【ネタバレ注意】タランティーノ最新作『ヘイトフル・エイト』の裏側を教えます!

2016.03.06
洋画

俺は木こりだいい男よく眠りよく働く

谷越カニ

ネタバレ注意!

ヘイトフル・エイト

クエンティン・タランティーノの最新作『ヘイトフル・エイト』が2月27日に公開されました。

『レザボア・ドッグス』を彷彿とさせる密室ミステリー。最近のタランティーノらしさが見られる超大作の詳しい解説やアメリカでの評価などを紹介します。

簡単なあらすじ

ヘイトフル・エイト

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舞台は南北戦争終結後のアメリカ。元騎兵隊の黒人賞金稼ぎマーキス・ウォーレン(サミュエル・L・ジャクソン)は、賞金首を自らの手で殺さず絞首刑に処すことにこだわりを持つことから「首吊り男」の異名を持つジョン・ルース(カート・ラッセル)が貸しきった馬車に乗ることに。二人の目的はレッドロックという街に賞金首を届け、金に変えることだった。

ルースが捕まえた賞金首ドメルグ(ジェニファー・ジェイソン・リー)と南軍ゲリラの子孫クリス・マニックス(ウォルトン・ゴギンズ)を乗せた馬車は吹雪を回避するためレッドロックへ向かう道の途中にあるミニーの店へ行く。

そこに店主ミニーの姿はなく、店を預かっているというボブ(デミアン・ビチル)、絞首刑執行人のオズワルド・モブレー(ティム・ロス)、カウボーイのジョー・ゲージ(マイケル・マドセン)、そして南軍元将軍のサンディ・スミザーズ(ブルース・ダーン)がいた。

覚えていますか?脚本流出騒動

2014年1月、「タランティーノ最新作の脚本が流出し制作が中止に」というニュースが流れました。完成してから数人にしか見せていない脚本の初稿がどこからか流出、タランティーノは激怒して製作を中止したというのです。ちなみに、最近、流出元がアルコン・エンタテイメント(『ブレードランナー』の続編を制作する会社)であることがFBIの調査で判明しました。

タランティーノは流出した初稿をボツにし、改稿を重ねて完成させた脚本を朗読会で発表しました。本作に出演したサミュエル・L・ジャクソンやティム・ロス、カート・ラッセルが参加した朗読会は絶賛を受け、これは映画にしないといけないだろうという意識がタランティーノや俳優陣の間に生じ、映画が製作されることになりました。

『ヘイトフル・エイト』と『レザボア・ドッグス』をつなぐティム・ロス

レザボア

脚本流出騒動の渦中には、最初に脚本を渡された3人の俳優のうちの一人、ティム・ロスもいました。ロスといえばタランティーノのデビュー作『レザボア・ドッグス』で重要な役を演じた俳優。ファンの間では「ミスター・オレンジが裏切った!」という声もあったとか。

本作でロスが演じるのは絞首刑執行人の英国紳士モブレーです。『ジャンゴ 繋がれざる者』のドクター・キング・シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)に似たキャラクターで、どこか信用出来ない雰囲気があります。クリストフ・ヴァルツといえば、近年のタランティーノ映画には欠かせない存在。タランティーノがヴァルツを外してまで『パルプ・フィクション』以来21年ぶりにティム・ロスを起用したかった理由とは?映画を観た方ならわかるでしょう。

西部劇『ジャンゴ 繋がれざる者』との違い

ジャンゴ

『ジャンゴ 繋がれざる者』と本作には共通する原点があります。マカロニ・ウエスタン。60〜70年代のイタリアで多く製作された西部劇です。タランティーノは両作をマカロニ・ウエスタンを意識して制作しました。音楽を担当したエンニオ・モリコーネはマカロニ・ウエスタンを象徴する音楽家として知られています。

主人公が黒人という点も共通していますが、設定は大きく異なります。本作の主人公は北軍の元騎兵隊。ジャンゴは奴隷です。奴隷そのものを描いた『ジャンゴ』との設定の違いは、本作の舞台が南北戦争後のアメリカであるという設定に如実に現れています。つまり、本作は現代社会のアイロニーなのです。

黒人に人権が与えられてから50年も経つのに未だに黒人差別は残っているし、国内でいくつもの対立がある、という現代アメリカの問題点を8人のいがみ合う登場人物に重ね合わせたのでしょう。

ちなみに、本作の脚本はもともと『ジャンゴ』の続編を書くつもりで書かれていたんだそうです。

『エクソシスト』とも共通点があった?

