120倍の作品も!1本の映画を作るのに完成版の何倍の撮影素材を撮っている?

2015.05.09
洋画

映像の編集とか演出やってます

ホンダカット

1本の映画を作るのにどれだけの素材が撮影されているかご存知でしょうか?

フィクションであれ、ドキュメンタリーであれ、映画は撮影された映像素材を編集し、1時間半や2時間の完成尺になっています。通常のドラマ映画では完成尺の約20倍の素材が撮影されていると言われてきました。(※参考:『映画の瞬き—映像編集という仕事』ウォルター・マーチ著 フィルムアート社)その中でOKテイクを選び、複数アングルからチョイスし、カットを切り替え、間を作り、時に大胆にカットし、組み替え、映画はできています。

撮影素材の量は年々増えている?

撮影手法の変化に伴い、撮影素材の量も変化しています。90年代以降、ハリウッド映画の制作費が高騰し、マルチカメラという手法が当たり前になり、大作アクション映画では10台のカメラが同時に回る事も珍しくありません。『ミッション:インポッシブル 3』のメイキング映像を見ると「カメラは全部回ったか?11台とも回ったか?」と確認するスタッフの声も聞こえます。台数が多いという事は、それだけの数のカメラの画を成立させる為の照明の数も相当なものだと思われます。

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素材の量から産まれるスピーディーな編集

手持ちの複数台のカメラが投入され、終始、目まぐるしく細かいカットが積み重なるスピーディーな編集で出来事が進む『ボーン・アイデンティティー』シリーズが、大作アクション映画においての素材量と細かい編集のある種のピークでしょうか。ドキュメンタリー出身のポール・グリーングラス監督が、追われる記憶喪失のスパイの話を撮るという時点で、この手法を取ったのかもしれません。もし、あるカメラに別のカメラや音声のマイクなどが映ってしまっても後処理(CG的手法など)で消せる、というアプローチが取れるようになった事も無関係ではないはずです。

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『6才のボクが、大人になるまで。』の素材量は完成版の約36倍

同じ役者を12年間、毎年夏休みに撮り続けた事で話題になった『6才のボクが、大人になるまで。』に関して言えば、当初、1年あたり10分〜15分の量の物語を撮ることを目標に開始したようです。最終的には素材は100時間を超え、最初の編集版が6時間を越えた、と。しかし劇場上映版でも166分あったと考えると、あの手法で撮影したにしては通常の比率(約36倍)の素材量だと思います。逆に、最初の年に、何年後に撮影が終わるかすら確信できない、何が撮れるか先が見えない状態で、よく監督たちは過大に撮りすぎずセーブできたなと関心します。

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圧倒的な撮影素材量『ゼロ・ダーク・サーティ』完成尺の120倍!

デジタルカメラで撮影された『ゼロ・ダーク・サーティ』(キャスリン・ビグロー監督)。CIA主導によるオサマ・ビンラディン暗殺を描いた映画は、リアリティを与えるため、かなりのドキュメンタリーな撮影手法が取られました。その結果、完成尺158分に対して、撮影素材の量、なんと320時間約120倍)。アクション映画としてはコッポラ監督の『地獄の黙示録』(約95倍)を越えている素材量です。

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120倍以上の素材量から紡ぎ出された物語は、非情なリアリティをもって観る者に突き刺さってきます。タイトルにもなった、0時30分のデジタル時計を映したカットがあるのですが、わずか1秒にも満たないカットに編集されています。象徴となる画を、そこまであっさりと描く様は、"これはケレン味のあるアクション映画ではないのだ、フィクションだけど事実なのだ"という監督の強い意志をも感じます。

たくさんの素材量であれ、長期の撮影時間であれ、フィクションという物語を作るのに、監督や作品によって手法も方法論も全然違うのです。こういった映画制作のアプローチの幅広さを知ると、映画をもっと楽しめるかもしれません!

 

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