ロイヤルファミリーを赤裸々に描いた『ザ・クラウン』のファンに送る、「英国王室」がもっとわかる作品7選

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Netflix Japan編集部

英国のみならず、世界中で大人気の『ザ・クラウン』は王室、政治、国際情勢、社会的事件、家族などをテーマに、女王エリザベス2世の半生を重厚かつ荘厳に描くドラマシリーズ。

女王がまだ王女だった頃の結婚の儀からスタートしたこの作品、時代とともに物語が進むなかで、最新のシーズン4では、今も絶大な人気を誇る永遠のロイヤルアイコン、故ダイアナ元妃がついに登場。バッキンガム宮殿の様子をはじめ、ダイアナ元妃やサッチャー元首相などの髪型や服装、仕草の再現度の高さ、そしてあまりにリアリティに富んだストーリーに、イギリス文科相が「これはフィクションであると明確に記載すべきだ」とNetflixに異例の要請を行ったほど、大きな話題を呼んでいます。

もちろんドラマはドラマであり、真実を知るのは本人のみですが、さまざまな視点から英国王室を描いた映画やドキュメンタリーを観ることで、その世界観をより深く理解できるはず。そこで、英国王室のことをもっと知りたい『ザ・クラウン』ファンのために、Netflixで配信中の関連作品をご紹介します。

「ハウス・オブ・ウィンザー イギリス王室の歩み」

現・英国王室の約100年の歩みを辿る

英国内で反ドイツ感情が高まっていた第一次世界大戦時、国王ジョージ5世(エリザベス女王の曾祖父)が、ドイツにルーツを持つそれまでの家名を1917年改称して始まったウィンザー朝。エリザベス2世はその4代目君主にあたります。本作は、初代君主ジョージ5世から現在の女王の長男チャールズ皇太子まで、つまりウィンザー朝のはじまりから現在までを描いたドキュメンタリー。人に歴史あり、王家に歴史あり。国際社会における英国の立ち位置や当時の国内情勢など歴史的背景とともに、ウィンザー朝の“すべては王室存続のため”の歩みがとてもよく理解できる作品です。

ザ・クラウン』では詳しくは描かれていない、エリザベス女王の父ジョージ6世や母エリザベス皇太后について知ることができ、若きエリザベス王女とマーガレット王女の仲良し姉妹ぶりを覗くこともできます。一家4人で訪れた南アフリカ外遊中、船上ではしゃぐプリンセスたちの映像はとっても貴重。また『ザ・クラウン』シーズン4・エピソード8の冒頭に登場する、女王が21歳の誕生日に南アフリカ・ケープタウンで行ったラジオ演説のリアルバージョンを見ることもできます。フィリップ王配やチャールズ皇太子、故ダイアナ元妃も『ザ・クラウン』とは違った視点で描かれ、ドラマには登場しないエピソードや人物関係などにも触れられているので、きっと新たな発見があるはず。

「ストーリー・オブ・ダイアナ」

実弟はじめ関係者の証言で“ダイアナの素顔”に迫る

眩しいほど美しく、常に脚光を浴びていながら、実は孤独を抱えていた故ダイアナ元妃の、壮絶ではかない生涯を凝縮したようなドキュメンタリー「ストーリー・オブ・ダイアナ」。ダンスが上手な愛嬌たっぷりの少女が、わずか19歳で皇太子妃という重責を担うことになり、36歳という若さでこの世を去るまでを追いながら、“世界でもっとも注目された女性”の真実に迫る作品です。

故ダイアナ元妃の実弟である第9代スペンサー伯爵チャールズや伝記作家、王室ジャーナリストなど近しい人物たちの発言が、圧倒的なカリスマ性を持つ“民衆のプリンセス”の姿を描き出します。なかにはチャールズ皇太子と当時、不倫関係にあったカミラ夫人との会話や複数の男性と交際していたとされる故ダイアナ元妃の不貞を証拠づけるようなショッキングな音声、故ダイアナ元妃がマスコミの犠牲者でありながら、メディアを利用していた部分もあるという指摘など、決してきれい事だけではないリアルな情報も。

ザ・クラウン』シーズン4で描かれたシーンの元となったと思われる当時の映像も見られ、ドラマの再現度の高さに驚くと同時に、ドラマで見る以上に凄まじいダイアナフィーバーぶりに圧倒されます。また世紀のロイヤルファッションアイコンの華麗な着こなしを映像で見られるのも、本作の見どころのひとつ。“次元の違うセレブ”と言われた比類なきスター性で、注目を集めすぎるがあまり、最期は過熱報道によって命を落とすことになった故ダイアナ元妃。「ダイアナの名前は皮肉に満ちている。ギリシャ神話の狩猟の女神にちなんでいるが、最後は本人が(マスコミに)狩られることになった」と葬儀で語るスペンサー伯爵の弔辞が心に刺さります。

