東京・港区の六本木ヒルズで「ジブリの大博覧会」が7月7日から始まりました!
風の谷のナウシカ©1984 Studio Ghibli・H
1984年の『風の谷のナウシカ』から9月17日公開の最新作『レッドタートル ある島の物語』にいたるまで、スタジオジブリ30年間の歩みを未公開も含む膨大な資料で紹介しています。
夏休みシーズンを控え、混むこと間違いなしの大博覧会ですが、どんな見どころがあるのか、どれぐらい時間がかかるのか? さっそく初日に足を運んできました。『レッドタートル』の情報とあわせ、”ヒルズでジブリ”をレポートします!
天空のギャラリーでジブリの世界へ
大博覧会の会場は六本木ヒルズ52階の展望台、東京シティビュー内のスカイギャラリーです。まず会場に入ると、ナウシカから歴代のジブリ映画のポスター22枚がずらりと並んでお出迎え。最後は『レッドタートル』で、青い海を亀たちが泳ぐ巨大ポスターの向こうに青空の広がる東京の街並みを一望できます。これがとても気持ちいい!
スカイギャラリーは52階の外周をぐるりと一周する形になっており、眺望のよさは抜群です。大博覧会は愛知、新潟と巡回してきたのですが、まるで空を飛んでいるような、海を泳いでいるような感覚で歩き回れる空間は六本木ならではの楽しみと言えるでしょう。
壁一面のジブリポスター!貴重な『ナウシカ』も
大博覧会の見どころは何といっても膨大な資料。トトロの受付に迎えられ、メインの展示室に入ると、壁一面にびっしり貼られた歴代作品のポスターに圧倒されます。
©Studio Ghibli
ジブリ映画の宣伝用ポスターには、公開前、上映中、劇場拡大の際に使われるものと何種類もあり、繰り返し見た作品であっても初めて目にするポスターがあるかもしれません。
中でもレアなのが、ジブリにたった1枚のみ保管されているという『風の谷のナウシカ』のポスター。入ってすぐの場所にあるので、見落とさないようご注意を!
展示室には他にも、宮崎駿監督の描き下ろしたポスターの原案や、キャラクターの初期イメージ、映画のタイトルロゴ案、新聞広告などがずらり。映画が劇場にかかるまで、スタジオジブリの”汗と涙の30年間”(by鈴木敏夫プロデューサー)を体感できます。
©Studio Ghibli
傑作コピーをめぐる鈴木敏夫と糸井重里の往復書簡
個人的にいちばん興味深かったのは、鈴木さんとコピーライターの糸井重里さんが交わした映画のキャッチコピーを決めるやり取りです。
『魔女の宅急便』の「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。」や、『耳をすませば』の「好きなひとが、できました」など、名コピーはジブリの魅力の一つ。大博覧会では2人が交わした手紙やFAXを展示し、いかにして記憶に残るコピーが生まれたのかを紹介しています。
例えば、『となりのトトロ』の「このへんないきものは、まだ日本にいるのです。たぶん。」。展示によると、このコピーは最初、「このへんないきものは、もう日本にはいません。たぶん。」と真逆のもので、この案に対し、宮崎駿監督は作業の手を一瞬止めて「いる。いるんだよ」とだけ言って作業に戻ったとか。
『紅の豚』では、糸井さんが「中年の飛行機乗りで、しかも豚である主人公が私たちに何を問いかけるのか」から発想。「カッコイイとは、こういうことさ。」というコピーを創り出し、鈴木さんはのけぞって、大興奮で「こりゃ何だ!?」と叫んだそうです。
ただ、ほんの短いフレーズといっても生みの苦しみは並大抵ではありません。
『もののけ姫』では1カ月にわたって幾つもの案を作っては消し、作っては消し、中には「ハッピー?」なんて案も……。鈴木さんも糸井さんも「もののけノイローゼです」と書き綴るほどで、その結果生まれたのが「生きろ。」という力強い言葉でした。
展示されているやり取りはすべて手書きで、2人の文字からは苦労や興奮が目に見えて伝わってきます。同じく手書きで書かれた『もののけ姫』や『となりのトトロ』の企画書とあわせて、ぜひ読んでみてください。
あこがれのネコバスも!空とぶ飛行建造物も!
