『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』で描かれた“未来予想”は当たっている?主要キャスト降板の理由は?ネタバレありで徹底解説

ポップカルチャー系ライター

竹島ルイ

映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』主要キャラ降板の裏側に何があった?劇中で描かれる“未来予想”はどのくらい当たっている?知っていればもっと作品を楽しめるトリビアを交えて徹底解説!

前作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の徹底考察から引き続き、今回は『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』について、であります。「PART2」も前作に負けず劣らず大ヒット。前作の主要スタッフ&キャストが再び結集し、およそ33億ドルの興行収入を記録した。

この続編映画が嫌い、という人間が果たしてこの地球上にいるのだろうか?いや、そんな輩はいない!全人類この続編映画を愛してやまないはず!という訳で、みんな大好き『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』をネタバレ解説していこう。

映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』あらすじ

1955年にタイムスリップしてしまったマーティ(マイケル・J・フォックス)は、天才科学者ドク(クリストファー・ロイド)の助力を得て、何とか1985年に無事帰還。恋人ジェニファー(エリザベス・シュー)との再会を喜んでいたのもつかの間、突然現れたドクに連れて行かれて、今度は2015年の未来へ。

その目的は、彼らの息子が起こす事件を未然に防ごうとするものだった。30年後のハイテクな世界に目をみはるマーティたち。果たして息子のピンチを救うことができるのか?

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※以下、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』のネタバレを含みます

続編は、上映時間3時間30分の大長編映画に?

第1作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の最後にテロップで流れる「to be continued…」は、タイムトラベル映画としてのお遊びに過ぎなかった。しかし予想を上回る大ヒットにより、監督のロバート・ゼメキスと共同脚本のボブ・ゲイルは真剣に『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』の製作を検討し始める。

彼らが考えたのは、過去の1955年、現代の1985年、未来の2015年、そして西部開拓時代の1885年を行き来する壮大なタイムトラベル・ムービー。最初のスクリプトでは、ベトナム反戦運動華やかりし’60年代にタイムトラベルしたマーティが、ヒッピーの両親に会うシーンも盛り込まれていたというから、具だくさんな内容である。映画のタイトルは『パラドックス』と冠された。

しかしながら目一杯にアイディアを詰め込んだシナリオは、計算すると上映時間が3時間30分に膨れ上がってしまう。ユニバーサルのシドニー・シャインバーグは「2時間程度に収めるようにカットせよ!」と命令するが、「これ以上ストーリーはカットできない!」とロバート・ゼメキスとボブ・ゲイルは激しく抵抗。ただでさえ170ページもあった脚本は書き直すたびにアイディアが練りこまれ、220ページにも及ぶ大長編となってしまった。

その折衷案として、ゼメキスたちは「PART2」と「PART3」に分けて製作することを思いつく。シドニー・シャインバーグは「PART3の話なんて聞きたくもない。早くPART2を早く作れ!」と呆れたが、最終的にGOを出した。もともと『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の続編は1作のみだったが、上映時間の問題から2作品作られることになったのだ。

わざわざ撮り直したオープニングシーン

バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』のオープニングは、「PART1」のエンディングをなぞっている。ガールフレンドのジェニファーとイチャついていたマーティの元にドクが現れ、「君らの子供が大変なんだ」と30年後の2015年にタイムトラベル。しかしこのシーン、実は「PART2」のためにわざわざ撮り直しているのだ。

「PART1」でジェニファーを演じていたクローディア・ウェルズが、母親のガンの治療に付き添うために女優業を中断。ジェニファーはマーティと一緒に2015年にタイムトラベルする設定なのだから、彼女をストーリーから削る訳にもいかず、代役としてエリザベス・シューがたてられたのだ(その後彼女は、娼婦を演じた『リービング・ラスベガス』(1995)でアカデミー主演女優賞にノミネートされるなど、演技派女優に開眼する)。

ゼメキスは、「もし最初から続編を作る予定だったら、ジェニファーをデロリアン号に乗せたりはしなかっただろう」と発言している。物語はマーティを中心に展開するので、ジェニファーはストーリーテリング的には邪魔でしかなかったのだ。わざわざ再撮したにも関わらず彼女は早々に眠らされてしまい、出番はほんの少しだけだった。

殺されてしまったジョージ・マクフライ

バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』最大の問題は、ジョージ・マクフライ役を演じたクリスピン・グローヴァー。彼は自分の出演料が、ビフを演じたトーマス・F・ウィルソンやロレインを演じたリー・トンプソンよりも、不当に低いと感じていた。話し合いは続いたが結局出演料の折り合いがつかず、降板してしまう。

シリーズの重要人物であるジョージは、さすがに代役をたてられない。ロバート・ゼメキスとボブ・ゲイルは「1973年にビフによって殺されてしまい、母のロレインはビフと再婚」という設定に作り変えて、彼の出番を大幅に削る。それでもどうしても彼が必要な場合は、「PART1」のシーンを引用したり、わざわざクリスピン・グローヴァーと背格好が似た俳優を連れてきて、顔が目立たないように撮影したりした。

