6月25日に公開された宮藤官九郎監督の最新作『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』。この作品は17歳にしてこの世を去ることになる男子高校生を主人公に、地獄で繰り広げられるロックエンタテイメントです。
「男子高校生が地獄?ロック? ちょっと面白そう!」と思った方に、作品を楽しむための9つのポイントを紹介していきます!
1.『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』のストーリー
フツーの高校生・大助(神木隆之介)は、同級生のひろ美ちゃんのことが大好き。修学旅行中のある日、大助は不慮の事故に遭ってしまう。
目覚めるとそこは、深紅に染まった空と炎、ドクロが転がり、人々が責め苦を受ける、ホンモノの【地獄】だった! なんで俺だけ!? まだキスもしたことないのに、このまま死ぬには若すぎる!! 慌てる大助を待ち受けていたのは、地獄農業高校の軽音楽部顧問で、地獄専属ロックバンド・地獄図を率いる赤鬼のキラーK(長瀬智也)だった。
キラーKによると、なんと、えんま様の裁きにより現世に転生するチャンスがあるという! キラーKの“鬼特訓”のもと、生き返りを賭けた、大助の地獄めぐりが幕を明ける…!
2.なぜ大助は地獄に堕ちたのか
大助は修学旅行中に不慮の事故に遭います。修学旅行中の事故・・・クラスメイトも犠牲になっているはずなのになぜか大助一人だけが地獄に。大助は、地獄で一番重い罪とされる「自殺」と判断されてしまったため地獄に堕ちたのですが、片思い中の彼が自殺なんて考えられません。
一体修学旅行中のバスで何が起きたのでしょうか。彼のほっぺたが腫れているのも気になります。
3.輪廻転生ができる!?
大助は、同級生のひろ美ちゃんに思いを伝えたくて輪廻転生でこの世に戻ることを目指します。転生するためには、えんまへのアピールが大事。そこで大助は地獄農業高校の軽音部に入部しロックでチャンスを狙います。
しかしえんまの裁きは気分次第!? ひろ美ちゃんに会うために転生を繰り返す大助ですが、 必ずしも人間に転生できるとは限りません。そして転生のチャンスは7回! 大助はどんな姿でこの世に戻ることができるのでしょうか。地獄と現世の時差があり、地獄での1週間は、現世では10年。転生を繰り返すうちに、彼が現世で出会う人たちにも変化が・・・。
4.子役から大人へ 俳優・神木隆之介
男子高校生役の大助を演じるのは神木隆之介。なんと芸能界デビューは2歳! CMやドラマなどでキャリアを重ね、『妖怪大戦争』(2005)で映画初主演を果たします。
ひ弱な都会っ子が妖怪との戦いに巻き込まれて奮闘する役を演じていた彼も今では23歳。子役のイメージが払拭できないままの俳優さんもいる中、彼は数々の映画やドラマに出演し、様々な役柄を演じることで順調に俳優の道を進んでいます。
彼が「子役」から抜け出したであろう作品が『桐島、部活やめるってよ』(2012)。いまどきのリアルな男子高校生を演じています。この作品を観て私は「彼は大丈夫だ」と確信し、今後が楽しみな俳優さんの一人になりました。
その後も、『るろうに剣心 京都大火編』(2013)、『バクマン。』(2015)等で熱演。今回の大助役は、冴えない高校生として『桐島、部活やめるってよ』の男子高校生・前田に似ているところがあり、『るろうに剣心 伝説の最期編』(2014)の瀬田宗次郎の役と見比べるとギャップが楽しめ、多才な神木隆之介を感じることができます。
5.鬼なのにかわいい!地獄図ベーシスト・邪子
とにかく、登場人物のクセがすごいのが本作の魅力です!
