Dramatic everyday~毎日を彩る映画音楽:予告編音楽のひみつ篇~

映画と音楽は人生の主成分

みやしゅん

第1弾第2弾の“Dramatic everyday~毎日を彩る映画音楽~”では、映画音楽の3つのジャンルの中から、主題歌と挿入歌の2つをご紹介しました。第4弾では、第3弾の内容を踏まえつつ、3つ目の映画音楽のジャンルである“イメージソング”について取り上げたいと思います。

主題歌と挿入歌は有名な曲ばかりが登場してみましたが、今回はかなりマニアック…前置きが長くても面白くないので、まずは『ゴーン・ガール』の予告編をご覧頂きましょう。

ゴーン・ガール(2014)

映画『ゴーン・ガール』は、2014年に公開された作品の中で最も衝撃的なものでした。妻のエイミーを演じたロザムンド・パイクは、アカデミー賞で主演女優賞を受賞したことでも注目されましたが、本作ではそれ以上に特報で使用されたイメージソングが話題となりました

この特報では、映画『ノッティングヒルの恋人』の主題歌「She」が、イメージソングとして使われています。『ノッティングヒルの恋人』と言えば、『ブリジット・ジョーンズの日記』や『ラブ・アクチュアリー』、『アバウト・タイム』など、幸せに満ち溢れた作品を数多く手がけてきたリチャード・カーティス監督の代表作です。

しかし『ゴーン・ガール』を鑑賞した方は分かると思いますが、本作は“幸せ”とは程遠い世界が描かれています。実は、この特報を手がけたのはデヴィッド・フィンチャー監督自身…つまり、監督があえて「She」を選曲しているのです。

この楽曲は元々、Charles Aznavourというシンガー・ソングライターのもので、英語タイトル「She」の方が現代では有名になっています。本作の特報では、この「She」をカバーしたものが使われているのですが、重要な歌詞の一部がカットされています…その歌詞を知ればあなたも背筋が凍るはず…。気になる方は是非調べてみてください。

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このように、イメージソングには様々な秘密が隠されています。第4弾の“Dramatic everyday~毎日を彩る映画音楽~”では「予告編音楽のひみつ篇」と題して、知られざる予告編音楽の世界へと皆さんをご招待いたします。

イメージソングって何?~予告編音楽の世界へ~

主題歌、挿入歌と並んで重要になるのがイメージソングです。イメージソングとは、宣伝用として予告編で使用される楽曲のことを指します。ですので、ここからは分かりやすくするために、イメージソングは“予告編音楽”という呼び方をしていきます。

ここでもう1本映像をご覧頂きます。次にご覧いただくのは、第3弾でご紹介した『千と千尋の神隠し』の国内用の予告編です。

前回観た予告編と大分印象が違いませんか?実は海外の予告編では、久石譲が作曲した『千と千尋の神隠し』の劇中の音楽が使用されているのに対し、国内の予告編では使用されておらず、いわゆるサウンドトラックに収録されていない楽曲が使用されています。神秘的かつワクワクさえしてしまう海外の予告編に対し、不穏な雰囲気が漂う国内の予告編…音楽1つで印象はこんなにも変わるのです。

予告編音楽も映画を印象付ける重要な要素

映画を印象付けるのは何も、主題歌や挿入歌だけではありません。予告編音楽は観客が映画にふれるきっかけであり、むしろ主題歌や挿入歌よりも重要と言えます。予告編では、劇中の楽曲を使用する場合もありますが、劇中の楽曲を使用しない場合…正確には使用できない場合がほとんどです。

というのも、予告編において劇中の楽曲が使用出来るかどうかは、サウンドトラックの販売時期によって異なってくるからです。特に、特報映像のように映画製作段階で流す予告は、劇中の楽曲を使用することはほぼ不可能…そのため、主題歌や挿入歌と違い、予告編音楽はサウンドトラックに収録されないことがほとんどなのです。

これは昨年話題となった『海街diary』の予告編です。『海街diary』では、菅野よう子が劇中の音楽を手がけ、その繊細で美しい音楽で映画を彩っていました。しかし、予告編で使用されているのはサウンドトラックに収録されているものでも、菅野よう子が創ったものでもありません…では、この音楽は何なのでしょうか?

予告編の音楽はこうして選ばれる。

好きな俳優や監督がいる場合は除いて、大抵の人は予告編を観て「この映画、面白そうだから観たい」という感情を抱きます。その中で、予告編で使われていた楽曲が印象的なものだったら「あの曲はなんだろう?」と気になる方も多いのではないでしょうか?