マイケル・J・フォックスは2015年のシーンで、マーティ・マクフライ(父)、マーティ・マクフライJr.(息子)、マーリーン・マクフライ(娘)の三役を演じているが(ちょっと頭の破裂しそうな状況です)、これはマクフライJr.をクリスピン・グローヴァー、マーリーンリー・トンプソンが演じる予定が狂ったためだった。

しかし、これが裁判沙汰に発展する。「PART1」の出演シーンを無断で「PART2」に使った、と肖像権を持ち出してクリスピン・グローヴァーが訴訟を起こしたのだ。結局80万ドル近い示談金を支払うことで解決するも、ゼメキス&ゲイルとの間にわだかまりが残ることに(これをきっかけにして、全米映画俳優組合は俳優の肖像権に関する規則を導入すことになった)。

その後、『ベオウルフ/呪われし勇者』(2007)に出演して監督のロバート・ゼメキスとは和解するが、今に至るまでボブ・ゲイルとは絶交状態が続いている。

2015年を予見した映画

BBCは、「Back to the Future II: What did it get right and wrong?」(「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の未来予測 当たりと外れと)というタイトルの記事を発表し、この映画がどれだけ正確に未来を予測していたかを論じている。

記事によれば、「空飛ぶ自動車」が実現していなかったり、ワールド・ワイド・ウェブやスマートフォンを予測できなかったのは惜しいが(そもそも世界で初めてウェブページが公開されたのは、映画が公開された1990年だ)、キャッシュレス決済(ビフがタクシー代を指紋認証で支払ったシーン)や、ドローン(ビフたちが警察官に捕まるシーンでちらっと映る)、ウェアラブル技術(マーティが着ているジャケット)はかなり時代を予見していたものだという。時代が、ロバート・ゼメキスとボブ・ゲイルのイマジネーションに追いついたのだ。

筆者としては、やはり宙に浮かぶホバーボードが一番欲しいアイテムではありますが。

バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』トリビア

ではそれ以外に、『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』に関するさまざまなトリビアを紹介していこう。

スピルバーグJr.監督の『ジョーズ19』

2015年の未来で、マーティが3Dで作られた『ジョーズ19』予告編に驚くシーン。製作総指揮を務めているスティーヴン・スピルバーグの代表作をパロったネタだが、よく見ると監督の名前がマックス・スピルバーグ。「PART1」が公開された1985年に生まれた実子だ。現実でも17歳の若さで処女作となる短編映画『スナップ・ショット』を発表し、その後はビデオゲームのグラフィック・デザイナーとしても活躍。実は『ターミナル』(2004)にも端役でちょこっとだけ出演してたりする。

少年時代のフロド・バギンズが出演?

2015年のレトロ喫茶「Cafe 80’s」で、マーティが拳銃のビデオゲームに興じる場面。ここに登場する少年の1人が、当時6歳のイライジャ・ウッド。そう、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのフロド・バギンズである。

ビフのモデルはドナルド・トランプ大統領?

ビフのモデルがドナルド・トランプ大統領、という話はよく知られている。トランプはもともと不動産王で、ホテル経営やカジノ経営にも進出。派手な生活で知られる、世界有数のセレブリティーだ。ビフの場合はスポーツ年鑑で成金になったが、派手好き・女好き・傍若無人な態度はよく似ている。マーティがニードルズにそそのかされて不正行為を行い、上司から「You’re Fired.(お前はクビだ)」というファックスを受け取るシーンがあるが、これはトランプがホストを務めていた番組「アプレンティス」の決めゼリフと一緒。まさか将来トランプが大統領になるなんて、製作スタッフは誰1人思っていなかっただろうけど。

シカゴ・カブスがワールドシリーズを制覇?

映画公開当時、シカゴ・カブスは大リーグ屈指の弱小チーム。だからこそ、マーティが「2015年にシカゴ・カブスがワールドシリーズで全勝する」という記事を見て驚く、というシーンがギャグになっているのだが、実はこれが本当に起こりそうだった。2015年にカブスは見事プレーオフに進出し、ニューヨーク・メッツとリーグ優勝決定戦を争う。結果は4タテを食らって敗退となってしまったのだが、その翌年の2016年、一回りたくましくなったカブスはあれよあれよと勝ち進み、なんとワールドシリーズを制覇。映画の予言から1年遅れで、現実のものになったのである。

次作「 PART3」予告編を本編にインサートした遊び心

1885年にタイムスリップしてしまったドクを救うため、マーティが1955年のドクに助けを求めるシーンで『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』は終わる。そして「PART3」の公開はその6ヶ月後……。なんとも消化不良のラストだったためか、当時は否定派の意見も多くあったとか。しかしこの批判に対して、ロバート・ゼキキスはなんとも気の利いたコメントを残している。

「ハン・ソロが解凍されるまでに3年待ったことを考えれば、大したことないじゃないか!」

これは、『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』(1980)から3年後に『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(1983)が公開されたことを引用した、ゼメキス流のギャグ。しかもロバート・ゼメキス&ボブ・ゲイルは、最後に『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』の予告編までつける大サービスっぷり。筆者としては、最高のエンディングだと思っている次第。

という訳で、この解説も『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』に「to be continued…」いたします。

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※2020年6月17日時点の情報です。

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