『ダイアナ妃の告白』

故プリンセス本人が語る“おとぎ話の真実”

1992年に発売され、世界中に一大センセーションを巻き起こした書籍「ダイアナ妃の真実」。英国王室を揺るがす、その本の元となったのは、秘密裏に行われたという故ダイアナ元妃本人へのインタビュー。『ダイアナ妃の告白』はその極秘取材の肉声テープと当時の映像で構成されたドキュメンタリーです。

真実を明るみにしたいという一心で自伝の出版を決意したという故ダイアナ元妃。両親は不仲で母親はいつも泣いていたこと、子供の頃から孤独を感じ、不幸だったことなど、自らの幼少期の話から始まり、皇太子妃となってからの生活がいかに苦痛だったか、王室での孤立、過食症と自殺未遂を繰り返す破綻した結婚生活、マスコミとの壮絶な闘いなどについて、公の場で見せる笑顔の裏にあった苦悩の日々を、切々と告白します。

驚くのはチャールズ皇太子とカミラ夫人の関係は婚約前からすでにゆるぎないもので、ダイアナ妃はそれに気付いていたということ。本人の口から語られるプロポーズから結婚までのいきさつによると、『ザ・クラウン』シーズン4で、皇太子の記章が入った指輪を渡すシーンなどには演出があることがわかりますが、逆にドラマの脚色(?)と思うような皇太子とカミラ夫人の親密さを表すエピソードのいくつかには、“真実”があることもわかります。

また本作には、アメリカ訪問時にニューヨーク・ハーレム病院でエイズに感染した子供を抱く場面が、“真実”に基づいていることがわかる映像も。皇太子妃として初めての公式訪問から人道主義者としての慈善活動まで、“働くダイアナ妃”の姿を多く見られるのもこの作品の魅力で、結婚当初はうつむきがちだった19歳の少女が、離婚を決意する頃にはしっかりと前を向き、力強くスピーチするようになる変化も見ものです。

英国王のスピーチ

エリザベス女王の父ジョージ6世の歴史秘話を描く

ザ・クラウン』では、シーズン1で早すぎる死を迎えるまでの短い登場だった現女王の父君ジョージ6世。「英国王のスピーチ」は、そのジョージ6世が国王として歩んできた道のりを史実に基づいて描いた歴史映画です。

幼い頃から吃音に悩み、無口で内気だったヨーク公アルバート王子は、思いがけない経緯からジョージ6世として国王に即位します。第二次世界大戦中という困難な時代、言語障害専門家と友情を育みながら、吃音を克服し、世紀の一大スピーチを敢行。国民をひとつにまとめあげ、真に愛される英国王となるというストーリー。しみじみと感動が広がるような深みのある上質な作品と評価され、アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞を受賞し、国王を演じたコリン・ファースも主演男優賞の座に輝きました。

そもそもジョージ6世が国王となったのは『ザ・クラウン』シーズン1-2でも描かれていたとおり、兄エドワードがエドワード8世として王位についたものの、アメリカ人女性との許されぬ結婚のために王位を放棄したため。比較的、気楽な立場であったはずの弟アルバートが国王に即位することとなり、突然重責を背負う立場となったというものです。その娘であるエリザベスが女王になったのも、元を辿れば想定外ともいえますが、そんな運命のいたずらから王になったエリザベス女王が2021年2月、英国君主として在位69年を迎え、歴代最長記録を更新中というのも、なんだか宿命めいたものを感じます。ちなみにジョージ6世の妻(エリザベス女王の母)を演じるのは、『ザ・クラウン』シーズン3-4で、女王の妹マーガレット王女を演じているヘレナ・ボナム=カーター。見事な演じ分けぶりにも注目です。

エリザベス ゴールデン・エイジ

“国と結婚”して黄金時代を築いた女王の姿を描く

1066年、ノルマン王朝イングランド初代王となったウィリアム征服王を原点に、約千年もの歴史を持つ英国王室。そのなかで王の座に40年以上君臨した王はたったの6人で、半分が女王。現在の君主エリザベス2世、その高祖母ヴィクトリア女王、そして、大英帝国の礎を築いたエリザベス1世です。その英国史上もっとも偉大なる君主と名高い女王エリザベス1世を名優ケイト・ブランシェットが演じ、2007年に公開されたこの作品。時は16世紀、いとこにあたるスコットランド女王メアリーとの覇権争いをはじめ、さまざまな思惑や陰謀が渦巻くなか、数々の裏切りや困難を乗り越え、イングランド黄金期=ゴールデンエイジを築くまでの女王の姿が描かれています。

