本当に作りたかった映画に限って日本劇場未公開…そんなマイケル・ベイ新作がリリース

気づいたら映画ファンになっていた

松平光冬

超メガヒットシリーズ「トランスフォーマー」に代表されるように、とにかくド派手なアクションや爆発シーンがてんこ盛りな作品を多数発表しているマイケル・ベイ監督。

プロデューサーとして参加した最新作の『ミュータント・ニンジャ・タートルズ 影<シャドウズ>』も、4匹の亀忍者が目まぐるしく大暴れする安心安定のベイ作品となっている。

タートルズ

(C)2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

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そんなベイが監督した最新作『13時間 ベンガジの秘密の兵士』のブルーレイとDVDが、9月7日にリリース&レンタルされた。

「あれ?そんな映画あったっけ?」とピンとこない人がいるのも理解できることで、実は日本では劇場公開されることなくDVDスルーとなってしまった作品なのだ。

マイケル・ベイ版『ローン・サバイバー』

『13時間 ベンガジの秘密の兵士』

ベンガジ

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この作品は、2012年9月11日に中東国リビアの都市ベンガジで起きた、イスラム過激派によるアメリカ領事館襲撃事件を映画化したもの。救出に駆けつけた6人の元特殊部隊兵士と、テロリストたちによる13時間の攻防戦を描く…という、戦場ものだけあってベイ作品にしてはかなり骨太な内容となっている。それまで頑なまでにフィルム撮影にこだわっていたベイが、夜のシーンを際立たせるためにデジタル撮影を取り入れたのも特徴。

また本国アメリカでの公開時は、オバマ&ヒラリーの民主党体制を批判した内容だとしてちょっとした物議も醸した。

キャスト陣の大半が無名ということと、アメリカでの興行成績が今一つだったことなどから日本での劇場公開が見送られたようだが、『ローン・サバイバー』や『アメリカン・スナイパー』などにひけを取らない実録戦争ドラマとしてチェックしてみるのもまた一興かも。

ブラックユーモア満載なもうひとつの未公開監督作品

日本ではDVDスルーとなったベイ監督作品は、実はほかにもある。

2011年の『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』の次に撮られた『ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金』がそれ。

『ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金』

ペイン

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退屈な毎日を送っていたマイアミのスポーツジムのトレーナーが、同僚や友人を巻き込み、金目当てに裕福なジム会員の誘拐を企てようとするという、実際に起きた誘拐強盗事件をベースにしたクライムドラマ。

バッドボーイズ』シリーズを思わせるバイオレンス描写が満載だが、実行犯3人の突出したマヌケぶりが巻き起こすコメディ要素も盛り込まれているのが特徴。特に、実際に犯したという犯罪行為のシーンで「これでもまだ実話」というテロップを出すという、ブラックすぎるにもほどがある演出を盛り込むあたりが、ベイらしいというかなんというか。

ベイ自身、この作品の構想自体は2000年頃からあったものの、『トランスフォーマー』の製作に参加したことで延び延びとなっていた。それでもどうしても作りたいという思いから、自身の監督作としては最も低予算の2200万ドルで製作(なお、この次に撮った『トランスフォーマー ロストエイジ』は製作費2億1000万ドル、『13時間 ベンガジの秘密の兵士』は5000万ドル)。

DVDの特典映像でこの作品に対する並々ならぬ思いをベイ自身が語っているあたりからも、彼の本気度がうかがえる。

他にもいる、自分の作りたい映画をローバジェットで撮った監督たち

超大作を作る合間にポツンと小規模な作品を撮る監督は、何もマイケル・ベイだけではない。

今やアメコミヒーローの代名詞となった「アイアンマン」シリーズで大ヒットを飛ばし、最新作の『ジャングル・ブック』も話題の監督ジョン・ファヴロー

彼もまた、2011年の『カウボーイ&エイリアン』の次作として、インディペンデント体制で『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』を監督している。

