『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』もう、ご覧になりましたか?
意味が解らない場面があったでしょう? しかも、かなり多く……
この『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』には明確な“原作”が存在しません。おおまかなベースはありますが、それも「パワードスーツを着たバットマンとスーパーマンがドツキ合いの大ケンカをする」という部分くらい(こちら参照)で、物語はほぼオリジナルだと言って良いものです。ただ、その替わりに、様々な原作コミック由来の場面がいささか混乱をもってぶち込まれています。
それら細かな“隠しネタ”を紹介していきます。物語後半に展開する“ネタバレ”になる話も出ますので、読む前に映画『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』を見よう!
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ダメ! ということはありませんが見ておいた方が良いです。ただ、1本しかないですよ。
バットマン映画ではティム・バートン監督の2本、ジョエル・シュマッカー監督の2本、クリストファー・ノーラン監督の3本が有名です。スーパーマンでは1940年代から50年代の連続活劇やテレビシリーズに、クリストファー・リーブが主演した4本、ブライアン・シンガー監督が手がけた『スーパーマン リターンズ』、そしてザック・スナイダー監督の『マン・オブ・スティール』があります。これらの中で『バットマンvsスーパーマン』に関係がある映画は『マン・オブ・スティール』の1本だけです。
なので、過去のそれらスーパーヒーロー映画を見ないまま、いきなり『バットマンvsスーパーマン』を見て「さっぱり解らない!」と思っても、それは過去作品を見ていないからでは無いのです。安心してください! みんな、わかってないですよ!
では、なんでそんなことになったのかを解説していきます。
【ネタばれ!】不運のカメラマン
アフリカのテロリスト部隊に突撃取材をするロイス・レーンとカメラマンでしたが、カメラの中から発信機が見つかってしまい、ロイスは囚われ、カメラマンは射殺されてしまいます。この殺されるカメラマンの名前が「ジミー・オルセン」です。
>>>解説
「ジミー・オルセン」は原作コミックで新聞社「デイリー・プラネット」のカメラマンとして、同僚のロイスやクラークと共に事件現場に駆けつけ、大事件に直面しおおわらわする様子を見せてくれます。過去の映像作品でも「気のいいお調子者」キャラクターとして物語を彩る、「男はつらいよ」シリーズのタコ社長のような、無くてはならない存在です。その彼がCIAエージェントとして登場し、いきなり殺されて映画が始まるのです。
【ネタばれ!】ジョーカーのいたずら書き
「ハッハッハ!ジョークだよ!バットマン!」
そう、いたずら書きがされたスーツがバットマンのアジト“バット・ケイブ”に飾ってあります。半そで半ズボンにケープというチャイルディッシュなスタイルから、バットマンの相棒「ロビン」の物だと解ります。しかし、本来は赤と緑のビビッドな色使いのスーツが、煤けたように黒ずんでいます。
>>>解説
原作コミックで「ロビン」は数代に渡って何人かが入れ替わり勤めています。その内の一人、二代目ロビンのジェイソン・トッドは歴代ロビンの中で“殺されたロビン”として知られています。ジョーカーに母親を人質に取られ一人で誘い出されたロビン/ジェイソンは、母親と共に爆殺されてしまうのです。
また、本作にもっとも影響を与えたと言われているコミック『ダークナイト リターンズ』でも、バットマンは「去っていった仲間」の象徴としてロビンのスーツをガラスケースに入れて飾っています。
この2つのイメージを混ぜたのが本作での「ロビンのスーツ」です。
【ネタばれ!】PCモニターからはみ出る謎のヒーロー
「ロイス・レーンが事態のカギを握っている! 我々を見つけるんだ! オレ、早すぎた? アガァァ!早いじゃん! 君は最初から正しかった!」
パソコンのモニターからヒーロー風のマスクを被った男がビリビリと浮き上がり、こんなメッセージを残して消えていきます。劇中のブルース・ウェインと見ている観客の頭の中に大量の「?」を残した場面だと言えるでしょう。
>>>解説
取ってつけたような「オレ、早すぎた?」の台詞があることから、モニターから飛び出す彼は「フラッシュ」だと解ります。日本でもテレビドラマ版「ザ・フラッシュ」が放映中なので知っている人も多いと思います。フラッシュは猛スピードで移動できるパワーを使いタイム・トラベルが可能なのですが、コントロールが難しいために細かな調整が利かない、という設定を台詞に詰め込んでいます。
このシーンはバットマンが予測した「何か」が未来世界で現実となってしまう為、ヒーローチーム結成を促す、という場面になっています。バットマンが予測していた「何か」とは何でしょうか?
