【ネタバレ解説】『TENET テネット』タイトルに込められた意味とは?ニールの本当の正体はXXX?何度でも観たくなる超話題作を徹底考察

ダークナイト』シリーズ三部作、『インセプション』、『インターステラー』など、圧倒的な映像表現と緻密なストーリーで世界を震撼させ続けてきた映画監督、クリストファー・ノーラン。そんな彼の最新作『TENET テネット』は、世界各国で初登場No.1の大ヒットを遂げ、ここ日本でも週末興行ランキング初登場No.1の大ヒットの快進撃を記録中だ。

“世界中の観客を劇場に連れ戻した”映画となった本作は、約2億ドル(※IMDb調べ)という巨費の制作費を投じ、世界7ヶ国に渡ってIMAX®カメラでの撮影を敢行。ジャンボジェット飛行機の爆破や、全長8キロに及ぶ高速道路のカーアクションなど、徹頭徹尾“本物”にこだわりまくり。極限のタイムサスペンスが、壮大なスケールで描かれる。

しかしこの映画、1度の鑑賞だけでは咀嚼しきれない超難解作でもある。そこで今回は、筆者の推測・妄想込みで、『TENET テネット』をネタバレ解説していこう。

伏線だらけのクリストファー・ノーラン監督の最新作『TENET テネット

満席の観客で賑わうウクライナのオペラハウスで、テロ事件が勃発。罪もない人々の大量虐殺を阻止すべく、特殊部隊が館内に突入する。部隊に参加していた名もなき男(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は、仲間を救うため身代わりとなって捕らえられ、毒薬を飲まされてしまう…。しかし、その薬は何故か鎮痛剤にすり替えられていた。昏睡状態から目覚めた名もなき男は、フェイと名乗る男から“あるミッション”を命じられる。それは、未来からやってきた敵と戦い、世界を救うというもの。未来では、“時間の逆行”と呼ばれる装置が開発され、人や物が過去へと移動できるようになっていた。

ミッションのキーワードは<TENET>。「その言葉の使い方次第で、未来が決まる」。謎のキーワード、TENET(テネット)を使い。第三次世界大戦を防ぐのだ。突然、巨大な陰謀に巻き込まれた名もなき男。相棒ニールと共に、彼は任務を遂行する事が出来るのか?彼の名前が明かになる時、大いなる謎が解き明かされる−。

※以下、映画『TENET テネット』のネタバレを含みます。ご注意ください。

結果と原因が逆になる“エントロピー増大の法則”とは?

妻殺しの犯人を追う記憶障害の男を主人公に、ストーリーが終わりから始まりへと逆行していく『メメント』(2000)。深い階層になるほど時間の歩みが遅くなる夢の世界に潜り込んで、潜在意識から情報を植え付けようとする産業スパイを描く『インセプション』(2010)。陸(1週間)・海(1日)・空(1時間)のそれぞれの出来事を同時並行させながら、第二次世界大戦のダンケルク救出作戦の実話を映画化した『ダンケルク』(2017)。これまでのフィルモグラフィーで、クリストファー・ノーランはトリッキーかつアクロバティックに“時間”を操ってきた。

最新作『TENET テネット』は、そのノーランの集大成ともいうべき作品だろう。この物語のコンセプトは時間の概念そのもの。ノーランはインタビューでこんなコメントを残している。

時間とは常に付き合って生きてきたから、やはりテーマとして興味を掻き立てられるんだ。そして長年映画作りをしてきた中で、“映画を見る”というプロセスとその構造や、映画の中の時間の流れについてあれこれ考えてきた。なので、私たちが生活の中で感じる時間と、映画館の中で映画を見ながら感じる時間との対比や関係性を掘り下げる物語づくりが面白そうと昔から思っていた

その結果として、「時間が順行する世界」と「逆行する世界」が同時並行で描かれるという、映画史上でも類を見ない激ヤバムービーが誕生!…とはいえ、一回鑑賞しただけでは『TENET テネット』における時間のルールはかなり理解しにくいと思うので、軽くおさらいしておこう。

