「私たち演じるだけでなく、撮れるんです」 Netflixで見る、俳優たちがメガホンを握る自信作

ネトフリをもっと楽しむ

Netflix Japan編集部

天は二物を与えずとは言うけれど、ハリウッドには役者として素晴らしいキャリアを築きながらも、同時に監督としての才能を持ち合わせている俳優たちがいます。彼らが手がける作品がヒットをするのは、役者生活の中で培ったノウハウと、自分たちが伝えたいテーマをしっかりと見極める卓越したセンスがあるから。西部劇のスターから、今や賞レース常連のハリウッドの名匠となったクリント・イーストウッドに続く才能はいかに?

この冬Netflixで楽しめる、俳優たちがメガホンを握ったバラエティ豊かな作品6選をご紹介します。

ミッドナイト・スカイ』ジョージ・クルーニー

ジョージ・クルーニーが監督人生を賭けて一球入魂

ハリウッドのトップに君臨する俳優ジョージ・クルーニーは、これまでに6本の映画を監督しているフィルムメーカーでもあり、2006年には権力に真っ向から立ち向かうジャーナリズムのありかたを描いた『グッドナイト&グッドラック』でアカデミー賞監督賞&脚本賞にノミネートされています。そんな彼が監督7作品目にしてこれまでにない壮大なスケールとテーマで挑んだ超SF大作が、リリー・ブルックス=ダルトンの小説「世界の終わりの天文台」を原作にした『ミッドナイト・スカイ』です。

放射能汚染により滅亡の危機に面している地球で、人々は避難を余儀なくされます。しかし、ジョージ・クルーニー演じる老化学者のオーガスティンは、病魔に侵され、輸血をしなければ余命7日を宣告されているにも関わらず、一人北極の測候所に残る選択をします。なぜなら、彼には地球に残らなければいけない理由があったから。ところが、その測候所にはひと言も言葉を発しない一人の少女も残されていたのです……。一体この少女は何者なのか、そしてオーガスティンの目的とは?

今作でサリー役を演じたフェリシティ・ジョーンズは、撮影時に思いがけず第一子を妊娠したことで役を降板させられるかもしれないと心配をしていたそうです。しかし、ジョージ・クルーニーのはからいにより、船長のアデウォレ演じるデビッド・オイェロウォとの間に子ども宿している設定で撮影を続行。奇しくもその演出が物語にこの上ない奥行きを与えることに成功します。彼女を始めとする5名の乗組員たちの繊細な心の動きを丁寧にキャプチャーした映像は、まさに俳優の気持ちを分かっているクルーニーだからこそと言えるでしょう。

2020年は未知のウィルスが世界的パンデミックを引き起こすスティーブン・ソダーバーグ監督の9年前の映画『コンテイジョン』(11)が、現代社会を予言した作品だと大きな話題になりましたが、逆に『ミッドナイト・スカイ』は『コンテイジョン』と同じ道を辿らないために、還暦を前に映画という武器を使ってジョージ・クルーニーがどうしても鳴らさなければいけなかった、まったく法外な警報なのかもしれません。

とはいえ、あくまでもエンターテイメント。すべての無駄をそぎ落とした脚本とダイナミックな映像。そしてそれを際立たせる音楽と役者の演技は、初めて体感するグルーヴをもたらしてくれること間違いありません。一つだけ忠告をするならば、小さな画面ではのけぞるようなスケール感が味わえないので、できるだけ大きな画面で観ることをおすすめします。

ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』オリビア・ワイルド

青春映画はこう変わった! オリビア・ワイルドが笑いで綴る“今”を生きる高校生たち

優秀な大学に行くことだけに集中し、高校生活を勉強と内申書アップのために捧げて来たエイミー(ケイトリン・デヴァー)とモリー(ビーニー・フェルドスタイン)。ところが、いよいよ高校生活も最後という日に二人は気がついてしまうのです。なんと、恋愛をしたりパーティをしたりと、高校生活を思いっきりエンジョイしていた同級生たちも、しれーっと自分たちと同じ難関名門大学に合格していたという事実に。茫然自失とする二人は、それなら最後のひと晩ですべてを取り戻そうと、招待されていないパーティへ突撃。はたして彼女たちの冒険はどんな結末を迎えるのでしょうか?

