今年のカンヌ国際映画祭をより楽しむためのコンペ作品ガイド

2015.05.11
映画祭・イベント

Nobody's Perfect.

久保田和馬

世界三大映画祭のひとつ、カンヌ国際映画祭が今年も現地時間5月13日から開催されます。今年で68回目を迎える同映画祭の目玉は、何と言っても最高賞(パルムドール)を争うコンペティション部門。

今年の審査委員長には日本でもおなじみのコーエン兄弟。過去にパルムドールと審査員大賞、そして3度の監督賞に輝いた経験を持つ彼らは、一体どの作品をパルムドールに選ぶのでしょうか。

今年の見所を紹介しながら、簡単に出品作をチェックしていきましょう。

最強の布陣で挑むアジア勢

昨年パルムドールに輝いたトルコ映画『雪の轍』を始め、いま三大映画祭で最も勢いがあるのがアジア勢。今年の1月に行われたベルリン国際映画祭でもイランの『Taxi』が最高賞に輝き、昨年の『薄氷の殺人』に続いてアジア勢が連覇することになりました。

それだけに、今年のカンヌのコンペに出品されるアジア映画は超強力なコンテンダー。中国、台湾、日本からそれぞれ出される3作品はいずれもカンヌ受賞経験監督の新作で、何らかの賞を受賞する可能性を秘めております。

『黒衣の刺客』侯孝賢

93年に『戯夢人生』で審査員賞を獲得した侯孝賢、8年ぶりの長編監督作で、カンヌに10年ぶり7度目の登場。スー・チーの女優賞とともに、最高賞の獲得を狙います。

『山河故人(Mountains May Depart)』賈樟柯

作品が発表されるたびにカンヌで上映されている気もしますが、意外にもこれが4度目。一昨年『罪の手ざわり』で脚本賞を受賞した現代中国映画界の鬼才が、ヴェネチアに続いての三大映画祭制覇を狙います。

『海街diary』是枝裕和

今年の日本代表は『そして父になる』での審査員賞や『誰も知らない』での男優賞など、カンヌと相性の良い是枝裕和。何と言っても女優4人のアンサンブル演技が見所の本作、もしかしたら4人同時受賞も……。

迎え撃つ世界の超実力派たち

映画祭ではやはり同じ作家がなんども受賞することも珍しくなく、昨年の『雪の轍』のヌリ・ビルゲ・ジェイランもそれまで4度の出品でグランプリを2度、監督賞を1度受賞し、5回目の挑戦でパルムドールに輝きました。

また、過去にはダルデンヌ兄弟やミヒャエル・ハネケなど、複数回パルムドールを受賞した監督もいるだけに、映画祭おなじみの顔ぶれからは目が離せない。

『Youth』パオロ・ソレンティーノ

中でもその出来栄えに最も注目が集まるのは、一昨年『グレート・ビューティー/追憶のローマ』で世界中に旋風を巻き起こしたイタリアの新鋭。久々の英語作品なので、この後アカデミー賞レースでも注目されること間違いなしの本作が、無冠に終わった一昨年の雪辱を晴らします。

『Mia Madre (My Mother)』ナンニ・モレッティ

こちらも7度目のコンペ出品となったイタリアの名匠は、『息子の部屋』から14年ぶりのパルムドールに期待がかかります。審査員長コーエン兄弟の作品常連のジョン・タトゥーロが主演というだけあって、男優賞・女優賞でも有力な作品です。

『The Sea of Trees』ガス・ヴァン・サント

『エレファント』でパルムドールと監督賞を同時に受賞した経歴を持つサントも久々のカンヌ参戦へ。日本を舞台にした人間ドラマで、マシュー・マコノヒーと渡辺謙の共演が注目されている本作。トニー賞候補で話題の渡辺謙が、男優賞を受賞する可能性も。

『Dheepan』ジャック・オディアール

『預言者』でグランプリに輝いたオディアール。前作『君と歩く世界』に続き、3本連続のカンヌ出品となりました。ヴァンサン・ロティエの男優賞を含め、脚本賞あたりの有力コンテンダーの一本です。

『Il Racconto Dei Racconti (Tale of Tales)』マッテオ・ガローネ

『ゴモラ』『リアリティー』と、立て続けにグランプリを受賞しているイタリア期待の星が、三度目の正直を狙います。今回は英語作品で、前回よりも観念的な作りの予感。三度目のグランプリも面白い。

『Carol』トッド・ヘインズ

『ベルベット・ゴールドマイン』で芸術貢献賞に輝いた、寡作作家の8年ぶりの新作がここでお披露目。もちろん狙うは来年のアカデミー賞ですが、まずはここを高評価で突破したいところ。ルーニー・マーラとケイト・ブランシェットのどちらかが女優賞を獲得するか……。

