『クリード チャンプを継ぐ男』公開!いま一度、『ロッキー』シリーズを総ざらい

2015.12.06
映画

気づいたら映画ファンになっていた

松平光冬

007 スペクター』や『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』など、シリーズ物の超大作が目白押しな2015年のクリスマス・お正月映画。

その中でもう一本、シリーズ物の目玉作品となるのが、12月23日公開の『クリード チャンプを継ぐ男』です。

クリード

(C)2015 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. AND WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

シルベスター・スタローンの代表作『ロッキー』シリーズの最新作として、彼演じるロッキー・バルボアが、永遠のライバルにして親友だったアポロ・クリードの息子、アドニス・ジョンソンのトレーナーとなり、再びボクシング界に身を投じていきます。

アメリカでは去る11月25日に封切られ、週末3日間(11月27日~29日)で興行収入約36億円を突破し、『ロッキー』シリーズ史上最大のオープニング記録を達成

さらに、12月1日発表の米国映画批評会議による、2015年の「ナショナル・ボード・オブ・レビュー」の助演男優賞にスタローンが選ばれた事から、早くもアカデミー助演男優賞候補となるのでは?と目されています

『クリード チャンプを継ぐ男』予告編

この『ロッキー』シリーズ、あまりにも有名なだけに内容を知らない人はいないのでは?とは思いますが、おさらいの意を込め、これまで作られた『ロッキー』シリーズ6作品を簡潔に振り返ってみたいと思います。

全てはここから始まった、アカデミー賞に輝く第1作:『ロッキー』(1976)

ロッキー

フィラデルフィアのしがないボクサー、“イタリアの種馬”ことロッキー・バルボアが突然、アメリカ建国200年祭のイベントの一環として開催される世界ヘビー級タイトルマッチで、チャンピオンのアポロ・クリードの挑戦者に指名されます。

自堕落な生活で生きがいを見つけられずにいたロッキーは、愛する恋人のエイドリアンやトレーナーのミッキーらの助けを得て、自らの存在意義を証明すべく、リングに向かいます――

俳優として不遇だったシルベスター・スタローンが、偶然テレビで観たボクシングヘビー級タイトルマッチのモハメド・アリ対チャック・ウェプナー戦に大きく感銘を受け、この試合をベースにわずか3日で脚本を書き上げました。

スタローン自身が主演を務める事を強く希望したため、製作会社は大ヒットが望めないと判断、予算も撮影体制も最低クラスという規模で制作されました。

ところが、公開されるや瞬く間に観客の支持を得て大ヒット、ついにはアカデミー作品賞を含む3部門を獲得する栄誉に。スタローンは作中のロッキー同様、スター街道を駆けあがる事となるのです。

第49回アカデミー賞授賞式で『ロッキー』が作品賞に選ばれた時の模様。
嬉しさで興奮しきっているスタローンが印象的。

夫となり、父となり、そしてチャンプとなった第2作:『ロッキー2』(1979)

ロッキー2

アポロとの試合を終えたロッキーは恋人のエイドリアンと結婚。間もなく彼女の妊娠が判明した事で、ボクシング以外の仕事で生計を立てようとするも思うように行かず、苦悩します。

そんな中、「勝負では勝ったが、試合ではロッキーに負けた」という世評に反発したアポロは、自身の名誉回復のためにロッキーとの再戦を猛アピール。その挑発にロッキーは闘志を燃やしますが、彼の身を案じるエイドリアンを思い、練習に身が入りません。

そんな折にエイドリアンが入院、ロッキーはこれ以上心配はかけられないとボクシングからの引退を告げますが、彼女からの「ロッキー、勝つのよ」という言葉を受け、改めてアポロとの再戦に挑みます――

1978年の『パラダイス・アレイ』で初監督を務めたスタローンは、この第2作目でも引き続き監督業を兼任しました。

何も失うものがなかったロッキーが、家族が出来た事で初めて失う事の怖さを知る、という人間としての更なる成長も描いています。

ボクシング映画ゆえに実在のボクサーとも縁のあるこのシリーズですが、今作では1970~80年代に“石の拳”の異名でボクシング界を席巻したロベルト・デュランが、ロッキーのスパーリングパートナー役でカメオ出演しています。

