なにも起きない!河原で2人の男子高生が喋るだけの放課後映画『セトウツミ』がすごい

ARC監督/脚本/映画祭ディレクター

篠原隼士

7月2日に上映がスタートした、池松壮亮と菅田将暉のダブル主演でおくる男子高校生の放課後を切り取った映画『セトウツミ』。本作の魅力と、池松壮亮と菅田将暉のパワーをここにお伝えします。

セトウツミ

Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】

なにも起きない、それが青春。

映画は、関西弁の男子高校生が放課後の暇つぶしでとにかく喋り続ける様子をただ記録しているものです。登場する男子高校生は2人で、内海くん(池松壮亮)と瀬戸くん(菅田将暉)。この2人がとにかく河原で喋り続けます。

この映画のポイント・・・それは「なにも起きない」ことです。つまり会話劇のみで繰り広げられる映画で、セリフと役者のパワーが問われる難しいジャンルでもあります。

高校時代の青春って何をイメージするでしょうか? 実は「青春」という言葉から連想されるキラキラした体験は実際には少なく、圧倒的に「会話」で成り立っていたのかなと私自身も懐かしく振り返りました。

私はこの作品を高校時代からの友人を誘って見に行きました。するとお互いに思い出すことや感じることは似ていて、その日の夜は高校時代の思い出話になるのです。懐かしさを刺激してくる温かい映画と説明しておきましょう。

注目ポイント①「ステージは“いつもの河原”」

セトウツミ メイン

青春映画と聞くと、思い浮かぶのは学校、教室、黒板、制服、部活、廊下、お弁当などなど様々なロケーションやキーワードが浮かびます。しかし! この作品、放課後に瀬戸と内海が喋るだけ。

ほとんど学校のシーンはなく河原の階段に腰をおろし、どうでもいい会話を繰り広げます。それだけの世界で吸い込まれたということはやはり池松・菅田ペアの演技力に感服です。

注目ポイント②「話数で区切られる演出」

映画を見に行くとまず、「第1話」というテロップにワクワク! 何気ない一日一日を話数に分けて見せてくる演出は全く疲労感を感じさせず、むしろ「次はどんな瀬戸と内海は見られるの!?」という期待が高まります。

ちょっとだけ中身のことに触れさせていただくと、瀬戸と内海の出逢い「第0話」が出現します。この最高に愛おしい二人の出逢い、ぜひ注目です。

注目ポイント③「回想シーンが急に高校生チック!」

瀬戸と内海の会話の中には「そういえば○○さんが・・・」といったように過去の話や、そこに登場しない人物が出てきます。

その説明的シーンと言える回想がとにかく面白く作られており、まるで瀬戸と内海の頭の中に入ってしまったようなフワフワとした明らかに作り物感溢れる演出なのです。

瀬戸と内海

セトウツミ 主演俳優

瀬戸と内海、この愛すべきキャラクターを演じるのは今の日本映画界を代表する二人の若手俳優です。

池松壮亮

『セトウツミ』ではツッコミ担当の内海くんを熱演。メガネにハイソックスの白い靴下、しかし瀬戸に対しての的確なツッコミはピカイチ。高校生の頃クラスに1人はいた、妙に落ち着いて様々なことを俯瞰できるタイプの男子です。

そんな内海くんを熱演した池松壮亮は福岡県出身の俳優で、10歳の時に舞台でデビューします。その後数多くの映画やTVドラマに出演し、今では様々な映画監督から愛される若手俳優の一人。

愛の渦』(監督:三浦大輔)、『ぼくたちの家族』(監督:石井裕也)、『無伴奏』(監督:矢崎仁司)、『海よりもまだ深く』(監督:是枝裕和)などなど数々の監督作に出演しています。

菅田将暉

『セトウツミ』ではボケ担当の瀬戸くん。瀬戸くんが喋ると、客席からクスクスと笑いが起きるほど救いようのない愛すべきボケキャラです。そんな瀬戸くんを演じたのは、今知らない人はいないほどの人気を誇る菅田将暉です。『仮面ライダーW FOREVER AtoZ 運命のガイアメモリ』で桐山漣とダブル主演を務め、その後数多くの作品に出演します。

特に2013年に公開された青山真治監督の『共喰い』で第37回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。また、私のオススメ作品は2013年に放送されていたTVドラマ「35歳の高校生」です。この時の菅田将暉は群を抜いた演技力とオーラを放っており、彼の演技の凄さに吸い込まれたのを覚えています。

2014年公開の『そこのみにて光輝く』では綾野剛の友人役を演じましたが、そこでの菅田将暉の迫力もスクリーンから溢れるようなものを感じました。

このように二人の情報を見ていくと、『セトウツミ』は実力のある若手俳優同士の“演技と演技のぶつかり合い”を見れちゃうすごい作品とも言えますね!

監督の大森立嗣って?

俳優・大森南朋さんの兄として知られる日本を代表する映画監督です。2005年に『ゲルマニウムの夜』で初監督、その後『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』を撮り、第51回日本映画監督協会新人賞受賞を果たします。

2011年には三浦しをん原作、瑛太、松田龍平を主演に迎えた『まほろ駅前多田便利軒』を監督します。その後も『ぼっちゃん』『さよなら渓谷』を制作。『さよなら渓谷』では、第35回モスクワ国際映画祭のコンペティション部門出品に日本映画として唯一出品された、実はすごい監督さんなのです。

最後にもう一押し!筆者が選ぶこの映画のツボ

鈴木卓爾さん

脇役が素晴らしい!

