心にしみる40分間!ヒットメーカー行定勲監督が熊本を舞台に作った短編映画の魅力

映画は気持ちよく生きるためのヒント

hikari

GO』や『世界の中心で、愛をさけぶ』、『ピンクとグレー』などのヒットメーカーである行定勲監督が熊本を舞台に作った40分の短編映画『うつくしいひと』をご存知ですか?

展開されるストーリーに込められた意味と映し出される熊本の風景に心揺さぶられる作品です。今回はその『うつくしいひと』の魅力を紹介していきたいと思います。

『うつくしいひと』とは?

熊本県出身の行定監督や熊本にゆかりのある俳優・著名人、熊本の地域活性化に取り組む人などが連携し、熊本での生活の素晴らしさを実感できる映画を製作するためのプロジェクトから生まれたのが『うつくしいひと』。

メインキャストはオール熊本出身。しかもセリフは主に熊本弁! そして橋本愛、高良健吾、石田えり、米村亮太朗といった俳優陣の中に、政治学者の姜尚中も主要人物として出演しているところにもユニークさを感じられる作品です。

また震災前から進められたプロジェクトのため、地震が起きる前の風景が記録されている意味でも貴重な映画となっています。

あらすじ

喫茶店が併設された本屋でバイトをしている大学生の透子(橋本愛)。

ある日、その本屋に黒いロングコートを着た中年の紳士(姜尚中)がやって来て、「若い女は美しい。でも、老いた女はもっと美しい」という詩人ホイットマンの詩を透子に言い残して去っていきます。

その直後、透子は友人の田上(米村亮太朗)から透子の母・鈴子(石田えり)をつける怪しい男がいたと言われ、不安な気持ちに。

そんな思いを抱えていた夜、ひょんなことから鈴子と亡き父が高校生の頃に撮った8ミリ映画を見ることになります。すると、フィルムには父と鈴子だけでなくもうひとり少年が映っていたのでした。

翌日鈴子のことが心配で探偵の玉屋(高良健吾)に相談する透子。ある重大事件で忙しいと言いつつ玉屋が協力してくれる中、本屋に来たあの紳士に透子は偶然再会してしまいます。

しかも彼の誘いで熊本の名所を巡ることに。しかしそこには、紳士のノスタルジックな思い出が隠されていて……。

時が経っても胸に響くメッセージ性あるストーリー

熊本城

この映画は紳士がなぜ熊本の地に来たのか、そしてどうしてデートするかのように透子を連れ彼の思い出の場所を巡っていくのかが見どころになる作品です。

それは、青春時代を過ごした熊本で消化しきれなかった思いを整理しに来たようにも感じられます。

2016年3月21日にKAB熊本朝日放送にて放送された行定監督のドキュメンタリー「映画監督行定勲 故郷を想う」の中で、監督は『うつくしいひと』に込めた思いについてこのような言葉を残しています。

置き去りにしてた感情をもう一度見つめ直すことが一人間の大きな使命というかね。自分が自分であるために。

(2016年3月21日、KAB熊本朝日にて放送。「映画監督行定勲 故郷を想う」より)

監督自身の経験と重ね、胸につかえていた過去の出来事やそのときの感情にいつかは向き合うべきだと映像を通して訴えているのかもしれません。

その「過去の感情」として映画で描いているのが紳士の恋心。

紳士は透子を誘い思い出の地を巡ることで、過去に恋した人とほぼ同世代の若い女性の美しさに触れ、昔の恋心に向き合っているようにも見えます。

さらにその向こう側に、「昔恋した女性の今=老いて経験を重ねること」からくる内面の豊かさも伴った美しい姿を想像し、自分の気持ちに折り合いをつけているようにも感じるのです。

それはまるで透子と初めて出会ったときに伝えた「若い女は美しい。でも、老いた女はもっと美しい」という詩のように。

誰しも若いときにはただ何も考えずに通りすぎてしまったもの、向き合いきれなかったもの、向き合いたくなかったものを抱えています。

それにどこかで向き合わなければならないのだと、たとえ今でなくても何年か経ったときにふと実感するような人生訓も込められた深みのあるストーリーに、ジワジワと気持ちが動かされると思います。

熊本城や阿蘇など地震前の美しい風景に心奪われる

阿蘇

全編熊本でロケが行われ、市街地や熊本市電のほか熊本城、水前寺江津湖公園、通潤橋、阿蘇・草千里、菊池渓谷といった熊本ならではのスポットが出てきます。

熊本のよさとか情緒とかそういうものを大切にする作品を作りたいです。で、特別に熊本の観光映画を作る気はまったくないです。

(2016年3月21日、KAB熊本朝日にて放送。「映画監督行定勲 故郷を想う」より)

と監督が語る通り、ストーリーの中に溶けこむように名所が出てくるので、熊本という土地の味わい深さが自然と伝わる映像になっています。

でもこの撮影は震災前に行われたものなので中には今も地震の影響で入れない場所も……。しかし映画の中にだけはきれいな景色が息づいています。特にクライマックスで出てくる阿蘇の風景は圧巻!

熊本に行ったことのない人でもその光景には心奪われると思います。

見ることで熊本復興支援にも

『うつくしいひと』は熊本支援チャリティ上映会に参加するか、有料配信をしている動画配信サービスのサイトから見ることができます。

上映会の開催場所や日時については、映画公式サイトをチェックしてみてください。

インターネット有料配信は現段階ではdTV、ゲオチャンネル、GYAO!ストア、ニコニコ動画、テレ朝動画といったサイトから視聴が可能です。

上映会や有料配信はチャリティという形式を取っており、ここで得られた収益は復興支援に充てられるとのこと。この作品を見ることが、熊本の復興支援にもつながります。

見れば心動かされるだけでなく復興支援にもなる作品。気になった人は上映会、あるいは有料配信でぜひこの映画を味わってみてください。

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  • Negai1
    -
    2016監督:行定勲《記録》髙良健吾/橋本愛/石田えり/石橋静河
  • あすみ
    3.7
    なんでこんな評価低いの? 軽くていろいろバランスちょうどいいと思ったけど 高良健吾の役が必要かは謎
  • 3.5
    忘れらんねえよの主題歌が良かった。
  • y
    2
    地震題材の作品の中ではわざとらしくないリアルな表現が多くて嫌な気持ちにならなかった。 映画自体の規模が大きいのもあるけども…
  • tk
    3.3
    声がいい
うつくしいひと
のレビュー(1058件)