当時、世界最強の国だったスペインに唯一逆らった、強く、激しく、誇り高い女王エリザベス1世。結婚せず、夫を持たず、子供もいないため、“処女王”の名で知られています。映画では冒険家ウォルター・ローリーへの恋心をのぞかせながらも、「英国に捧げたこの命」と国に尽くす人生を全うする女王。「私はこの国の民の母親。私はクイーン」と高らかに宣言します。そこで思い出されるのが、『ザ・クラウン』に登場した「私の先祖が受け継いできた誇り高い家訓があります。“私は尽くす”」というエリザベス2世のラジオ演説での言葉。「私も奉仕するつもりです。ここで宣言します。私の一生が長いものでも短いものでも、国のために尽くします。そして連邦のために人生を捧げます」という彼女の歴史的スピーチは、まさにエリザベス1世から受け継がれているのです。

ブーリン家の姉妹

中世イングランドを揺るがした一大スキャンダルを描く

6度も結婚したことで有名な英国王といえば、『ザ・クラウン』の時代からさかのぼること約400年。16世紀、テューダー朝2代目の王ヘンリー8世。ローマ教皇の強い影響下にあった当時のヨーロッパで、自分が離婚したいがためにカトリック教会と決別。英国国教会を成立させ、自ら首長となったことでイングランドを永久に変えたといわれる人物です。そのヘンリー8世の寵愛をめぐって熾烈な争いを繰り広げたブーリン姉妹の波乱に満ちた人生を、小説をもとに描いた映画が「ブーリン家の姉妹」。姉アンをナタリー・ポートマン、妹メアリーをスカーレット・ヨハンソンが演じて、話題になりました。

もともと王になる可能性は低かった次男のヘンリー。スペインの有力な王国の娘と結婚した兄が急死したことで王位継承順位1位となり、父ヘンリー7世の死後、ヘンリー8世として王になります。そして兄の妻だったキャサリンと(政略)結婚。そのキャサリン王妃の侍女だったのが、新興貴族出身のブーリン姉妹です。自分の後継者には男子を渇望していたと言われるヘンリー8世。キャサリン王妃に生まれた男子が死産だったことから、最初は妹メアリー、そして姉アンと関係を持ちます。冨と地位を高めようと画策するブーリン家の思惑どおり、国王の愛人となる美しき姉妹。男子の世継ぎを執拗に求める、移り気な国王の心をつなぎ止めようと必死にもがきますが、特に知性派の姉アンは、正妻の座にこだわるあまり、自らの策に溺れていくことに。いつしか国王の寵愛は侍女のジェーン・シーモアへと移り、悲劇的な結末を迎えます。

その後、テューダー朝5代目君主として、45年間もの長きにわたり君臨したのは、ヘンリー8世とアンの娘エリザベス1世。キャサリン王妃もアンも、生まれる子供が男子かどうかで運命を左右されたにもかかわらず、真の意味でヘンリー8世の後継者となったのは“女王”だったというのは、なんとも皮肉な話です。今の時代にヘンリー8世とアン・ブーリンがいたとしたら、大きなスキャンダルの種になりそうな強烈な生きざまですが、エリザベス1世には子供がいなかったため、テューダー朝は断絶。現在の王室に、その血は流れていないということです。

ザ・ウィンザーズ

ギャグ漫画を読んでいる気分で笑える問題作?

英国王室にまつわる作品は重厚でシリアスなものが多いなかで、異色のドラマ『ザ・ウィンザーズ』。現王室メンバーを実名でパロディにしたコメディ作品です。ハチャメチャなストーリー展開は完全なるフィクションですが、そこに王室に対する大衆の本音が潜んでいる(?)のがポイント。“旅行にお金がかかるなんて知らなかった”、“お金のために働くなんて愚かだった”なんて発言が飛び出すなど、風刺や皮肉がたっぷり。登場人物の描き方もやりたい放題です。

結婚前、遊び人として有名だったハリーことヘンリー王子や、チャールズ皇太子との不倫時代の印象が強いカミラ夫人はある意味イメージ通りともいえますが、意外なキャラクター設定もあり、日本ではうかがい知れない王室メンバーのパブリックイメージが垣間見えます。『ザ・クラウン』に登場するあの人物って、実は英国内でこんな風に思われているの?と想像しながら楽しめるのが本作の面白さ。

日本ではありえない強烈な茶化しっぷりは見ていてハラハラするほどで、そもそも放映されていること自体が驚きですが、それも英国王室の懐の広さなのでしょうか。こういう作品が生まれるのも、王室が国民に愛されている証しといえるかもしれません。ただエリザベス女王とフィリップ王配だけは登場しないのが、せめてもの敬意の表れなのかも。

文・江口暁子

『ザ・クラウン』最新シーズン4配信中
https://www.netflix.com/title/80025678

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転載元:Netflix note

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