エクソ

ホラー映画の金字塔『エクソシスト』と本作がどう結びつくのか疑問に思われる方が多いでしょう。

町山智浩氏の『映画その他ムダ話』によれば、1万ドルの賞金首・ドメルグを演じるジェニファー・ジェイソン・リーは『エクソシスト』のリーガン・マクニールを意識しながら演技をしていたというのです。

確かに、ドメルグは顔に大量の血を浴びたりギャーギャー悲鳴を上げたり、悪魔に取り憑かれたリーガンとよく似ています。
ドメルグのキャラクター性や中盤以降の展開からホラー映画だと評する人も多いそうです。

また、本作では『エクソシスト2』の「リーガンのテーマ」も使用されています。タランティーノはこの音楽が大好きで、いつか使ってみたかったんだとか。相変わらず映画愛に溢れる男ですね。

鑑賞中、心の何処かで意識してしまうある映画

郵政

舞台が猛吹雪の雪山であり、カート・ラッセルが出演する、この2点から連想されるのはジョン・カーペンター監督作『遊星からの物体X』です。吹雪の中、O・Bがトイレへ向かうシーンを見てピンと来た人が多いのでは?このシーンの構図は『遊星からの物体X』からの引用だと思われます。

密室で正体の見えない敵を探す物語で、誰も信用することができない、という設定も本作と共通しています。どうやらタランティーノはマカロニ・ウエスタンを意識しながらも70年代に流行したホラー映画を参考にしていたようですね。これらをつなぐ存在が『物体X』の音楽を担当していたエンリオ・モリコーネです。

エンニオ・モリコーネ御大の偉大な仕事

マカロニ・ウエスタンを代表する音楽家であるエンニオ・モリコーネとどうしても一緒に仕事がしたかったと語るタランティーノ。実は『ジャンゴ』製作中にモリコーネにオファーを出したそうなのですが、モリコーネのスケジュールの都合で断念していたそうです。本作でようやく音楽を担当してもらえることになりました。

モリコーネは御年87歳。いつ音楽家を引退してもおかしくない年齢です。年をとるといい作品を作ることが難しくなると思われがち。黒澤明だって晩年の映画は評価が分かれます。

しかし、モリコーネの本作での仕事は見事です。男性のコーラスや物悲しい曲調はマカロニ・ウエスタンそのもの。ジャンルと映画をつなげる象徴的な人物・音楽を起用することで知られるタランティーノらしさがここにも見られました。

アメリカではどう評価されているのか

アメリカの大手レビューサイト「Rotten Tomatoes」での支持率は本稿執筆時点で75%。「そこそこ」ですね。ちなみに、『ジャンゴ』は88%、『イングロリアス・バスターズ』は89%です。

Amazon.comが運営する『IMDb』では8.0/10の高評価が付けられています。こちらでは『ジャンゴ』が8.5、『イングロリアス・バスターズ』が8.3のスコア。
まとめると、「『ジャンゴ』と『イングロリアス・バスターズ』には劣るが、面白いことに違いはない」といった感じでしょうか。

近年のタランティーノらしさと『レザボア・ドッグス』の要素を融合させた『ヘイトフル・エイト』。映画館の大画面・大音量で観ると、寒さとサスペンスの面白さで背筋が凍るかも。