そもそも、時間というものは過去から未来に向かって一方向に流れていくものだ。たとえ時間を逆行させても、実は物理法則は変わらない。その数少ない例外がエントロピーだ(乱雑さを意味する物理学用語。物質の状態を表す量)。しかし女性科学者バーバラの説明によれば、本来は増大するはずのエントロピーが減少すると、時間が逆行して見えるという。「結果と原因が逆になる」という頭が破裂しそうな状況が生まれるのだ。熱力学のセオリーとしてエントロピーが減少することはないはずだし、何だかマユツバで非科学的な理屈のように思える。

しかし1867年ごろに物理学者ジェームズ・クラーク・マクスウェルが、「マクスウェルの悪魔」と呼ばれる思考実験で、「エントロピーの減少は可能である」と提起。本作には、『インターステラー』の製作総指揮を務めた物理学者のキップ・ソーンがスタッフとして参加していることからも、実は緻密な科学考証に基づいているのだ。

それを踏まえつつ、「時間の概念を超える際の4つのルール」を再確認しておこう。

ルール1:検証窓から、逆行(順行)する自身を確認しながら入室しなければならない。自分の姿が確認できずに入ると、回転ドアから出られなくなる。

ルール2:逆行する世界では、外気を肺に取り込めないため、酸素ボンベが必要。

ルール3:逆行する世界では、もう一人存在する自分と直に接触してはならない。防御スーツを着用せずに触れると粒子の対消滅が起きる。

ルール4:逆行する世界では、高温のものが冷たく、低温のものは熱い。炎は氷に変化する。

フリーポートの向かい合った部屋は、赤→順行青→逆行に配色されていて、どちらのエントロピーが作動しているかが分かりやすく表現されている。2回目以降に鑑賞する際には、赤と青が映画でどのように配置されているかをチェックしてみるのも、面白いかもしれない。

謎のキーワード“TENET”に込められた秘密とは!?

そもそも“TENET(テネット)”とは何なのか?意味としては「主義、信条、原則」を表す単語だが、映画では「名もなき男が人類を滅亡から救うために、過去と未来から“挟み撃ち”する」という壮大な作戦のコードネームとして使われている。実はタイトルの「TENET」自体が、前からも後ろからも読める回文になっていて、順行と逆行の挟み撃ちを示唆していたのだ。

そういえば、フリーポートのコンテナ群にある金の貨物には、意味ありげに「N」の文字が刻まれていた。Nを中心に、T(=The Protagonist、主人公の名もなき男)とE(Enemy=敵)が過去と未来で戦う物語=TENETという解釈は飛躍しすぎだろうか?

さらに「TENET」というタイトルには、約1世紀中頃に発見されたラテン語の回文「SATOR式」との関連性も認められる。「SATOR AREPO TENET OPERA ROTAS」(農夫のアレポ氏は馬鋤きを曳いて仕事をする)という長大な回文の中央に、上下左右どこから読んでも回文となる「TENET」の文字が配置されているのだ。

しかもこの「SATOR式」、構成されている5つの単語全てが映画の内容に関係している!!

SATOR(セイター=ケネス・ブラナー演じるアンドレイ・セイターの名前)
AREPO(アレポ=ゴヤの贋作を制作したトマス・アレポの名前)
TENET(テネット=映画のタイトル、作戦のコードネーム)
OPERA(オペラ=序幕のシーンの舞台がキエフのオペラハウス)
ROTUS(ロータス=フリーポートの入り口に書かれていた企業の名前)

それだけではない。かつてフェリックス・グロッサーという人物が、5つの単語は「PATER NOSTER」(我らが父)というアナグラムになることを発見。Nを中心にしてこの言葉を十字型に配置し、余ったAとOを四隅に並べる、という新しい解釈を提示した。

ギリシャ文字において最初の文字はA(alpha)、最後はO(omega)。これを「世界の始まりと終わり」と解釈するならば、『TENET テネット』のストーリーにも完全に合致する。そこまで計算していたとするなら、クリストファー・ノーランおそるべし!!

