ミステリ・サスペンス好きは必見!綿密な脚本で魅せる密室劇の傑作12選

2016.04.11
まとめ

感受性複雑骨折

寂々兵

映画において「密室劇」というのは、限られた空間内での演者同士の会話によって作品を成立させなければならないため、脚本がすべてと言っても過言ではありません。舞台劇を基にした作品が多いこのカテゴリの中でも。ミステリ系統の作品は高度な知能戦や連続殺人など緊張感に満ちた展開が描かれ、映画史的に好評を得ている作品も多くあります。

今回は、そんな密室ミステリの名作を「密室で推理劇」「密室で連続殺人」「密室で危機一髪」「密室で頭脳戦」の4パターンに分けてご紹介したいと思います。

密室で推理劇

十二人の怒れる男(1957)

12

サスペンスファンの間ではあまりに有名な作品。一人の青年の有罪・無罪をめぐって12人の陪審員が事件を検証する法廷劇の傑作です。事件の調書や証人の言動を掘り返す過程で有罪・無罪の判定が徐々に覆っていく展開に目が離せません。白黒映画の入門としても最適の一作でしょう。

その後、リメイク作品として中原俊監督・三谷幸喜脚本によって『12人の優しい日本人』(1991)が、ウィリアム・フリードキン監督によって『12人の怒れる男/評決の行方』(1997)が、更にロシアのニキータ・ミハルコフ監督によって『12人の怒れる男』(2007)が製作されました。いずれも本家の流れを大まかに踏襲しつつ、時代背景やキャラ設定を独自のものに作り変えています。

木曜組曲(2001)

moku

4年前に起こった女流作家の死の真相を巡り、編集者や作家仲間が議論する作品です。が、上述の『十二人の怒れる男』のような綿密な推理劇というわけではなく、むしろ洋館の装飾や食事を楽しむ耽美的な作品に推理がオマケで付いているという認識が妥当かもしれません。真相はどうか、犯人は誰かということは二の次なのです。

日本映画の密室推理劇と言えば他に『キサラギ』(2007)、『苦い蜜』(2010)、『十三通目の手紙』(2003)、『9/10 ジュウブンノキュウ』(2005)などがありますが、筆者は本作が断トツでお気に入りです。

殺しのリハーサル(1988)

劇作家の婚約者が遺体となって発見され、3年後に当時の関係者を集めて事件を再現、犯人を割り出すというミステリ映画。『刑事コロンボシリーズ』のリチャード・レビンソン&ウィリアム・リンクが脚本を務めました。

猜疑心に満ちた関係者たちが劇中劇を交えながらジリジリと動機を炙り出されていくプロットが見事で、多くのミステリ・マニアがオールタイムベストに挙げていることも頷けます。

「パートナーを殺害された男が関係者を集めて事件を検証する」という筋書きにおいて、本作に影響を与えたであろうハーバート・ロスの『シーラ号の謎』(1973)も面白いミステリですが、密室ではないので今回は割愛しました。

密室で連続殺人

そして誰もいなくなった(1945)

sosite

ご存知、アガサ・クリスティによる世界的名作。U・N・オーエン氏によって孤島に招待された10人の男女が一人ずつ殺され、最後には誰もいなくなってしまうというクローズド・サークル・ミステリーの王道的作品です。

原作小説は映画・TVシリーズ合わせて10回以上映像化されていますが、哀しいかな、小説があまりに優れているため「これ!」という決定的な作品は出てきていません。が、私見では今回紹介したルネ・クレール版が一番納得の出来る完成度を誇っています。もっとも、要所要所でコミカルな描写を差し込んだり、「絶望的なラストは適さない」という時代背景から戯曲版のラストが使われるなど欠点もありますが……。

「ラストを含めもっとも原作に即している」という観点から見れば、1987年にロシアで公開された『10人の小さな黒人』(Десять негритят)が挙げられますが、こちらは日本未公開です。

名探偵登場(1976)

tojo

大富豪が名探偵たちを集めて推理合戦をさせる、というお遊び心満載のミステリ・コメディ。エルキュール・ポワロ、ミス・マープル、サム・スペード、チャーリー・チャン、そしてチャールズ夫妻を模したキャラが登場し、ハチャメチャな推理を披露したり、館内の部屋があり得ない場所に移動したり、伏線も何もない人間関係が次々明らかになるという非常にぶっ飛んだ作品です。

