【まとめ】代官山蔦屋書店コンシェルジュ一押し!リアリズム映画特集

代官山蔦屋書店 シネマ・コンシェルジュ

上村敬

先月から月に1度オススメ映画を紹介しています、代官山 蔦屋書店シネマ・コンシェルジュの上村です。私がオススメする映画ラインナップは、題して<リアリズム映画特集>です!

イタリアン・ネオリアリズモとは?

まず、リアリズム映画の歴史を紐解いていきましょう。1944年頃、イタリアで“イタリアン・ネオリアリズモ”という映画ムーブメントが起こります。このムーブメントの特徴は、貧しい労働者階級を主人公に、主に素人を使ったロケーション撮影で映画を撮ったことにあります。

当時は、撮影所でセットを組み立てて映画を撮影することが一般的で、アメリカにはハリウッド、ロシアにはレンフィルムやモスフィルム、ドイツにはウーファ、イタリアにはチネチッタという撮影所がありました。

しかし、イタリアのローマにあったチネチッタは、戦争によって壊滅的な状況に陥り、兵士に占領されてしまいます。そこでやむを得ず、撮影所を使わない映画撮影が始まったのです。照明も使わず、セットも使わず、反戦映画の傑作が多く生み出されたこのロケーション撮影の手法は、後のフランスのヌーヴェル・ヴァーグにも影響を与えることになります。

今回ご紹介するエルマンノ・オルミ監督は、“イタリアン・ネオリアリズモ”を代表する監督、ロベルト・ロッセリーニに憧れて映画を撮り始めました。初期はそれこそドキュメンタリー映画ばかりを撮っていた、“イタリアン・ネオリアリズモ”の影響を色濃くもったイタリア人映画監督です。

エルマンノ・オルミ監督『木靴の樹』

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(c) 1978 RAI-ITALNOLEGGIO CINEMATOGRAFICO – ISTITUTE LUCE Roma Italy

最初にオススメする映画は、現在上映中のエルマンノ・オルミ監督作『木靴の樹』。1978年カンヌ国際映画祭のパルム・ドール受賞作品です。ロケーション撮影を用いて、その土地に暮らす素人の人々を使い、貧しい農民たちの悲喜こもごもを静かに歌い上げた傑作

ドキュメンタリー映画出身というだけあって、鶏の首を切ったり、豚の腹をかっさばいて内臓が出てくるシーンがあったりと、リアリズムの徹底もさすがの一言。オルミ監督ならではの静かな語り口が、ジワジワと胸に迫ってきます。

また、舞台となる19世紀の北イタリアにあるベルガモは、移りゆく四季が美しく、その田園風景には懐かしさすら覚えるほど。身を寄せ合うように暮らす4組の家族の原初的な暮らしが、現代社会に生きる私たちに大切な何かを教えてくれます

エルマンノ・オルミ監督『緑はよみがえる』

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2本目は、オルミ監督の最新作『緑はよみがえる』です。亡き父に捧げられたという本作は、第一次世界大戦中の北イタリアのアルプスを舞台に塹壕に身をひそめるイタリア軍兵士たちが、迫り来るオーストリア軍の攻撃にさらされながら、一人また一人と命を失い、精神的にも狂いそうになる日々を描く反戦映画です。

オルミ監督らしい静かな語り口でイタリア軍兵士の息苦しい日常を淡々と描いていますが、思わず目を奪われるのが「モノクロ映画か!」と思うほどに、色調を落としたその映像美。雪の白さ、月明かりに照らされた動物たち、そして美しい雪原の風景を陽気に唄いあげる兵士たちが、ほんの一時、戦争の辛さを忘れさせてくれます。

醜い人類の争いが、その美しい風景の黒々とした土をえぐり出し、炎に包みこんでしまう様子を寡黙に描写していきます。オルミ監督の父が時おり涙を流して話したという反戦への思い。オルミ監督自身がメガホンをとり、息子を撮影監督に据え、娘がプロデューサーを務め、まさにオルミ一家の集大成として、イタリアン・ネオリアリズモの傑作に負けない作品を生み出しました。必見です!

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督『レヴェナント:蘇えりし者』

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(C)Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

3本目は『レヴェナント:蘇えりし者』。本年度アカデミー賞監督賞、撮影賞、主演男優賞と3冠に輝いた作品です。特に監督のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督は2年連続の監督賞受賞。そして、撮影監督のエマニュエル・ルベツキにいたっては、3年連続撮影監督賞を受賞するという快挙を成し遂げた注目作です。

イニャリトゥ監督とルベツキのコンビは、長回し撮影が特徴的で、本作でもその手法が遺憾なく発揮されています。リアリズムやドキュメンタリー映画でも、長回しは多用される撮影手法。というのも、カメラを長く回すということは、カットを割ることなく、編集もせず、現実のありのままを捉えようとすることだからです。

本作で、イニャリトゥ監督は特にリアリズムに力を入れたように見えます。全編自然光で撮影されたと言いますし、映画の前半の矢が飛び交うシーンは、黒澤明監督の『蜘蛛巣城』やスティーヴン・スピルバーグ監督の『プライベート・ライアン』のノルマンディー上陸作戦のシーンのような迫真力に満ちています。

その他、主演のレオナルド・ディカプリオが熊に襲われたり、トム・ハーディが指を切り落とされたまま格闘するシーンなどでは、長回し撮影が効果的に用いられ、これ以上ないリアリズムに圧倒されます。

何よりも、アメリカの探検家ヒュー・グラスの半生をモチーフにした、ディカプリオ畢竟の名演が本作にリアリティを与えています

復讐の先に、何があるのか」、どうぞ瞠目してください!

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