her/世界でひとつの彼女』(14)や『リチャード・ジュエル』(19)で知られるオリヴィア・ワイルドの監督デビュー作となった『ブックスマート 卒業前夜のパーティデビュー』は、ハリウッドが得意としてきた学園コメディに、独自のパンチとツイストを効かせて、そこにモダンというスパイスを振りかけた革命的物語。『俺たちニュースキャスター』(04・13)シリーズや賞レースを賑わした『バイス』(18)などで知られるウィル・フェレルアダム・マッケイの名コンビが、製作総指揮としてオリビアたちのバックをがっつりサポート。ハリウッドの伝統を打ち破り、これまでだったら冴えない男子が演じてきた役を、冴えない女子が変わりに演じて青春のミジメさやオカシさを、知性や下ネタを交えながらアツい友情とともに体当たりでお届けます。

現在35歳のオリビア・ワイルドは23歳のころから映画監督の夢を抱いていたそうですが、専門的に機材や映像について学んでいない自分には到底無理だと、自ら自分の夢を抑え込んでいたそうです。でも今作の女の子たちのように、一歩踏み出すことで開けてくる道があり、見えてくる新たな景色があったのです。たとえ結果がどうであれ、それぞれが真剣に生きた時間に間違いなんてものはないんです。ちなみに劇中、印象的なプールのシーンが登場しますが、実はオリビアは多くの人たちからそのシーンは「カットしたほうがいい」と助言されていたそうです。でも彼女はどうしてもそのシーンを入れたかった。そこで自分を信じて最終的にイキにしたところ、そのシーンを観たウィル・フェレルが「俺はこんなに美しいシーンを観たことがない」と号泣したという微笑ましいエピソードも。あなたはそのシーンを観て何を感じるでしょうか。

今作の大ヒットで注目集めているエイミー役のケイトリン・デヴァーとモリー役のビーニー・フェルドスタインですが、実はビーニーは『スーパーバッド 童貞ウォーズ』(07)主演のジョナ・ヒルの妹。そんなジョナ・ヒルもまた、2020年に『mid90s ミッドナインティーズ』で監督デビューをはたした一人です。

ハクソー・リッジ』メル・ギブソン

メル・ギブソンが選んだヒーローは銃を持たない衛生兵だった

メル・ギブソンといえば巨額私財を投じて監督した『パッション』では自らイエス・キリストを演じるも、あまりのむごい拷問シーンなどで大バッシングを浴び、私生活ではアルコール中毒によるさまざまな問題を引き起こすなど、トラブルが尽きない人というイメージを抱く人も多いでしょう。しかし、そんなメル・ギブソンの監督としての腕は確か。特に英雄になれないダメな自分を物語に投影しているのか、彼が撮るヒーロー映画は秀逸。1995年に監督&主演をした、13世紀末にスコットランド独立を求めて戦った実在の英雄を描いた『ブレイブハート』ではアカデミー賞監督賞を受賞。これがスコットランド人の愛国魂に火をつけ、英国(連合王国)からの独立運動を再燃させたといわれているほどです。

そんなメル・ギブソンが『ハクソー・リッジ』(16)で映し出したヒーローは、第二次世界大戦下、激しい戦闘が繰り広げられた沖縄の前田高地(英語名:ハクソー・リッジ)で、敵味方関係なく75人の命を救った実在した衛生兵デズモンド・ドス。敬虔なキリスト教徒だった彼は銃を持たないことを誓った「良心的兵役拒否者」。訓練中は仲間たちから変人扱いされるも、自分の信念を貫き通した若者をアンドリュー・ガーフィールドが熱演します。

超接近戦でどの戦地よりも過酷だったといわれるハクソー・リッジの戦いを忠実に再現するため、メル・ギブソンは戦闘シーンのほとんどをCGを使わずに実写で撮影するという徹底ぶり。アカデミー賞でも監督賞にノミネートされた力作です。

ザ・タウン』ベン・アフレック

街も人も知り尽くしたベン・アフレックだからこそ撮れた、地元を舞台にしたクライムドラマ

子役出身のベン・アフレックは9歳で銀幕デビューをはたしてから、実に50本以上の映画作品に出演していますが、彼が役者として最も輝くのは自身が監督をしている作品に出演しているときではないでしょうか。『ザ・タウン』(07)はベン・アフレックが35歳のときに監督・共同脚本・主演の3役を務めた作品で、チャック・ホーガンの小説「強盗こそ、われらが宿命」を原作にしています。

全米屈指の銀行強盗発生地とされるボストンのチャールズタウンでは、強盗は父から子へと受け継がれる家業として描かれています。ベン・アフレック演じる主人公のダグもやはり強盗を生業にし、いつかこんな生活から抜け出したいと思いながらも、仲間3人のリーダーとして犯罪に手を染めています。ところが自身が襲撃をした銀行で人質にとった女性、クレア(レベッカ・ホール)を愛してしまったことからダグの運命は大きく展開していきます。