第1話、第2話というように映画の中で話数に分けられるこの作品ですが、各回に出演する瀬戸と内海以外のキャラクターもとてもユニークです。第1話に出演する「謎のおじさん」ですが・・・よーく見てビックリ! 映画監督の鈴木卓爾でした。他にも瀬戸が恋心を抱くマドンナ役に中条あやみ、河原でバルーンアートを作るピエロに宇野祥平と豪華です!

宇野祥平さん

音楽は数曲のみ

映画を彩るのに重要なアイテムとなる音楽ですが、この作品では数曲しか使われずその音楽をずっと使い続けます。

これによって「いつもと変わらない日常」がとても分かりやすく演出されており、二人の会話劇に集中することができます! しかも一度聞くとなんだか妙に落ち着いてしまう中毒性のあるこの音楽、いつのまにかハマっています。

これは壮大で自由な映画プロジェクトだ!

セトウツミ シーン2

筆者も映画を撮りますが、この映画には「壮大な自由さ」を感じました。映画は無理してなにかが起きなくてもいいということ、むしろ高校時代になにか起きるほうが変なんだ、これがリアルなんだ!という自由さです。

この映画、ぜひ高校時代のお友達と行ってみてください。現役高校生の方にも、もちろんオススメです。映画館が一体となって笑いに包まれる瞬間をたっぷりお楽しみください!


7月2日(土)全国ロードショー

(C)此元和津也(別冊少年チャンピオン)2013 (C)2016映画「セトウツミ」製作委員会

Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】

 

※2021年3月15日時点のVOD配信情報です。

公式アカウントをフォロー

  • RSS

  • sora
    -
    テンポ良い会話劇を楽しむ。クスッとしてしまう会話があったり… ただ2人には中々重めな家庭事情がある(?) そういう意味でも意気投合してるんかなぁ
  • 土偶王
    3
    この作品の原作漫画と作者 此元和津也氏をこよなく愛する自分からすると、本作では不完全燃焼。 原作が一部の人間から“神マンガ“認定されている所以たる『ラストの衝撃展開』がスッポリ抜けているからだ。 この劇場版を制作したのが、原作の連載が完結する前だったのでしょうがないが、これでは「セトウツミ」としては未完成。 原作では、川辺にいる男子高校生2人のゆる面白い会話劇がただ続くと見せかけ、ヘタな映画では到底敵わないレベルの衝撃のラストに繋がっていく。さり気なくバラ撒かれた伏線にも驚かされる。 初見の時はマジでド肝を抜かれた。 原作が秀逸なのはラストの展開だけじゃない。 計算され尽くされたコマ割りや吹き出しの位置によって“最も笑えるテンポと間“でセリフが脳内再生される。 あれは漫画という媒体だからこそ表現できた素晴らしい技術だと思う。 同じ原作者でも「オッドタクシー」は完全にアニメ向け。実写でもなくアニメじゃないと成立しない。 観た人は意味がわかると思う。 電子書籍でも読めるので是非、漫画「セトウツミ」読んで欲しい。もちろんラストまで。 絶対、後悔させない自信がある。 この映画も決して“実写化失敗“ではなく、実写化するタイミングをフライングしてしまっただけ。 原作ラストまでしっかり描いた「ドラマ版」の方がちゃんと「セトウツミ」。 26-137
  • ゆみか
    3.8
    内海の神妙な面持ち定期的に見たい
  • Eyesworth
    4.8
    【神妙な面持ちしてみ?】 大森立嗣監督×菅田将暉×池松壮亮共演の2016年のコメディー作品 〈あらすじ〉 性格は正反対だがどこかウマの合う高校2年生の内海想と瀬戸小吉は、放課後にいつも河原で話をしながら暇つぶしをしている。くだらない言葉遊びや、思いを寄せる女子へのメールの内容、時にはシリアスなことも語り合う。そんな二人を見守る同級生の樫村一期に瀬戸は憧れているが、樫村は内海に好意を抱いており…。 〈所感〉 原作はドラマ化もされた此元和津也の日常系コミック。瀬戸と内海という二人の男子高校生のゆるい会話劇。それを菅田将暉と池松壮亮という今なら本当の意味で「役不足」すぎる贅沢な起用なのだろうが、この頃の若い二人にはすごく合っている気がした。瀬戸役の菅田将暉は大阪の人だけあってコテコテの関西弁とマイルドヤンキー具合が良い感じ。一方で内海役の池松壮亮は理屈っぽいミステリアスな陰キャ感が堪らなく面白い。初手の瀬戸の「なんかこのポテト長ない?」から一気呵成に持ってかれた。神妙な面持ちのくだりのシュールでくだらない掛け合いから、二人の世界ってこんな感じかと我々に理解させて、内海の「瀬戸は長いものに巻かれる節がある」「ペットが死んだらこんな願いって叶うもんなん?」でしっかりウケをかっさらってくれた。劇場版である必要性が見当たらないし、高校生の青春ど真ん中メインストリート映画では無いのかもしれないが、「この川で暇を潰すだけの青春があってもええんちゃうんか」と脇道的青春を肯定してくれるような爆笑ゆるゆる会話劇でした。75分と短い作品なので気楽に見てみてください😄 "お前かて米だけ食べとってたら生きられるけど、デミグラスソースのハンバーグとか食べたいやろ?" 《2026年 199本目》
  • Moku-Moku
    3.5
    原作はめっちゃ面白いのに⋯。 関西弁が下手くそ
セトウツミ
のレビュー(80014件)