デュランがロッキーをからかうようにあしらっているのが可笑しいです。

失った“虎の目”を取り戻せ!アポロとの友情を描く第3作:『ロッキー3』(1982)

ロッキー3

アポロを倒しチャンピオンとなったロッキーは防衛を重ねていき、私生活も一転して満ち足りた物となっていきます。しかし、本人も気づかぬうちに闘争本能を失っていきます。

そんな彼の前に現れた挑戦者、クラバー・ラング。圧倒的なパワーを持つクラバーの前にロッキーは成すすべもなく敗北、続けざまに長年のトレーナーだったミッキーを亡くしてしまいます。

失意のどん底に叩き落とされたロッキーに協力を申し出たのは、かつての宿敵アポロ。彼は、闘争本能の象徴である“虎の目”をロッキーに取り戻させるべく、徹底的なトレーニングを施します――

ライバルだったアポロとの友情が生まれる、最新作の『クリード』にもつながる重要な作品です。ロックバンドのサバイバーが歌う主題歌「アイ・オブ・ザ・タイガー」も大ヒットしました。

『ロッキー』シリーズとフィラデルフィアは切っても切り離せない要素ですが、今作で初お目見えするブロンズ製のロッキー像があるフィラデルフィア美術館は、今や観光スポットとなっています。

この銅像をスタローンは感謝の意を込めて、今作の撮影終了後にフィラデルフィア美術館に寄贈しようとしました。しかし美術館側が「これは映画の小道具だから美術品にならない」と拒否した事に、地元のフィラデルフィア市民が猛抗議。

そのあまりの反響の高さに銅像の価値を再認識し、美術館の正面玄関階段前に設置したといういきさつがあります。

また、ロッキー一家が暮らす豪邸は、名ボクサーのモハメド・アリの邸宅を借りて撮影されました。

当初はこの第3作目でシリーズ終了となる予定だったとも云われています。

ステップ

ロッキー像は現在、美術館の階段脇にある広場に移設されている

出典元:https://en.wikipedia.org/wiki/Rocky_Steps

東西冷戦を反映した第4作:『ロッキー4/炎の友情』(1985)

ロッキー4

クラバー倒しチャンピオンに返り咲いたロッキーの前に、ソ連のヘビー級ボクサー、イワン・ドラゴとのエキシビジョンマッチの話が来ます。

その話を聞いたアポロは湧き出る闘志を抑えきれず、ブランクがあるにもかかわらずロッキーの代わりに試合に臨むも、恐るべき破壊力を持つドラゴのパンチを受け、命を落としてしまいます。

親友の死を目の当たりにしたロッキーは仇討ちを誓い、タイトルを返上して敵地モスクワへと乗り込みます――

制作当時にあった、米ソの冷戦状態を十分に意識したあらすじがアメリカ国民を熱狂させ、空前の大ヒットとなりました。上映時間が91分と、全シリーズ中最も短くて観やすい点もヒットの要因といえるでしょう。

ファイトシーンの臨場感を出すために、スタローンとドラゴ役のドルフ・ラングレンは一部で実際に殴り合っています。ところが極真空手の有段者でもあるラングレンは、加減が分からないままにスタローンに強烈なパンチを浴びせてしまい、結果スタローンは心臓肥大を起こして病院送りになってしまったそう。

今こそ再評価が求められる第5作:『ロッキー5/最後のドラマ』(1990)

ロッキー5

激戦を続けてきた影響で脳に損傷が見つかったロッキーは、ボクシングからの引退を余儀なくされます。さらに税理士の財産使い込みによる破産宣告を受けてしまい、かつてロッキーが暮らした安アパートでの再出発を図ります。

そんなある日、目の前に現われたボクサー、トミーの才能を見抜いたロッキーはトレーナーとなり、家庭環境がギクシャクするのを感じつつも、彼を気鋭のボクサーに育てていきますが――

「最後のドラマ」というサブタイトルが付いているように(DVDなどのソフトでは外されていますが)、元々は今作が『ロッキー』シリーズ完結編となる予定でした。

ところが、ロッキーのボクシングシーンがなく、さらにクライマックスがボクシングではなくストリートファイト(実際にプロレスラーのテリー・ファンクがファイトシーンの演出に協力)になった点などが不興を買って批評的にも興行的にも惨敗、スタローン自身も「失敗作」と認める結果となりました。