昨年、某テレビ番組で映画の予告編制作会社が取り上げられ、大きな話題を呼びました。簡潔に内容をまとめると、映画の予告編を専門に制作している会社があり、そこでは各ディレクターによって映像や音楽が編集されている…というものでした。そう、映画の予告編は、専門の制作会社のディレクターによって創られており、予告編音楽もディレクターによって挿入されているのです。

ディレクターは多くの人に「この映画観たい!」と思ってもらえるように、心を揺さぶる映像や音楽を選んでいます。先ほど紹介した『海街diary』の予告編でも、ディレクターの卓越したセンスによって曲が選び抜かれ、その楽曲によって壮大な物語を私たちに想像させています…まさに神業です。

ベイマックス(2014)

予告編制作の会社はもちろん世界各国にあります。先ほど紹介した『千と千尋の神隠し』の予告編のように、世界各国で予告編が異なることから分かるでしょう。国による違いは『ベイマックス』の予告編でよりはっきりと分かります。

日本では『ベイマックス』と言えば、AI の「Story」が主題歌として使用されていた印象が強いでしょう。特に予告編でも、そのバージョンが頻繁に流れていたため、そのイメージのまま劇場へ足を運んだら、思いがけずアクションシーンが多く、びっくりした人も多かったと思います。しかし、この予告編にはマーベルらしさを際立たせた印象的なものが存在します。

この予告編は本国アメリカで作られた本予告で、序盤から流れているのが予告編音楽として抜擢されたGreek Fireの「Top Of The World」です。もちろん、イメージソングのため本編では一切使用されていません…しかし、このマーベルらしさ全開の映像と音楽の歌詞や雰囲気が見事にマッチしており、わくわくするはずです

どちらが好みかは分かれると思いますが、日本ではこの予告編だったからこそ多くの観客が劇場に足を運んだのかもしれません。ディレクターたちは観客のニーズを探りながら、どのパターンがベストかを日々考え、計算しています。様々なバージョンの予告編を観ることは、想像以上に面白いので是非好きな作品で検索してみてください!

様々な試行錯誤の結果、出来上がっている予告編ですが、時々摩訶不思議な現象がおきます。

予告編の音楽の秘密~予告編音楽の制作会社って?~

主題歌や挿入歌と比べると、注目を浴びることは少ない予告編音楽ですが「この映画観たい!」と思わせる楽曲が選び抜かれているため、とても魅力的なものばかりです。しかし、予告編の世界では時々摩訶不思議な現象がおきます…その現象は次の予告編を観ていただければ分かると思います。

何かに気づきませんか?そう、冒頭の音楽が『海街diary』の予告編と同じなのです。「まぁ、1つくらいならあるだろう」…と思いきや、こちらの予告編でも同じことがおこっています。

こちらも昨年話題となったフランス映画『あの頃エッフェル塔の下で』ですが、冒頭に同じ楽曲が使用されています。印象的なメロディーのため使用されていることが多いようです。3本に共通しているBGMは、“Warner/Chappell Production”という会社の「Golden memories」という楽曲です。

予告編音楽を専門に創る会社

「あれ…?」と、勘の鋭い方はもう気づいたかもしれません。そう、予告編を専門に扱う制作会社のために、予告編音楽を専門に制作している会社や人々がいるのです。予告編音楽の制作会社は、先ほどの3本の予告編に使用されていた「Golden memories」を提供していた“Warner/Chappell Production”という会社以外にも沢山あります。

密かに映画ファンの間で話題となっているのが、シンセサイザーを使用した予告編音楽を創っている“Two Steps From Hell”という会社です。『ハリー・ポッター』シリーズや『パイレーツ・オブ・カリビアン』などの人気作の予告編に音楽を提供しています。

また、筆者自身が注目しているのは“Really Slow Motion Trailer Music”という会社…この会社では最近の話題作の予告編音楽を数多く提供しています。

これは、今年公開が決まっている『アリス・イン・ワンダーランド』の続編『アリス・イン・ワンダーランド 時間の旅』の予告編です。他にも新たなヒーローが誕生し本国でも話題となった『デッドプール』や、クロエ・グレース・モレッツ最新作『フィフス・ウェイブ』の予告編の音楽も“Really Slow Motion Trailer Music”が担当しています。

最後に印象的な楽曲を使用している予告編を2つご紹介して、この第4弾を締めくくりたいと思います。

インセプション(2010)

インセプション』では、ハンス・ジマーが音楽を担当しています。第3弾でも紹介しましたが、彼の特徴はシンセサイザー…予告編も彼の楽曲の非常によく似ています。しかし、これはハンス・ジマーの楽曲ではありません。

この楽曲は、予告編音楽の世界で活躍する作曲家ザック・ヘムジーの「Mind Heist」という楽曲です。彼は、様々な予告編の音楽を担当している人気者です。

シンデレラ(2015)

シンデレラ』は2015年に大ヒットした、お馴染みの作品です。この映画の予告編、中盤からとてもドラマティックな音楽が流れ始めます。

この楽曲は、様々な予告編音楽を手がけてきたニック・マーレイの「Aeon」という楽曲。その壮大な音楽は、予告編を上質なものに仕上げています。もちろん、本編では使用されていません。 

ニック・マーレイも『ハリー・ポッター』シリーズのTVスポットなどを手がけている売れっ子であり、その楽曲の幅広さは「すごい」としか言いようがありません。映画『LOOPER』の予告編で使用されている「K.I.L.L.」は『シンデレラ』とは真逆…とても攻撃的な楽曲となっています。

予告編の秘密篇

音楽は映画の世界観を鮮やかに彩る重要な要素の1つ…それは主題歌でも挿入歌でもイメージソングでも変わりません。私たちが観ている映画には必ずと言っていいほど音楽が流れています。

予告編音楽も最近では、予告編音楽の制作会社からアルバムが発売していたり、iTunesなどの配信サイトからダウンロードすることも出来るので、タイトルさえ分かれば世界観を日々味わうことが出来ます!

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「シンデレラ」
のレビュー(83354件)