アルゴリズム=原子力?モチーフは「分断から生じる世界の混乱」

この映画のマクガフィン(物語の目的となるアイテム)、それがエントロピーを自由に操ることができるという、物理的形態を持つ“ある手順”がアルゴリズムだ。人類滅亡をもたらすほどのパワーを秘めており、これを生み出した科学者は自殺。未来の人類は危険を回避するために、アルゴリズムを9つに分割して過去に封印した。

9つの地域に分割されたパンドラの箱…それはまるで、核兵器をアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国(以上5カ国がNPT批准国)、インド、パキスタン、北朝鮮(以上3カ国がNPT非批准国)、イスラエル(核保有が確実視されている)の計9カ国で保有していることのメタファーのようだ。

この映画には核物質のプルトニウム241というキーワードが出現するし、「地図に載っていないソ連の核実験都市スタルクス12で、爆発事故があった」という設定はチェルノブイリ原子力発電所事故を思い起こさせる。『TENET テネット』は、人類に無限の可能性をもたらすと同時に、破滅をもたらす存在でもある“原子力”をテーマにしているのかもしれない。「その言葉の使い方次第で、未来が決まる」と告げられるシーンの真の意味は、「原子力の使い方次第で、未来が決まる」ということではないだろうか?

そう考えると、合言葉として象徴的に使われる「We live in a twilight world(黄昏に生きる)」も、「黄昏は昼間と夜の中間点にある」を発展させて、「世界は存続と滅亡の中間点にある」という隠喩のように思えてくる。確かにセーブ・ザ・ワールドのミッションにあたって、これほどうってつけの合言葉はないだろう。

ポン・ジュノの『パラサイト』や、ジョーダン・ピールの『アス』が格差社会から生じる分断を描いたように、ノーランもまた「分断から生じる世界の混乱」をモチーフにしているのだ。

ニールの正体はXXX?クールに見せかけて実はホットな友情の物語

名もなき男の良き相棒として、テネット作戦を手助けするニール(ロバート・パティンソン)。冒頭のオペラハウスでの対テロ作戦では名もなき男の命を助け、最後のスタルスク12でのアルゴリズム奪還作戦では、その身代わりとなる(バックパックに結ばれていた赤いストラップで、死んだ男の正体がニールと分かる)。世界の危機は、ニールの命を賭した行動によって救われたのだ。

ラストシーンで、ニールは名もなき男によって雇われていたことが判明するが、若干腑に落ちないのは「報酬のためだけに、わざわざ自分の命を犠牲にするか?」ということ。だが、こう考えてみたら辻褄が合わないだろうか…。あくまでも筆者の推測だが、ニールの正体は実はキャットの息子である、と。

セイターに腹部を撃たれたキャットの命は、名もなき男によって助けられた。知りすぎたキャットはプリヤに始末されそうになるが、名もなき男が携帯電話からの“POST”で危機を察知し、またも窮地を救った。母親の最大の恩人である名もなき男を、今度はその息子が救う話なのだとしたら、納得がいく。

第三次世界大戦の回避という”結果”を勝ち取ったニールは、“原因”を作り出すために未来で名もなき男と出会い、過去に戻って身代わりとして死ななければならない(初対面の名もなき男に向かって「任務中に飲むのはダイエットコークだろう」と断定的に語っていたことから、すでに未来で彼のことを知っていたと考えられる)。「美しき友情の終わりだ」というニールの最後の言葉は、明らかに名作『カサブランカ』ラストシーンの「美しき友情の始まりだ」という名台詞を意識したものだが、「自分は死地に赴かなければならない」という決意表明でもあったのだ。

エントロピーやプルトニウムといった難解なサイエンスに彩られて、一見クールな装いをまとってはいるが、『TENET テネット』は実はホットな友情の物語でもあるのだ!

