私が好きなアモーレなカップルたち―往年のハリウッド・スター編―

代官山蔦屋書店 シネマ・コンシェルジュ

吉川明利

こんにちは!代官山蔦屋書店でシネマ・コンシェルジュをしております、映像パッケージ業界33年目の映画オヤジ・吉川明利です。

サッカー日本代表でインテル・ミラノに所属する長友佑都選手が交際宣言した際に「僕のアモーレです」(イタリア語で『愛する人)と称したことは記憶に新しいと思います。映画史の中でも、共演した相手と生まれたカップルがたくさんいます。

誰もが羨む美男美女のカップルから、不倫から生まれたカップルなど、様々な形がありました。今回、映画史の中で永遠に語り継がれる”アモーレ”カップル、特に私が好きなハリウッドスターやワールド・スター同士のカップルに焦点を当て、ご紹介させていただきます。

長くは続かなかった幸せな結婚生活「クラーク・ゲイブル&キャロル・ロンバード」

生きるべきか死ぬべきか

風と共に去りぬ』のレット・バトラー役で知られるクラーク・ゲイブルには、ちょうど同作が封切られた1939年に結婚したキャロル・ロンバードという愛妻がいました。キャロルはパラマウント映画のトップスターで、1934年のコメディ映画の傑作『特急二十世紀』が代表作、最もギャラの高いスターの1人でした。

実は大手映画製作会社のメトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)に所属していたゲーブルの方が、この時点ではキャロルよりも格下でした。コロンビア映画に貸し出されて(トップクラスの俳優は他社への貸し出しはほぼない!)出演した『或る夜の出来事』でオスカーを獲得し、なんとか釣り合いが取れていました。

しかし、幸せな結婚生活は長く続きませんでした。戦意高揚のための軍事慰問へ行く途中の飛行機事故でキャロルは亡くなりました。彼女の最後の作品は1942年のエルンスト・ルビッチの傑作コメディ『生きるべきか死ぬべきか』。封切られた時にはすでにキャロルは天国に行ってしまいました・・・。

25歳の年の差カップル!「ハンフリー・ボガート&ローレン・バコール」

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1944年の『脱出』での共演が二人の出会いでした。時にハンフリー・ボガート45歳、ローレン・バコール20歳という年齢差もお構いなしに1945年に結婚。ボガートにとっては4回目の結婚でようやく理想の妻とめぐり逢いました。

二人の共演作は『三つ数えろ』『潜行者』『キー・ラーゴ』と計4作品。ボガートの代表作といえば『カサブランカ』ですが、『脱出』や『キー・ラーゴ』は夫婦共演ということで配役がしっくりきている印象を受けます。20歳とは思えないバコールの色っぽさに見とれること間違いありません。

この夫婦は1950年代のハリウッドを襲った赤狩りの恐怖にも一貫してリベラルな立場をとった、と1984年に翻訳出版された自伝「私一人」で語られています。この自伝はハリウッドスターの数多い自伝本の中でトップクラスの読み応えです。

しかし、幸せな結婚生活も12年で終わりを告げます。ボガートを失ったバコールは32歳の若さで未亡人となりましたが、女優として活躍を続け、ブロードウェイで『イヴの総て』の舞台版「アプローズ」でトニー賞受賞、ミュージカル主演女優賞を受賞、と輝かしい経歴を築きました。

不倫関係のまま26年間!「スペンサー・トレイシー&キャサリン・ヘプバーン」

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女優のルイーズ・トレッドウェルと夫婦関係であったスペンサー・トレイシーは、オスカーを4回受賞した大女優キャサリン・ヘプバーンと26年の間、不倫関係を続けていました。敬虔なカトリックで障害を持つ子供とその子を育てる妻のため離婚はせず、スペンサーが亡くなるまで、公然の秘密として2人は関係を表に出すことはありませんでした。

最期を看取ったのはキャサリンでしたが、葬儀にも出席せず。今では考えられないことですが、そのことをスキャンダラスに取り上げられることはありませんでした。

こうして語るとキャサリン・ヘプバーンには一歩引いた大人しい女性のイメージを持つかもしれませんが、映画の中の彼女とはまったく違い、男勝りな自立した女性像でした。

9作もある二人の共演作。最後の共演は1967年の『招かれざる客』でした。今もアメリカが抱える黒人人種差別問題をホームドラマの形にして訴えた名作です。もし、自分の娘が突然結婚相手を連れてきて、その人が黒人だったら?そのとき彼女の両親はどうするのか?という映画で、スペンサーとキャサリンが父と母を演じています。

他にも、初共演作『女性No.1』も図抜けた面白さですのでこちらも是非ご鑑賞ください!

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美男美女カップル「ローレンス・オリヴィエ&ヴィヴィアン・リー」

風と共に去りぬ

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二人ともイギリス人です。1939年『風と共に去りぬ』以前の二人の立場は簡単に言うと、シェイクスピア劇を演じられるイギリスが生んだ若き名優と、それと結婚した売れていない女優というものかもしれません。文芸映画『嵐が丘』に主演するため渡米してきたローレンス・オリヴィエは、ある日妻ヴィヴィアン・リーを連れ、まだ主演女優が決まっていなかった『風と共に去りぬ』の撮影現場を訪れます。

撮影は、先に女優のアップを撮らずにアトランタ炎上のスペクタクルシーンから進められていました。製作者デヴィッド・O・セルズニックはヒロイン・スカーレット・オハラ役を誰にするか決められないでいたのですが、オリヴィエが連れて来たヴィヴィアン・リーを見た瞬間に「スカーレットがいた!」と言ったという伝説があります。

これが仮に真実ではなかったとしても、もしオリヴィエと一緒にハリウッドに来なかったら、ヴィヴィアン・リーの『風と共に去りぬ』はなかったのですから、映画史が大きく変わっていたことになったのは事実だと思います。こうした伝説が残るほど、この二人は美男美女のカップルとしてのスケールがあったという証拠でしょう。

今回はPART1として往年のハリウッド・スターの”アモーレ”なカップルをご紹介しました。次回はフランスの大女優から、現在のハリウッドカップルまでピックアップしてご紹介します。お楽しみに!

 

※2021年8月30日時点のVOD配信情報です。

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  • HINA
    3.9
  • Tari
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    記録
  • hiro
    3.7
    初観賞。 80年以上前の映画で約4時間と長いのでなかなか踏み切れなかったけど面白かった。 スカーレッドはイメージと真逆なキャラだった。 あの時代はこのくらいじゃないと生き残れなかったのかも。 冒頭の音楽を聞いた瞬間に引き込まれた。
  • なす
    3.7
    レットと結婚するまでのスカーレットがかっこよかったんだよなあ
  • やっちくん
    4.7
    結局地元ってことでおけ? スカーレット、うーん。 最初の30分で失恋をして、1時間半までに戦争を経てクズ女から逞しく成長していく構成が本当に最高すぎて名作認定させて頂きました。タラの夕日をバックに全てを決意するスカーレットには震えました。 んでフランクと結婚する辺りまではいいんですよ。芯があって何やかんや優しくて激情的なスカーレットが好きだったんですけど、終盤、レットと結婚してからは酷いもんで一切応援出来なくなってしまった。 落ちに落ちてから成り上がって再び最後に立ち上がる、と捉えれば良いのでしょうけど考えている事がわからずただクズみたいな女の描写しか無くなっていたので、3度目の結婚からは正直何が描きたいのか分からなくなっていました。 メラニー、マム、脇役たちが魅力的すぎるのもこの作品の素敵なポイントです。
風と共に去りぬ
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