しかし改めて観ると、ボクシングへの情熱をトミーに託そうとするロッキー、そのトミーに嫉妬して荒れる息子、そんな息子と夫を心配するエイドリアンなど、これまでのシリーズがロッキー「個人」に焦点が当たっていたのに対し、今作では初めて「家族」に当てた、人間味あふれる作りとなっています。

さらに言えば、ロッキーが血気盛んな若者をボクサーに育て上げるというあらすじは、新作の『クリード』そのもの

比較する意味でも、改めて観直されるべき作品といえるでしょう。

有終の美を飾った第6作:『ロッキー・ザ・ファイナル』(2006)

ファイナル

病で先立った妻・エイドリアンの名を店名にしたレストランを営むロッキーは、特に波乱もない平穏な日々が続く事もあってか、周囲の反対を押し切り、引退していたボクシングへの復帰を決意します。

それを聞きつけた現役ヘビー級チャンピオンのディクソンは、自身の人気回復のためにロッキーとのエキシビションマッチを画策。あまりにも無謀と思えるこの試合に、ロッキーはあえて受けて立ちます――

『ロッキー5』の出来が大いに不満だったスタローンは、改めて最終作を作り直したいと1999年から実現に向けて動きます。途中、資金集めや脚本の練り直しに苦慮するも、 6年の歳月をかけてようやく完成しました。

脚本の初期段階では対戦相手だったクラバー・ラングやイワン・ドラゴの登場もあり、特にドラゴはステロイドの乱用によりエイズで余命いくばくもないという、衝撃的な展開を考えていたとか。

撮影時59歳とは思えないほどの肉体作りを行い、加減しているとはいえディクソン役の現役ボクサー、アントニオ・ターバーとファイトシーンで実際に殴り合いをしているスタローンは、まさにバケモノです。

無謀ともいえるロッキーのファイトの結末は?ロッキーの物語としては本当の意味での有終の美を迎えます。

そして新たな章となる『クリード チャンプを継ぐ男』へとつながります。

『スター・ウォーズ』がフォースの継承なら、『クリード』はボクシングの継承

『クリード』と、同時期に日本公開される『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』とは、いくつかの類似点があります。

1、第1作目の制作年度がほぼ同時期(『ロッキー』が1976年、『スター・ウォーズ/新たなる希望』が1977年)

2、両作品共にシリーズ第7作目

3、両作品共に次世代への“継承”を描いている

次世代へのフォースの継承がテーマとされているフォースの覚醒』に対し、『クリード』ではロッキーがアドニスにボクシングを“継承”します

つけ加えると、『クリード』の監督兼ストーリー原案のライアン・クーグラーは、『ロッキー』シリーズを夢中で観て育った世代だそうで、映画制作においても、『ロッキー』シリーズが“継承”されたといえるでしょう。

新たなシリーズの幕開けとなる『クリード チャンプを継ぐ男』に備え、既にシリーズ全作を観ている人は再確認の意味で観直すも良し。

一本も観た事がないという人は、この年末年始を利用してシリーズ一気観するのも良しです。

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  • RikuNakagawa
    4.0
    良い感じ。 特に最終Rからラストにかけて。
  • KJ
    3.4
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  • keigosato
    3.8
    アポロの息子をロッキーが鍛えるっていう図だけでもう感動。 ロッキーのオマージュに頼り過ぎず、バランス良く現代的な面白さも取り入れていた。あの曲の使い方も絶妙で最高だった笑笑 少し登場人物達の行動が軽過ぎる気がしたけど充分面白かったと思う。
  • Hiro
    3.5
    記録
  • 夙沖波耶音
    3.4
    224. まず、ロッキーのシリーズを見てませんし、これからも見ないかもしれませんが、 それでも熱くなれる作品です。 あの音楽が流れるだけでも高揚感。 しかし時の流れを感じる作品ですね。 素敵な意味で。 どうやったらあんな綺麗な肉体美になれるのかしら?(笑)
「クリード チャンプを継ぐ男」
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