代官山蔦屋書店コンシェルジュ一押し!独特な世界観のある映画特集

代官山蔦屋書店 シネマ・コンシェルジュ

上村敬

はじめまして。代官山 蔦屋書店でシネマコンシェルジュをしております上村敬です。公開予定の作品について、月に1回ほどご紹介していきます。
どうぞよろしくお願いいたします!

それでは、早速ですが、3月公開のオススメ映画をご紹介します!
題して<独特な世界観で作家性の強い映画特集>です。

独特な世界観を描く映画監督とは?

映画監督の中では、非常に独特な世界観を描く方々がいます。
古くは、ジョン・フォードからアルフレッド・ヒッチコック
邦画で言えば、小津安二郎黒澤明など沢山います。
そういった昔の監督達は、映画スタジオでセットを作り、撮影をしていた時代ですので、自分の世界観を表現しやすかったのです。映画スタジオで製作することが少なくなった最近でもそういった独特な世界観を描いた作品を撮る監督たちがいます。

たとえば、ウェス・アンダーソンアキ・カウリスマキギャスパー・ノエグザヴィエ・ドランなどなど。
今月は、そういった独特な世界観を表現する映画監督たちの作品を取り上げたいと思います。

3月5日(土)公開 『ロブスター』

ロブスター

(C)2015 Element Pictures, Scarlet Films, Faliro House Productions SA, Haut et Court, Lemming Film, The British Film Institute, Channel Four Television Corporation.

まず、1本目はギリシャ出身のヨルゴス・ランティモス監督の『ロブスター』です。
ロブスター』は、独身でいることが禁じられ、ホテルに閉じ込められ、45日以内にパートーナーを見つけないと、自分で選んだ動物になってしまうという突拍子もない設定です。
題名の『ロブスター』は、主人公のコリン・ファレルが選んだ動物に由来しています。ちなみに、彼の兄はすでに犬になっているという設定です。

彼の映画は、笑っていいんだか、悪いんだか、大爆笑というよりは、クスクスと笑えるコメディ映画です。登場人物も、すぐに鼻血を出す女性や、すべてにおいて冷酷な女性など一癖も二癖もある人ばかりで、これほどまでに個性的な世界観は、パラジャーノフホドロフスキー並みで、映画史に類をみないほどです。とはいえ、ストーリー性は『ロブスター』の方がよっぽどありますが!とはいえ、ランティモス監督の頭の中を、ちょっとのぞいてみたいぐらいです。

絶賛レンタル中!『籠の中の乙女』

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この『ロブスター』の前作『籠の中の乙女』も、ブラック・ユーモアに溢れた作品で、厳格な両親のもと、決して外の世界に出さずに、家の中で育てられた子どもたちを描いているのですが、おぞましい両親のエゴで、言葉でさえ誤って覚え、勝手な両親のルールに従って生きていて、かなり常識からはずれた人間になっているのを描いています。

相変わらず不条理で狂った世界観です。そんな中、子どもたちの一人が外の世界に興味を持ち、外に出ようとしますが、どのように脱出するかは見てのお楽しみです。『籠の中の乙女』は、当店でもレンタルしておりますので、『ロブスター』を見る前にぜひご覧ください。

この2作の映画に共通しているのは、まるで、『ヴァージン・スーサイズや『ロスト・イン・トランスレーション』を描いていた初期のソフィア・コッポラ監督のように、外に出られない主人公がいかに外に出るかを描いています。これがヨルゴス・ランティモス監督のテーマかもしれません。

 

3月12日(土)公開 『マジカル・ガール』

マジカル・ガール

Una producción de Aquí y Allí Films, España. Todos los derechos reservados©

2本目は、スペインの新星カルロス・ベルムト監督の『マジカル・ガール』です。監督は日本の文化が好きらしく、映画の中で日本のアニメのコスプレをする少女や、長山洋子の「春はSA-RA SA-RA」が流れるなど、日本人には親近感が湧くかもしれません。

しかしながら、ストーリーは余命いくばくもない娘を持つ失業中の父親ルイスが、娘の最後の願いを叶えるために、ひょんなことで知り合ったバルバラという女を脅迫して、多額のお金を要求する。しかし、一度だけのはずの脅迫を反故にされたバルバラはかつての自分の教師ダミアンに救いを求めようとするのだが・・・。

それぞれの事情が、複雑にからみあっていき、読めないストーリー展開や、どこまでも不吉な世界観は、見るものを魅きつけながらも惑わしていきます。時間軸も右から左へと流れるのではなく、行きつ戻りつしながら、父親ルイスとバルバラとダミアンのストーリーが交錯していく脚本は見事ですので、ぜひ映画の細部も見逃さずにいてください。

