『ゴット・ヘルプ・ザ・ガール』監督ベルセバのスチュアートが放つ世界感と楽曲に迫る

映画デートでモメてみたいショタコン文筆家

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本日2月10日にDVDレンタルが開始になったミニシアター系話題作『ゴット・ヘルプ・ザ・ガール/GOD HELP THE GIRL』!!待ってました!!これから好きな時に何度でも、あの3人とビター&スウィートなナンバーに会えると思うとワクワクが止まりません!

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(C) FINDLAY PRODUCTIONS LIMITED 2012

 

主人公の女の子イヴ、彼女と一緒に音楽を通して育まれていく友情や成長を描いた、痛さとキュートさを兼ね備えたオシャレなガールズムービー!

本作の監督、スチュアート・マードックは日本でも根強いファンを持つロックポップバンド、ベルアンドセバスチャン(Belle & Sebastian)のフロントマン(ヴォーカル&ギター)。シンガー兼ソングライターでもあります。

本作が監督デビューとなったスチュアート・マードック。作品自体もそれを裏切らない彼の音楽嗜好が存分に詰まった内容に仕上がっていました。長年温めていたという本作のアイデア。2009年に同タイトルのソロアルバムを発表していますが、脚本、サントラを同時進行で仕上げたと言うから驚き!

彼自身が辿ってきたこれまでの人生、愛する音楽がこれでもかと凝縮され、一味も二味も違うミュージカル映画として確実に映画界に爪痕を残したはずです。

スチュアートが書く繊細で少し痛々しい言葉がスクリーンの下部に並び、合わせて流れるポップな音に踊りだしたくなる楽曲の数々。劇場で鑑賞出来なかった方にも、もう一度DVDで観直そうという方にも、もっと本作の監督や音楽について知ってもらいたい!

もちろん登場人物達がみんなオシャレでチャーミングなので、若い女の子受けする”流行”もきちんと抑えつつ、それだけでは終わらない奥深さを味わって欲しいと思います!

ベル&セバスチャンが持つ世界観と楽曲

ベルアンドセバスチャン、通称ベルセバは2000年以降のインディー・ポップ界を代表する、スコットランドはグラスゴー出身のバンド。

1996年にファーストアルバム「Tigermilk」でデビュー。女性がぬいぐるみを赤ちゃんのように抱くジャケット写真が印象的な、彼らの記念すべきデビューアルバムは、アナログ盤のみ限定1000枚で売り出されたアマチュア時代の作品。これがファンの間では高価なプレミアとなっています。

彼らの登場はネオアコースティック界の新しい顔として晴れやかなデビューとなりました。Tigermilk1曲目から、既に私達を彼らの虜とするのは、『The State That I Am In』(邦題:僕はこんなさ)。しっとりと歌い出す柔らかい声に文字通り耳が釘付けとなってしまう。

同年1996年、「Tigermilk」から半年後に発売された実質的ファーストアルバム「天使のため息」で、彼は『僕をここから連れ出して!』と歌います。「Get Me Away From Here, I'm Dying」、爽やかで切ない旋律に乗っかる少し反抗的で意欲的な歌詞。

Ooh! get me away from here I'm dyingと繰り返す寂しい声を聞くと、登場する”僕”みたいにバスに乗りたくなるのは私だけでしょうか。

雨がしとしとと降っていたら言う事はなくて、親に歯向かい家を出てバスに飛び乗る。8割くらいの席が埋まる車内で窓を濡らす水滴、そのまま土曜の夜の街に・・・。好きなアーティストのライブに向かう孤独で自由な夕暮れ。そんな瞬間、皆さんありませんでしたか?

スチュアート・マードックと主人公イヴ

スチュアートは、自身の細身なシルエットが彼の音楽にもそのまま反映されたかのような、繊細でアンニュイな印象が魅力のイギリス出身の48歳。満を持して完成させた本作、築いてきた音楽性はもちろん、彼自身の生い立ちにも繋がる物語となっているので、そこを知って観賞するとまたひと味もふた味も違う印象になるのでは無いでしょうか。

大学生時代に慢性疲労症候群を患った彼は、家に引きこもりピアノに向かい合いひたすら楽曲を作るという7年間を過ごしたと言います。本作の主人公、エミリー・ブラウニングが演じるイヴは拒食症と闘いながら、スチュアート同様、入院中の施設に置かれるピアノを弾き、自分の思いを歌詞に乗せ、綺麗な歌声を響かせる孤独な少女。

冒頭シーンで、歌いながら窓からそっと抜け出す彼女は、寂しい暗闇から自分を待つ自由の世界へ足早に駆け出して行く。まるで彼女が通った後ろには音符♪が跳ねるよう。颯爽と走り出す彼女の力強くも切ない声にワクワクしました。

