『白鯨との闘い』鯨に襲われた捕鯨船の悲劇を描く海洋アドベンチャーが遂に公開!

2016.01.17
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(C)2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC ALL RIGHTS RESERVED.

昨日より、捕鯨船エセックス号の悲劇を描くロン・ハワード監督の海洋アドベンチャー・ドラマ『白鯨との闘い』(『白鯨のいた海』から改題)が公開されます。CMやSNSなどで積極的に宣伝が行われているので目にした方も多いのではないでしょうか。

今回は映画のモデルとなった「エセックス号事件」、そしてそれを元に作られた文学の名作「白鯨」と映画を簡単に紹介していきます。

エセックス号の悲劇とは?

クジラから採取される鯨油は石鹸やろうそくの原料に、鯨蝋は薬品などに使用されていたため、1970年代頃までクジラは日常生活に必要不可欠な存在でした。

1819年、いつもと同じようにクジラを捕獲するためにマサチューセッツ州ナンタケット島を出航した捕鯨船エセックス号は、太平洋を航海中にマッコウクジラの群れを発見します。

歓喜しながらクジラを追い立て仕留めていたのも束の間、一頭の巨大なクジラが突然エセックス号に襲い掛かり、船はあっという間に沈んでしまいます。

大海に投げ出された乗組員はそれぞれ救命ボートに乗り込みクジラの巣から脱出、1000マイル以上離れた島を目指して終わりの見えない漂流を続ける……という話です。

ペリーらが日本にやって来た理由の一つとして、当時アメリカでは上述の理由で捕鯨を重ねた結果近海の海からクジラがいなくなってしまい、日本近海のクジラを狩るために中継地を立てるべく開国を迫ったという逸話も残されています。

小説『白鯨』と何か関係があるの?

『高慢と偏見』『嵐が丘』『戦争と平和』などに並び、世界十大小説の一つに数えられるハーマン・メルヴィル著『白鯨』の名を聞いたことがある方も多いと思います。

『白鯨』は先述のエセックス号事件に材を取り、メルヴィルが大幅に脚色を加えて小説化した海洋アクションロマンです。今回公開の『白鯨との闘い』では、作家メルヴィルがエセックス号事件の生き残りに取材を決行する、というシナリオで始まります。

活字に触れ慣れた人でも辟易する難解さ、捕鯨に関する専門用語や薀蓄の膨大さ、凄まじく衒学的な描写、ころころ入れ替わる視点、聖書や手記からの脈絡のない引用のオンパレードには色んな意味で圧倒されます。本作の後ではカフカやドストエフスキーが楽しくすらすら読めてしまうほどです。

これまでの『白鯨』の主な映画化

海の野獣(1928)

初めて製作された『白鯨』のサイレント映画です。ドリュー・バリモアの祖父である名優ジョン・バリモアが主演を務めました。

当時ハリウッドでは暗い映画は受けなかったため、船長エイハブの人間性にスポットを当て、彼の人生をヒロイックに描写したり原作にいない恋人を登場させたり、挙句の果てにはオチさえもハッピーエンドに変えてしまうという荒業のもと製作されました。

『白鯨』をテーマにしたまったく別の映画と言って良いかもしれません。

白鯨(1956)

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こちらは『マルタの鷹』などのジョン・ヒューストン監督によって製作された比較的原作に忠実な映画化です。

やはり独特の暗い雰囲気は当時アメリカの観客たちにまったく受けず、興行的には大失敗。名優たちを多く起用したものの、グレゴリー・ペックが狂った船長を、オーソン・ウェルズがほんの数分で退場する神父を演じるというミスマッチすぎるキャスティングに、今では仄かにカルト臭を感じるほどです。

しかしながら1975年、スピルバーグ監督の『ジョーズ』が公開されたことで「海洋パニックものの元祖」として再び脚光を浴びました。何があるか分からないものです。

白鯨 MOBY DICK(2010)

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こちらは2010年公開のTV映画です。総製作費20億円を掛け、VFXを駆使したSFアドベンチャー超大作となりました。

大まかな流れは1956年の映画をほぼ踏襲しつつ、原作の難解な部分をすべて削ぎ落としているので非常に観やすくなっています。しかしながら前後編合わせて3時間と少し長め、特に後半90分は終始船長と副船長の軋轢、白鯨との追いかけっこがちまちまと描かれるのでいささかの眠りを誘います。

とは言いつつ、本国アメリカでは視聴率的に大成功をおさめたようですし、ジャケットから想起されるほどのB級作品ではないので『白鯨』のお話を知るという目的で一度は鑑賞してみるのも悪くないかもしれません。

なお他にも、1930年公開の『海の巨人』、2010年公開の『バトルフィールド・アビス』など、『白鯨』は何度も映像化されています。

おわりに

簡単にまとめると、1820年に起こったエセックス号事件を直接モデルに映画化したのか本作『白鯨との闘い』、エセックス号事件をモデルに書かれた小説『白鯨』を映画化したのが先述の作品群です。

VFX技術も進歩していますし、大迫力屈指の作品なので映画館のスクリーンで鑑賞したい作品ですね!