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  • ろぐ
    4.4
    88点
  • ボンバへ
    5.0
    最初のスローな出だしからの、最後の銃撃戦オンパレードの差が激しすぎて面白すぎました。
  • よしお
    3.6
    最初はダラダラしてたけど、最後らへんはなんかもう普通に面白かった、レトロな感じがまたいい
  • pursuitWR
    3.5
    コーヒー(血)を豪快に噴き出すところが好き
  • elephantom
    3.8
    小屋の女たちのキャラが良い。
  • MTY
    3.5
    chapter3くらいまでなげええええって思いながら見てたけど、 山小屋についてからはかなり面白く観れた。 タランティーノの、自分の作品を安定供給している感じ、とても尊敬する。 作り手として、世界とすごく良い関係値を築けている類まれな監督。
  • MariMiyasaka
    3.5
    痛そうなシーンはすごく苦手だけど、タランティーノの映画はどんなに残酷でたくさん血が出ても、なぜか笑いながら観ていられるのは不思議。 モリコーネ先生、まさかのタランティーノ作品で初アカデミー賞だったけど納得です。雪原シーンの音楽と、室内の下品な会話のコントラストが良かった。
  • ぶーこ
    3.1
    おもろ
  • AKIKO
    3.7
    たまらんな。。。 チャプターで分けられてるところが 小説みたいで見やすかった。 チャプター4くらいで自分なりに オチを予想してたんですよ(笑) 結果は…全く裏切られました(笑) いや~裏切られたっていうより、 人がバンバン死んでいくのでまあそう だろうね。となるので衝撃度は低いかな… 血とか粉々の頭とか顔面にぶっかけられてた 女優さんすげ~あの人が一番すごい。
  • ぶり
    3.9
    記録
  • HummingBird
    4.4
    緊張感のない独特の嘘の付き合いが本物っぽくて好き。
  • はぴねす
    2.0
    ダメ!ムリ! 痛いの、血しぶき、銃殺…殺害シーン多くて気持ち悪い。 簡単に殺してたくせにモタモタしてるから…ソレを言ったら元も子もないか(笑)
  • 西向く侍
    3.9
    面白かった!!!! 血がドバドバに流れるタランティーノ節も健在!苦手なタランティーノですが今作は飽きることなく楽しめた! 一体これからどうなっていくんだろうって予測不可能な物語に引き込まれた。
  • 寄道世之介
    4.0
    ラストはそれはせこくない?と思ったが、それまでは室内の会話劇ながら圧倒的な迫力で流石タランティーノだった。 70mm撮影の効果もあったと思う。立体感が増して表情の迫力も増してる感じはした。
  • 八八YOSH八八
    4.2
    怖いほどの静寂が広がる大雪原。 どうしようもないロクデナシの8人。 なにやらキナ臭いマカロニウエスタン。 密室で延々と展開されるセリフ劇。 前半に散りばめられたピースが雪崩をうったように回収されていく後半の展開。 暴力と銃弾と血とおっさんと熟女と。 開始5分でタランティーノ。 3時間ずっとタランティーノ。 特筆すべきはジェニファー・ジェイソン・リー。 映画史に残るアバズレの誕生。 粗暴な男に殴られても、手錠で繋がれても、熱いシチューかけられても、血を吐かれても、弟(かどうかも定かでないけど)の脳漿ぶちまけられても、彼女はくじけずにギターで弾き語りだってしちゃう。彼女はとにかく自分さえ生き残れればそれでいい。 アバズレ好きの俺にはたまらかった✨✨ 誰がホントのこと言ってるのか、嘘をついてるのか、もうわけわかんない。そして最終的には死体の山ができて、どこかヌケた音楽で映画は終わっていく。これはもはやタランティーノが築き上げた古典だな。
  • イーデスハンソンしげゆき
    4.2
    山小屋で思惑がある8人が吹雪で立往生。嘘付きだらけの化かし合いのお話。 オープニングがやたらと長いのもタランティーノ。 物語の解説を入れてくれるのもタランティーノ。 血がドバドバで汚いのもタランティーノ。 賛否あるでしょうが面白い映画でした。 カートラッセルが汚い役し過ぎ。 サミュエルLジャクソンはちょうど良い役。ディムロスをあんな役に使っちゃう?!
  • 緑雨
    5.0
