわれました。食事づくりや洗濯、庭の草むしりなど実際の生活シー ンを通して、彼女たちの絆をより強いものにしました。本編で流れる障子の張替えのシーン、実はこの時の映像が使われています。

こうした是枝監督のアイディアによって四女を演じた広瀬すずの自然体が引き出され、さらには四姉妹の等身大の演技が引き出されたのです。

花火~日々の積み重ねが大輪の花を咲かせる瞬間~

映画『海街diary』は、どちらかと言えば静かな作品です。そのため、カンヌ国際映画祭コンペティション部門でも賛否両論の作品となりました。しかし、本作の最大の魅力は“何気ない日常”にあるのだと私は思います。

 

作品の軸は、腹違いの姉妹が一つの家族となっていく一年間の記録です。本作の序盤、幸は父の事を「優しくてダメな人だった」と語っています。しかし、ラストのシーンでは別の言葉で父の事を語っています…その優しい理由に、思わず目頭が熱くなります。

実に繊細なテーマを日本の四季とともに丁寧に描いた本作は、日々の小さな積み重ねの大切さ、そして日々を美しいと思える幸せを私たちに教えてくれます。その積み重ねが静かに大輪を咲かせた瞬間、心温まること間違いありません。

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  • ドドドンパ
    3.8
    終始ほんわか
  • Chi
    3.7
    夏帆さんがすき、、
  • TetsuyaTashiro
    5.0
    どんな人生を送りたいか? それで1番大事なのはどこで暮らすか。 ってことだということが再認識できる。 この優しさとか美しさとか素直さとか。流れる空気とか雰囲気とか。それはやっぱり鎌倉という土地だからこそ。 演者さんの演技ってのももちろんあるんだろうけど、この映画の舞台が鎌倉っていうこと。それが全て。鎌倉好きの僕にはよくわかる。 心に染みた。
  • momonosuke
    5.0
    優しい気持ちになれた。 美女はいいね、見ているだけで満たされた気持ちになる。
  • Mizumo
    -
    すごく綺麗なサントラ。
「海街diary」
のレビュー(56954件)