なお、同じくロバート・ムーア監督、ニール・サイモン脚本による『名探偵再登場』(1978)は「ピーター・フォークが出演している」ということ以外は特に関係ありません。また、ハンフリー・ボガート、ソーンダイク博士などを模したキャラが登場する名探偵コナンの『集められた名探偵』の回は本作のオマージュです。

殺人ゲームへの招待(1985)

clue

イギリスのボードゲーム「Cluedo」を基に製作されたミステリ・コメディ。豪邸に集められた一癖も二癖もある参加者たちが何者かに殺害されていく、という王道パターンに小気味良いシニカル要素を取りこんだ逸品で、ゲームになぞらえてエンディングが三種類存在するといった仕掛けもあり、これがなかなか楽しめます。

先述した多くのミステリ作品のパロディ映画である『名探偵登場』に、更にオマージュを捧げたような作品です。

密室で危機一髪

冬の嵐(1987)

huyu

「代役募集」の広告を見てプロデューサー宅に赴いた売れない女優が体験する恐怖を描くサスペンス・スリラーの佳作。ミステリではお馴染みの「雪の山荘」を舞台に、豹変していく雇い主と追い詰められていく女優の駆け引きが展開されます。

「雪の山荘」と言えば今年公開されたタランティーノの新作『ヘイトフル・エイト』(2015)、ロマンス作家が熱狂的ファンに監禁される『ミザリー』(1990)などが挙げられますが、映画ではあまり見かけないシチュエーションですね。

シリアル・ラヴァー(1998)

lava

35歳を控えた女性がボーイフレンドを3人集めて結婚相手を決めようとするものの、不運な事故が重なって 彼らが次々と死んでいき、彼女は死体の処理に奔走する……というフランスのナンセンス・ミステリ。風刺が程よく利いており、死体や変人に翻弄されますます 事態が悪化していくミシェル・ラロックの姿が滑稽に映ると同時に泣けてきます。

多くの人物が死ぬにも関わらずどこか笑えるブラック・コメディと言えば、密室ではありませんが世界四大料理人が次々と殺害されていく『料理長殿、ご用心』(1978)、1人8役のアレックス・ギネスが何度も殺される『カインド・ハート』(1949)も傑作の1本です。

暗くなるまで待って(1967)

mate

写真家が見知らぬ女からヘロインの隠された人形を受け取ったことから、彼の盲目の妻が犯罪グループと対峙するというサスペンス・スリラーの名作。終盤は緊張感を強いられっぱなしです。ラブコメ路線でのイメージが先行されるオードリーですが、個人的には本作や『シャレード』(1963)などの彼女こそが真髄だと思っています。

同様に盲目の女性が殺人鬼と対峙するリチャード・フライシャー監督『見えない恐怖』(1971)、そして変わり種として「トラウマで声が出せない」女性が連続殺人犯に狙われるロバート・シオドマク監督『らせん階段』(1945)も名作です。

密室で頭脳戦

ダイヤルMを廻せ!(1954)

m

アルフレッド・ヒッチコック作品の中で個人的にベスト3に入る作品。元テニス選手が妻を殺害しようと綿密な計画を立てるものの、思わぬ事態に発展していくという倒叙(=犯人が誰か最初から分かっている)ミステリです。不測の事態に柔軟に対応していく犯人と、彼の盲点を突こうと作戦を仕掛ける警察の頭脳戦は手に汗握ること必至。

同じくヒッチコックでは状況の差こそあれど、『裏窓』(1954、)『ロープ』(1948、)『救命艇』(1944)なども密室劇の傑作です。

探偵スルース(1972)

tante

ジョゼフ・マンキーウィッツ監督がトニー賞を受賞した舞台劇『探偵<スル―ス>』を映画化。ミステリ作家と、彼の妻の不倫相手である青年が徹底的に騙し合うコンゲーム的ニューロティック・ミステリの傑作です。何でもありの知能戦も去ることながら、屋敷内に所狭しと仕掛けられた様々なギミックも視覚的に楽しめます。

