『ジュラシック・ワールド』一人勝ちとも言える記録的大ヒットの秘密は「動物的本能」

2016.02.23
洋画

Why So Serious ?

侍功夫

2015年サマー・シーズンにアベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロンターミネーター:新起動/ジェニシスなど、大作映画ラッシュの中で“一人勝ち”とも言える記録的な大ヒットを収めたジュラシック・ワールドのレンタルが2月24日より開始されます。

そこで、現代に蘇った恐竜の大暴れっぷりを描き続けた『ジュラシック・パーク』シリーズ全作品の魅力を振り返り大ヒットの秘密を詳らかにしていこうと思います。

CG恐竜の誕生と“気配”の映像化『ジュラシック・パーク』(1993)

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本作で最も有名な場面は巨大な恐竜ティラノサウルスがやって来るのを、波打つコップの水で表現した場面でしょう。音としてまだかすかにしか聞こえないけれど、大きく地を揺らす振動が水に伝わり、やがて来る恐竜の巨大さを表している名場面です。

これはスピルバーグ監督の代表作ジョーズで、有名なテーマ曲と共に背びれをみせる手法のアレンジと言えます。対象そのものを見せず、音と気配だけで恐怖を煽るスピルバーグ演出の真骨頂です。

また、本作は着ぐるみや実物大のアニマトロニクスと併用しながら、本格的なCGキャラクターで恐竜を表現し、CG時代の幕開け的な作品になったことでも有名です。コマ撮りで恐竜を作っていた特殊効果の大家フィル・ティペットがCG恐竜の出来を見て「これで私たちは絶滅だ……」とボヤいた、その言葉はそのまま劇中グラント博士の台詞にもなっています。

スピルバーグの悪ふざけ炸裂!『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(1997)

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本作の魅力は終盤、カリフォルニアの街中をティラノサウルスが闊歩する場面に尽きます。住宅の窓からひょっこり顔を出したり、日本人観光客を追いまわす場面など、日本の特撮怪獣映画への目配せに溢れています。また、摩天楼と大きな月をバックに咆哮するのはキング・コング(1933)へ、ラスト“恐竜島”の様子はゴジラシリーズ怪獣総進撃へのオマージュでしょう。

ありきたりな続編作製にあまり気乗りしなかったであろうスピルバーグが、どうせ文句言われるのならと、好き放題やり尽くしたおかげで、一般的な評判は悪いですが滅法オタク臭い怪作に仕上がっています。

羽ばたけ翼竜!『ジュラシック・パークIII』(2001)

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ティラノサウルス推しのスピルバーグから翼竜推しのジョー・ジョンストンへバトンタッチしたことで、クライマックスに満を持して登場するのはプテラノドンです。また、シリーズの象徴だったティラノサウルスよりもデカくて凶暴なスピノサウルスが登場し“王者”の座を奪います。

スピルバーグがふざけてハチャメチャにした前作を、「シリーズ3作目」として収束させようとするジョー・ジョンストンの質実剛健さをどう見るかで評価の別れるところでしょう。

1作目、水の波紋で見せた恐竜の気配を、この作品では「飲み込んだ携帯電話の呼び出し音」で表現します。♪ぴ~ぴろり~♪というマヌケな電子音に合わせて、恐ろしげな巨大恐竜が現れるギャップが楽しい作品です。

遂に開園! 速効パニック! 『ジュラシック・ワールド』(2015)

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最新作では、失敗し続けた恐竜見物施設が遂にオープンします。目玉には遺伝子を混合した新種の巨大恐竜インドミナス・レックスが登場! しかし予想外に強く、ズル賢く、収容施設を破壊し脱走すると大勢の一般客を巻き込んで大パニックを引き起こします。

監督にはタイム・トラベル実験をしようと言う奇妙な男を描いた彼女はパート・タイムトラベラーコリン・トレボロウが、スピルバーグ直々の抜擢により起用され、見事な手腕を見せつけています。

本作で調教されたラプトルを引き連れ狩りに向かうクリス・プラットは全世界の小学生憧れの姿でしょう。また、スピルバーグから受け継いだ「ティラノサウルスは正義!」のスピリットが見どころになっています。終盤の登場シーンやその後の活躍は、もはや歌舞伎の見得の様なカッコよさです。

大ヒットの秘密

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『ジュラシック・パーク』シリーズでは、すでに絶滅した種を再生する遺伝子操作の倫理的な罪や、キリスト教的な創造主である神への冒涜、カオス理論、親子関係などのサブ・テーマが設定され、作品を彩っています。しかし、それらは、言ってみれば料理における“付け合わせ”の様なものです。ハンバーグの上のクレソンの様に、メインに影響するものではありません。

同様に、巨大な恐竜へ「旧態依然とした社会の弊害」だとか、「脆く儚い現代文明」をこじつけることは可能ですが、明確に投影されているワケでもありません。作品の持つテーマの奥行きは目視で確認できる程度です。

『ジュラシック・パーク』シリーズは全作、基本的に同じ「親とはぐれた子供の地獄めぐり」という構造を持っています(2作目ではT-レックスの子供が親とはぐれます)。

人間であれば子供も大人も…… どころか地球上に生きる動物全てが、一度ならず見知らぬ土地で一人ぼっちになり不安な気持ちになったことがあるでしょう。また、ご自身に子供がいれば、一緒にいたハズの子供がまったく見当たらない時に抱くのは「恐怖」ではないでしょうか?

『ジュラシック・パーク』シリーズは生き物全般が持つ動物的本能の恐怖を刺激する作りになっているのです。メイン・ターゲットが「全年齢」どころか、「全生物」なのです。ヒットしないワケがありません。

シリーズ最高傑作とは?

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遊園地のライド型お化け屋敷、もしくはディズニーランドの「スプラッシュ・マウンテン」や「ホーンテッド・マンション」を思い浮かべてみてください。乗り物に乗ると、あとは自分ではどうすることも出来ず移動しながら、様々な情景を目撃していくことになります。

『ジュラシック・パーク』シリーズ劇中にも同じ様なアトラクションは登場しますが、映画自体がアトラクションと同じ構成になっています。警備システムが崩壊し、野放しになった恐竜たちが跋扈するパークで、保護者とはぐれた子供が逃げ惑いながら様々な恐竜に出会い、触れ合い、夜になると襲われる、というライド型のアトラクションだと言えます。

難解さに頭をひねる必要も無く、迷子の恐怖に感情移入しながら、恐竜のカッコよさに感嘆する、というのが『ジュラシック・パーク』シリーズの本質です。

「ブラキオサウルスおおきいな! ラプトルこわいね! ティラノサウルスかっこいい!」

これこそが、シリーズの目指すところなワケです。その点で言えば、最も優れた『ジュラシック・パーク』シリーズの作品とは、ユニバーサルスタジオにある『ジュラシック・パーク ザ・ライド』になるのかもしれません。

Chuck Zlotnick / Universal Pictures and Amblin Entertainment

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