【ネタばれ!】トレンチコートを着たバットマン
地面にでっかく「Ω(オメガ)」と書かれた荒廃した世界に、トレンチコートを羽織ったバットマンが登場します。地下組織と思わしき武装集団からクリプトナイトを仕入れようとしますが、肩に「S」マークのワッペンをつけた軍隊に強襲され、バットマンは捕まってしまい、仲間たちも空飛ぶの怪物に襲われます。
映画的な文法で読み解けば「スーパーマンが強大な力を駆使し、自分の軍隊を持ち、異星の怪物を呼び寄せ、地球を恐怖支配する…… かもしれない未来を夢に見るバットマン」という解釈になるでしょう。しかし、この場面は原作コミックを知っている人ほど困惑する場面になっているのです。
>>>解説
まず、DCコミックには多くの「平行世界」が存在します。長いコミック連載の中で設定に矛盾が出た際などに「あれは別設定の平行世界」ということにして、整合性を保つのです。この「平行世界」のことを「マルチバース」。分かれている世界観を「アース1」「アース2」とか「アースX」などと呼んでいます。その中の一つに、名付けられる間も無く消滅したので、コミックファンらが非公式に「アースΩ」と呼んでいる世界もあります。
空飛ぶ怪物はスーパーマンの敵であるキャラクター「ダークサイド」が支配する「惑星アポコリプス」の兵士「パラデーモン」軍団、いわゆるザコキャラです。その「ダークサイド」が放つ必殺技「オメガ・エフェクト」からも「Ω(オメガ)」が連想されます。
トレンチコートを着たバットマンですが、原作の中で一番似ているのは、未来の世界で、タリア・アル・グール(『ダークナイト ライジング』でマリオン・コティヤールが演じたキャラ)と、ブルース・ウェインの血を引くダミアン・ウェインが暴力的なバットマンとして活躍するシリーズです。
それらを統合的に鑑みれば、拳銃嫌いなハズのバットマンが懐から拳銃を抜き出してバンバンと兵士を撃ち殺していく描写も整合性が取れている様に思えます。つまり、ブルースそっくりの息子ダミアンが、スーパーマンの支配する世界の中で、バットマンとして対立しているマルチバース「アースΩ」をブルースが幻視している、と解釈することも可能なのです。
【ネタばれ!】ドゥームズデイとは?
前作『マン・オブ・スティール』でスーパーマンとの激闘の末に死んだゾッド将軍の死体を引き取ったレックス・ルーサーは、クリプトン人の技術を使い、自分とゾッド将軍をDNAレベルで融合した怪物「ドゥームズデイ」を産み出します。
>>>解説
原作コミックの中で、スーパーマンは一度死んでいます。無敵とも思えた彼を殺したのが「ドゥームズデイ」です。
そもそもの「ドゥームズデイ」は高度な科学力を持った異星人が遺伝子操作を繰り返して作った人工生命体です。惑星をいくつも破壊する大暴れをしたことで拘束され、宇宙へ追放されます。それが地球へ辿り着いたことでスーパーマンと対決し、街を破壊する大格闘の末、同士討ちとなり共に息絶えるのです(後で共に復活しますが)。
この時、死んだ「スーパーマン」後継者の座を争い、4人の候補者が現れます。その中の一人に、レックス・ルーサーが自身のDNAとスーパーマンのDNAを混合して作ったクローン(人間/スーパーマンのハイブリッド)の「スーパーボーイ」というキャラクターが登場します。
これらの設定を混ぜたのが映画に登場する「ドゥームズデイ」になります。
【ネタばれ!】レックスが探る“メタヒューマン”とは?
謎の美女ダイアナ・プリンスがレックスのコンピューター・サーバーで探していたのは自分の「秘密」が写った写真や資料でしたが、共に“メタヒューマン”とカテゴライズされた自身を含む4人のスーパーパワーの持ち主たちの動画を見つけます。
>>>解説
マーベルのヒーローチーム『アベンジャーズ』と同じ様に、DCコミックにもヒーローチームが存在します。スーパーマン、バットマンを筆頭に、上記した「フラッシュ」。機械の体を持った「サイボーグ」。海底王国アトランティスの王「アクアマン」。そしてアマゾン族のプリンセスにして神と人間のハーフ「ワンダー・ウーマン」。このメンバーを有するヒーローチーム「ジャスティス・リーグ」です。副題の「ジャスティスの誕生」とは「ジャスティス・リーグ」の「誕生」を意味しています。
ただ、入れ替わりのあるヒーローチームとはいえ、メンバーに重要なキャラクターが欠けています。宇宙の平和を守る「グリーン・ランタン」です。おそらく、映画『グリーン・ランタン』が興行的に失敗したため「無かったこと」となり、誰がどんな設定でグリーン・ランタンを演じ直すのか白紙に戻されたので、今回の「レックスの集めた資料」から漏れている、と思われます。
さらに深まる謎……
これら、原作から推測できる事柄もありますが、依然サッパリわけの解らない部分もあります。なぜレックスが安くない私財を投じてまでスーパーマンやバットマンを殺そうとしたのか? なぜ“メタヒューマン”を監視していたのか? それら多くの謎は来る新作『ジャスティス・リーグ』2部作で解明されるのでしょう!
知らないけど!
(C)2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC AND RATPAC ENTERTAINMENT, LLC
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※2020年7月13日時点のVOD配信情報です。