本作は『スル―ス』(2007)としてリメイクされ、マイケル・ケインが本家とは逆の役を演じたことで話題になりました。

デストラップ/死の罠(1982)

wana

「スランプ状態の劇作家が再び返り咲くべく様々な謀略を張り巡らせる」という情報以外はすべてシャットダウンして臨んでほしい一作。とにかく予想もつかせぬ展開の連続に、見ているこちらまでもが人間不信に陥りそうになります。先述した『ダイヤルMを廻せ!』『探偵スル―ス』の影響を感じるシーンもちらほらとあります。

シドニー・ルメット監督は先述の『十二人の怒れる男』をはじめ、『オリエント急行殺人事件』(1974/列車が舞台のミステリ)、『狼たちの午後』(1975/銀行が舞台の社会派ドラマ)、『未知への飛行』(1964/シェルターが舞台のSFサスペンス)など暑苦しい密室劇を多く撮っています。

おわりに

いかがでしたか?

密室劇は高度な脚本が求められる以上に、映画においては「予算が安い」という圧倒的なメリットがあり、新進気鋭の作家が脚本の勉強を兼ねて取っ掛かりやすいのが特徴の一つです。

近年ではシチュエーション・スリラーと言えばスプラッター・ホラー作品に多い気がしますが、個人的には『そして誰もいなくなった』のような本格ミステリが生まれてこないかなと期待しています。