世界の若き個性派作家たち

日本に比べて年齢層が幅広い世界の映画監督たち。それでも40代はまだ若手監督の扱いを受ける世界です。ここで紹介する7人の監督はいずれも30〜40代の若手作家。しかも、超個性的な作家が逆転を狙うとともに、映画界の勢力図を塗り替えようとしております。

『Sicario』ドゥニ・ヴィルヌーヴ

『灼熱の魂』でようやく注目されるようになったカナダの新鋭は、すでにハリウッドで活躍する中堅監督へと成長。本作ではジョシュ・ブローリンとエミリー・ブラントの演技に注目が集まっております。

『Mon Roi』マイウェン

『レオン』で注目され、リュック・ベッソンと破局後に監督業へ見事な転身を果たしたマイウェンも39歳。これからさらに急成長の予感。初出品となった2011年の『パリ警視庁:未成年保護部隊』(未)で、審査員賞を獲得しただけに、カンヌとの相性は相当良いと思われます。

『Macbeth』ジャスティン・カーゼル

『スノータウン』(未)で注目を集めたオーストラリアの若手注目株が、満を持してカンヌに乗り込んできます。言わずと知れたシェイクスピアの名作の何十回目かわからない映画化。カンヌと相性の良いマリオン・コティヤールの出演は吉と出るか……。

『The Lobster』ヨルゴス・ランティモス

『籠の中の乙女』で突然世界的な注目を集めた彼が、癖の強いキャストを集めて英語作品で初めてのコンペ部門へ。コリン・ファレル、レイチェル・ワイズ、レア・セドゥー。ベン・ウィショー。どんな映画か心配になりますが、イギリスのサイトでは本命に推されてました。

『Louder than Bombs』ヨアキム・トリアー

『オスロ、8月31日』(未)で注目を集めたデンマークの若手。名前からして薄々感じてる人もいるようですが、あのラース・フォン・トリアーの甥にあたります。4年前のラースの追放騒動の余波が残っていないかが懸念材料。

『Marguerite & Julien』ヴァレリー・ドンゼッリ

『わたしたちの宣戦布告』が日本でも人気を集めた女優業もこなす女性監督。マイウェンさんとかぶりますね。今回は自分で出演せず、脚本と監督に徹しているだけに、相当な自信が窺えます。アナイス・ドムースティエの女優賞にも期待。

『Chronic』ミシェル・フランコ

『父の秘密』で「ある視点」部門を制し、世界に衝撃を与えた彼が、アメリカ資本で新作を発表。初めてのコンペで実力を試します。主演は名優ティム・ロス。これはもしかして男優賞のダークホースか……。

もちろん初カンヌ組も見逃せない!

意外にこの映画祭で活躍を見せるのが、これまで一切カンヌ映画祭に出品してこなかった作家たち

一昨年パルムドールを始め大旋風を巻き起こした『アデル、ブルーは熱い色』のアブデラティフ・ケシシュも、2008年の『パリ20区、僕たちのクラス』のローラン・カンテも、初出品で頂点を獲得しました。

『La Loi Du Marche (The Measure of a Man)』ステファヌ・ブリゼ

『母の身終い』『愛されるために、ここにいる』の2本で、日本でも人気を集めるブリゼの新作も、この強豪揃いのコンペティションへ。セザール賞ではお馴染みな彼も、カンヌはこれが初めて。ホームグラウンドでは負けられない。

『Valley of Love』ギヨーム・ニクルー

日本では『ストーン・カウンシル』(未)しか紹介されていないフランスの隠し球。監督デビュー25年で遂に悲願のカンヌ国際映画祭への出品が叶い、このまま受賞までこぎつけたいところ。

『Saul Fia (Son of Saul)』ラースロー・ネメシュ

『受胎告知』で知られるアンドラーシュ・イェレシュを父に持つ、ハンガリーの期待の若手が、今年のコンペ唯一長編デビュー作での出品。父も叶わなかった三大映画祭制覇へ、これが大きな一歩となるだろうか。

カンヌ国際映画祭は13日から24日まで!

現地時間13日19時(日本時間14日深夜)から行われるオープニングセレモニーで幕を開ける今年のカンヌ国際映画祭。コンペティション部門の発表は24日18時50分(日本時間25日深夜)です。

紹介したコンペティション部門の作品以外にも、「ある視点」部門で上映される河瀬直美監督の新作や、クラシック部門で上映される深作欣二監督の名作『仁義なき戦い』など、日本映画の上映も充実しております。

会期中はフランスから届く情報から目が離せません。気になる方は公式サイトもチェックしてみると、現地速報や今回はもちろん過去のカンヌ国際映画祭についても詳しく知ることができるのでオススメです。

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