”ベッドに寝転がって、僕はフランス語を読んでいた”の歌詞から始まる「Nobody's Empire」(邦題:だから僕は歌う)は、スチュアートが闘病生活時代を綴った曲だと言われています。2015年に発売されたGirls In Peacetime Want To Dance(ガールズ・イン・ピースタイム・ウォント・トゥ・ダンス)のアルバム、1曲目に収録されているので是非このアルバムも手に取ってみてください。

病気との闘いはスチュアートにとってどんなものだったかは計り知れませんが、彼の書く詞からほんの少しだけでも感じ取れたら、”無”でない無表情が2時間弱、観る者の心を掴んで離さないイヴの事を、もっと理解できるかもしれない、近付けるかもしれない、なんて思ったりします。

また、ベルセバの印象的でワンカラーに統一したジャケットを見て、ザ・スミスを思い出す方も多いはずですが、彼らが最も影響されたバンドと言っても過言ではありません。

ザ・スミスの楽曲を使用した記憶に新しい作品にエマ・ワトソン主演、サントラが最高な『ウォール・フラワー』やズーイー・デシャネルに皆がメロメロになった『(500)日のサマー』がありますが、ふたりの女の子に共通する、風変わりさ(いい意味で変わっている)は、本作ゴッド・ヘルプ・ザ・ガールのイヴやキャシーも持ち合わせています。

スチュアートは『ハイ・フィデリティ』や『プラダを着た悪魔』、『JUNO/ジュノ』、『(500)日のサマー』などのサントラにも関わってきました。これらの、女の子や女性が魅力的な作品が好きな方にも、きっと本作はヒットするはずです。

3人のキャラクターとファッション

ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール

(C) FINDLAY PRODUCTIONS LIMITED 2012

ファニーフェイスと美しい歌声が魅力のエミリー・ブラウニングが演じるイヴ。彼女が病院を抜け出したライブハウスで出会うのは、レコードを出すのが夢と語るジェームズ。

このジェームズを演じるオリー・アレクサンデルは、8日と9日の2日間、来日公演を行ったバンド、イヤーズ&イヤーズのフロントマンです。ミュージシャンとしての彼を知る方には、この作品で優しくも頑固な少年ジェームズにも会って頂きたいもの。

そしてジャームズがイヴに紹介するのは、天真爛漫で自由なお嬢様キャシー。キャシー役のハンナ・マリーはウサギのような前歯とブロンドヘアーがキュートな、英国出身の女優さんです。なめらかに歌い誘うように踊るイヴとは違い、軽快な歌声や突然髪を振り乱し体を揺らすキャシーからも目が離せません。

沢山の曲に合わせて踊ったり走ったりと忙しい3人が身につけるのは、それぞれのキャラクターを大事にした個性的でとっても可愛い洋服や小物たち。細かい部分まで手抜きしない、小柄で女性らしい体つきと白い肌に映えるカラフルな衣装を選ぶイヴに対し、どちらかというとナチュラルに同系色でまとめるキャシーのファッションが彼女達の性格を現しています。1970年代のレトロなワンピースやカチューシャ、帽子など、その日の気分に寄って参考にするキャラクターを選ぶのも良さそうです。

ジェームズのプレッピーな衣装は、ラフなポロシャツ姿からネクタイを締めてジャケットを羽織る英国紳士スタイルまで幅広く、細身で華奢な彼によく似合っています。イヴとジェームズが住むアパートも、女の子なら誰でも憧れる拘りある作りになっているのでチェックしてみてください。バスルームのタイルの汚れさえ、オシャレに見える。映画って本当に不思議です。

ポップと痛みの融合

若さ故に切っても切っても切る事の出来ない、世間や自分自身への葛藤は時に痛々しく彼女たちを襲います。音楽なら救ってくれるかもしれない。思いを歌に乗せ、ギターを持つことで、自由になれるかもしれない。反抗出来るかもしれない。

静かで深い痛みは、スチュアートの手によって、ポップに切なく私達に届きます。対極にあるはずのそれらは、混ざり合うとこんなに魅力的でスウィートなんだ、と。今から3人に再会するのが楽しみでなりません。

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  • ほのか
    4.1
    作中の音楽が可愛いよい
  • セリム
    4.4
    ポップでキュートなミュージカル。 レトロな雰囲気と曲もすごく合っていました😊 とにかく全編通してセンスが良くお洒落〜な感じです! それと…ジェームズが良い人すぎる!屁理屈は多いけどね😅
  • 鉄雄
    4.0
    「人生は むごい」 「だが麗しい」
  • korin
    4.3
    ベルセバ。音楽、ファッション最高。DVDも買ってしまった。
  • Yosuke14
    3.6
    全編が長いMVのようなお洒落な作品でした(*^^*) ミュージカルのようなセリフ回しやポップな感じは良かったです! ですが内容的にちょっと物足りない感じがしました(^^; ストーリー内も数ヶ月の期間を描いた作品ですし、彼らの不完全な感じがくすぐられると言えばくすぐられます。 ジェームズみたいな優しい男がこれからの世の中増えてくれることを期待したい。
「ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール」
のレビュー(13239件)