記事をシェア

公式アカウントをフォロー

  • RSS
  • エアール
    3.7
    ヒッチコック作品であります。 妻の不倫を知った旦那が企てるた妻の殺害計画 ーーそれは完璧な計画のはずであった… 完全犯罪など、現実そんな上手くいくわけがない ーー想定外の出来事を受けて うまく機転を利かせて対応したつもりでも 綻びはあるものです。 話は変わりますが後にリメイク版として (脚色されてるけど…) マイケル・ダグラス×グウィネス・パルトロー共演で作られましたね いうてもやはりオリジナル!! 妻の不倫 ーー不倫の相手は推理小説家、 手紙のやり取りをしていたようでその内の1通を盗むことに成功し事を知る旦那、 芽生える殺意、 加えて、妻は金持ち ーーもし妻が死ねばその遺産を我が物にすることができる。 企てる殺害計画、 大学時代の先輩 ーー悪い噂が絶えない を金で抱き込み実行犯へ、 殺害の当日、自分のアリバイを作るために妻の不倫相手とパーティーへ出席する旦那 ーー自宅にて独りで過ごす妻、 自宅へ侵入する実行犯… 簡単な仕事のはずだった… 背後から妻を襲い妻の首を圧迫するも 気を失いかける寸前に 手近にあったハサミの柄を握る妻 ーーそして実行犯の背中へ勢いよく突き立てて刺し殺してしまう 状況を知った旦那は 想定外の事態に焦りを隠せない。 計画を急遽変更、 死体が着ているジャケットの内ポケットへ盗んだ手紙をそっと忍ばせる。 筋書きとしては 妻と推理小説家との不倫を知った犯人は それをネタに妻を脅す ーーそして妻は意図的に犯人を殺した、 と…なるほどの。 ポイントとなるのは“家の鍵“ 夫と妻とで1本ずつ持っている鍵 ーー警察の調べでは犯人の所持品に鍵はなかったとのこと ーーあるはずのない3本目の鍵 ーー3本の内2本は確かに“家の鍵“ では残りの1本は…? 謎解きをどうぞお楽しみください
  • キサクナ
    -
    2012/12/17 いつか見たはずなのに まったく記憶なし 初見なのか? 楽しめた! リメイクは見た記憶があるが またみたら記憶なしか この忘れん坊は困ったものだ
  • メディシンマン
    4.0
    グレースケリーが凄く綺麗
  • niikulion
    3.6
    赤と白
  • アップル
    3.9
    ヒッチコック最盛期の本格スリラー。立体映画として作られたらしく妻役のグレース・ケリーが殺されそうになる場面でカメラの方に手を伸ばす演出がその効果の程を伺わせます。お金持ちの妻に浮気された旦那が離婚される前に殺して遺産を手に入れようと殺害計画を練ります。この頃から現場検証等がきちんとされるようになったのでしょうか警部は捜査の手を緩めません。グレース・ケリーも殺してしまったとは言え罠に嵌められて死刑とはいくらなんでも罪が重すぎると思いましたが、黒幕犯人の旦那にも肩入れしてしまって複雑な心境にもなってしまった。
  • junya
    4.1
    良い。
  • Ideon
    3.5
    主人公トニーは妻の不貞を知り、妻の財産目当てに殺そうとする。大学時代の知り合いに殺しを依頼し、完全犯罪を目論むが、依頼した男を妻が殺してしまい、事態は意外な方向へ転がっていくというお話。 3D版で再見。主人公に扮するレイ・ミランドはジェームス・スチュアートの悪役版という感じで、スマートな名演。妻に扮するグレース・ケリーは安定の美しさ。細かいことが気になるしつこい警部が主人公の完全犯罪を切り崩していく。ヒッチコックの作品としては平凡な出来。3D効果はかなり良く出ているが、一番目立つのはタイトルで、あまり、話に絡んでこないのが残念だった。
  • てぃだ
    2.8
    リメイク版先に見てたのでどのぐらい忠実かとおもいきや。オリジナルはなるほど「鍵」を上手く利用した本格推理小説風味。リメイク版の方が好きっすすいませんヒッチ先生
  • 7
    3.8
    ヒッチコックで一番好き。
  • 体育帽
    -
    amazon 2/23/2017 おもしろい!
  • 黒豆
    5.0
    おもしろかった! 元は舞台劇。素晴らしい脚本と、ヒッチコックワールド! どんなに画像が古くても(それさえも味なんだけど)楽しめる内容。 グレース・ケリーは文句なしに美しい✨
  • BUSSAN
    4.3
    アパートの一室という限られたスペースのみで繰り広げられるヒッチコックワールド。 妻の不倫を知ったテニスプレイヤーの主人公トニーが、彼女の資産目的で、完全犯罪なる殺人を企てるのだが…あらすじは短い方がいいので、この辺で十分ですね。 ここまで悪人を応援してしまった映画は他にあっただろうかと言うぐらいにトニーに肩を持ってしまいます。元はと言えば不倫する妻が事の発端やし、何よりもトニーのキャラが良いんですよね、悪人には違いないけど、人当たりがよく、敵を作らないタイプ。 念密に練られた完全犯罪だったはずが、パラパラと不完全になってしまっていく、ハラハラドキドキ感が気持ちいい。 もともと3D用に撮られたみたいでして、カメラワークが独特で、それはそれで面白い。