トトロにポニョ、猫男爵のバロン。写真を撮りたくなる気持ちはよーくわかりますが、会場内は基本的に撮影不可。ただし、撮影OKなエリアももちろんあり、展示の後半で「六本木」行きのネコバスが待ってくれています。大人も”乗車”できるので、ふわふわの座席に座るもよし、窓から顔を出すもよし。
最後の「空とぶ機械たち」展のコーナーも撮影OK。空と一体化するようなガラス張りの空間に、たくさんの飛行船やグライダーの模型が飛び交っています。よく見ると、ドーラ一家などおなじみのキャラクターたちもチラホラ。
しかし、何よりすごいのは、『天空の城ラピュタ』に出てくる巨大な飛行建造物! 無数のプロペラを回転させ、巨体を駆動しながら上下に動く様は圧巻で、まるでラピュタのオープニングを見ているよう。ライトアップされる夜を狙って見に行くのもおススメ¥です。
©Studio Ghibli
たっぷり堪能するには時間に余裕を持って
絵コンテや企画書をじっくり見て、たまに風景も眺めながらゆっくり回っていると、あっという間にもう2時間。筆者が訪れたのは平日午前だったため10~20分ほどで入場できましたが、土日ならもっとかかりそうです。
隣接するカフェでラピュタの目玉焼きトーストを食べたり、お土産ショップにも立ち寄るなら、行列は必至! 前売券を買っておく、公式Twitterで混雑状況をチェックするなど、事前の準備で時間に余裕を持って出かけましょう。
現代アートが好きなら、森美術館の年間パスポート(税込6000円)もお得。ジブリ大博覧会を含め、森美術館とシティビューに購入から1年間は何度でも入場できるうえ、専用カウンターがあるので長い行列に並ばずに済みます。
なお、大博覧会の入場料は大人1800円。実は先月まで2300円に設定されていたのですが、鈴木さんが「映画と同じにできないか」と談判し、値下げに踏み切ったそうです。
会場を歩けば、子供の頃に見たあの作品やこの作品……当時のことを思い出すこと間違いなし。会場のどこかには「マックロクロスケ」が潜んでいる場所も。ぜひ探してみてください!(人が並んでいるのですぐにわかるかもしれませんが…)
- <開催概要>
- 期間:2016年7月7日(木)~ 9月11日(日)
- 時間:10:00~22:00(最終入場21:30)
- 料金(税込):一般1800円 高校・大学生1200円 4歳~中学生600円 シニア1500円
- 問い合わせ:東京シティビュー 03-6406-6652(10:00~20:00)
- 公式サイト:http://www.roppongihills.com/tcv/jp/ghibli-expo/
無人島で出会う男とオンナ 最新作『レッドタートル』とは?
さて、最新作『レッドタートル ある島の物語』はどんな作品なのでしょうか。
9月17日公開の今作は日仏合作で、スタジオジブリにとって初となる海外との共同製作です。監督はオランダ出身のアニメーション作家マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット。2000年に公開された8分間の短編『岸辺のふたり』を見た鈴木プロデューサーが「この人の長編を見てみたい」と思ったのが製作の出発点となりました。
ストーリーは、ある無人島に男が流れ着き、脱出を試みるも失敗。絶望的な状況の中、男の目の前に不思議な女が現れるというもの。公開された予告編には、男が広い海を亀と共に泳ぐ幻想的なシーンと、彼を慈しむようにそっと額に触れる女の姿が描かれています。
大博覧会の展示コーナーでは、監督が『レッドタートル』をつくるにあたってインスピレーションを受けた芸術作品などが並び、ポール・ゴーギャンの代表作「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」のレプリカが目を引きます。
キャラクターのイメージ設定や絵コンテを見ると、シンプルで抑制された表情など、これまでのジブリとは異なる画風。極端に少ないセリフといい、一風変わった雰囲気を感じさせます。
実はこの“女”はヒトではないのですが……。海と空と男とオンナだけの世界から、果たしてどんな物語が生まれるのでしょうか。
この夏、ヒルズでジブリの歴史を振り返った後は、新たなジブリ作品の誕生も目撃しましょう!