男子高校生の大助は、現代の高校生にリアルにいそうなキャラクターでありながら、ポジティブすぎて空気の読めない残念なイケメン。キラーK擁する地獄専属ロックバンド「地獄図」のメンバー3人ともメイク・キャラが濃いですが、キラーKは現世でのギャップに驚きが隠せません。
そして、クセの強い登場人物の中で、鬼なのに女子力半端ない地獄図のベーシスト・邪子。現世では車上荒らしの常習犯だったにも関わらず、地獄では大助を優しく励ます姿も。ひょっとしてひょっとして大助のこと!? と思わせる姿は鬼なのにキュート。キュンとしちゃいます。
邪子を演じるのは、清野菜名。最近では飲料などのTVCMでも見かける、とってもかわいい女優さんです。そんな彼女があの鬼メイクで邪子を演じてるなんて! 体を張ったその演技も必見です。
6.地獄専属ロックバンド・地獄図の音楽
なんと言ってもこの映画の見どころのひとつが、音楽。この作品の音楽を担当しているのは、宮藤官九郎監督作品ではお馴染み、日本のロックシーンの第一線に立ち続ける向井秀徳(ex. ZAZEN BOYS, NumberGirl)です。
劇中の「天国」という曲は、キラーKが現世にいるとき、30時間ぶっ通しで作ったという設定のバラードナンバー。一度聴いたら忘れられないフレーズ。この曲がこの映画のテーマではないかと思います。表向きは地獄を面白可笑しく描いているわけですが、本当の「地獄」と本当の「天国」とは? この歌の存在によって、単なるコメディではなく、きちんと伝えたいメッセージがある作品なんだなと感じました。
「天国」と対称的な主題歌「TOO YOUNG TO DIE!」の作曲を担当したのは日本のミクスチャーロックの先駆者・元 THE MAD CAPSULE MARKETSのボーカル・KYONO。音の迫力はもちろん、歌詞がまたクドカンワールド炸裂で、この人本当にロック好きなんだろうなと思わせてくれる曲に仕上がっています。
7.豪華アーティストが脇役で出演
この作品には、たくさんのアーティストがちょい役で出演しています。特にロック好きにはたまらない人物が惜しみなく劇中でプレイ。Char、野村義男、木村充揮、マーティ・フリードマン、ROLLY、シシド・カフカなどなど!
また、他にもみうらじゅん、田口トモロヲ、片桐仁などマニアにはたまらない個性派の俳優さんの姿も。ただしメイクが濃すぎて、キャラが濃すぎて、またちょい役すぎてボーッとしていたら見逃す可能性も! あなたは何人の出演者に気づくことができるでしょうか。
8.関連作品をチェック
この作品を楽しむために、まずはクドカン作品を予習してみましょう。
同じ音楽関連で『少年メリケンサック』(2008)があります。中年パンクロッカーたちのダメっぷりがコミカルに描かれた作品です。
また、今回のキラーK演じる長瀬智也とクドカン監督のタッグ作品といえば、監督デビュー作の『真夜中の弥次さん喜多さん』(2005) 。歌・ダンス・お色気・何でもありのシュールな時代劇コメディです。
どちらの作品も本作同様、音楽を担当しているのは向井秀徳(『真夜中の弥次さん喜多さん』ではZAZEN BOYSとして参加、出演シーンもあります)です。
さらに、地獄図のドラム・COZY(桐谷健太)がこの作品以外にもロックバンドのメンバーとして出演している作品もあります。それが『BECK』(2010)。彼は俳優でありながら、ドラム、ラップ・ボーカルの実力にも定評があり、彼のドラムは本作、ラップは『BECK』で観ることができます。
9.まとめ
17歳でこの世を去った大助。まだキスもしていないのに…。この一言だけで「まだ酸いも甘いも経験していない」17歳を表すことのできる、いいフレーズだと思います。
この作品は単なるコメディではなく、本当に伝えたいことが隠されています。映画のタイトルもポジティブではありません。もしかするとタイトルで不快に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、宮藤官九郎監督なりの「生きる」ことのメッセージだと思います。自分が今「生きている」ことを実感している。何気ない普通が幸せなんだと気づかせてくれる作品です。
この夏は男子高校生の甘酸っぱい恋と地獄を味わいましょう!
TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ
6月25日(土)全国ロードショー
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