  • ひらめ
    3.0
    一人で鑑賞 文園町 ヒッチコック作品、最高。 内容は、失念。
  • オレンジ
    3.6
    記録
  • ネネ
    4.4
    ダイヤルMを廻せ。 相変わらず一度聞いたら忘れない、抜群にセンスが良くて、想像力をかきたてるタイトルです。 Mは不倫をしている美しい妻マーゴ(グレース・ケリー)のMと、マーゴの夫トニー(レイ・ミランド)が企むMurderとを掛け合わせているのかな。 *** 物語の始まりは、ある夫婦の平和な朝の風景に始まる。 トニーはダイニングテーブルについているマーゴに朝のキスをし、向かいの席に着く。 微笑んでキスを受け止めていたマーゴは、朝刊に載っている記事を見た途端、表情を変え、新聞越しに夫の表情を伺った。 記事には、クイーン・メリー号が帰港し、乗客の中にミステリ作家マーク・ハリディ(ロバート・カミングス)がいる旨が記されていたのだった。 その晩。 朝とは比べものにならない情熱的な仕草で、夫とは別の男のキスを受け止めるマーゴ。 相手の男は、今日イギリスに戻ってきた不倫相手のマークだった。 このシーンを見ていて、グレース・ケリーという女優は、本当に唯一無二だったのだと痛感しました。 朝と夜の顔を使い分け、不貞をはたらく美しい妻――、そんな役どころであるにも関わらず、グレース・ケリーが演じると、マーゴがまったく汚い女に見えないのです。 この旦那なら不倫してもしょうがないよね、とかそういうことでもなくて。 むしろもう「グレース・ケリーに限っては不倫も純愛か……?」なんて思えてくるのだから、恐ろしい。(もちろんそんなわけはないのだけれど!) きっと、高潔ってこういう女性のことを言うのですね。 何を言っても、どんな行いをしても、汚れない、あの感じ。 また、グレース・ケリー演じる妻マーゴの存在が光なので、対する夫トニーの闇が本当に際だっていました。 とにかくトニーは、本当に得体が知れない男です。 ぺらぺらとよくしゃべり、愛想もいい。 でも明らかに何か、まっとうじゃない気配がします。 だからこそトニーの思考が、少しずつ会話の中で明かされていくところなんて、観ていても、本当にぐーっと引き込まれて。 「え、なに? え、どうなってるの? ということは??」 こんなふうに関心を煽ってくれて、しかもそれが別段珍しくない一室の中の出来事なのです。 なにがあるわけでもなく、会話を交わしているだけなのに、もう先が気になって仕方ない。 「これ! これがヒッチコックを見ているときに味わえる楽しさなんだ!」とにんまり。 本当に最後までワクワクさせてくれました。 パッケージにもある犯罪シーン、これアングルも、襲い方も、絶妙な色っぽさがあって、「ヒッチコック監督の変態、でも最高……!」となりました。 おどろおどろしい、血なまぐさい、そんな犯罪シーンも良いけれど、色っぽいというのはなんともなんとも。ふふ。
  • YusukeYaginuma
    3.4
    大学の課題のために自宅で鑑賞。昔の映画は初めて見るのでとても新鮮だったが、ストーリーが巧妙で面白かった。ずっと同じ部屋を舞台にしてるのにこれだけ楽しめるのは飽きないストーリーの組み立てがあってこそ。たまにはこういうサスペンスも良いなあ〜。グレース・ケリーが絶世の美女。
  • Ricola
    4.0
    緊迫感がすごかった。トニーの追い込まれてる感とかこっちまでハラハラした… 細かいところでヒッチコック節が効いていて楽しかった!
  • 3.8
    巨匠はいつまでも巨匠。ヒッチコック監督の無駄のないミステリーを公開当時の35mmフィルムでの劇場公開で堪能するという、贅沢すぎる贅沢に大満足でしかない。 古典作品としての見事なまでの完結性と単純明快な真相が本当に完璧な形で収まっている。刑事コロンボを彷彿とさせる造り(観客が犯人を知っているところから物語が始まる)と刑事のキャラクターで、それぞれ観客の深層心理をがっうりと掴んでくれる演出だった。 犯人が分かってるとハラハラドキドキできる部分が減ってしまう、という意見もあるかもしれないけど、逆手に取れば真相が分かっているからこそ観客がとらわれがちな観念を効果的に利用できるわけで、ヒッチコック監督はこれについてとことん追求しているように思う。犯人も犯行の手口もすべて知っているからこそ、「あの証言をすれば変わるのに!言って!」ってもどかしく思いながら観てたんだけど、後半に思わず「そうだったのか!」と声が漏れそうになるどんでん返しが用意されていて、見事にやられた。手品でも基本とされているミスディクジョンをここまでスタイリッシュに披露されてしまうと、「まいりました」の一言に尽きる。誰がどの情報を持って何を手掛かりに行動しているのかを観客を含め完璧に把握しているからこその最上のハラハラドキドキが味わえた。 先述した「単純明快な真相」についても少し触れると、これはすごく塩梅が難しいところだと思う。シンプルすぎると面白くないし、かと言って複雑すぎるとげんなりしてしまうし。