若き天才イケメン監督:グザヴィエ・ドランと『Mommy/マミー』の魅力

主に映画と音楽の生活

赤毛のケリー

弱冠19歳にして監督・主演・脚本デビュー映画界に衝撃を与えた男ことグザヴィエ・ドラン監督をご存知でしょうか。

知らない方はぜひ一度、画像検索をしてみて下さい。

あら、ハンサム。俳優さん?モデルさん?と思われる方が大半なのではないでしょうか?

幼少期から子役として映画やテレビ番組に出演。17歳の時に自ら書いた脚本を19歳で監督として完成させた『マイ・マザー』は第62回カンヌ国際映画祭・監督週間部門で上映され世界に衝撃を与えました。

実は、私も彼の大ファン。しかし、彼の美貌に惚れた訳ではありません。

彼を知った最初の作品は、『わたしはロランス』(監督・脚本)。

私はロランス

なんとなくタイトルとジャケットが気になって鑑賞しました。

この映画は、女性として生き始めた男とそのガールフレンドの10年に及ぶ波乱に満ちた歳月を映し出す人間ドラマ。作品の内容はもちろん、撮り方や音楽・ファッションなど全てがおしゃれで今までにない感覚に衝撃を受け、鑑賞後数日経ってからも余韻が抜けず、映画のシーンが頭の中でぐるぐると回っていました。

一体この作品の監督は誰だろうと調べた結果がグザヴィエ・ドラン監督だったのです。

安心してください。彼の美貌に惚れて紹介する訳ではございません。

ちゃんと彼の才能に惚れて今回の記事では『Mommy/マミー』を紹介させて頂きます。

愛と希望 どちらを捨てるか

マミー

(C) 2014 une filiale de Metafilms inc.

 

あらすじ

2015年、架空のカナダで起こった、現実——。 とある世界のカナダでは、2015年の連邦選挙で新政権が成立。2ヶ月後、内閣は公共医療政策の改正が目的でS18法案を可決する。中でも特に議論を呼んだのは、S-14法案だった。

発達障がい児の親が、経済的困窮や、身体的、精神的な危機に陥った場合は、法的手続きを経ずに養育を放棄し、施設に入院させる権利を保障したスキャンダラスな法律である。

15歳の息子スティーヴを育てる気の強いシングルマザーのダイアン・デュプレの運命は、この法律により大きく左右されることになる。彼はADHD(多動性障害)のため情緒も不安定で、普段は知的で純朴だが、一度スイッチが入ると攻撃的な性格になってしまう。

そんな息子との生活に右往左往していたダイアンだが、隣家に住む引きこもりがちな女性教師カイラと親しくなったことから、少しずつ日々に変化が訪れる。精神的ストレスから吃音に苦しみ休職中だったカイラも、スティーヴの家庭教師を買って出ることで快方に向かっていくが……。

見どころ①「母と子」

グザヴィエ・ドラン監督は初監督の作品『マイ・マザー』でも「母と子」をテーマにしています。彼の作品には必ず「母親」の存在があります。重要な役のようではないけれど作品の中に印象を残す母親。

彼曰く、「母親こそ、僕らの原点」。

「マイ・マザー」では、母を愛せない少年の戸惑う思春期の苦悩が描かれていますが、この作品では、トラブルキッズを抱える母親の苦悩が描かれています。19歳で撮った『マイ・マザー』と6年後に撮った本作を比べて観るのも面白いと思います。

マイ・マザー

(c)2009 MIFILIFILMS INC

見どころ②ドラン流・撮影技法

この作品でも、彼の作品の特徴と言える撮影技法が使われています。代表的なところで、ストップモーションとスローモーション。『わたしはロランス』ではスクリーンいっぱいに舞うお洋服。『胸騒ぎの恋人』では空から降ってくるマシュマロ。この作品で使われているこの技法は是非ともご自身で確認ください。

また、画面のサイズが正方形、アスペクト比1:1が用いられています。画角の変化と登場人物の心理とリンクさせており、1:1の正方形の世界からフルスクリーンに広がるシーンは、鑑賞している側にも解放的に感じ取ることができます。

そしてなにより、作品の色調が温かみの伝わるパステルカラーということです。多くのシーンで夕暮れ時や、マジックアワーに撮影されているため、内容が少し重くても、そう感じさせない美しい色調にうっとりさせられます。ダークな話でも表層は明るく輝かせたいという彼のこだわりのひとつ。

見どころ③音楽

もしかすると、作品も観てなくてもこのシーンだけはYoutubeなどで観たという方もいらっしゃるかもしれません。このシーンで流れる Oasisの「Wonderwall」は卑怯です。これ観たさにもう一度映画館に足を運んだと言っても過言ではありません。

“ 映画を観ている人それぞれこの曲に思い入れがあり、劇中からこの曲が聴こえてきた瞬間、個々の記憶が蘇ると、映画はたちまち、作り手の意図をはるかに超えたところに到達してみせる。”