“時間を描く作家”クリストファー・ノーランの総決算的作品

これまでクリストファー・ノーランは、映画の製作が始まる前にキャストとクルーを集めて、インスピレーションとなった映画を上映する習わしがあったという。しかし、『TENET テネット』ではその慣例が行われなかった。もはや本作は、他のどの作品にも似通っていない、オンリー・ワンかつジャンルレスなオリジナリティーを誇っている。

ノーランは語る。

この物語のコンセプトは時間の概念であり、私たちが時間をどう体験するかを描いている。それを、サイエンスフィクションとスパイジャンルの要素を交えて紡ぎ上げている

これまでの作品でも時間操作に心血を注ぎ込み、「007」シリーズの熱狂的ファンとして知られる彼にとって、本作はまさに総決算的作品。テネットが「主義」という意味からしても、ノーラン主義を突き詰めた一作といっていいだろう。

1度だけならず2度、3度と劇場に足を伸ばして、異次元の映像体験に身を浸して欲しい。

◆『TENET テネット』information

あらすじ:〈時間〉から脱出し、世界を救え――名もなき男(ジョン・デイビット・ワシントン)は、突然あるミッションを命じられた。それは、時間のルールから脱出し、第三次世界大戦から人類を救えというもの。キーワードは〈TENET テネット〉。名もなき男は、相棒(ロバート・パティンソン)と共に任務を遂行し、大いなる謎を解き明かす事が出来るのか!? ダークナイト』シリーズ、『インセプション』『ダンケルク』のクリストファー・ノーラン監督が驚異のスケールで放つ、極限のタイムサスペンス超大作!

公開日:2020年9月18日(金)公開
監督・脚本・製作:クリストファー・ノーラン
製作:エマ・トーマス
製作総指揮:トーマス・ヘイスリップ
出演:ジョン・デイビッド・ワシントン、ロバート・パティンソン、エリザベス・デビッキ、ディンプル・カパディア、アーロン・テイラー=ジョンソン、クレマンス・ポエジー、マイケル・ケイン、ケネス・ブラナー
配給:ワーナー・ブラザース映画

オフィシャルサイト:http://tenet-movie.jp
オフィシャルTwitter:https://twitter.com/TENETJP

(C) 2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
IMAX® is a registered trademark of IMAX Corporation.

記事をシェア

公式アカウントをフォロー

  • RSS
  • ysk
    -
    98
  • Kinako
    4.2
    初めてIMAXレーザーで鑑賞。カット部分までフルスクリーンで観れるとのことで。爆音で圧巻の大迫力でした。 さすがクリストファーノーラン監督、ぶっ飛びすぎな映画でした!もう開始10分くらいから頭の中ハテナ状態で追いつけないまま怒涛の2時間40分が過ぎてゆき最後はもう難解さが入り乱れて大パニックの大興奮。でもなんだこれよくわからんけど最高におもしろい!!ってなる作品です。 予告も観てなくてなんの予備知識も入れずに観たけど完全に舐めきってました。 パンフレット購入して勉強したのでもう一度鑑賞したいです。 ちなみにパンフレットには科学者視点の考察や説明が載ってるので、この映画を理解したい方は熟読されることをおすすめします。
  • MinoruIkuta
    4.5
    振り落とされまいと、初めから最後までしがみつきっぱなしの2時間半。オペラシーンのように、途中声が出るほどカッコ良いシーンが散在。いろんな考察を見て、議論して、映画が終わってからもずっと生活がTENETに支配されている。半年以上ぶりの劇場鑑賞がTENETで良かった。
  • jy
    3.8
    内容ムズ過ぎて途中から訳分からなくなるけどすごいもの観てる感じになる
  • pupuu
    3.8
    理解が出来ない。 途中から理解する事を諦めて鑑賞。 でも映像と迫力が凄すぎる! 4Dで鑑賞おすすめしたい。
TENET テネット
のレビュー(68414件)