いわゆる普通の映画に飽きた方にはうってつけの映画です。何より、ポスターのバルバラの額から一筋に流れる血が、この映画がそんじょそこらの映画とは一線を画しているのを雄弁に物語っています。カルロス・ベルムト監督の次回作がどんなものになるか、今からとっても楽しみです。

スペインの巨匠ペドロ・アルモドバルや、町山智浩さんも惜しみない賞賛をした映画をぜひご覧ください。

第1回目から、ちょっと他では味わうことが難しい映画を取り上げてみましたが、いかがだったでしょうか?
映画好きな人にこそ、独特な世界観を持つ作家性の強い映画を見て、映画の様々な楽しみ方を知ってもらえたらと思います。

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    メモ
  • kassykassy
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    俳優陣のラインアップに胸を高鳴らせて鑑賞したのだけれど、予想外の淡々としたトーンで彼らの演技力がスパーク!みたいなのは見られなかった。
  • Kou
    4.2
    カップルでないと45日で 動物🐕に変えられてしまう世界。 そんなトンチンカンな世界で 重要視されているのは、 彼女(彼)と どれだけ(共通)であるかということ。 鼻血が止まらない女には 鼻血が止まらない男を。 心ない女には心ない男をってな具合にね。 同一こそが運命、共通こそが愛だ という世界で生きようと、 相手に合わせたいがために 鼻をぶつけ続ける男と、 心をなくしたふりをする男の なんと浅ましく滑稽なことよ。 でもこの浅ましいことを、 形をかえて僕らもやってるっていうのが 皮肉めいてて面白いよね。 好きな人のために趣味をかえてみたり 考え方を合わせたりとかっていうのも、 つまりはそういうこと。結局一緒なわけ。 この監督はそういった人間のパーソナルな部分を 気持ちわる~く描くのがうますぎる。 そしてそこがたまらなくいい。最高。 そして、本作で一番注目すべきポイントは、 そんな不条理な世界から逃げ出した 主人公デヴィットが シングルゲリラ (恋愛禁止のサバイバルグループ)で 出会った”近視”の女とのあれこれ。 近視のため眼鏡をかけていたデヴィットは、 同じく”近視”をもった女と出会い恋に落ちる。 しかし、二人の様子を怪しく思った シングルゲリラのリーダーに ”盲目”にされてしまう彼女。 ”近視”→”盲目”となり、 共通(≒運命の相手)でなくなった彼女を想い ナイフを持ちトイレに入ったデヴィットは どういう決断を下すのか。 つまり、一度見つけた運命の愛のために、 再び”盲目”という共通点を結ぶことができるのか? という逆説的な問いこそ、本作のテーマ。 ラストはデヴィットがトイレから戻るのを 心待ちにしている盲目の彼女を (一分超のワンカット)で映してエンドロール。 何とも言えない間と雰囲気でしたが、 皆さんはあの後どうなったと思いますか? ここからは正解も不正解もないので 自分の考察にすぎないのですが、 まず、盲目かエビ🦐かの二択を 目の前にして自分が思ったのは 「ばかばかしい」ということ。 彼女をもう一度運命の相手と思う (思い込む)ために 自らの目にナイフを突き立てる? 「ばかばかしい」 たかが近視じゃない(共通でない)だけで 彼女をあきらめロブスターとして過ごす? 「ばかばかしい」 そこで、ふと気づいたのは この「ばかばかしい」という感情こそ 監督が伝えたいことなんじゃないだろうか、 ということ。 相手と一緒であるかどうかなんて どうでもいいじゃないか、 取るに足らない「ばかばかしい」こと なんじゃないかって。 どれだけ”一緒か”で愛を測るんじゃなくて どれだけ”違うか”で愛を測るべきなんじゃないか。 つまりは(どれだけ違うところを愛せるか) なんじゃないかって。 趣味や考え方が同じなのは 確かに大事かもしれないけど、 一番大切にすべきはそこじゃないんだよ、と 監督は伝えてくれているのかもしれませんね。 あーーー、面白かった! (おまけ) 本作を観てメイドっていいね🤔 って思いました、思っちゃいました! 男なら分かってくれるよね? あと、あんま独身をいじめないで〜😱 2019年8月21日 32本目
  • x
    -
    ヨルゴス・ランティモス特有の音楽
  • かれー
    -
    漫画で読みたい。 コリン役作り気合い入りすぎ。イイよ。 TSUTAYAでのジャンルはラブストーリーだけど、これはSFじゃない?
「ロブスター」
のレビュー(11314件)