『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』

シェフ

(C)2014 SOUS CHEF,LLC. ALL RIGHTS RESERVED

大規模な製作費を投じたにもかからわず、批評的にも興行的にも芳しくなかった『カウボーイ&エイリアン』の失敗を取り戻そうとするかのように(ファヴロー本人は否定するも)、自身で一から企画を立てて、なおかつ主演も務めた意欲作として高く評価された。

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『ビッグ・アイズ』

もう一人、『アリス・イン・ワンダーランド』や『ダーク・シャドウ』といったディズニー製作の大作を立て続けに撮っているティム・バートンも、非ディズニー体制で『ビッグ・アイズ』を監督。

アイズ

(C)Big Eyes SPV,LLC

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コレクションを豊富に所有し、交際していた当時の女優リサ・マリーの肖像画を描いてもらう程のファンで、プライベートでも交流のあった画家マーガレット・キーンの半生を、バートンはリスペクトを込めて描いた。

ジョニー・デップヘレナ・ボナム=カーターといったおなじみの常連キャストが出ていないことも、バートンのパーソナルな面がより際立った作品となっている。

監督自らが作りたいと思う作品の多くは、内容的にも難しかったり、テーマ的に商業的成功が見込みづらいとして実現するのに時間がかかることが多い。だからファヴローやバートンのような著名な監督でも、上記の作品を作るにあたって自ら資金集めをしている。

“爆発大好きおじさん”マイケル・ベイにもっと光明を

ただ、『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』も『ビッグ・アイズ』も、日本ではちゃんと劇場公開されているのに、マイケル・ベイのローバジェット作品だけ立て続けにDVDスルーされているのはちょっと悲しい。

確かに彼の作品はアクが強いので観る人を選ぶ感じがあるし、評価も「外面だけ派手で中身がカラッポ」と揶揄されることが多い。

おまけに言動も自意識過剰だったりする。『トランスフォーマー』のDVDコメンタリーでは、「『ダイ・ハード4.0』で出てくる戦闘機のF22はニセモノだが、僕は『アルマゲドン』でアメリカ空軍とのコネができたから、ちゃんと本物を撮影できたんだぜ」という、聞いてもいない自慢話をしたりする。

でも、そうした大人になりきれないヤンチャな子供っぽさが、本人及び彼の作品の魅力だったりする。

『13時間 ベンガジの秘密の兵士』にも爆発、破壊、そしてカーアクションシーンがある。実際の事件を鑑みればシリアス方向に作ってもいいようなものの、そうした派手なシーンをあえて盛り込むあたり、これはもうベイの作風として認知すべきといえる。

次の監督作『トランスフォーマー:ザ・ラスト・ナイト(原題)』を経ての、マイケル・ベイの作家性が発揮された新作に早くも期待したい。

(C) 2015, 2016 Paramount Pictures.

※2021年4月21日時点のVOD配信情報です。

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  • じゅんじゅん
    3.3
    次々と押し寄せる敵に、立て籠って戦う映画です。話の基となったリビアのアメリカ領事館襲撃事件は実話だそうです。 熱い銃撃戦を楽しめます。
  • Kei
    3.7
    孤立無援の状況で籠城し、非戦闘員を30名弱抱えながら敵を迎え撃つアメリカ兵士。 2時間越えの長編にも関わらず退屈なしで緊迫状態が続くため楽しめる。 米兵にもイスラムの敵兵にもそれぞれ家族がいて彼らのやり場のない悲しみを描写しているシーンがなんとも切なかった。
  • Hikari
    3.8
    誰が敵か味方かわからない状態、激しい戦闘現場によくわからない人がいっぱいいるのが1番怖い。
  • 3.7
    殉教旅団(味方)とテロリスト?の見分けもつかないし言葉も通じないのに頼らざるを得ないジリ貧状態。 次いつ襲撃されるか誰が味方かいつ終わるのかわからない緊張状態で何時間も耐えるなんて無理。そんな環境に置かれたら途中で諦めるか生き残れたとしても一生トラウマになる。
  • すずがもり
    3.3
    実話なのねー 言葉通じないと辛すぎるー
13時間 ベンガジの秘密の兵士
のレビュー(11805件)