このような事をドラン監督が語ってます。

彼が言う通り、劇中で流れた瞬間、うわーっとこみ上げてくる何かがあって勝手に涙がぽろぽろと流れ落ちていました。

本作の音楽は「スティーヴが肌身離さず持っている家族の思い出をコンパイルしたカセット・テープ」をコンセプトに組まれたそうです。スティーヴが亡き父との思い出が詰まった曲で母とダンスしてみたり、カラオケで歌ったり・・・。

つまり“映画の中で音楽を流す”ってこういうことなんですね。

まとめ

何度も言いますが、ビジュアルだけじゃないんです。きっとこの作品を観れば、グザヴィエ・ドラン監督の魅力に憑りつかれる事間違いなしです。今後も若き天才に目が離せません。

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  • チッタスープ
    4.0
    生きるって辛い。それでも希望を持ち続ける。 ポスターの写真が素晴らしくて気になっていた映画。 映画の中も数々のワンカットが素晴らしく綺麗。 例に挙げると有名な快晴スケボーの場面を筆頭に陽射しに染まったベットに横たわるシーン、仕事を貰うため大きなお屋敷で待機しているシーン、ビニール袋が破れるシーン、セルフィーのシーンなどなど・・・ 「動く写真集」を見ている様な感覚でした。 ストーリーは山あり谷あり。前半で母と息子の社会における生きづらさを痛烈に描いている分、幸せなシーンが出てきても「次なんか起こるな・・・?」と嫌な予感を抱いてしまう。 なので観ていてしんどいなーと思う描写も多々あるけど、その分美しい映像の数々でバランスを取っているようにも感じました。 何回も観たい!と思える映画ではないけど、OASISのシーンの爽快感がハンパ無いから結局見返すんだろうな・・・
  • 卵かけご飯
    4.9
    色味・音楽・構図・映像演出全てが良すぎた👏 特に色味が自分好みすぎる。 暖色系は懐かしさを感じるような色合いで寒色系も綺麗な色で最高。 アスペクト比が1:1だから余計な情報とかも遮断してるし、見るべきものに集中できるのとプライベート空間を覗いてる感じで作品に合ってる。どこを切り取ってもまじで綺麗。 音楽もフルで使いきってるけど 特に「wonder wall」と「experience」が印象的だった。 あと監督の残した言葉がめちゃくちゃ好き 「僕にとって、音楽が流れる瞬間というのは、映画の中で唯一、観客が映画に自ら参加できる瞬間なんだ。 音楽が流れた時だけは、観客がその曲を聴いた時に蘇る思い出とそのシーンを重ねて、能動的な体験をすることができるんだ。」
  • つぶやき山ちゃん2
    -
    かなり好き、ルドゥビゴの音楽が良い
  • 貝崎
    4.5
    映像での見せ方と音楽の使い方がスティーヴ(アントワーヌ・オリヴィエ・ピロン)のようなド直球さで好きになった。グザヴィエ・ドラン、カンヌでのスピーチを聞いてカンヌ向けのおしゃれでわかりにくい感じのスタイルかと思ってたけど大丈夫。 たったふたりだけの親子がただ一緒に暮らしたくて、二人だけの世界に縄張り張って体を張って闘う姿を見てたら、すぐに崩れ落ちそうな脆い空気の中で、狭い画面の中で、自由だと叫ぶ姿とか、ママを喜ばせたい姿とか、勉強頑張ってアメリカに行くって夢を抱いてる姿とか、健気で必死で可愛くて泣きそうになる。たったの15歳くらいの少年の普通の在り方なのに、そこにあるのはそのどれも叶いそうもない現実だけだから。 ダイアン(アンヌ・ドルヴァル)が最後に見せたいつもの強がりが死ぬほど切なかったけど、スティーブの脱走からBorn to Dieの流れで感情が昇華された。
  • こなぱんだ
    5.0
    言いたいことは沢山沢山沢山ありまくるのですが諸事情により控えます。 グザヴィエドランを追い続けてきた身としては、これが最初で最後の最高傑作。これ以上の作品はおそらくこれからも作るのは難しいのでは。 ちなみに、ドランをひたすら追い続けている一ファンとしては、この作品の次作が「たかが世界の終わり」なのですが、「Mommy」でシステムをぶち壊し革命を成し遂げ、「たかが世界の終わり」で再びニヒリズムに陥ったのか……と解釈しています。 ちなみにちなみに、「Mommy」の前作は「トムアットザファーム」なので、アメリカ的父権を終わらせる村上春樹のような映画です。この流れ完璧すぎる。そこが愛おしくてたまらない。 ここまで躁鬱みたいな振れ幅がある監督も珍しいんじゃないかと思うのですが、そこがドランの人間味溢れる可愛いところですな……
「Mommy/マミー」
のレビュー(31126件)