唯一無二の映画表現から生まれるガス・ヴァン・サント監督の美しい世界観を堪能できる作品6本

映画と現実を行ったり来たり

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2019年5月3日公開、ガス・ヴァン・サント監督ドント・ウォーリー

酒に溺れた日々を過ごし、酩酊状態での交通事故により胸から下が麻痺してしまったジョン・キャラハン。人生に絶望しながらも、偶然訪れた幾つかのきっかけによって、風刺漫画家として再起を果たしていく彼の姿を描いた実話に基づく物語です。

ドントウォーリー

皮肉屋ながらも、ユーモアをもって世界を見るセンスに溢れたジョンを魅力たっぷりに演じるのは、ホアキン・フェニックス。また彼を支えた人々をルーニー・マーラ、ジョナ・ヒルが演じています。

本記事では、ゴールデンウィークの注目作品、ドント・ウォーリー』と合わせて観たい、ガス・ヴァン・サント監督作品から、筆者オススメの5選(+おまけの1選)をご紹介します。

人の生き方を変える出会いと愛『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997)

ガス・ヴァン・サント監督の代表作、グット・ウィル・ハンティング/旅立ち

それぞれ心に傷を抱えたロビン・ウィリアムズ演じる中年大学教授と、マット・デイモン演じる不良少年の心のふれ合いと成長を描いた感動作品です。

グットウイル

1997年ゴールデングローブ賞脚本賞、1998年アカデミー賞脚本賞を受賞した本作は、当時はまだ無名俳優だったマット・デイモンがベン・アフレックと脚本を執筆・出演し、その完成度の高さに注目が集まりました。

本当の愛をもって語られる言葉が、固く閉ざされた人の心を少しずつ溶かしていくことを体感出来る作品です。

美しく見える何気ない日常が孕む狂気『エレファント』(2003)

第56回カンヌ国際映画祭でパルム・ドール(最高賞)と監督賞を同時受賞した作品。

1999年、アメリカコロラド州で起こったコロンバイン高校銃乱射事件をテーマに、銃を乱射した10代の青年の不穏な心の闇を描いた本作。脚本、監督をガス・ヴァン・サントが手がけています。

エレファント

原題のElephant(エレファント)という不思議な題名について、ガス・ヴァン・サント本人はいろいろな含みを持たせていると語っていますが、その一つに“Elephant in the room”という慣用句、【誰の目にも明らかな大きな問題があるにも関わらず、あえて触れようとしないタブー】から引用したそう。

光が印象的な日常の美しい風景、それと対比するスクールカーストの闇を様々な立場の視点で映し出す映像が印象的な本作。

あまりに突然に、いとも簡単に壊れる日常は非現実的でありながらも、【誰もが感じながらも、目を背けている現代の社会の違和感】の存在が現実である事が映し出されています。

全ての人の人生に希望を。『ミルク』(2008)

1970年代、ゲイ差別撤廃、マイノリティの人々の権利を訴え活動し、アメリカで初めて自身がゲイである事を公表して公職に選ばれた政治家、ハーヴェイ・ミルクを描いた伝記作品。

ミルク

本作は2009年アカデミー賞 主演男優賞、脚本賞を受賞しており、主人公・ミルクを演じたショーン・ペンの魂の込もった演技は鳥肌ものです。

LGBTQへの人々の理解が乏しく、激しく差別されていたゲイの人々が声をあげる事など出来なかった時代に、命をかけて立ち上がり、アメリカの歴史を大きく動かした英雄。彼が抱えていた苦悩や葛藤、そしてどんな逆境でも希望を捨てずに突き進んだ8年間を丁寧に描いた本作は、自身もゲイである事を公表しているガス・ヴァン・サント監督の強い思いが伝わってくる作品です。

悲しくも美しい死のイメージ『永遠の僕たち』(2011)