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  • フラハティ
    3.0
    不朽の名作『白鯨』に隠された真実。 あの小説は実話だった…? っていいながら『白鯨』は未見なのでなんとも言えない。 邦題からは明らかにパニックモンスター映画っぽかったが、全然そんなことはなかった。 一応白鯨と闘うシーンはあるが勝てるわけないよね。笑 1891年、捕鯨船エセックス号が海に沈んだ。 原因は船と同じ大きさの白鯨によるものだ。 残されたたった三隻のボートで陸地を目指すが、乗組員たちは限界を迎えていた。 石油が存在しないこの当時、代替品として利用されていたのは鯨油。鯨の油だ。 捕鯨は今ではタブーなまでの扱いを受けているが、この当時は当たり前のことだった。 大自然の中は未だに解明されていないことばかりだ。 人類が誕生してからどれほどの時が経っていたとしても、まだまだ世の中は常識を越える出来事が存在している。 本作でいえば"白鯨"。 座礁した別の船の船長は、座礁した原因は巨大な白鯨によるものと語る。 皆があり得ないと笑い飛ばした。 だが巨大な白鯨は存在していた。 自然を壊す側である人間。 自分達の生活のために鯨を狩り、生きるための原動力とする。 生きるためにしなくてはいけない。 そして人間はこの世で一番の存在だと豪語している。 それは傲慢だ。 白鯨の目と傷だらけの身体を見れば、白鯨自身どれだけの人間から自らの仲間を守り、生きるための行動をとってきたのかがわかるはず。 人類が作り上げた文明の力。 そんなものは自然の力の前にはひれ伏すしかない。 白鯨を前に呆気なく破壊される巨大船。 そこには、人間はこの世で一番の存在だと豪語していた愚か者など存在しなくなっていた。 白鯨という存在をメインに置きながら、語られるのは人間という存在と自然の未知なる力。 船を破壊されたことで漂流する乗組員たちは、生と死の境をさ迷う。 何としてでも生き延びるために。 人間の根本的な生への執着と、自然の恐ろしさが観客にまで伝わってくる。 白鯨との闘いのシーンは、もちろん迫力があって緊張感もある。 船の出航からの前半も、自分があまり海が舞台の映画を観ないこともあって、結構のめり込んだね。 なんといっても自然の描き方が美しくてめちゃくちゃいい。 海が太陽によって煌めくシーンも、そこから一転して嵐に変わる海も、自然の力の強さと美しさをぶれずに描ききっていると思う。 『白鯨』の秘話的な話で、たぶんほとんど実話。ちょっと脚色はあるんだと思うけど。 でももう少し他の船員を掘り下げて欲しかったな。 自然の中での人間という存在というテーマにも触れているので、いかにも楽しいから狩りをしてるみたいな自分勝手なやつがいれば、メッセージ性は深くなったかも。 傲慢なやつは沖には出てないっていう描写もあったんだけどね。 あの船長も確かに舐めてた点はあると思うけど、人間関係っていう点においてなので、別に自然がどうとかっていうのを思っていなかったからなあ。 あのセリフも取って付けたようにも思えたし。 あとセリフの訳の都合か知らんけど、「彼らの姿を見ることはなかった」っていうセリフの後で、彼らが普通に姿を現してたんだけどどういうこと?笑 見間違えかな。笑 邦題のように白鯨と闘うような映画ではなく、自然の恐ろしさや力を描いている。 『白鯨』の製作秘話がメインでもあるので、物足りなさは残ったけど、サバイバル映画としては最後まで楽しめた作品。 原作知ってから観るのとはまた違うんかな。
  • Tpgooner
    4.0
    生命には神秘を内包されている。極限状態とその神秘があいまった時、人間の尊厳が見えてくる。
  • Aimy
    3.2
    信念の強さとか生きるための手段とか打ち明ける勇気だとか、その人その人で違うんだろうけどどれも大切だということなわかった。
  • しげお
    3.9
    りあるだった
  • EIR
    3.5
    記録
「白鯨との闘い」
のレビュー(6951件)