ベン・アフレックが今作を監督するに至った経緯はずばり、「ダグのような主人公を演じたかったから」。自分が生まれ育ったボストンを舞台にした、自分には決してオファーがこない役を演じるには、自ら映画を撮るしかなかったというわけ。それだけのパッションと愛がこもった作品を撮影するにあたり、ボストンも両腕を広げて地元出身のスターを迎え入れています。生粋のボストンレッドソックスファンのベンのために、フェンウェイパーク(レッドソックスの本拠地)まで撮影許可を出して熱烈歓迎。まさにベンにしか撮れない唯一無二の作品となっているのです。

レディ・バード』グレタ・ガーウィグ

グレタ・ガーウィグが描く青春のこじれた心模様に誰もが共感。「これは私のストーリー」

フランシス・ハ』(12)のグレタ・ガーウィグが初めて単独でメガホンを握り、見事アカデミー賞監督賞と脚本賞にノミネートされた作品が『レディ・バード』(17)です。自身の体験にインスパイアされて誕生した今作の主人公は、グレタの故郷であるカリフォルニア州のサクラメントに住む高校生クリスティン、通称“レディ・バード”。自分を理解してくれない母親との関係、学校生活、大学進学問題、恋、友情など、悩みが尽きない17歳の揺れ動く胸中をユーモアとともに描いた成長物語です。

ティーンの心を支配するのはいつでも「誰も自分を分かってくれない」「自分はこんなところで終わる人間じゃない」といった複雑な思い。窮屈な街を飛び出して大都会に出ればそれが叶うと信じるも、離れてみて初めて分かる故郷や家族の大切さ。そんな誰もが一度は胸に抱いたことのあるノスタルジーが共感を誘います。レディ・バード役のシアーシャ・ロナーンのみずみずしい演技も文句なしですが、高校生活最後の1年間のストーリーをたった94分で見せているので、物語のテンポも絶妙。『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(16)のルーカス・ヘッジズや、『君の名前で僕を呼んで』(17)のティモシー・シャラメといった、これからのエンタメシーンを引っ張っていくヤングジェネレーションたちの演技にも要注目です。

人生は失うことの連続かもしれないけれど、それを修復したり取り戻したりすることはできるんだよ、という希望を感じさせるラストは号泣必須。泣いてしまうのは予測可能かもしれませんが、回避は不可能です。

「ザ・シェフショー 〜だから料理は楽しい!〜」ジョン・ファブロー

とにかくお腹が空いてしまう。ありそうでなかったジョン・ファヴローの新料理番組

「キューバサンドイッチ」の存在をこの映画で初めて知ったとう人も多いのではないでしょうか? 『シェフ 三ツ星フードトラックはじめました』は、ジョン・ファヴローが監督・脚本・主演・製作をしたヒューマンドラマ。落ちぶれた一流シェフが一念発起して、フードトラックでキューバサンドを売りながら全米を旅するロードムービーでもあります。『アイアンマン』シリーズの監督や製作でおなじみのジョン・ファヴローですが、料理の経験はほとんどなし。ということで、彼が今作の役作りのために頼ったのが、フードトラック「Kogi(コギ)」のシェフ、ロイ・チョイ。韓国焼肉具材にしたタコスで、アメリカでグルメフードトラック人気に火をつけた人物です。今作ですっかり意気投合したジョンとロイですが、映画の撮影が終わったと同時に一緒に料理をする機会も終了。それでは悲しすぎると『ザ・シェフショー 〜だから料理は楽しい!〜』で再度タッグを組んだというわけです。

『ザ・シェフショー 〜だから料理は楽しい!〜』ではゲストと共に料理を作ったり、全米の名物料理を訪ねてレストラン巡りをするなど、料理番組といっても型にはまらないフリースタイルで、30分とコンパクトな尺のため飽きずに観られるのも大きなポイントです。また、ジョンの交友関係から、グウィネス・パルトローロバート・ダウニー・Jrトム・ホランドといったMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)シリーズに登場する俳優たちがゲスト出演。彼らのトークも見逃せません。とはいえ、やはり実食タイムに勝る映像はなし。おいしい物を口にしているときの人々のリアクションほど、幸せな瞬間はないでしょう。とにかく驚くほどお腹が空いてくるのでご注意を。

Netflix公式サイト

文・柴崎里絵子

(C)2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved./(C) Cosmos Filmed Entertainment Pty Ltd 2016./(C) 2011 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved./(C)2017 InterActiveCorp Films, LLC./Merie Wallace, courtesy of A24

記事をシェア

公式アカウントをフォロー

  • RSS