死に取り憑かれた少年と、死に向かう少女の儚い恋愛を描いた作品。

永遠の僕たち

劇中、死に向かう二人に与えられた時間はあまりに短いものですが、それぞれが生きること、そして自分以外の人間を愛することの喜びや美しさを伝え合い、互いから感じ合う姿が画面からキラキラと溢れ出してきます。

劇中の二人のファッションや日常を描いたそれぞれのシーンでは、色の魅せ方がとても美しく印象的。この作品で死へのイメージが変わる人もいるかもしれません。

死と生の間を繋ぐ一風変わった日本人の幽霊役、加瀬亮の演技にも注目です。

恐ろしくも美しい旅『追憶の森』(2015)

日本の富士の麓にある自殺の名所、青木ヶ原樹海にやってきたアメリカ人のアーサーは、偶然日本人男性のタクミに出会います。自殺することをやめて「ここから出て家族に会いたい。」と言うタクミのために、森から抜け出す道を探しはじめたアーサーに起こった不思議な出来事を描いたミステリー作品。

追憶の森

アーサー役は『ダラス・バイヤーズクラブ』『インターステラー』など、話題作に引っ張りだこのマシュー・マコノヒー。タクミ役には日本のみならず、アメリカブロードウェイやハリウッド作品など、世界的にも活躍する渡辺謙。アーサーの妻役にナオミ・ワッツと、登場人物がごくわずかながらも、豪華俳優陣の競演が重厚な物語を生み出しています。

目には見えない大きなエネルギーを宿した富士の樹海。現実と非現実の狭間で起こった恐ろしくも美しい旅の中で、点と点がつながり、アーサーがたどり着く結末に涙が溢れ、「生きていく上で本当に大切な物は何か」を考えるきっかけをくれる作品です。

おまけの1本『わたしはロランス』(2012)

監督としてだけでなく、写真家、音楽家、映像作家、プロデューサーとしても精力的に活動しているガス・ヴァン・サント。グザヴィエ・ドラン脚本・監督のわたしはロランスにて、製作総指揮をつとめています。

ロランス

女性になりたいと願う男性と、その恋人の10年に及ぶ波乱に満ち溢れた日々を映し出します。グザヴィエ・ドラン監督は当時23歳という若さで本作を発表し、若き才能に注目が集まりました。鮮やかな色彩で映し出す多様な愛の形が印象的な作品です。

ガス・ヴァン・サント作品が好きな方はきっと本作の世界観にも魅了される事でしょう。

独自の映画表現を探求し、話題作を生み出し続けるガス・ヴァン・サント作品。

今回は5作品+おまけの1作品をご紹介しましたが、上記以外にも彼の作品からは世の中のマイノリティーとしてもがく人へのエールや、そんな人を取り巻く社会への問いかけが込められている作品は多数あります

ガスヴァンサント本文

唯一無二の映画表現に身を委ね、彼が投げかけるメッセージを探りながら鑑賞する事で、これまでにない新しい感覚を体感できるかもしれません

新作『ドント・ウォーリー』とあわせて、ガス・ヴァン・サント作品を楽しんでくださいね。

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  • mei
    4.9
    良き
  • じょ
    4.4
    メモ 死ぬことは容易い、辛いのは愛すること
  • Maho
    4.5
    死に取り憑かれた若者たちの愛の話。 限られた時間の中で大切な人とどう過ごすか、非常に暖かく切ないお話でした。 私の中で死というものに対する思いが少しだけ変わった気がします。 大切な人と一緒に観たい作品。
  • ふじさ
    3.9
    「死ぬことは容易い、つらいのは愛すること」 音楽ぜんぶよかった、可愛かった、、
  • マル
    3.0
    死をテーマとしてるのに、悲しさが全く感じさせない。 けどメッセージ性が強すぎてそこまで好みじゃなかった。 デニスホッパーの息子がかっこいい。
「永遠の僕たち」
のレビュー(11172件)