    凄いぞ、この濃密さ。観る者の心をざわめかせるタイトルバックは、映画至上最も不穏と言ってよいのでは。 扇情的なモリコーネのスコアをバックに、雪原を駆ける馬車馬。雪を掻き分ける脚の動きの捉え方が凄い(ちょっとスローモーションかかってる?)。動く馬車を奥に、雪で半分隠れた磔刑のイエス像を手前に置く構図の決まり具合! 馬車の中、そして店の中では、延々と会話シーンが続く。正直、会話の中身などどうでもよい。事態の展開も、どうでもよい。ただただ約3時間、この密室で、hatefulな輩たちと濃密な時間を共に過ごしているかのような映画体験に身を任せるしかない。ドアが開いて吹雪が吹き込むたびに、「板を打ちつけろ!」と叫ぶ無闇さが素敵だ。役者陣も、誰ということはない、全員が印象的だ。
  • あいかわ
    3.4
    こんなにシチューがありがたそうに見えたことはない。
  • MikuOshika
    3.9
    タランティーノがおくる タランティーノ節炸裂の血しぶき祭りの密室劇大ウソの大クセの3時間! 最初から最後まで ずーっとタランティーノ。 ありがとうタランティーノって言いたいくらいタランティーノ。 密室と言うこともありセリフにも色んな罠?があり、見終わりは後味が悪いけど、面白い!
  • chihiro
    1.0
    血飛沫とかがいちいち大袈裟すぎてアホっぽかったです
  • takanashi0928
    4.0
    中盤から後半にかけてのレザボア感が最高!欲を言えば長過ぎるかなー。
  • j
    4.0
    最初つまんないけどだんだんと面白い。 次々に死んでいく感じ躊躇さがゼロ!
  • リュック
    3.8
    タランティーノが得意な密室劇。個性的なキャラクター達がまたいい
  • あや
    3.5
    賞金稼ぎのマーキスは吹雪のなか馬を失い、途中で会った同業者のジョンと彼が捕らえたデイジーを乗せた馬車に同乗する。 避難のため寄った店にはすでに先客が居たが、暖をとるためしばらく一緒に過ごすことにする。 吹雪が去るのを待つなか密室では殺人が起き… なんだか不穏な音楽と凍てつく寒さがしそうな雪山で物語は幕を開ける。 マーキスはこの後店のなかで殺戮が繰り広げられることを知らずに馬車に乗る。 物語の中盤まではリラックスしながら会話劇で進められるが、とりあえず登場人物全員が胡散臭いので誰が急に腰にある銃を取り出すのか油断ができない。 後半は思わず身を乗り出すほどのバイオレンスバイオレンスバイオレンス……… 血を吐くわ首は切られるわチ○コは撃たれるわの急展開。過度なバイオレンス描写が苦手な方は観ない方がいいと思います。 みんなであったまりながら食べてる、木の器に入ったシチューがおいしそうだ…笑
  • DenKishino
    3.6
    へいとふる、ってのは忌々しいとかそういう意味だそうで。まさにその通り。タランティーノ作品は相変わらずぶっ飛んでいますね。誰が本当は何者で、誰が正直者で、誰が本当の事を言っているのか。この辺りの掛け合いは面白味があり、一体どうなるのだと引き込まれて行きます。血みどろなのはいつもの事ですが、割りとまだ抑え目で観やすい方かも知れません。それに加え役者の揃え方がなかなかに面白く、組合せとして、なかなか思い付かないような配役では無いかと思います。ティムロスの悪役が私は好きでしたが、やはりサミュエル・L・ジャクソンが一番良いですね。後味は胃にジャンキーな食べ物を少々詰め込まれる感じでしょうか。胸焼けする方も居られるでしょうが、満腹感はあるかと思います。冷静に見ると、雪深い山奥で何をやっているのかと笑えてくるところはあります笑 それにしてもあの手紙は本物だったのか。本物だったならば、アメリカの未来はかなり明るく成っただろうと報告致しましょう
  • メンタリストニート
    3.5
    全員ワルモノとあるが、マジでそれ。 長いから途中でダレるかも。
  • スズケン
    3.5
    1回目の鑑賞評価。3.5/5 これは見直す毎に評価が変わるだろうなぁ、という作品に感じた。 次はいつかな、2年後くらいかな。?
  • nora
    5.0
    まぁ見事な伏線回収劇だこと!!! 3時間近くありますが、それを感じさせないぐらい集中して観れます。 サミュエル素敵よ。 愛しのチャニングを拝めました。
  • MinamiKunimoto
    -
    途中でやめた…
  • Michael
    3.4
    上質な会話劇。 タランティーノらしい長い会話劇。 色々なところで伏線あって、最後にそれがわかる!ってところがまた良いよね! ゴア描写も激しかったね。 ただあまりハマらなかったな〜
「ヘイトフル・エイト」
のレビュー(13854件)