まずは、真相が分かっている立場に時差を生じさせて驚きと納得を提供させてくれるバランスのとれた脚本が素晴らしい。そしてその脚本を空間、音楽、視線、色彩、すべての視覚的・聴覚的感覚を刺激する工夫がたくさんある。ヒッチコック監督が巨匠と呼ばれるのも納得すぎる1本だと改めて感じた。 そして。この作品を観に行ったのは他でもないグレース・ケリーを!この目で!スクリーンで!拝みたい!というその不純すぎる目的のためだったんだけど、実際スクリーンに彼女が映った瞬間、暗闇の中とてつもなく感激してた。もうため息が漏れるほど美しい。すべてがエレガント。演技の枠をはみ出た上品さが常に彼女の周りにあって、振り向くたび、唇が動くたびに、何度も惚れてしまった。本当に綺麗だった。最高だった。当時の35mmフィルムによる、多少の粗い映像でも全く色褪せない彼女の魅力に120%惚れ込んでしまいました。(むしろあの昔ながらの映像と音が最高の要因のひとつなんだけどね) ヒッチコック監督とグレース・ケリーといえば『裏窓』が有名で、今作も『裏窓』同様にほぼ一室のみに限られた撮影現場での撮影になっていた。それでも、絶対に単調に感じさせないカメラワークが観客に退屈だって思わせないんだろうね。ほぼ一室のみでの撮影といえば、これまた渋いけど脚本が優れている『十二人の怒れる男』を思い出す。あれも観客の真相心理、また見落としてたシンプルな穴を徐々に分析して結末へと繋げていく映画だ。どの映画も、シンプルであることを1番の強みに「見せ方」にこだわった映画だと思う。単にシンプルであれば良いわけじゃなくて、質の良いシンプルだからこそひとに支持される芸術になりうるんだろう。 朝から大好きなグレース・ケリー出演の古典的名作を鑑賞できて、美味しい珈琲とトーストを堪能してこの文章を書けているため、本当に最高な気分でしかありません。ヒッチコック監督作品ももっと観たくなってしまう、魅力たっぷりの極上のミステリーを、どうもごちそうさまでした。
  • やすほ
    3.8
    久しぶりのヒッチコック。昔の映画はストーリー構成で勝負してるのが伝わるから、観たくなります! 今作も無駄がなく、俳優の語りに聞き入ってしまいました。
  • Zarlowe
    3.5
    見事なからくり! グレースケリー良いです。 ゲオ
  • sawato
    -
    2016
  • Mina
    3.9
    レトロなインテリアの雰囲気が好み。ランプはトニーのアイディアの象徴?とにかくグレースケリーが美しくて、見ていて飽きなかった。
  • imaska
    -
    2回目
  • yuninyoko
    4.0
    こ、こうみょう!!!
  • Traditionalband
    4.6
    脚本 5 演出 5 画作り 4 音 4 独創性 5 関心の持続 4 演技 5 陶酔感 4 言葉 5 バランス 5
  • れこーど
    4.5
    主人公が賢いとここまで面白くなるんですねー。良かった。 元々舞台作品だったとはいえ、脚本、そしてヒッチコック監督、、、見事です。 ドキドキしたわー。これ、全然古くない。(笑)
  • みー
    4.0
    ソワソワ ソワソワ 不倫はよくないよー。 同窓会の写真にヒッチコック。 犯人がわかっている設定で話が進む。 どこかで、だれかにみられてるかも。 ついた嘘は大概ばれる。
  • ゆう
    -
    大学の授業でリメイク版と共に鑑賞。 計算された画面作り、悪人なのに魅力的なキャラクターなどやっぱりヒッチッコック作品はよかった。 完璧に見えた犯罪にどんどん綻びが見えてきてドキドキした。
  • Zimmerman
    4.0
    ほぼ一室でやり取りを行なっており、よく出来ているなと感心。
  • 享楽
    4.2
    ヒッチコックの推理サスペンス映画。トニーは不倫している金持ちの妻マーゴの殺人を目論み旧友を脅して彼女を殺害させようとするが失敗。この冒頭の約20分辺りのシーンからトニーの作り上げる虚構を事実を探求する推理探偵のマークとハバード刑事が破ろうと目論む(というより偶然的に)話で、何が面白いかというと視点を徹底的に推理に置き、トニーが作り上げた虚構が事実として立証された矢先(つまり主人公が完全犯罪を完全たらしめた矢先)死刑寸前の妻を助けようとトニーの味方であるマークが手助け(これは手助けしようとしたマーク当人は手助けと思っての行為だがトニーにとっては妨害という客観的パラドックス)しようと行為に及び、その展開に刑事の推理が重なり結局トニーはある決定的な一点の証拠を残してしまったことを彼自身の行為にて証明しようとする逆転劇的なカタルシスである。推理サスペンスとして話は面白いが推理にあまりに重きが置かれているので映画として面白いか、というと鑑賞中の大半の時間は推理に推理…そのための言葉が立て続けに放たれるので本を読んでいるような感覚に陥った。
「ダイヤルMを廻せ!」
のレビュー(1097件)