桜咲く季節だからこそ見たい!どこか儚くも美しい『花』にまつわる映画選

ミニシアター好きな大学生

Moca

桜も満開を迎え、ようやく春の訪れを感じる季節になりました。

春は出会いと別れの季節と言われるように、新しいことに心を躍らせるとともに、それまで関わってきた人やものとのお別れもあったりして、わくわくと寂しい気持ちが入り混じる季節です。桜をはじめとする春の花も華やかさだけではなくてどこか儚く淡い可憐さがあるような気がしませんか?

そこで今回は、そんな季節にだからこそ見たい花にまつわる映画をご紹介していきます。

ベティ・ブルー 愛と激情の日々(1986)

作家になりたいという夢を持ちながらもなかなか芽が出ないまま30代半ばを迎え淡々とした日々を送っていた男性ゾルグ。そんな彼のもとにある日いきなりベティという若くてセクシーな女の子が転がり込んできます。強く惹かれあった2人はそのまま一緒に住むことになり、深い愛に溺れていきますが…。

ベティ・ブルー

この物語は随所にゾルグの語りが入りながら進んでいきます。どれも作家志望の彼ならではの詩的な響きがある語り口なのですが、なかでも「ベティは透明な感性を持つ奇妙な花」という表現がとても素敵で彼女のことをよく表しています。

ゾルグの前に突如現れたベティは一度見たら忘れられないような鮮烈でエキセントリックな魅力を放つと同時に、わがままとも言えるくらいの奔放さでいつも周りを振り回します。その性格は周囲の人ばかりでなく時には自分自身をも傷つけてしまうことがあり、のちにそれが2人の運命を大きく変えるある事件へとつながってしまいます。

しかし、そんなベティのことをどんな時も優しくそっと受け止めようとしてくれるのがゾルグ。彼がベティを見つめる目線はいつも温かくて、特に2人が視線を交わしながらピアノを弾く場面は本当にロマンチックです。「ベティと出会ったことで初めて人生に意味を見出すことができた」という彼のセリフにも胸を締め付けられます。

さらに、素肌にさらっとオーバーオールやニットなどを着こなす一味違うファッションは真似したくなるし、お茶碗でコーヒーを飲んだりろうそくから煙の上がるバースデイケーキが車のトランクから出てきてベティの誕生日をお祝いする場面など、粋な演出の数々も感性をくすぐります。またフランスらしい、くすっと笑えるシュールな場面が割と多いのもおかしいです。

「激情」に身を任せお互いへの愛の深さゆえに次第に崩壊していく展開には、やりきれない気持ちにならざるを得ませんが、まさに純愛という名にふさわしい愛おしいほど切ない1本です。

ムード・インディゴ うたかたの日々(2013)

仕事をしなくても生活ができるほどの財産に恵まれ気ままに過ごしていた男性コランはあるパーティでクロエという可憐で純粋な女性に一目ぼれし、めでたく結ばれます。友人たちにも祝福され幸せに満ちた生活を送っていた2人でしたが、クロエが肺に睡蓮の花が咲く奇病にかかってしまったのをきっかけにその運命は徐々に狂っていってしまいます。

ムード・インディゴ

この物語はフランス人作家ボリス・ヴィアン『日々の泡』という小説がもとになっています。彼の徹底した美意識とあまりにも独創的な文体は映像化不可能と言われていましたが、ミシェル・ゴンドリーによって見事に表現されました。

ミシェル・ゴンドリーと言えば『エターナル・サンシャイン』を思い出される方も多いのではないでしょうか。『ムード・インディゴ~』の公開時には東京都現代美術館で「ミシェル・ゴンドリーの世界一周」展が開催され、彼の頭の中の世界を覗くことができるような仕掛けの展示の数々は充実していてにぎわいを見せており、改めて彼の人気もうかがい知ることができました。

監督の作品はいつも遊び心に満ちていて、少年のきらきらした感性を持ったまま大人になったような方だなという印象を受けますが、ユニークな原作も相俟って今作でもその世界観は健在です。

クロエの肺に咲く睡蓮の花言葉は清純な心、信頼、信仰など。原作は60年代当時激動の時代を生きた若者たちからも絶大な人気を得ましたが、その理由は主人公たちの驚くほどの純粋さが心を打つものだからではないかと言われています。そして、このクロエの病気を治すために必要なのはなんと彼女の周りを花でいっぱいにして肺に咲く睡蓮の力を弱めること。とてもロマンチックですよね。

主演のロマン・デュリスとオドレイ・トゥトゥはセドリック・クラピッシュ監督の『スパニッシュ・アパートメント』3部作でも恋人役を演じていたのでファンにとっては嬉しい再会ですし、以前も何度か記事で取り上げたことのあるシャルロット・ルボンや『最強のふたり』で多くの人がその笑顔の虜になったオマール・シーなど魅力的なキャストが揃っています。

ストーリー自体は少し難解ですが、細かいところまでこだわり抜かれた映像美にじっくりと浸ることのできる作品です。予告編もとても素敵なので、ぜひ合わせてご覧になってみて下さい。

マグノリア(1999)

年齢も境遇も違う人々の人生が偶然の力によって引き寄せられ、絡み合っていく群像劇が描かれたある24時間の物語です。

マグノリア

映画を見ていてこれを撮っている人の頭の中は一体どうなっているんだろうと思わされる監督はいませんか?私にとってそんな監督の1人がポール・トーマス・アンダーソンです。独特な世界観には好き嫌いが分れそうですが、その中でもこの作品は見やすい方ではないでしょうか。

タイトルになっているマグノリアは木蓮(モクレン)とも呼ばれ春一番が吹くころに紫色に咲く花。登場人物たちの顔が形も大きさも違う花びらの1つ1つに配置され、本来とは違う奇妙な色を放つマグノリアの花が描かれたこのイメージ写真も秀逸だと思います。

ご覧になられた方はすでにご存じの通り、誰も想像できないようなラストはもちろん、見終わった後に頭の中にたくさんの疑問が残り、思わず誰かに話したくなるような映画ですよね。監督の意図は明らかにはされていませんが、この最後の場面や作品に張り巡らされたいくつもの伏線についての意味を調べてみるとより深く楽しむことができるはずです。

アンダーソン監督ならではの音の使い方も印象に残り、不協和音の連続や突如始まる短いミュージカルシーンなどズレと一致が絶妙に織り交ぜられているところがおもしろいです。本編で歌詞付きの楽曲はすべてAimee Mannによるもので、どれも映画の内容と歌詞がリンクしていてとても効果的に用いられているので注目してみて下さい。

過去に囚われ、なかなか前に進めず罪を繰り返してしまう人間たちと、目には見えないけれど彼らの間に存在する縁。そしてそんな罪深い人々へ与えられた最後の救済…。そんなメッセージが奇妙で斬新な映像で語られる深い余韻を残す作品であり、とても衝撃を受けた大好きな映画です。

おわりに

花にまつわる映画の中でも、美しいだけでなく儚さが感じられる少し毒の混じった作品を取り上げてみましたが、いかがでしたか?

美しいと感じるものの基準は本当に人それぞれで自分の中でも常に変化するものですが、その時々で自分の心に響くものを大切にしていけたら素敵ですよね。ご紹介した映画の中からも読んでいただいた方の感性に響くものが見つかれば幸いです。

記事をシェア

公式アカウントをフォロー

  • RSS